古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

魂柱と駒 そしてモダン楽器

魂柱と駒の関係は、ギターの方には縁のない話のようですが、
思い込みと言うか、そうでなければならないと思っていることが、
実際正しいかどうか、と言うことを考えさせられますので、
もう少しお付き合い下さい。

今まで見た、(ガンバが中心なのですが、)擦弦楽器では、ほとんどの楽器が
魂柱と駒の位置は、近すぎて楽器が鳴っていない、楽器本体が振動していない場合が
多かったです。

そんな楽器は、倍音と言うか、固めの音なので、通る音に近い音質です。
ですから、弾いている本人も、他の楽器が鳴っていても、自分の音は聞こえる。
遠くで聞いている人にも、聞こえる音のようです。

でも、それは、硬い、音楽的には異質な音なので、聞こえてくると言う場合が多かったようです。
合奏していても、溶け合わないから、聞こえてくる。

最近、チェロでも基音が鳴っていなくて、ハーモニカのような倍音だらけのチェロを
聞く機会が増えました。

これは、鶏と卵の関係のようですが、弦の問題が大きいと思うのですが、最近の弦は
魂柱と駒を近づけないと、音がはっきりしない、音程が取れないようです。


逆に、魂柱と駒が離れすぎている楽器もたまにはありました。

そんなにベテランの製作家でない場合、楽器を作るのに精一杯で、重要な魂柱を立てるのは
適当にやってしまった。という楽器です。

魂柱は少し長めにしておいて、だんだん短くしていって、合わせるのが普通ですが、
少し長めで、「駒から遠いけど、音が出るからまあいいか」という楽器です。

中には、駒から3センチほど離れている楽器もありました。
でも、こんな楽器は大体、表板も削るのが大変なので、表板がとても厚い楽器が
ほとんどでした。

これだと、3センチ離れていても、結果的に音は良い場合もあるのです。
魂柱の位置を変えても、元の場所が一番良かったこともあります。

長年使っていると、さすがに表板は、駒の辺りで下がってきますが、音は
離れすぎている方が、近すぎるより良い場合が多いようです。

それと、駒からは近い距離なのですが、駒の位置がずれている楽器もよく見ます。
魂柱と駒の位置は、決まったものがあるから、その距離は守って、力を逃がそうとしたのかも、
しれません。でも、音は逃げた分だけ、ロスがあるので、楽器はあまり鳴っていません。



この間も、モダンの楽器との仕事が続きました。
時間もあったので、楽器を見せてもらいました。

魂柱と駒の関係を見るまでもなく、音を聞くだけで魂柱と駒が近すぎて、
楽器が鳴っていないのです。

かなりベテランのプロの方なのですが、ヴァイオリンを弾いてもらっても、
本当に楽器が鳴っていなくて、良い楽器なのに、これで仕事をしているの、
と思うと、複雑な気持ちでした。

プロの奏者がプロのメンテナンス、プロの調整をしてもらって、鳴っていない楽器を
弾いているというのが現実のようです。

でもモダン楽器だと弦の関係でそうしないといけない場合もあるので、単純には行かないようです。

ギターの場合だと、音色とか立ち上がりくらいの問題で、ヴァイオリンほど弦の影響は
少ないようで、良いのですが。


  1. 2013/06/26(水) 11:24:36|
  2. その他
  3. | コメント:0

コメントのお返事と九州の話 その2

すみません、普通のブログによくあるように、九州の旅行記のようなものではありませんので。
また、楽器についてのお話です。(もっとも、このブログを読んでくださっている方はそんなものを
期待してはいないと思いますが)

今回九州に行ったのは、主に天草コレジヨ館の展示されている楽器、
演奏用の楽器のメンテナンスや修理のためです。
その行き帰りに寄り道はしましたが。

展示の楽器も、エアコンが入ったり、夜間は入らなかったり、梅雨時分は湿度が高かったり
エアコンが入ると湿度が低くなったりと、楽器のためにはよい環境とは言えません。

そこで、調整が必要となる訳です。

とりあえず、23年ほど前に作った展示の楽器の中での代表作 ヴァージナルです。

130304_1424~01


製作期間も短い間に、12台ほどの楽器を作らなくてはいけませんでした。
本当に、わずかな縁があって作ることになった楽器です。

当然資料等もありませんが、私のことですから手に入る資料は手に入れて、調べました。

でも、クラボーと呼ばれていた、鍵盤楽器については、「鍵盤に象牙と黒檀を使った、
象嵌され、真珠を沢山使った美しい楽器」と言う記述が残っているだけでした。

現存している当時のイタリアの楽器を調べ、このような楽器になったのです。
実際、白蝶貝で象嵌し、象牙と黒檀の鍵盤、真珠はインドの天然真珠を80個以上使いました。

自分で言うのも何なのですが、いつ見ても綺麗な楽器だと思います。

そして、3年前に作った演奏用のヴァージナルです。

130303_1512~01


いつもはアウターケースに入っていて、この装飾などは見れません。

竹のパイプオルガンの製作に時間がかかって、結局4週間で作った楽器ですが、
沢山の装飾はないのですが、これも美しい楽器だな、と思って見ていました。

その他、フィーデルやガンバ、ハープやリュートを調整していました。

本当に、このコレジヨ館とは不思議な縁で、前回メンテナンスに来た時に、
イランの代表的なサントゥールがコレジヨ館にありました。

どういう経路でこのコレジヨ館に来たのか、分かりませんが、どうも
私が作ったサントゥールのようです。

メズラブといって、弦をたたく撥を見ると、日本の楓で作っています。
日本の楓で、メズラブを作っている人は私しかいませんから、私が
30年ほど前に作った楽器でした。(日本でメズラブを作っている人は他に知りませんが)

そして、今回コレジヨ館に入って、びっくりしたことがあります。

私の家にも来られて、いろんな音楽、楽器のことを話をさせていただいた。
前川先生のコレクションがコレジヨ館にあったのです。

そして、お弟子さんと一緒に来られたのですが、そのお弟子さんは、私の作った
ガンバを弾いてられます。

以前から、沢山楽譜やレコードを持っている学者さんが、本や楽譜,LPをコレジヨ館に
寄付されると言う話を聞いていましたが、まさか京都の前久保先生とは思っていませんでした。

130304_1620~01


この件に関しては、リュート奏者の野入さんも関係があるとお聞きしました。
野入さんは同志社女子の出身ですが、同志社女子のリュートは私が作ったものを
授業で使っていましたので、野入さんが最初に弾かれたリュートはわたしのリュートです。

もっとも、私が31年ほど前に大阪で展示会をしたときに、野入さんも来られていて、
若い頃の野入さんが私のリュートを弾いておられたこともあったように思います。
そして、その時が野入さんが初めて、リュートに触れられた時だと、聞いたことがあります。

不思議な縁の天草コレジヨ館とはこれからも長い付き合いになりそうです。


そして、コレジヨ館の次の日、宮崎まで行きました。

宮崎でチェロを弾いている方なのですが、今までにヴァージナルを3台作られている人がいて、
ヴァージナルばかりより、フレミッシュの1段でよいから、チェンバロを作ってみませんか?
とそそのかした責任がありますので、楽器を見に行ったのです。

綺麗に作られていました。チェンバロは初めてでも、ヴァージナルは3台も作ってられますから。


響板のドイツ松は私のところのものをお分けしたのものです。
でも、楽器を見せていただくと、楽器があまり鳴っていないのです。

白鳥の羽根を使っているのですが、楽器が振動していないのです。
鍵盤も重くて、しっかり弦は弾いているはずなのですが。

試しにブリッジを押さえても、響板が動いてくれないのです。
弦のゲージを聞くと、とても太いゲージで、テンションが高すぎて,鳴っていないようなので
とりあえず、半音下げると、鳴ってきました。楽器も振動してきました。

弦のテンションがきつくて、楽器がカチンカチンになっていた感じでした。

後、ヴォイシングのやり方を説明しながら、ざっとヴォイシングをやりました。

すると、楽器本来の鳴りになりました。

ギターでも、リュートでも弦楽器はその楽器にふさわしいテンションの弦を張ってあげないと
いけないと、実感しました。

その点からも、モダンの楽器で、楽器の限界以上のテンションをかけて、楽器が鳴っていない
状態で弾いている演奏家もいるのを、思い出しました。
魂柱とか駒とかの問題以前の問題ですが。

