古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

構造、設計   ⑪ パフリング、バインディング

長い間、ブログの更新が出来ていませんでした。

新しい記事が出ているかと、見てくださっている方には
申し訳ありませんでした。
例年、8月は忙しいのですが、今年は特に仕事と雑用で忙しくしていました。

6月以降、新しい楽器が出来たりして、このブログの本来の記事が
少なくなっていましたので、6月5日の 構造、設計 ⑩ に続いての記事です。


 パフリング、バインディングはモダンスペインギターらしさが強調される部材です。
ヴァイオリン属、ガンバ属ではシンプルなパフリングが、
特に表板の割れ防止の役目も兼ねながら、装飾として付けられています。

モダンスペインギターではこの、パフリングとバインディングが表板と、
裏板両方に付いています分かりにくい部材なので、下図のようなものを用意しました。


              img727.jpg

          出展はいつもの Master Making Guitars です。

このパフリングとバインディングは必要なものなのでしょうか?

表板側のパフリングは柔らかい、松の表板の縁を保護する役目はあると思います。
また、装飾的にも、あってもよいかな?と思います。
でも、硬い材料を使っている裏板には必要が無いと考えています。私は。

私の好きな、19世紀ギターのパノルモにも裏板にパフリング、バインディングが
付いていない楽器が沢山あります。私には、このパフリング、バインディングが付いていない、
パノルモのギターは楽器らしくて、美しいと感じます。これは好みの問題だとは思いますが。


私のギターのパフリングは下図のようなものです。


     img726.jpg

これは、リュートでよく使っている方法です。

リュートでは他の方法もあります。
それは、幅8ミリほどの羊皮紙で表板と横板を接着しながら、装飾としている方法です。
これは、ルネサンス時代は散髪に行くように表板を替えていたという話があるくらい、
よく表板を替えていたようです。その際、表板を膠で接着せず、
この羊皮紙だけで留めていると、羊皮紙を外せば表板の交換が出来るのです。

ルネサンスリュートは表板が薄かったと言うこともあるのでしょうが、
羊皮紙だけで充分接着は出来ていたようです。
また、このほうが表板の端を固めなくて音の面でも良かったのでしょう。

同じリュートでも、バロックリュートは表板も厚く、弦の数も多いので、
膠で接着はしていたようです。

また、バロック時代にはルネサンスの頃に作られたリュートが経年変化で
音が良くなっていることが分かったのでしょう、表板を取り替えるどころか、
かなり無理をしてチェンバロのラバルマンのように
(フレミッシュの楽器を音域を広げて、フレンチの楽器に改造することが良くありました。
この事を、ラバルマンと呼んでいます)
ルネサンスの楽器をバロックの楽器に改造することもありました。

でも、モダンギターにはこのパフリングが必要な時があります。
それは、ライニングとの関係で出てくるのです。
まず一般的なライニングを製作過程で示してみます。

  img723.jpg


ギター作る製作家の考えによりますが、表板の端を少しでもフリーな状態に近づけたいと考えると、
下図のように(このあとは上図の③ ④ に続きます)完全に表板も切り欠いて、
ライニングだけで表板を受け止めると、
少しは表板の端がフリーな状態に近づきます。

でも、パフリング材がきっちりと付けられますので、フリーな状態は少しだけ犠牲になります。
また、バインディング材でパフリングを固めています。
楽器製作の考えで、表板の端をフリーな状態にする必要を感じていない製作家は、
下図の様に表板を完全に切り欠かなくて、パフリング、バインディングでさらに固めることになります。
パフリングの大きさも問題ですが。

        img724.jpg


そして、このパフリング、バインディングは楽器の修理の際には、とても邪魔なものです。
私の構造のような楽器でも、(ガンバも同じようなものです)
修理で表板を外す時は、結構大変です。
それが、モダンスペインギターのように、パフリング、バインディングが付いていると、
一旦バインディングを削り取ったり、熱等を加えて外してから、楽器によっては、パフリングも外して、表板を外さないといけません。
さらに、大きなライニングで広い面積が接着されていますから外すのは大変です。
ですから、モダンスペインギターでは、裏板を外して修理することが多いようです。
この裏板にも、何も必要の無いパフリング、バインディングが付いていると、外すのが大変です。
裏板にパフリング、バインディングが付いていないと、少しは裏板を外すのが楽になります、
と言うことは、楽器に与えるダメージが小さいと言うことにも繋がります。
そして、100年200年使えるギターにも繋がる要素だと思います。

ここで、また、ギターから離れて、ヴァイオリンの話になります。

ヴァイオリンはパフリングと言っても、溝が掘られたところに、
黒白のパフリングが埋められているだけなので、表板、裏板をはずのは比較的簡単です。
そして、表板、裏板とも横板からはみ出ているので、一度表板を外して、もう一度付け直しても、
少しくらいずれても、気になりません。

ギターとかガンバは、表板、裏板を外すと、どうしても、横板が変形します。そして修理が終わり、
表板なり、裏板を接着するとどうしても、横板と裏板、表板とがずれてしまうのです。
これが、ヴァイオリンだとそんなに苦労しなくてもよいのです。

修理の事も考えられて、ヴァイオリンは作られているのだと思います。

こんなことを考えても、モダンスペインギターのようなパフリング、バインディングは必要でしょうか?
私のようなやり方だと、横から見ると表板の厚みが(エッジの部分ですが)分かってしまいます。
なるべく、表板の厚みなど分からないように
したい製作家には都合の悪い方法かもしれません。

次にバインディングと言うことで、モダンスペインギターには良く使われている、
裏板のセンターバインディングです。

これは、一般的に行われている方法では、ただ装飾のためだけであって、楽器的には、構造、音響の面では何も役にはたっていないと思います。下図の ① の方法です。

     img725.jpg

むしろ、裏板の接着回数、接着面積が増えるだけで、構造的には不利になります。
どうしても、装飾として付けてほしいと言うことでしたら、上図の ② のような方法があります。

これだと、裏板の接着の補強にもなりますし、構造的にも余分なものを付けなくても、
強度も確保されます。(楽器内側からの補強材も必要が無くなります)

これなども、一般的に行われている、方法を考え直してみると、思いつくことです。

でも、私はこの方法でも、センターバインディングは付けたくありません。
  1. 2012/09/07(金) 13:06:28|
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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