古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

新しいギター ⑥ これで新しいギターの終わりです

4月に作らせていただいた、ギターについて、いろいろと書き忘れたことが
ありましたので、ここでまとめて書かせていただいて、一応これで最後にしようと
思います。

今回のギターで、ギター的には一般的でない、でも他の楽器、例えばヴィオリンとか、
ヴィオラ・ダ・ガンバでは一般的なところがあります。
それは、ネックの成型方法です。

モダンスペインギターでは一般的に下図の下のようにヘッド部分やかかと部分を接着して
作っています。 Laminated Neck と呼んでいます。( Master Making Guitars 167pより)
ヴァイオリンやガンバでは、下図の上の One-Piece Neck がほとんどです。

        img658.jpg

もちろん、今回のギターはOne-Piece Neck です。

これなども、それぞれの楽器の常識があって、その常識にそって作られているのでしょうが、
私には、One-Piece Neck のほうが、100年、200年使う楽器としては、良いように思います。
ヴァイオリン属では、一番安い、中国製の1万円もしないような楽器でも、One-Piece Neck
になっています。

ネックの成型には、もうひとつの方法があります。
19世紀ギターや、バロックギターでは一般的な、V ジョイントネックがあります。
モダンギターでも、ハウザーさんやロマニロスさんたちが使っています。

       img659.jpg (Master Making Guitars 184p より)


この方式でも、100年200年と経つと、外れることがあります。
何度か修理をしたことがありますが、修理は簡単に出来ます。


次にかかとのデザインです。

これはギター奏者の西垣さんから、要望があって、ヴァイオリンや
一部のトーレスさんの楽器に見られるように、丸くなっています。
演奏者のアドヴァイスで、アランフェスなどの曲を弾くと、ハイポジションへの
急速な移動では、このとんがっているかかと部分が、手に刺さるということで、
丸くしています。
とんがっているのは、モダンスペインギターに多いので、私の考えている
モダンギターでは、デザイン的にこの方が合います。
トーレスさんの真似をしているのではありません。

        img660.jpg

次に、このかかと部分のヒールキャップと呼ばれている、箇所の作り方です。
下図の Aのように、裏板と一体の木で私は作っています。ギターでは、Bのように
後から、このキャップだけを付けている場合が多いようです。

       img661.jpg

Bの場合だと、ネックの接着の際、木口が接着剤を吸うため、接着不良が起こったとき、
完全にネックが外れて、大きな事故になることがあります。
Aだと、接着が外れても、ヒールの部分だけの接着で、ネックが外れず、大きな故障に
ならなかったことがよくありました。

次に塗装ですが、もちろんセラックニスだけです。
ローズウッドは、導管といって、表面に凹んだ所がありますが、これを完全に
埋める塗装をすると、私の軽い楽器では、音に影響がありますので、半分程度
埋めたくらいの、塗装です。

表板は、湿度の影響を受けない程度に薄く塗装してあります。


最後に弦のことです。

ちょうど都合よく、ムジカ アンティカ湘南さんが、ギター用のガット弦を
開発してくださいました。
それまで、サバレス社とかいくつかの弦があったのですが、価格とか寿命で問題があって
今まで、あまり使っていませんでした。

今回は試作という形で、モニターさせていただいたのですが、1.2.3弦は
ナチュラルガット、そして4.5.6弦は シルク芯の銀巻線です。

替えた時に張っていた弦は、アキュラ社のナイルガットの弦で、比重、ヤング係数など
ガットに近い弦でした。

でも張り替えると、ガット弦は物凄く良いのです。
別次元の音です。

低音弦はとても重く、ガット弦は立ち上がりも素晴らしく良く、音の密度もあります。
6弦からまず替えたのですが、思わず出た言葉が「重い」という言葉でした。

とても、重心の低い、本来の低音の音がしました。

問題は、弦の寿命ですが、私の楽器はフレットが樹脂なので、ガット弦の寿命は長いはずです。
あと、ハープ用の弦でコーティングがしっかりした物もありますので、日本でも寿命を気にしなくても
使えそうです。

欠点は、もうナイロン弦に戻れないということでしょうか?


今回のギターについての報告はこのあたりで終わらせていただきます。
まだ、いろいろあると思いますが、一旦これで終わります。

次回からは、もとのブログに戻って、
ギターの構造製作について書かせていただきますので、
よろしくお願いします。




  
  1. 2012/05/27(日) 12:42:34|
  2. ギター
  3. | コメント:0
<<構造、設計 ⑨ ブリッジの形状 | ホーム | 野村隆哉先生と燻煙熱処理>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (329)
演奏会 (10)
その他 (20)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR