古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

ギター材料を燻煙熱処理していただきました

5月23日の 「野村隆哉先生と燻煙熱処理」のブログに書かせていただいた、
ギター材料の燻煙熱処理が終わりました。

野村先生から、「燻煙熱処理が終わったよ」と電話を頂き、すぐに材料を取りに行きました。

野村先生のところでも、タッピングと言って、材料をたたいて、音の響きを聞きました。
そして、燻煙熱処理していない材料も持って行きましたので、その違いなども
音を聞いていただいて、少し説明させていただきました。

燻煙熱処理後の状態です。(写真が何度撮ってもピントが合わないのです、
                       ピンボケですみません)

        UNI_0977.jpg
 
   

次に、留めていた針金とか、ベルトをはずして材料の写真です。
これも、同じようにピンボケですみません。

         UNI_0978.jpg


では、燻煙熱処理してもらって、材料がどのように変わったでしょうか?

燻煙熱処理すると、まず、比重が小さくなる、強度が上がる、燻煙熱処理後の変形が無い、
と言うことを聞いています。そして、これらの条件は表板にぴったり合う条件です。
そして、ネック材にもとても良い条件です。

ただ、ギターでよく使われる、裏板、横板用のローズウッドなどは、軽くなると言うのは
一般的な、モダンスペインギターには、良くないように思っていました。
ギター用材で、裏板、横板にはもっと比重の大きい、ハカランダ(ジャカランダ)などが
用いられるので、ハカランダに比べて、比重の小さいローズウッドがさらに軽くなると、
モダンスペインギターの音を作るのに、合っていないのではないかと思っていたのです。

でも、私はギターを、楓で作ることもありますし、モダンスペインギターとは違うギターの
音を作っていますので、ローズウッドが軽くなっても、音の輪郭とか、立ち上がりなどは
良くなるのではないかと思っていました。また、そのほうが私の作るギターには有利に働く
と考えていました。

実際に燻煙熱処理してもらう前の材料の重さと、燻煙熱処理後の重さを比べてみましょう。

表板は 40年ほど乾燥させている、ドイツの佐藤一夫さんから分けてもらったものですが、
一番軽くなったもので、215gが211gに、4g減っていますので、2.4%の減。
少ないものは、202gが201g、203gが202gと1g減っていますので、0.5%
の減です。

横板のローズウッドは 大きい変化のものは、437gから431gに、6g減っていますから
1.4%。小さいものは、390gが388gなので、2gの減で0.5%です。
裏板のローズウッドは 大きい変化のもので、465gが453gで12gの減、2.6%です。
同じように、小さいものは510gが505gで5g減、1%です。

ネック材は、大きいもので 647gが630gに17gの減で、2.6%
小さいもので、740gが736gに4gの減で、0.5%です。

材料によって、軽くなった%は違いますが、少ないものは約0.5%軽くなっています。
変化の大きいもので2.4%から2.6%です。
そんなに大きな数字ではないように思えます。

私が3年ほど前から、日に干している表板は、同じ佐藤さんから譲ってもらった、表板で
大きい変化のものは、20g、小さいものでも5gは軽くなっています。

野村先生は含水率は問題ではないとおっしゃっていましたが、私もそう思います。

この、3年、日に干して、軽くなった材料と、干していない材料(もちろん同じ佐藤さんから
譲ってもらったものです)そして、 燻煙熱処理していただいた材料を比べました。

もちろん、日に干してない材料がタッピングすると音も暗く、響きも悪く聞こえます。

日に干している材料と比べると、燻煙熱処理された材料のほうが、明るく、カンカンと鳴ります。
良い材料の音です。軽くて、強度があって、充分に乾燥された音です。

そして、もっとも大切なことが下図の A の所を持って、タッピングしても良く鳴るのです。
音は、冬目、年輪方向に走りますので、A の部分を持つと、振動が抑えられるので、普通は
鳴らないのです。

         
img684.jpg


B の所を持つと、振動を妨げられないので、一番よく鳴ります。

そして、C の場所を持っても、音が広がるのを邪魔しないので、表板は良く鳴ります。

良い材料で、完全に柾目に製材すると、年輪と直角方向に「斑」が出ますが、この斑がはっきり出て、
軽くて、良い材料だと、 A を持っても、鳴ることがあります。

ところが、 燻煙熱処理された材料だと、A の部分を持っても、C の部分を持っても同じように
鳴るのです。今まで、このような木は見たことがありません。

と言うことは、音が年輪方向だけでなく、直角方向にも広がっているということです。
板が、均質化されているのでしょう。

これが、実際の楽器に使うと、どのような結果になるか、楽しみです。

そして、木は南向きの斜面で生えている木は、使わないほうが良い、日が当たらない北斜面で、
長い年月をかけて大きくなった木が良いとされています。

それは、日が当たる場所では、どうしても木が日に当たろうとして、曲がるからです。
曲がると言うことは、ねじれて内部に歪が生じます。内部ストレスがあるのです。

今回、私は3年、日に干した材料と、燻煙熱処理された材料で、同じ設計で、2台ギターを作ります。
もちろん、木目や比重もほぼ同じ材料を使います。

裏板、横板の材料も大きめの材料から、切り出して設計の大きさにするのですが、今までは、
鋸で切っていくと、内部ストレスによって、鋸の刃が挟まれて、動きにくかったり、逆に切っていくと、
切っている所が広がったりすることが多かったのです。
今回も、40年近く寝かして、3年、日に干していたのですが、やはり内部ストレスによって、
鋸の刃が挟まれました。

でも、燻煙熱処理されたほうは、それが無く、スムーズに切ることが出来ました。
燻煙熱処理することによって、内部ストレスが無くなり、処理後の材の安定や、割れ歪が
無いと言う事は聞いていましたので、それを実感できました。

そして、強度が上がると聞いていますが、サンプルをとって実験はしていませんが、
スティフネスというあまりなじみの無い事で、強度が上がっているのを実感しました。
スティフネスというのは、剛性とか堅さとか言われますが、楽器の場合、材料や、
作りかけの表板や裏板を、両手で持って、ねじってこの剛性を見ます。

燻煙熱処理された、表板、裏板はとても剛性がスティフネスが上がっているのです。
実際に楽器にする場合は、このことも考慮に入れないといけません。

タッピングの話に戻りますが、材料を同じ条件にしようと、薄くしていくと、
A の部分を持っても、少しづつ鳴ってきます。
やはり、エッジは薄いほうが良いようです。

後、1ヶ月で2台ギターが出来上がる予定です。

日に干した材料のほうは、4月に作りましたので、予想は出来ますが、
燻煙熱処理された材料で作るのは、初めてです。
どんな音がしてくれるのか、今から楽しみです。





  1. 2012/06/20(水) 03:13:50|
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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