古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

この時期の楽器製作について

この梅雨や夏の時期、楽器製作はどうされていますか?
とメールをいただいたので、ブログに書かせていただきます、
ということでここで書かせていただきます。

私は年中、休みなしで楽器を作っています。
盆も正月も無く、年中です。
少し話がそれますが、一昨年の大晦日は、40.8度の熱が出ていましたが、仕事をしていて
大晦日だし、40度を越えている熱が出ているから、早めに寝よ、
ということで、12時くらいに寝ました。(ちょうど除夜の鐘のなっている頃です)
そして、元旦の朝、熱を測ると、38.7度まで下がっていたので、また仕事をやっていました。
年中こんな感じです。

ちょうど今作っていいるギターは、梅雨の間に作ったギターです。
昨年も同じ時期に、チェンバロを作っていました。
でも湿度のどうしても高い時は、削る作業などをやっています。

昨年は エアコンが無い部屋だったので、除湿機を3台動かして、湿度が低い必要のある
作業はしていました。削ったりする、湿度に関係の無い作業のときでも、1台は除湿機は
動かしていました。でも、エアコンが無いので、昼間は大体30度は超えていました。
(そんななか、事情があって、10日ほど睡眠時間、2,3時間で突貫工事をやりましたが)

響板を張るとか、バスバーを付ける作業は、雨降りの日はやらずに、天気が良い日に
除湿機をかけて、ほぼ50%くらいの湿度で作業をしています。

ギターの部屋は窓用の小さなエアコンがありますので、このエアコンの除湿と除湿機で
梅雨時期でも、55%くらいで作業をしていました。

それと、製作中の部材、特に、響板などは天井近くに、受けを作って置いていました。
場所もとりませんし、天井近くだと、作業している場所より、3%ほど湿度は低いですし。

それと、私の作業場は湿度計が3箇所あります。
壁と、作業している所、天井近くと、です。

湿度計は、デジタルに限ります。
アナログの湿度計は、説明書に誤差 プラスマイナス20%というのは良いほうで、
うっかりすると30%というものもあります。

デジタルだと、プラスマイナス5%くらいです。
ホームセンターでも、家電量販店でも1000円から3000円くらいで売っていますので、
ぜひ、デジタル湿度計を使ってください。

それと、乾燥させて楽器を作る事も、注意しなくてはいけません。
かなり以前に作ったチェンバロは大阪郊外のかなり高台にあるマンションだったので、
湿度は低いと思って、湿度を下げて楽器を作りましたが、LDKということで、キッチンからの
湿気で、響板が盛り上がってきました。音も良くありませんので、修理させていただきました。

ギターで表板をドーム状にするのに、否定的なのは湿気で膨らんだチェンバロの表板を
よく見てきたからなのでしょうか?

楽器にとってベストと言われるのが、温度20度、湿度60%と言われます。
逆に湿度が50%を切ると、楽器が怖い。40%を切ると充分注意しないといけない
と言われます。

湿度が低いと、響板などが割れる心配がありますが、チェンバロなどは2,3箇所の
響板の割れなどは音にほとんど影響がありませんので。
むしろ、湿度が高くて、響板が膨らんだりするほうが、音には良くないと思っています。

ですから、湿度をあまり下げて楽器を作るより、程々が良いかな?と思っています。

よく、質問されるのですが、「楽器作りは乾燥したところが良いのでしょう?」
と。そして、私の住んでいる、篠山は盆地でよく霧の出るので有名です。
篠山で楽器を作って大丈夫ですか?とも聞かれます。

でも、今までヨーロッパで楽器がよく作られてきたところは、ロンドン(霧の都)
ベニス(水の都)ドイツのミッテンバルトも3000m近い山が迫っていて、
よく雨の降るところです。私が30年以上前に初めてミッテンバルトに行ったのは、
秋で気候のよい時期だったのですが、「こんなよい天気はめったに無い、
今日は仕事はせず、山に登ろう」とロープーウエイで山頂まで連れて行かれた事があります。
めったによい天気は無いのだそうです。
クレモナも私は行った事がないのですが、友人たちが行った時は、
よく霧が出ていたそうです。11月の平均降水量は90ミリほどです。

