古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

コメントをいただいて、そしてHORAギターについて

CABOTIN様

いつも、有用なコメントをありがとうございます。
今回は、私にもなかなか理解出来ない、専門的なコメントで
時間をかけて、ゆっくり考えて見ます。

michael様
まだ、リュートまで考えが及んでいません。リュート、バロックギターなどについても
考えてみたいと思います。ギターとは違った構造なので、違う理由が考えられそうですが。

今、我が家には弦長 55センチから63センチまでの小型のギターが
10台ほどあります。

どの楽器も、弦は一般的な、ダダリオやオーガスチンでピッチは
59センチ以上の楽器は半音下げて(A=415)55センチのギターは
440で調弦していますが、弦が柔らかすぎて弾きにくいとか、
手ごたえが無いという感じはありません。
むしろ、しっかりした感じです。

ギター作りの間では、弦長の短い楽器の製作を頼まれて、ボディは大きい楽器の
ままで、弦長だけ短くすると,張りの無いぼけたギターが出来てしまう、
という認識がありました。また、そのような楽器も見たことがあります。

体に合ったギターを弾いてもらおうと、せっせと小型ギターを集めていますが、
どのギターもバランスもよく、なにより低音がしまっています。
合奏にも使える楽器だと思います。

ということで、高橋晃清様からのコメント ルーマニアのHORAギターについてです。
このメーカーも2分の1,4分の3、8分の7、4分の4と各種のギターを作ってくれています。

今最も興味のある、小型ギターと言う事で、4分の3のギターを手に入れました。
10年ほど前の少し弾きこまれた楽器です。(そんなに弾いてはいなかったようですが)
カタログでは4分の3は弦長57センチと言う事だったのですが、10年ほど前だと
弦長は61センチでした。

表板はルーマニアの松、とても年輪の間隔が広い、日本ではあまり使われない
ような板に、裏、横、ネックとも単板の楓です。
裏板も、ブックマッチの板を使っています。

重さも軽く感じたのですが1302グラムでした。(表板単板裏横合板のヤマハは弦長60センチの楽器で
1430グラムでした、私の楽器は弦長64センチで1080グラムです)

音は、楓の木の楽器らしく、柔らかい音で楽器はよく鳴っています。
よく考えれば、私の作った楽器は楓のギターの方が多いので、楓の楽器の
良い所、楽器本体がよく鳴ると言う事は分かっていたので、そんな感じに聞こえます。

裏横がローズに比べると、音の輪郭がはっきりしない感じですが、それが合奏
アンサンブルには合うように思います。

安い値段の楽器ですが、押さえる所は押さえていて、糸巻きのウオームホイールも
厚みも充分にあり、巻き易く、耐久性もありそうです。(安い楽器は、このホイールが薄くて
巻き上げの抵抗も大きく、耐久性もありません。)
国産5万円くらいのギターよりははるかに良いものを使っています。

ナットやブリッジの骨棒も樹脂ですが、音は悪くなさそうな材質です。

全体に楽器が鳴って、バランスもよく低音も基音が出ている低音です。
3弦のハイポジションもバランスよく鳴っていますし。

でも、いわゆるモダンスペインギターとは違う楽器です。
音楽を楽しみたい、音楽を表現したい方のため、合奏をしてみたい
人のための楽器のようです。(私の作るギターと少し方向が似ています)

価格は定価27000円税込みですが、黒澤で21600円の楽器です。

大きな、重たいローズのモダンギターを苦労して弾いている人に、
お勧めです。弦長が62センチの8分の7あたりが良いように思いますが、
高級な楽器に比べて、細かな表現などは苦手なようです。
逆にそんなに細かなタッチとか気にせず、気楽に弾ける楽器だと思います。




  1. 2017/06/19(月) 00:28:00|
  2. ギター
  3. | コメント:1

michimat様がギター2台持って来られました。

コメントを先にいただきましたが、michimat様が昨日ギターを2台持って
調整に来られました。

他の人が、弾きにくい楽器を弾いていたり、弾き難そうに演奏していると
何とかしたいと思ってしまう性分なので、持ってきていただきました。

河野さんのギターについては予想通りに近い線でしたが、ちょっと
イメージとは違う楽器でした。(私もギターを弾いていたころは河野さんのギターを
3台持ち替えましたから、また回りにも河野ギターを使っている人も沢山いましたし)

