古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

材料 ② 横板、裏板

② 横板、裏板
私が作りたい、音に粘りがあり、減衰の長い楽器にとって、楓が最も適していると考えています。
比重も軽く(小さくと言わないといけないのでしょうが)立ち上がり、音の明るさなどの点から、
また、木目の美しさも、ヴァイオリン、チェロ、ガンバなどの楽器で、長年使われてきた材料ですから、
一番だと思います。

ただ、長年モダンスペインギターを弾いてきたギタリストの方にとっての、
ギターの音とは違うかもしれません。
確かに、私の作った楓のギターはガンバや、リコーダー、ヴァイオリン、ピアノなどを弾いている人たちは、
「きれいなギターの音ですね」と言ってくれます。

また、良いモダンスペインギターを聞いていないからだと言われそうですが、
音楽を作る素材としての、ギターの音はどうなのでしょうか?
少なくとも、他の楽器をやっている、私の周りの音楽家は一般的なモダンギターよりは、
楓の私のギターを美しい音、音楽的な音と認識してくれています。
ですが、長年モダンスペインギターを弾いてきているギタリストの方に受け入れられやすい音は、
ローズで作ったギターのように思います。
高音域の倍音が楓に比べて多いですし、輪郭のはっきりした、
弾いている人の耳に届きやすい音かもしれません。
今まで、作ってきたギターのうちローズで作ったギターは、モダンギターを弾いている人に、
楓のギターは19世紀ギターを弾いている人のところに行きました。

モダンギターを弾いている人にとっては、やはり自分が弾いているギターの音を、
自分が聞きたいと思われるようです。
また、それを大事にしているギタリストの方も多いようです。

普段19世紀ギターを弾いている人は、ギターが鳴っていれば、自分に帰ってこなくても、
前には出ている、遠くに音が飛んでいる感じは分かってくれていますので、
楓のギターを選ばれるようです。

最近、材料屋に行くと、今まで見たこともないような木がどんどん出て来ています。
中には、ギターに合いそうなものもありますので、充分に乾燥させて使おうと思っています。


昔からアコースティックギターにも使われている、マホガニーは粘りが少ないようですし、
音が少し軽くなるようです。
胡桃の木(ウオールナット)なども、昔から弦楽器に少しは使われていましたが、
これも、少し音が軽いようです。木そのものの比重が小さいからでしょうか。
逆に軽い音を作りたい場合は良いかもしれません。

見た目の、上品さ(楽器としての)センスなどが合えば、もちろん音が一番重要ですが、
新しい材料で自分の求めている音のギターが作れるかもしれないので、
ココボロ、ニューハカランダと呼ばれる材料、シャム柿など、
今も新しい材料は興味を持って探しています。


ギターの裏板、横板の材料で昔から使われている、ハカランダ、(中南米ローズ)については、
私は意見を述べるほどの知識は持っていません。
輸入禁止でもともと製作家が持っていた材料程度が流通しているだけでしょうから、
楽器の材料としてその範疇に入れるのは無理なように思います。
ただ、同じ製作家が作った楽器で比べると、ローズに比べてハカランダで作った楽器のほうが、
音の密度があり、音の分離は良いように思います。


結論ではありませんが、モダンスペインギター的なギターを求める、
ギタリストの方にはローズが。
(といっても、マダガスカル・ローズとかインディアン・ローズとかいろんな種類がありますが、
作りたい音にあったローズを選んで)
楽器がフルに鳴るように弾きたい演奏家。
他の楽器と良くあわせることの多いギタリスト。
19世紀ギターを使っていて、19世紀ギターではカバー出来ないレパートリーを弾くための楽器を探しているギタリストには、楓の裏、横板が良いように思います。

ただ、楓は他の材料、(といってもローズウッドくらいですが、)に比べて、
個体差が非常に大きいので、(ガンバ属、ヴァイオリン属のネックは大きな無垢の木から削りだしますので、本当にいろんな木があるのが、分かります。硬い木、重い木、虎目の削りにくい木、物凄く虎目が出ているのに、軽くて削りやすい木。これらは、当然音も違います)

楓のギターといっても、立ち上がりの良い楓、しっかりした楓、重い楓、硬い楓、軽い楓、
いろんな楓を使うことによって、様々な音のギターを作ることが出来ます。
これも、ガンバやリュートなどで楓を良く使っているから分かる事だと思います。
ですから、いろんな木目の楓の木を見ながら、どんな楽器にこの木を使おうかと、
楽しみながら考えていることがよくあります。
  1. 2012/01/11(水) 00:05:25|
  2. ギター
  3. | コメント:0
<<材料 ③ ネック材 | ホーム | 材料 ① 表板>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (329)
演奏会 (10)
その他 (20)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR