古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

燻煙と日光によって処理された材料でのギター作り 2


2台のギター作り進んでいます。

今までになかった感触や、感覚で作業しています。
それは、燻煙熱処理された材料が、今までに扱ったことのない性質の材料だからです。

横板については、前回書かせていただいたように、燻煙熱処理されたほうを、
0.1ミリほど薄くしました。
裏板についても、燻煙熱処理された裏板は 1.9ミリから1.85ミリ
日干ししたほうは、2.0ミリから1.9ミリにしています。

ロマニさんの本では、トーレスさんは2.0ミリから2.5ミリの厚さ(ローズウッドの場合)
でも、同じトーレスさんの本で、ミュノスさんという人は 1.5ミリ、そしてジャネルさんは
3.7ミリから3.9ミリと言っているがそれは確実に誤りであると、ロマニさんは書いています。
2.0ミリから2.5ミリと言うのが私も正しいと思います。

現代の製作家はどの程度の厚みでしょう?
これも、Making Master Guitars から引用させていただくと、
フレータさん 2.1から2.3ミリ
ブーシェさん 2.1ミリ
ロマニさんは 2.0ミリから2.3ミリ

ハウザーさんは セゴビアさんが使っていた1937年の楽器の図面では
2.3ミリから3.0ミリ 平均的には 2.3ミリから3.7ミリです。

これらの楽器に比べて、かなり薄い裏板です。
前回作った ギターに比べても、0.2ミリから0.5ミリほど薄くなっています。

燻煙熱処理された裏板を実際に削っていって、タッピングすると
1.9ミリくらいにしたほうが良く鳴るのです。
今までのギター製作の常識にとらわれないで、作ろうとしていますので、
楽器が全体鳴るようにするには、これくらいで良いと判断しました。
ちなみに、リュートは楓で1.5ミリくらいです。

そして、燻煙熱処理されたほうはタッピングすると、木ではなく金属それも鉄でなくて、
ジュラルミンやアルミの板を叩いた感じの音がします。非常に高音で、乾いた、良く通る音です。

この燻煙熱処理された裏板が1.9ミリくらいなので、燻煙熱処理されていないほうの、
裏板は 2.0ミリ程度にしました。
こちらも、よく鳴っています。
音は低く、「ドンドン」と言う音ですが。

表板の、燻煙熱処理の影響もとても大きいと思いますが、横板、裏板のローズウッドが
かなり良い方向に変化しているので、とても楽しみです。

と言う事で、肝心の表板です。

サウンドホールから上の部分はそう違わないので、まず サウンドホールから上の部分の
厚みです。楽器を作り始めた頃は、このようにメッシュを書いて、データを取っていました。
もう何十年とやっていなかったのですが、このブログのために測ってみました。

        UNI_0998.jpg

     燻煙熱処理された表板のほうです。

次に 燻煙熱処理された表板のサウンドホールから下の部分です。

       UNI_1003.jpg

       UNI_1004.jpg

  少し見づらいのですが、日干しされたほうの表板です。

       UNI_1001.jpg

       UNI_1002.jpg


 ほぼ同じ厚みです。低音側のエッジが 燻煙熱処理されたほうが薄くしているくらいです。
ブリッジ周りで、2.3ミリくらい、エッジで1.5ミリから1.8ミリです。

今回は、材料の違いをキャラクターの違う楽器にしようとしました。

大量生産されているメーカーとか、手工ギターの製作家だと 
同じ50万円の楽器を作るなら同じ音にしないといけないのでしょうが、
私はむしろ、材料の違いを生かして、その材料が最もよく鳴るように、
その材料を最も生かせるように作りたいと思っています。

燻煙熱処理されたほうは、しっかりとした音に、日干しのほうは
軽く立ち上がりの良い楽器にしようと思います。(その差は少しですが)

そして、何十年と楽器を作ってきて今日始めて気がついたことがあります。
それは、裏板のアンダーバーの形状です。

一般的には Making Master Guitars 257pからですが

   img701.jpg

 のように、フラットのままか、スカロップといわれているような 端を削る形です。
スカロップが圧倒的に多いです。

前回までは、今まで見たギターは全てスカロップでしたし、これで良いと思っていました。

でも、今回は裏板もさらに鳴らしたいと考えました。
アンダーバーは、裏板のカーブを付けるためと、強度アップのためにつけます。
その目的のためには、今までの形で、不必要な部分はないかと考えてみました。
そうすると、下の写真のような形が無駄がなく、強度も出ると考え付きました。

       UNI_1005.jpg

実際にバスバーを削って行って、タッピングでチェックすると、音がどんどん良くなってくるのです。
どちらの板でも。
そして、燻煙熱処理されたほうは板のどこを持って叩いてもよく鳴るのです。
この形に削るまでよりはるかに。

ほんの少しの質量でしょうが、余分なものをとると裏板は鳴ってきました。

同じように考えて、表板のハーモニックバー(サウンドホールの上下のバスバーです)
もこのような形にしました。

    UNI_1006.jpg


この形がベストかどうか分かりませんが、少なくともベターにはなったようです。













  1. 2012/07/03(火) 22:24:16|
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kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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