古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

経年変化での板厚の痩せかた

6月8日の ブログ 読み物 神様はつらいよ ② にコメントいただいたので、
楽器のコピーについては、コメントさせていただきましたが、経年変化の肉痩せについては
コメントさせていただいていませんでした。

私だけでは、このことについて考えてみることがなかったので、ブログで
コメントをいただいて、考えさせていただきました。
そして、コメントでなく新しくブログを書かせていただくことにしました。

100年、200年、300年と経った、楽器をコピーする時は、当然、経年変化で
肉厚は痩せていると思います。
では、どの程度痩せているのでしょうか?
あまり大きな数字ではないと思って、考えたこともなかったのですが。

手元の、木材工学辞典 で調べると、ドイツトウヒの(ヴァイオリンやギターの表板の
材料です)平均収縮率は 接線方向 0.32% 半径方向 0.16% とあります。

平均収縮率は この本では、含水率の減少と体積収縮率が比例関係にある範囲において、
含水率1%あたりの収縮率を言うそうです。でもこれでは、何のことか分かりにくいのですが、
とりあえず、伐採したての生木でもなく、また何百年も経って、含水率が一桁になっている
状態でなければ、含水率が1%変化したときの収縮率と考えてよさそうです。
切ったばかりの生木を寝かせて、空気中の水蒸気圧と含有水分が吸湿、乾燥を繰り返して
同じになることを、平衝含水率というそうです。この数字が、一般的な材木で10%から
15%と言われていますので、楽器に使う材料はこの程度で、作られていると思います。

そうすると、何百年も経った、楽器の木材では、含水率は何%くらいになっているのでしょうか?
これもあまりデータはないのですが、燻煙を実際にやっている、松下さんのデータでは、
何年も寝かせても、平衝含水率程度の、16%くらいだったのが、燻煙すると、6%くらいになると
言われていました。何百年も経った、経年変化と同じくらいの音の変化があるとおっしゃっていますので、
10%程度は、含水率が下がると考えてもよいでしょうか?

でもここでは、何%下がるかは、問題ではないので、燻煙での含水率の低下を参考にさせていただきました。

実際には、どの程度痩せるかですが、

含水率が 10%下がった場合で

楽器の表板の肉厚の変化は、楽器の場合柾目にとっているので、これは接線方向
(年輪に対してこう呼んでいますので)の変化ですから、含水率1% で 0.32%
です。含水率が10%下がると、収縮率は 3.2% でもこれは、体積での率なので、
厚みの場合は 1.055%となります。( 1.032の3分の1乗です。関数電卓で出すと、
1.010554869 です)
たとえば、ヴァイオリンの表板の分厚い部分で、5ミリとすると  

5ミリx 0.01055=0.053ミリ

このくらいでしたら、測定誤差ともいえるくらいの数字です。
また、10%も含水率が下がっている、楽器をコピーすることもあまりないかもしれませんし。

でも、この考えは私が考えたことですので、おかしいかもしれません。
間違っていましたら、また、コメントいただけますでしょうか。

ちなみに、収縮率は、年輪の接線方向に対して、年輪の半径方向、楽器だと表板の
収縮率は半分、年輪方向は10分の一といわれています。

感覚的には、反対のような気がしますが、すし桶とか、風呂桶は楽器と同じように
柾目に使っています。この方が収縮率が小さいので、理にかなっているようです。

野村先生の燻煙熱処理による、含水率の低下は聞いていないのですが、
比重は100年以上経った、ドイツ松でも軽くなっているそうです。
でも、寸法は同じだった、つまり収縮はしていなかったそうです。

楽器を作っていると、少し湿度が高くなるだけで、木は年輪方の直角方向にすぐ延びることを実感します。
これは、薄い表板などを、テーブルの上に置いておくと、テーブルに接したところは、
乾燥しないのに、上面は乾燥するので、簡単に反ってしまうことがよくあるからです。

逆の例が、私がやっているように、南向きの窓に、表板など薄い板を干していると、
太陽に当たったほうは、乾燥してすぐに反ります。
それが、何年も干していると、簡単に反ってはきません。
反ってしまったので、逆の日に当たっていないほうを日に当てても、曲がってこないのです。
同じように、経年変化で、100年ほど経った板は、同じようにテーブルの上に置いても、
湿度の影響は受けにくくなっています。

この湿度に簡単に影響される延び縮みと、何年、何百年とかかって乾燥する木の内部
の違いは何なんでしょうか?

こうなってくると、専門家の方の意見を聞いたほうがよさそうですが、少しだけ調べました。


木材辞典によると、収縮するのはミセル間に(ミセルとはセルロースの微細組織のことだそうです)
入っていた水(結合水)が蒸発する量だけ、ミセル間隔が狭くなり、収縮するのだそうです。

何年も日に干したり、何百年のあいだに、また、燻煙熱処理によって含水率が下がる。
比重が小さくなるのに体積は変わらないのは、細胞内腔に入っていた水(自由水)がなくなっても
収縮しないからなのだそうです。
木材辞典のたとえは、細胞壁の一番厚い二次壁中層を内層と外層とが、おけのたがのように
締め付けているので、中層が収縮しても内腔の大きさはほとんど変わらないのだそうです。

もっと、専門的に続きが書かれているのですが、木材の中の水に2種類あるので、(水が2種類の場所に
あるといったほうがよいでしょうか)この違いが起こるということのようです。

専門的な記述がなされている文章を、素人の私が読んで判断したことなので、違ったように
解釈しているかもしれません。
この方面に詳しい方がいらっしゃいましたら、なるべく分かりやすく教えていただくと
ありがたいのですが。

よろしくお願いします。

(一度あわてて 書かせていただいたのですが、中途半端でしたので書き加えさせていただきました)








  1. 2012/06/10(日) 19:31:03|
  2. ギター
  3. | コメント:1
<<ギター材料を燻煙熱処理していただきました | ホーム | 6月5日の 構造、設計⑩ アンダーバー、ブロックについての追加図面です>>

コメント

厚みの痩せは大したことなさそうですね。安心しました。
  1. URL |
  2. 2012/06/15(金) 10:27:34 |
  3. 河内長野市民 #1lhw22D2
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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