古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

michimat様がギター2台持って来られました。

コメントを先にいただきましたが、michimat様が昨日ギターを2台持って
調整に来られました。

他の人が、弾きにくい楽器を弾いていたり、弾き難そうに演奏していると
何とかしたいと思ってしまう性分なので、持ってきていただきました。

河野さんのギターについては予想通りに近い線でしたが、ちょっと
イメージとは違う楽器でした。(私もギターを弾いていたころは河野さんのギターを
3台持ち替えましたから、また回りにも河野ギターを使っている人も沢山いましたし)

イーホさんのギターは、お聞きしていたような感じでしたが、あちらこちら
音のロスや、振動の妨害を受けている感じの音でした。

問題のイーホさんの問題は

1弦が音も硬くて、弦の感触も固い。
これが、一番の問題です。

これについては、ブリッジの骨棒が弦に接触する部分、上の部分の仕上げが
平らで、これで弦の振動を邪魔していました。特に1弦。
骨棒の平らな部分をカーブを付けて、それも1弦側は弦長が短くなるように
6弦側が長くなるように削ります。

これで、音のエネルギー交換率はかなり上がりました。

次に、ナットの溝が大きすぎて、溝の中で弦が遊んでいる状態でした。
弦高も高かったので、適正な溝幅と、高さにすると音のロスは少なくなりました。
(これで、左手のローポジションがかなり楽になります。)

特に、6弦の音に変化がありました。5弦も。
楽器は低音が鳴って来ると、高音も鳴ってきて、楽器全体が
鳴ってきます。こうなると、1弦の固い感触も少し柔らかくなってきました。

1弦、12フレットが特に鳴らなかったのですが、13フレットが少し高かったのと、フレットの上部の形が
平らだったので、丸くして発音をよくしました。

少しは改善したのですが、ウルフとか共振の問題以上に音が落ち込んでいるので、
フレットの緩みを考えました。アロンアルファで隙間を無くすると、11,13フレットと
同じように鳴ってきました。

河野さんのギターは倍音が豊かと言うと、良い表現ですが、基音が少ないので
楽器本体はあまり鳴っていないのです。
こちらも1弦がカンと鳴って、すぐに減衰し、2弦以降の弦と音色があまりにも
違ったので、ブリッジの骨棒での弦の角度を変えるように(角度を緩く)すると、
2弦以降との音色の差が改善されました。
この楽器も、ナットの溝に遊びがあって、音のロスがありました。

イーホの1弦は倍音が少なく、しっかりした音、基音がよく出ている
楽器です。でも、楽器が鳴るようなコンディションになったので、倍音でなく
響きがついてきます。そうなれば、もっと魅力的な楽器になると思います。

でも、このような調整はギターの調整を専門にしている人もあまりやってくれないそうです。

なぜ、このようなことが分かって出来るのか?

それは、ギターが好きで弾いているから、演奏しているからです。

以前のブログで、楽器を弾かない製作家の楽器はただの箱に弦を張っただけのもので、
楽器ではない、と言う事を書かせていただきました。

調整もそう感じます。

弾けば分かる事なのです。
弾いてよく聞くこと、考える事です。

でも、有名なギター製作家のギターで、当然新作で出来たばかりの楽器で
同じような経験をよくしました。

ギターに限らず、チェンバロでも有名な作家さんの楽器が本来の楽器の
半分以下、数割の音しか出ていないということも、沢山経験してきました。
そんな楽器は、「魔法がかかったように、違う楽器になりますよ。」と言って
調整してあげると、皆さんが驚くほど良い楽器になることが多くありました。

楽器を出来てから、ほんの少し弾けば分かる事なのですが。

皆さん楽器を作ること、仕上げる事は熱心なのですが、
形になった楽器のようなものを、最終的に楽器に仕上げる作業が
少ないように思います。

せっかく時間をかけて、作った楽器を一番最初に弾けるのは、製作者の
特権、醍醐味なのにもったいないと思います。

そう、思われませんか?






  1. 2017/06/13(火) 01:23:18|
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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