次回は設計構造の残っていた問題、フレットの大きさについてです。

よろしくお願いします。









  1. 2013/03/16(土) 00:10:48|
  2. その他
  3. | コメント:5

コメントのお返事、九州でのお話

九州から帰ってきたのですが、帰ってからも演奏会や雑用が追いかけてきて、
ばたばたしていて、ブログを書くのが遅くなりました。確定申告も終わりましたので、
少し書かせていただきます。

と言うことで、trioさん、 gabottenⅡさん コメントありがとうございました。

お二人が書かれていたような事と、少し違うことを書きたかったのですが、
このようなことを言っている人間はいないので、もう少し説明が必要かな?
と感じました。

以前、弦のことで、モダンヴァイオリン属、モダンヴァイオリン、モダンヴィオラ、モダンチェロの弦が、
スチールのため、(スチール以外の材質の弦も使われていますが、同じような感じなので)
しなやかさがなく、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバが現れて、魂柱の立った時から
数百年、常識とされてきた、駒と魂柱の関係が、崩れていることを、お伝えしたいという、
気持ちがあったのです。

戦前まで、そして数十年前まで、魂柱と駒の位置関係はその間の距離を、魂柱の直径分か
駒の、脚の幅分離すと言うのが、常識だったと思います。
私はそう思っていました。
ヴァイオリンで6、7ミリくらい、チェロで10から12ミリくらい。

ただ、この常識で、スチール弦を張った、モダンヴァイオリン、モダンヴィオラ、モダンチェロ
を調整すると、弦の硬さからくるのでしょうが、音がはっきりせず、音程すらも分からない音に
なってしまうのです。

それで、仕方なく、駒と魂柱を近づけると、音がはっきりしてきて、音程も取れます。
ただ、弦が振動して、駒に振動を伝えますが、魂柱がつっかい棒となって、表板が振動しません、
と言うか、振動しにくくなります。

そして、弦だけの音や、表板は振動していても、部分振動で、倍音ばかりの音になります。
それは、時にチェロやヴァイオリンを聞いていて、ハーモニカのような音に聞こえることがあります。
(決してハーモニカが悪い音、倍音ばかりの音だと言っているのではありません。御喜美江さんのフアン
になった頃から、ハーモニカの崎元譲さんも好きで、お二人が作った、ポエム・ハーモニカという
CDも持っていますし、良く聞いています。スティービー・ワンダーのハーモニカも好きですし、
ただ、ヴァイオリンの演奏で、ハーモニカの音は聞きたくないのです)

そして、その音は私が作りたい、基音がしっかりしていて、その周りに
倍音が、響きが付いている音と、正反対の音なのです。

ですから、楽器がホールの条件に合っていなくて、鳴っていないとか、湿度の問題とか
楽器が良い悪いの問題でなく、弦の問題だと思っているのです。

今井さんも、良い楽器を使われていると思います。
そして、信頼のおける楽器メンテナンスの方に、楽器の調整も任せていると思います。
あれだけの、演奏をされる方ですから。

でも、モダンの楽器のコンディションで、スチール弦を使うと、こうなってしまうのは
無理が無いというか、普通にそうなってしまうと思います。程度問題はあると思いますが。

もっとしなやかな、モダンの弦が現れると、こんな問題はなくなると思います。
ギターの弦のような、フィラメントの芯の弦とか。
どうしてそのような弦が無いのだろうかと思います。

でも探せば、多分あると思っています。しかし、
弦を選ぶ演奏者がその弦を選ばないのだけかもしれません。

このような、ハーモニカのような倍音だらけのヴァイオリンの音は異質な音なので、
客席には聞こえてくるのです。他の楽器の音とも異質なので、溶け合わず聞こえてくるのです。