イーホさんのギターは、お聞きしていたような感じでしたが、あちらこちら
音のロスや、振動の妨害を受けている感じの音でした。

問題のイーホさんの問題は

1弦が音も硬くて、弦の感触も固い。
これが、一番の問題です。

これについては、ブリッジの骨棒が弦に接触する部分、上の部分の仕上げが
平らで、これで弦の振動を邪魔していました。特に1弦。
骨棒の平らな部分をカーブを付けて、それも1弦側は弦長が短くなるように
6弦側が長くなるように削ります。

これで、音のエネルギー交換率はかなり上がりました。

次に、ナットの溝が大きすぎて、溝の中で弦が遊んでいる状態でした。
弦高も高かったので、適正な溝幅と、高さにすると音のロスは少なくなりました。
(これで、左手のローポジションがかなり楽になります。)

特に、6弦の音に変化がありました。5弦も。
楽器は低音が鳴って来ると、高音も鳴ってきて、楽器全体が
鳴ってきます。こうなると、1弦の固い感触も少し柔らかくなってきました。

1弦、12フレットが特に鳴らなかったのですが、13フレットが少し高かったのと、フレットの上部の形が
平らだったので、丸くして発音をよくしました。

少しは改善したのですが、ウルフとか共振の問題以上に音が落ち込んでいるので、
フレットの緩みを考えました。アロンアルファで隙間を無くすると、11,13フレットと
同じように鳴ってきました。

河野さんのギターは倍音が豊かと言うと、良い表現ですが、基音が少ないので
楽器本体はあまり鳴っていないのです。
こちらも1弦がカンと鳴って、すぐに減衰し、2弦以降の弦と音色があまりにも
違ったので、ブリッジの骨棒での弦の角度を変えるように(角度を緩く)すると、
2弦以降との音色の差が改善されました。
この楽器も、ナットの溝に遊びがあって、音のロスがありました。

イーホの1弦は倍音が少なく、しっかりした音、基音がよく出ている
楽器です。でも、楽器が鳴るようなコンディションになったので、倍音でなく
響きがついてきます。そうなれば、もっと魅力的な楽器になると思います。

でも、このような調整はギターの調整を専門にしている人もあまりやってくれないそうです。

なぜ、このようなことが分かって出来るのか?

それは、ギターが好きで弾いているから、演奏しているからです。

以前のブログで、楽器を弾かない製作家の楽器はただの箱に弦を張っただけのもので、
楽器ではない、と言う事を書かせていただきました。

調整もそう感じます。

弾けば分かる事なのです。
弾いてよく聞くこと、考える事です。

でも、有名なギター製作家のギターで、当然新作で出来たばかりの楽器で
同じような経験をよくしました。

ギターに限らず、チェンバロでも有名な作家さんの楽器が本来の楽器の
半分以下、数割の音しか出ていないということも、沢山経験してきました。
そんな楽器は、「魔法がかかったように、違う楽器になりますよ。」と言って
調整してあげると、皆さんが驚くほど良い楽器になることが多くありました。

楽器を出来てから、ほんの少し弾けば分かる事なのですが。

皆さん楽器を作ること、仕上げる事は熱心なのですが、
形になった楽器のようなものを、最終的に楽器に仕上げる作業が
少ないように思います。

せっかく時間をかけて、作った楽器を一番最初に弾けるのは、製作者の
特権、醍醐味なのにもったいないと思います。

そう、思われませんか?






  1. 2017/06/13(火) 01:23:18|
  2. ギター
  3. | コメント:0

コメントをいただいて、リュートとギター

こうじ様

コメントをありがとうございます。

私も、ギターからリュートに転向して45年ほど、リュートを作るようになってから
40年ほど経ちました。

リュート、チェンバロとギター、ピアノとは表板の考えが違うようです。

リュートは、もちろん製作家によって違いますが、またバロックとルネサンスでは違いますが、
1.5ミリから1.8ミリくらいの表板に、ブリッジの下にはバスバーが入っていません。
チェンバロも2段の楽器や、8’8’4’の楽器だと、約200本の弦が張られていますが、
ブリッジの下にはバスバーが入っていません。(ほとんどの楽器が)表板の厚みも
3ミリから1.8ミリくらいです。(楽器によっては2.5ミリから1.8ミリくらい)

