古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

弦について その2


弦について、前回は弦楽器の弦についてでした。

弦と言えば、もうひとつの弦を沢山使った楽器、鍵盤楽器があります。
特に、ギターと同じように弦をはじく、チェンバロの弦についても書かせていただこうと、
思います。

ギター製作家の方、ヴァイオリン製作家の方には、書けない鍵盤楽器の弦については、
私でないと書けない分野だと思います。 ギターに興味を持たれて、このブログを
読んでいただいている、皆様にもギターの弦、弦楽器の弦にもフィールドバックされると
思いますので、書かせていただきます。

最初に作った楽器は、ギターで18歳の時、約45年前のことです。
次に作ったのは、約40年前23歳の時に、ヴァージナルを作りました。

ルネサンスのアンサンブルをしていて、小さな鍵盤楽器があれば、アンサンブルの幅が
広がると言うことで作りました。フランスのキットを白川総業さんに取り寄せていただきました。

私の作った、ヴァージナルはほとんどヒストリカルでしたが。
その頃のチェンバロというと、Nhkにもドイツのノイペルト社の大きな2段鍵盤のモダンチェンバロ
が入っていて、チェンバリストもほとんどが、モダンチェンバロを弾いていました。
ノイペルト以外にも、アンマーやリンツホルム、シュペアハーケなどのメーカーがありました。
(シュペアハーケはメーカーが私のところの楽器は ヒストリッシェであると言われていましたが)

非常に重い、頑丈なチェンバロです。
バロック時代にチェンバロは廃れたが、ピアノのように現代まで残っていたら、このような楽器に
なっていたであろうと、想像されて作られた楽器だと、その頃は聞いていました。

思い頑丈な楽器なので、弦はもちろんスチール弦で、テンションもきつく、低音弦は巻き線や
硬く丈夫なりん青銅が使われていました。

その後、徐々にヒストリカルの楽器が輸入され、国内でも 堀さん達がヒストリカルの楽器を
作るようになりました。

とりあえず、キットでチェンバロを作る人も多く、
アメリカのハーバード社のキットはよく作られました。
特に、タスカンモデルのフレンチの楽器が多く作られたように思います。

弦は スチール弦に 低音弦は ブラス(イエローブラスですが スプリングブラス
とコイルに書かれていて、とても硬いブラス弦でした)

国内でヒストリカルのチェンバロを作られていた、堀さんはスチール弦とりん青銅でした。

楽器全体のバランス、音のバランスは スチールとスプリングブラス、りん青銅は
硬さも同じくらいで、取れていました。
でも硬い音で倍音が多く、シャラン シャラン した音でした。


その後20年から25年前からくらいでしょうか、本格的にスチールの替わりに
アイアンが使われ始め、柔らかいイエローブラスや比重が重くて柔らかいレッドブラスが
使われ始めました。

切れやすく、メッキもしていないので錆びやすく、値段も高いのですが、音に密度があり
倍音も少なく、柔らかい音なので、使う製作家が増えました。

楽器の構造がヒストリカルなのに、当時使っていなかったスチール弦を張るより、
当時の弦である、アイアンの弦のほうが、当時の音楽には合っているのです。

(そうなると、一番音に影響の大きい爪もカラスの爪を使わないといけない
と言われそうですが、現代の精緻な演奏にはデルリンの爪でも良いかな?
と思っています)

と言うことで、弦にアイアンの弦を使うことによって、チェンバロは変わりました。

やはり、アイアン弦はしなやかで、振動しやすく 基音がしっかり出るのです。
弦も柔らかいので、音も柔らかいですし。

特に、小さいポータブルスピネットは低音の弦長が短く、硬いスプリングブラスを
張ると、全然鳴らないのです。
ちょうど、この春作った ヴィオロン・チェロ・ダ・スパラにモダンも分数弦を
張ったように、硬い弦では、短い弦長の低音弦は全然鳴りません。

長い弦長の チェンバロだと、硬い ブラスでもりん青銅でも鳴るのですが、
短い弦長の楽器だと、弦のその硬さで振動してくれないのです。

これが弦でなくて、木で作られた棒だとどうでしょう。
直径 1センチくらいの丸棒は1メーターくらいの長さでは、簡単に曲がりませんし、
しなりません。
でも、2メーターくらいになると簡単に曲がりますし、しなります。
同じことが弦でも言えると思います。

ポータブルスピネットは弦長 ギターの最低音の6弦 ミ と同じ音では
約 85センチです。ギターでは ほぼ65センチ。
しなやかな弦でないと、本来の音は出ないように思います。

実際、ギターにシルク芯の低音弦を張ったときに実感しました。

同じ実感が、チェンバロでも特に小型のスピネットでありました。

弦はしなやかでないと、楽器本来の音を出してくれないと、つくづく思いました。










  1. 2012/10/10(水) 00:17:08|
  2. ギター
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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