ということで、そんなに乾燥したところでは作っていません。
そして、ヨーロッパで楽器を作っている人は、北側のうっかりすると
半地下のような工房で、仕事をしている人がいます。

これは、南向きのよく日が当たる所では、薄い板などすぐに反ってしまいますし、
製作中の楽器も、変形しやすいのです。

ヨーロッパではあまり乾燥したところでない所で作って、乾燥したところで
使っているから、楽器が鳴ってくる。
日本では湿気た所で作って、湿気た所で弾いているから楽器が鳴らない、
と言われています。

でも、マンションなどでは日本でも年中乾燥したところでも楽器は弾いている人も
いますし、昔とは変ってきていると思います。

夏でも、冬でも、夏は湿度計を睨みながら、冬は温度計を見ながら年中、その気温
湿度にあった作業をしています。

ということで、いかがでしょうか?

もっとも、夏は暑くて能率が悪いから、夏は仕事はしない、と言う製作家もいますが。


  1. 2012/07/22(日) 02:56:48|
  2. ギター
  3. | コメント:2
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コメント

なーるほど!

ひとつひとつ腑に落ちました。

昨年春に作ったヴァージナルは思い切って湿度を30%台まで下げてサウンドボード組み込みました。それが、この梅雨では湿度80%近辺でサウンドボードが波打って数本の弦が当たってしまいました。

使用想定する木材平衡含水率のちょうど中間くらいになるような温湿度がいいのかな、と考え直しております。南九州ですと30℃で55%くらいに相当。
平山さんの作業環境とほぼ一致! 

ありがとうございました。
  1. URL |
  2. 2012/07/22(日) 08:13:32 |
  3. TANUKI #-
  4. [ 編集 ]

コメントありがとうございます

コメントありがとうございます。

楽器を作るときの湿度は、いろんな考えがあると思います。
大きなメーカーでは、一年中同じ湿度、温度で作っているようです。
そのほうが、安定した、故障の少ない楽器は出来ると思います。
楽器を作るまでも、人工乾燥などで、材料の含水率を一定にしたり、
さまざまな工夫がされていると思います。

でも、実際に木を触って、楽器を作っていると、その個体差の違いに
びっくりする事があります。

何も、宮大工の棟梁の話を持ち出さなくても、木の育った環境や、
夏目、冬目の大きさ、幅、堅さ、そして比重、強度(曲げ、圧縮、せん断など)
ヤング率など、同じ木は絶対にありません。

製作の試みで、同じ木から製材した材料を使う事もありますが、
ほんの数ミリ、製材の際の鋸の刃の厚み分が違っただけでも、
完全な柾目かすこしおい柾になっているだけでも、
材料としては大きく違ってきます。

一つ一つ違う材料で、手作りで楽器を作っていく場合は、
これらの違いに対処できます。

温度湿度の問題も同じように考えます。

チェンバロでは、響板のバスバーを張るとき、
湿度を上げて張って、響板自身を本体に接着する時は
湿度を下げる製作家もいます。

今まで何度か経験しているのですが、
響板が割れてから(と言っても大きな割れでなく、ひびが少し入るくらいですが)
音が良くなったと言う事がありました。

割れるまで、木の内部にストレスや、内部応力、歪があって、
振動のエネルギーが、音になりにくかったのが、割れる事によって、
音になりやすくなった、音が出やすくなったのでしょう。

大切な楽器の表板が割れると、「こりゃ、大変だ!」となりますが、
「そんなにたいしたことはありませんよ」と言って修理しています。

ただ、有名なチェンバロ奏者、指揮者のオランダ製のチェンバロは
10数箇所表板が割れていました。
こうなると音にも影響します。
修理すると音はよくなりましたが。
  1. URL |
  2. 2012/07/22(日) 12:13:56 |
  3. kogakki #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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