それに比べて、ギターは表板が2ミリから2.8ミリくらいでしょうか?
そして、ブリッジの下にバスバーが入っています。

リュートもバロックで表板がもっと厚いものもありますが、ブリッジに弦を張って
テンションがかかってくると、表板のブリッジよりネックの方にかけて下がってきます。
横から見ると、転倒モーメントが働いて、S字カーブになります。
テンションとこのS字カーブがバランスの取れたところで落ち着き、楽器が鳴ってきます。

チェンバロもバスバーがありませんから、テンションを上げていくと(調律でピッチを上げていくと)
表板がS字カーブを描くようになります。これが進行して、弦が表板に当たったり、ブリッジに当たったり
するトラブルも発生する楽器もあるほどです。

ですので、リュートの弦が切れると、バランスが崩れて楽器が落ち着かなくなり、他の弦まで
狂ってくるように思います。

ギター、ピアノはブリッジの下にバスバーが入っていますので、リュート、チェンバロほど
表板の変形は少ないと思いますが、弦を張り替えたり、ピッチを大幅に下げていた時など、
落ち着くまで本来の楽器の鳴りでは無い時間が、結構あるように思います。

ちなみにリュートの1弦(1コース)は3キロくらいのテンションで、他の弦を2.5キロくらいと仮定すると
10コース19弦のリュートだと、約50キロくらいのテンションが、わずか1.5ミリから1.8ミリのバスバーの無い
小さなブリッジにかかってきますので、変形は起こって当たり前でしょうか?
ギターで40キロ前後ですから。

  1. 2017/06/13(火) 00:37:40|
  2. ギター
  3. | コメント:1

コメントをいただいて 弦の固さ?

通りすがり 様

コメント、ありがとうございます。

私の言葉不足を補っていただくようなコメントで、ありがとうございました。

弦長、ピッチが同じなら、どの楽器でもテンションは同じです。

では、なぜ固く感じる楽器とそうでない楽器があるのか?

たしかに、音を出さずに弾いてみると、どの楽器でも弦の感触は変わらないと思います。

楽器によって、化学変化でも起こして、比重が変わりテンションが変わると言う事は有り得ませんから。

しっかりした楽器、悪く言うと楽器本体が鳴っていない楽器(全部に当てはまる事ではありませんが)
だと、弾く人が自覚無く、無意識に強いタッチで、他の楽器と同じようなヴォリュームを出そうとして、
力を入れるため、弦が固いと言う感触を感じるのではないかと感じています。

反対によく鳴る楽器は柔らかいタッチでも、力を抜いても音が出やすいので,弦を柔らかく感じるのでは?
と思ったりしています。

弦が固く感じる楽器全てが,鳴らない楽器、鳴りにくい楽器と言っているのではありません。
鳴らない楽器というより、しっかりした音、芯のある音の楽器と言えるかもしれません。
このような楽器は、延達性があったり、録音すると良い音で録音できたりする場合が多いようです。

同じような事を、チェンバロでも感じる時があります。

よく鳴る楽器は、爪を薄くしても(チェンバロは爪で引っ掻いて音を出しますので)まだ、
爪が分厚い、タッチが重い、と言われる事があります。
爪は一般的に0.5ミリのデルリンの板を削って使うのですが、0.3ミリくらいに削って、もう削れないと言う爪でも
よく鳴る楽器だと、もっと削ってほしいと言われる事があります。

逆に、鳴らない楽器だと0.5ミリの爪そのままでも、爪が弱いと言われる事もありました。
同じように、太い弦で0.8ミリと言う爪を付けている楽器など、本来固くて弾けないコンディションですが
弾いてもそう固い感じを受けない事もありました。(あまり楽器が鳴っていないので)
チェンバロは、基本的に音の強弱が付かないので、爪の調整が大事なのです。

なにか、弦が固いと感じる楽器は鳴らない楽器だと決め付けているように取られるかもしれませんが、
決してそうではありません。

通りすがり さんがおっしゃっているように、音色、音の立ち上がりその他の条件でそう感じる事が
多いように思います。

以上書かせていただいたことは、あくまで私が考える一つの考えですので、そう思わない方も
沢山いらっしゃると思います。また、お考えをお聞かせ下さい。
 
簡単に結論が出る問題ではないと思いますし。

あと、弦が固く感じる楽器を使っている方に、半音下げて弦のテンションを下げて弾いてみては
いかかでしょうか?
と言う提案も出そうかと思ったのですが、これは私が一度試してからまた、提案させていただきます。
  1. 2017/06/11(日) 00:38:57|
  2. ギター
  3. | コメント:3

弦が硬く感じる楽器と柔らかく感じる楽器の差は?

michimat様が面白い話題を提供してくださいました。

弦長660ミリの河野に比べて、弦長650ミリのイーホのほうが、
弦の感触が硬いとの事。

これは、楽器製作者の間でも話題になることです。
以下に書かせていただくことは私が考えている事ですので、
皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

弦のテンションについては、ピッチが同じであれば、また同じ弦を使えば
弦長で決まってきます。

でも、世の中には、弦のテンションを大きく感じる、弦が硬く感じられる楽器
が存在します。逆の楽器も。

これは何故、生じるのでしょうか?