それが、音が通っている、楽器が鳴っていると勘違いしている演奏家の方もいるように、
感じたことがあります。

いつも言っていることですが、これもあくまで、私の感想です。
私だけが感じていることなのかもしれません。

モダンヴァイオリンの世界に、どっぷりと浸っている、その専門家の方には
普通のことなのかもしれません。

でも、演奏を聞きながら、あと1ミリでも、できれば2ミリ魂柱と駒の距離を離せば、
楽器も鳴ってくるだろうなあ、音程も取れる程度の音のしまりで。と思っていました。

なんども、言ってすみませんが、これはあくまで私の感想、考えですので。



また長くなってしまいましたので、九州のお話は次回にさせていただきます。


  1. 2013/03/15(金) 22:35:44|
  2. その他
  3. | コメント:1

ありがとうございます。このブログに訪れてくれた方が、1万人を超えました。





昨年1月から始めた、このブログを訪れていただいた方が、1万人を超えました。
ありがとうございます。

一般的に作られ、流通して、使われているモダンスペインギターに疑問を持ち、
本来のギターはどんな楽器なのか、どうあるべきなのかを、考えていくうちに
ブログで私の考えを読んでいただくとともに、いろんな考えをお聞かせいただこうと
始めたブログでした。

文字が多いし、読んでいてもよく分からないことも書いてあるし、細かなことに
こだわっている、このようなブログを読んでくださって、本当にありがたく思っています。

モダンギターの、大きく、重たくて、弾きにくいことや、3弦や6弦のぼけているいる楽器が
多いこと。音色の差が大きいこと、各音の音量の差、特に低音の倍音が多いと言うか、基音が
ほとんど無いことなど、モダンギターの問題点を解決することが、弾きやすくて、音楽が表現できる
日本人の体格にあったギターを作ることになるのでは?

そして、こんなギターが、ギター音楽をさらに高め、ギターを楽しむ人が増えていくのではないかと、
思っています。

製作家が、自分の設計、構造、製作をこんなに公開している、ブログ、HPは無いと思います。
私自身は、楽器を作り始めた頃から、誰にも教えてもらわないと、決めていました。
自分の楽器を作ることに、教えてもらっては、教えてもらった人の考えが入って、
回り道になる、邪魔になると思っていたのです。
40年ほど、楽器を作ってきて、その考えは正しかったと思っています。

いろんな文献や、本を探して自分で勉強するのは、教えてもらったことと違って、その人の
力になると思います。

このブログがそのひとつになれば、そして考えるきっかけになれば、嬉しく思います。
私には、企業秘密や家伝、秘伝と言ったものはありませんので、読んでいて分からないことは
気軽にお聞きください。分かる範囲でお答えしますので。




本当にこのブログを読んでくださって、またコメントもいただいてありがとうございます。



  1. 2013/02/17(日) 22:50:44|
  2. その他
  3. | コメント:1

読み物 ギターの歴史


読み物 ギターの歴史


モダンスペインギターについて、いろいろ書いていくと、
ギターはスペインの楽器で、伝統的にスペインとギターは切っても切れない関係にあり、
スペインこそがギターを生み育てた国である。
との認識がモダンギターを本来の姿から少し変えてしまったのでは
ないかと思えるようになりました。

これも、私の知識不足とか、深く考えていないからとか、
思い込みかもしれませんので、おかしなことがありましたら、
指摘くださるようお願いします。

なるべく資料を基に客観的に書かせていただこうと思っています。

ギターの歴史について、古い時代から書いていくと、
それこそ何冊かの本になってしまうでしょうし、何年かかるかもしれません。
私は学者でもありませんので、そんなことは出来ません。
どのようなことを書いても違う考えの方もあるでしょうし。
また、時間をかけて調べてもこのブログの主旨から外れそうです。

そこで、ここではギターの形が現れた、ルネサンス、バロック期そして、
19世紀ギターのことを書かせていただきます。


ルネサンス時代のギターは、どんな楽器でどんな国で使われたのでしょうか


よく知られていることは、ルネサンスギターは今、
ハワイでよく使われているウクレレの先祖だと言うことです。
かなり以前、学者さんが時代も地域も違う、
ウクレレとルネサンスギターが同じ調弦なのは不思議だ。
と言っているのを聞きました。

弦の数も、4本(ルネサンスギターは復元なので4コースですが)で、調弦も同じです。
でも、ウクレレは、ルネサンス時代にヨーロッパのルネサンスギターが
東南アジアを伝ってハワイに伝わったものと考えられています。
ですから、ルネサンスギターは今のウクレレのように、
主にストロークで和音をかき鳴らす奏法の楽器でした。

イギリスではシターンがその役目もしたようですが、
リュートが王侯貴族、上流階級の楽器だったのに対して、
庶民の楽器がギターだったようです。

間違ったことが言われているのが、ギターの前身楽器がリュートだったということです。
リュートもギターもルネサンス時代から共存していました。
そしてそれは、住み分けがありました。
庶民の楽器と言うだけあって、今のフォークギターのように、
散髪屋さんで待っている間、ギターを弾きながら待っていたと言う話もあります。

では、この頃のギターはどんな国で使われていて、どんな作曲家がいたのでしょう?
モダンギターでも弾かれるご存知の作曲家では、残念ながらほとんど、
ギターのための 曲は残っていません。
例外的に アドリアン・ル・ロワそして、ギョーム・モルラーユくらいでしょうか。
この二人とも、フランスの作曲家ですがフランスでは1550年以降ギターがもてはやされ、
出版もかなりされたようです。

ですから、16世紀はフランスがギターの国だったと言えます。

そして、ギターについては、ロンサールの詩にも、
マ・ギタール(わがギター)として登場します。

フランス以外の国では、その代わりに、リュートがそして、
スペインではヴィウエラが多声楽器として用いられていました。

ヴィウエラをこの頃のギターとしてしまうと奏法でも音楽的にもかなり違いもあるので、
また、弦の数も6コースで12弦ですので、形の違ったリュートとするほうが自然です。

リュートもこの頃は6コースの楽器が多く使われていました。
ドイツのハンス・ノイジードラーのリュート教則本はドイツタブラチュアで書かれています。
このタブラチュアを見ると、5コースまで、それぞれの音に一つずつ
記号が与えられていますが、6コースは後から付け加えたので、
記号に下線を付けて、表しています。

リュートの作曲家では、

ハンス・ノイジードラー(ドイツ)1508~1563
ヴィセンシオ・ガリレイ(イタリア)1520~1591
F・カローゾ(イタリア)1527~1605
ジョン・ダウランド(イギリス)1563~1626
フランシス・カッティング(イギリス)?~?

そして、スペインのヴィウエリスタ

ルイス・ミラン(1500?~1586)
L・de・ナルバエス1510?~?)
A・ムダラ(1510?~1580)
あと、生没年が分かっていないのですが、出版年を書くと
エンリケ・デ・バルデラバーノ(1547)、ミゲル・デ・フェンリャーナ(1554)、
デイエゴ・ピサドール(1552)、エステバ・ダサ(1576)などがいます。


次にバロック時代はどうだったのでしょうか

ギターは4コースから5コースになりました。
でも、ここで1コース増えますが、リュートのように低音弦が単純に
増えたわけではなさそうです。

バロックギターの作曲家としてよく知られている、
フランスのコルベッタ、ド・ヴィゼーなどは、5コースがオクターブ上に、
つまり最低音は4コースのレ です。

スペインのサンスなどは、4コースもオクターブ上がって、3コース
3弦のソが最低音だったようです。

ですから、バロックギターの曲をモダンギターで弾くときに、
6コース、6弦まで使っている楽譜は、本来の音でないのです。
でも、それでは、モダンギターとして音楽が作りにくいので、
本来はオクターブ上がった音をオクターブ下げているのだと、
思っていただいていれば良いように思います。


そして、この頃の作曲家はどうだったのでしょう?

フランス

ロベール・ド・ヴィゼー(1650~1725)
太陽王ルイ14世お気に入りの作曲家

イタリア

F・コルベッタ(1620?~1681)
R・ロンカリ(?~?)

チェコ

J・A・ロジー(1650~1721)

スペイン

G・サンス(1640~1710)
サンティアゴ・デ・ムルシア(1714 出版)

ルネサンスと違って、ラスゲアード奏法だけでなく、リュート的な爪弾き奏法も
取り入れられ、5コースギター特有の音楽が生まれました。

博物館などで見られる美しい楽器に、ギターラバッテンテと呼ばれる、裏板が
膨らんだギターがありますが、バッテンテは打ち叩くの意味があるので、
ラスゲアードが多用されていたことを示していると思います。

古典時代

ギターはいよいよ6弦(6コース)の時代に入ります。
調弦も今のモダンギターのように、6弦が一番低い調弦が一般的になりました。

この古典時代も、ギターが盛んに使われたのは、特に1760年以降のパリでした。

研究した結果ではないのですが、有名なフェルナンド・ソルのグラン・ソロは
6複弦のギターのための曲だったという事を聞いたことがあります。

運動性や、時代の好みからいよいよギターも現代のギターに近い、
6単弦のギターが登場します。
これも、1780年前後からフランス、イタリアあたりで始まったと言う説もあります。

でも、1799年に出版された、イタリア人の(スペインで活躍)
フェデリコ・モレッティは単弦ギターの教則本で6単弦の優位性を説いています。

ただ、同じ1799年に出版されたフェルディナンド・フェランディエレは
複弦ギターの教則本ならびに曲集です。

19世紀初頭には、スペイン、イタリア、フランス、オーストリアなど
でギターは単弦という形が定着したようです。

ということで、この頃活躍した作曲家は

イタリア

フェルディナンド・カルリ(1770~1841)
フランチェスコ・モリーノ(1775?~1848)
フイリッポ・グラニアーニ(1767~1812)
そして
マウロ・ジュリアーニ(1781~1829)
マテオ・カルカッシ (1792~1853)
ルイジ・レニアーニ(1790~1877)

とそうそうたる顔ぶれです。

スペイン

フェルナンド・ソル(1778~1839)
ソルはスペイン、バルセロナ生まれだが1813年以降はパリで活躍し、
パリで亡くなっている。
ディオニシオ・アグアド(1784~1849)

オーストリア

ジモン・モリトール(1766~1848)
アントン・デアベリ(1781~1858)
レオナール・ド・カル(1768~1815)

その他の作曲家
ギターだけの作曲家ではありませんが、ギターを含む室内楽曲を書いた
ルイジ・ボッケリーニ(1743~1805)イタリア
ニコロ・パガニーニ(1782~1840)イタリア
もギター音楽以外でも有名な作曲家ですが、スペインの作曲家ではありません。

ベルリオーズ(1803~1869)フランス もギターを弾いている肖像画があるように、
ギターも演奏したようです。
そして、パガニーニとベルリオーズが表板にサインしたギターも残されています。
このギターはパガニーニが使っていたものをベルリオーズが使った楽器と言われています。

ロマン派時代

この時代も、ナポレオン・コスト(1806~1883)フランス
ヨハン・ガスパル・メルツ(1806~1856)ハンガリー
そして、イタリアのM・A・ツァーニ・デ・フェランディ(1802~1878)
ジュリオ・レゴンディ(1822?~1872)ウイーンで生まれた
レオナルト・シュルツ(1814~1860)などスペイン以外の国で
ギターは用いられていました。

そして、いよいよスペインでのギターの黄金期に繋がる作曲家も出てきます。

ホセ・ブロカ(1805~1882)
アントニオ・カーノ(1811~1897)
フリアン・アルカス(1833~1882)
ホセ・フェレール(1835~1906)

そして、スペインがギターの国と言われる時代を作った、
フランシス・タレガ(1852~1909)が出てきます。
作曲家そして演奏家、またギター以外の曲を素晴らしいギター曲に編曲した功績が、
スペインをギターの国に作り上げたと、私は思っています。

さらに、ギター製作家 アントニオ・トーレスの出現です。
一般的なギターの歴史では、トーレスが楽器を大型化し、
大きな音でホールでの演奏を可能にした、となっていますが、
私の考えでは、(あくまで私の考えです)
ホールでの延達性では、19世紀ギター(パノルモ、ラコートなど)のほうが
はるかに優れています。
特にオリジナルは弾いている本人や、近くで聞いているとほとんど鳴っていないような音ですが、
ホールで聞くと、感覚的には何倍もの、大きい音がします。

ホールで聞くと、チェロかピアノか!と言う音に聞こえたことがあります。
私の耳には5倍くらい大きいと感じることがありました。

客観的な数字ではないのですが、京都バロックザールと言う数百人程度の小さなホールで、
パノルモを使った(パノルモのなかでも特に素晴らしい楽器ですが)
演奏会の2週間ほどあとに、トーレスのオリジナルを2台使った演奏会がありました。
演奏はイタリアの名手です。パノルモは西垣正信さんです。

私は、西垣さんの演奏会は、後ろに近い席で、イタリアの名手の時は、
前列3列目で、中央で聞きました。

同じ楽器(トーレスオリジナル)を、1メーターくらいの距離で
この演奏会の2年ほど前に聞いたことがあります。

その時は、楽器もよく鳴っていて、響きも充分にありました。

ただ、ホールで聞くと、ほとんど聞こえてこないのです。
わずか、4メーターくらいしか離れていないのに。

2週間前の、西垣さんの10分の一も聞こえてきません。
でも、休憩時間に周りの人の反応を聞くと、「さすが、トーレス、ホール中に
響いていたな!」という感想です。

それに、対して私は心の中で、2週間ほど前のパノルモはこの10倍、20倍も鳴っていたのに、と思っていました。

そして、面白い話があります。
両方の演奏会を聞いていた、数少ない友人が「あの楽器の中に、スポンジでも詰めているの?」
と真顔で聞いてきました。
本当にその表現がぴったりの鳴りでした。

同じようなことが、20年以上前にありました。

篠山の小さな、ログのホールでしたが、
10台以上の19世紀ギターのオリジナルを使った演奏会で、
1台だけモダンを使った演奏家がいました。

モダンと言っても年数が経っていて、楽器も鳴っているドイツの、
エ*ドガー・メ*ヒでしたが、ほとんど鳴っていなくて、音が湿っているのです。
この楽器を弾いたギタリストも、結果は分かっていたけど、
その事を実証したかったので使った。と言っていました。

でも、この時も、これほどの差があって、19世紀ギターが何倍も鳴っているのに、
普通のモダンスペインギターを弾いている、ギタリストの耳には
メ*ヒのほうが鳴っているように聞こえる、と言ってました。
先入観は恐ろしいな!と思ったのも、この時でした。

19世紀ギターオリジナルは、経年変化の差があるので、モダンギターのほうに、
ハンディが無ければいけないと考えると、19世紀ギターのコピー楽器
または、19世紀ギターの設計で作られたギターはどうでしょうか?

4年ほど前の話です。

大阪の茨木市でギターフェスティバルがあって、沢山の製作家が展示をして、
展示楽器を使った演奏会がありました。

その時、19世紀ギターを展示して、演奏された製作家は、私と同じ篠山市の
田中清人さんだけでした。

私はなるべく遠くで聞きたいと思ったのですが、
演奏が終わると製作家はステージに上がらないといけないので、
ホールの真ん中の少し後ろで聞きました。

私の耳には、モダンスペインギターの名器より私の楽器のほうがはるかに、
音が聞こえてきました。

客観的な判断として、このホールが、両側側面が真平らで、
これでは定在波が起こりそうと思っていましたが、私のギターの時は、定在波が起こっていました。
それほど、音のエネルギーが届いていたのだと思います。
でも、他のモダンギターの名器でも定在波は起こっていませんでした。

最近、私のギターを見ていただいて、弾いていただいたギタリストの方が、
その演奏会を聞いていらして、
「一番後ろの席まで、19世紀ギターは音が飛んできていました」と話してくださいました。

あくまで、私の感想ですが、ホールでは19世紀ギターのほうがはるかに、
音が大きく客席まで届くと思っています。モダンスペインギターの何倍も
音が通ると思います。音の分離性、立ち上がり何をとっても、19世紀ギターが
優れていると思います。

ただ、演奏している人には自分の音が聞こえにくいのが、
そして低音の響きが少ないというのが、欠点でしょうか。

ここで、トーレスさんが使っていた頃の、ギターを取り巻く環境を考えて見ましょうか。

写真でよく、タレガを取り囲んで、演奏を聴いているサロンのような演奏会を見ます。
タレガの頃に、500人1000人のホールで演奏する機会は少なかった、
いや無かったと思います。

演奏する本人が弾いていて気持ちの良い楽器、小さな空間でよく鳴る楽器を、
トーレスさんは目指していたのでは、ないでしょうか?