一つは楽器の構造にあるのでは?と思っています。

弦が硬い楽器、弦がしっかりしている楽器、代表的な楽器は
ハウザーでしょうか、日本では松村さんの楽器とか。
たまに、ブーシェさんとか。

これらの楽器を見ると、しっかり作られた楽器が多いように思います。
表板の厚さだけでなく、楽器全体がしっかり作られていると、弦の感触も
硬いようです。

しっかり作られていると言う事は、しっかり弾かないと鳴らない。

渡辺範彦さんの先生(私の先生ですが)の植木義法先生は私が習い始めた頃は、
ハウザー2世を使い始めた頃で、「この楽器は3年から5年弾き込まないと鳴ってこない」
と言われていました。特に、楽器が出来てまだ間がない頃は、弾かせていただくと、
弦も硬く感じて、一生懸命、弾かないと鳴らない楽器でした。
(私も楽器を鳴らせる技術もありませんでしたが)

それが、数年経つと少しは柔らかくなった様に感じました。

後、感じるのは駒の骨棒の弦の角度です。
分かりにくい表現ですが、駒がブリッジより高く出ていると、
骨棒の所でかなり角度がつきますね。

この角度の大きい楽器は弦が硬く感じられるように思います。

これは、音がはっきりしない楽器を,弦高が上がるのですが、
骨棒を高くすると、音がはっきりして弦の感触もしっかりします。

ただ、単純に駒の表板に対する圧力が増えただけだと、
思うことも出来ますが。弦長は変わっていないので、
(押さえた時のテンションは少し上がりますが)
弦の感触が変わることの説明は難しくなります。

後は、骨棒が高くなることによって、駒の転倒モーメントが大きくなるので、
音がはっきりする、楽器が鳴る、感触が硬くなると言う事はあると思います。

チェンバロで同じような事があります。

特に低音が鳴らない楽器の改善法として、ブリッジでの、
弦の角度を変えることをやります。

ヒッチピンと言って、弦の端を留めているピンを打ち替え、
角度を付けるだけで(ブリッジの高さは変わっていないので
表板にかかる圧力は同じ)音がはっきりしたり、楽器が鳴ってきます。

最後に河野さんのギターの音についてです。

河野さんのオリジナルはバスバー、ファンブレースはかなり特殊です。
というか、河野さんしか取り入れていない設計です。

私は、ちょうどスピーカーのウーハーのように、
表板の周りを薄くして、表板全体を鳴らすようにして、
基音を出すように、低音が出るようにしています。

河野さんは、周りを固める方向にバスバーを配置していて、
(ファンブレースではなく)倍音が出やすく、高音が出やすくしているのです。

この方式を何十年前から取り入れている河野さんは、やはり河野さんです。

ですので、誰が弾いても河野さんの音になりやすいのです。

これが好き嫌いの分かれる所でしょうか?



河野さんの個性以上の個性の持ち主は渡辺範彦さんだったかもしれません。

彼は、ブリームに「君のその靴べらのような爪がほしい」と言わしめた、
しっかりした、分厚い爪で、力を持っていた渡辺さんが力を抜いて
弾いていたから、渡辺さんの音がしたと思います。

楽器もそうなっていったようです。

昔の話ですが、渡辺さんの演奏会が神戸であって、楽屋に押しかけ
色んな話をさせていただいていると、ギターの音がするのです。
一瞬、先生が「あれ、渡辺君が弾いているのかな?」と言われました。
でも、違う人が、渡辺さんのギターを弾いていたのです。

しかし、かなり渡辺さんの音に近い音でした、渡辺さんが
河野さんのギターを渡辺さんの音のギターにしたのでしょう。







  1. 2017/06/08(木) 15:23:20|
  2. ギター
  3. | コメント:4
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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