確かに、イタリアの名手の演奏を間近で聞くと、素晴らしく良く鳴っています。
そして、本人が言っていたのですが、
「私は自分の演奏に酔わない、客観的に聞きながら演奏している」と、
でも演奏会で聞くと、自己陶酔して聞く人のことなど考えずに、
演奏していると私は感じました。と言うか、そうとしか聞こえませんでした。

最近も、その名手の演奏会がありました。私はもちろん行っていませんでした。

私の楽器を弾いてくださった、前出のギタリストは、一番前で聞いていたそうです。
でも、音がぜんぜん聞こえてこなかったし、音楽も自分が楽しんでいるだけで、
伝わってこなかったと、言われていました。
私もその判断が正しいと思って、聞いていました。

音楽で無く、ギター音楽と言う特殊な音楽だと、私も思っていましたから。
でも、隣で聞いていた人が「素晴らしい楽器で、素晴らしい演奏ですね」
と言ってきたので、「はあ、そうですね」とくらいしか言えなかったようです。

このギタリストの方は、ピアノのコルトーを何万回も聞いているそうです。
そして、同じ演奏会を聞いた友人も、素晴らしい演奏で感激した!と年賀状で伝えてくれました。
普通にギターを好きな方はこの感想なのでしょうか。

ギターの本を見ると、ホールで使えるようにするために、
楽器を大型化したと書かれています。
どの本を見てもそう書かれていると、この考えが刷り込まれてしまうのでしょうか。

演奏家が弾いていて気持ちの良い楽器を作り出した、トーレスさんの考えは
先日,弾かせて頂いた、ハウザー、フレータ、ブーシェさんたちの作った、
名器でも伝わっているようです。
弾いている自分には、ものすごく鳴っていて、よく聞こえるのです。
鳴り過ぎるほど。
でも、演奏会で聞くと、そうでもなくむしろ細い線の楽器に聞こえてきました。私には。

大型化についても、イタリアの楽器でトーレスよりもっと早く、
大型の楽器は作られていました。ただ、モダンスペインギターではありませんでしたが。

トーレスさんは2台と同じ楽器を作っていません。
試行錯誤の連続だったのかと思います。
(でも、私が考えると、前提条件の変わっていないことが、
そんなに沢山の試行錯誤では無かったと思います。)

ですから、彼の作ったギターは全て名器だったと思うのは、不自然だと思うのです。
なかには、すばらしい楽器もあると聞いていますが。

かなり、ギターの歴史から横道に逸れてしまったようですが、この次の時代は、
スペインギターの黄金期になります。

近・現代

タレガの出現以来、スペインではミゲル・リヨベート(1878~1938)
エミリオ・プジョール(1886~  )
ダニエル・フォルテア(1878~1953)
ドミンゴ・プラト(1886~1944)
そして、アンドレス・セゴビアの出現により、ギターの国はスペインとなって行ったと思います。

でも、20世紀にはいるとギターは更にグローバルな楽器となって行くのは、
皆さんご存知のとおりです。

楽器製作でも、スペイン以外の国でもモダンスペインギターではありますが、
沢山作られるようになりました。


最後に

19世紀後半から20世紀前半のスペインでのギターの発展が素晴らしかったので、
ギターはスペインと言うイメージがありますが、
19世紀前半まではむしろ、8スペイン以外の国でよく用いられた、
と言うことを考えていただきたくて、長くなってしまいましたが、
ギターの歴史を少し書かせていただきました。

19世紀ギターの使われていた、1830年くらいまでは、
むしろフランスとかイタリアのほうが、ギターの国だった考えられます。

ギターを作っていた国も、
イギリスのパノルモ、フランスのラコート、イタリアのファブリカトーレ
とこの時代を代表するギターを作っていたのは、スペイン以外だったのです。
スペインにもパヘなど、トーレスに繋がっている製作家はいましたが、楽器が作られて
演奏されていた頻度を考えると、
スペインがギターの国では無かったと思いますが、皆さんはどう考えられますか?

そして、私はルネンサンスギター、バロックギター、19世紀ギターと続いてきた、
ギターの歴史を繋げる、19世紀ギターの延長線上のモダンギターを作って行きたいと考えるのです。
(19世紀半ばに突如出てきた、歴史的にはそれまでの楽器とは関係が無い、
モダンスペインギターではなく。) 

そして、特殊なギター音楽でなく、本来の音楽を表現できる楽器を作って行きたいと考えています。

参考文献

現代ギター社 浜田滋郎・編著 「絵でたどるギター音楽の歩み」

雑誌 現代ギター

その他 
  1. 2013/01/03(木) 12:01:04|
  2. その他
  3. | コメント:10
前のページ 次のページ

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (338)
演奏会 (10)
その他 (21)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR