古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

弦が硬く感じる楽器と柔らかく感じる楽器の差は?

michimat様が面白い話題を提供してくださいました。

弦長660ミリの河野に比べて、弦長650ミリのイーホのほうが、
弦の感触が硬いとの事。

これは、楽器製作者の間でも話題になることです。
以下に書かせていただくことは私が考えている事ですので、
皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

弦のテンションについては、ピッチが同じであれば、また同じ弦を使えば
弦長で決まってきます。

でも、世の中には、弦のテンションを大きく感じる、弦が硬く感じられる楽器
が存在します。逆の楽器も。

これは何故、生じるのでしょうか?

一つは楽器の構造にあるのでは?と思っています。

弦が硬い楽器、弦がしっかりしている楽器、代表的な楽器は
ハウザーでしょうか、日本では松村さんの楽器とか。
たまに、ブーシェさんとか。

これらの楽器を見ると、しっかり作られた楽器が多いように思います。
表板の厚さだけでなく、楽器全体がしっかり作られていると、弦の感触も
硬いようです。

しっかり作られていると言う事は、しっかり弾かないと鳴らない。

渡辺範彦さんの先生(私の先生ですが)の植木義法先生は私が習い始めた頃は、
ハウザー2世を使い始めた頃で、「この楽器は3年から5年弾き込まないと鳴ってこない」
と言われていました。特に、楽器が出来てまだ間がない頃は、弾かせていただくと、
弦も硬く感じて、一生懸命、弾かないと鳴らない楽器でした。
(私も楽器を鳴らせる技術もありませんでしたが)

それが、数年経つと少しは柔らかくなった様に感じました。

後、感じるのは駒の骨棒の弦の角度です。
分かりにくい表現ですが、駒がブリッジより高く出ていると、
骨棒の所でかなり角度がつきますね。

この角度の大きい楽器は弦が硬く感じられるように思います。

これは、音がはっきりしない楽器を,弦高が上がるのですが、
骨棒を高くすると、音がはっきりして弦の感触もしっかりします。

ただ、単純に駒の表板に対する圧力が増えただけだと、
思うことも出来ますが。弦長は変わっていないので、
(押さえた時のテンションは少し上がりますが)
弦の感触が変わることの説明は難しくなります。

後は、骨棒が高くなることによって、駒の転倒モーメントが大きくなるので、
音がはっきりする、楽器が鳴る、感触が硬くなると言う事はあると思います。

チェンバロで同じような事があります。

特に低音が鳴らない楽器の改善法として、ブリッジでの、
弦の角度を変えることをやります。

ヒッチピンと言って、弦の端を留めているピンを打ち替え、
角度を付けるだけで(ブリッジの高さは変わっていないので
表板にかかる圧力は同じ)音がはっきりしたり、楽器が鳴ってきます。

最後に河野さんのギターの音についてです。

河野さんのオリジナルはバスバー、ファンブレースはかなり特殊です。
というか、河野さんしか取り入れていない設計です。

私は、ちょうどスピーカーのウーハーのように、
表板の周りを薄くして、表板全体を鳴らすようにして、
基音を出すように、低音が出るようにしています。

河野さんは、周りを固める方向にバスバーを配置していて、
(ファンブレースではなく)倍音が出やすく、高音が出やすくしているのです。

この方式を何十年前から取り入れている河野さんは、やはり河野さんです。

ですので、誰が弾いても河野さんの音になりやすいのです。

これが好き嫌いの分かれる所でしょうか?



河野さんの個性以上の個性の持ち主は渡辺範彦さんだったかもしれません。

彼は、ブリームに「君のその靴べらのような爪がほしい」と言わしめた、
しっかりした、分厚い爪で、力を持っていた渡辺さんが力を抜いて
弾いていたから、渡辺さんの音がしたと思います。

楽器もそうなっていったようです。

昔の話ですが、渡辺さんの演奏会が神戸であって、楽屋に押しかけ
色んな話をさせていただいていると、ギターの音がするのです。
一瞬、先生が「あれ、渡辺君が弾いているのかな?」と言われました。
でも、違う人が、渡辺さんのギターを弾いていたのです。

しかし、かなり渡辺さんの音に近い音でした、渡辺さんが
河野さんのギターを渡辺さんの音のギターにしたのでしょう。







  1. 2017/06/08(木) 15:23:20|
  2. ギター
  3. | コメント:4
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HORA romania

クロサワ楽器にルーマニアの楽器メーカーの HORA と言うギターがあります。( HORA romania で検索すれば見える) 私はこれが気に入り今でも4台持っています。内1台は通常の6コースの棹に強引に7コース納めた鉄弦ギターですがこれにナイロン弦を張ってDmin調弦で使っています。さらにもう一台は極薄の水性塗料で仕上げたECO GS100ですが抱えた時の感触が何とも快適です。
何処が気に入っているかと言うと、棹が楓の一本ものであること、無駄な装飾がないこと、そして、弾いた感触が何やら独特の反発力を感じることです。かなり弾かないと鳴り出さないですが、一度お弾きになって感想を伺いたいと思います。4/4, 7/8, 3/4, 1/2 各種あります。
  1. URL |
  2. 2017/06/09(金) 15:27:31 |
  3. 高橋晃清 #DdaUsPZw
  4. [ 編集 ]

右指に感じる弦の硬さ

私の感想です。右指に感じる弦の張りの強さが、張力だけの問題であれば、測定で確かめられそうな気もします。
例えば、1弦の真ん中をバネばかりで1cm持ち上げて、計測される力がおよそ指にかかる力と推定できます。(弦を下に押し込み、反発力を図る方が現実に近いかもしれませんが、実験がやや難しそうです。)この張力は、ブリッジとナット(或いは左指で押さえたフレット)の間で、弦の両端が完全に固定されていると仮定すると、張力の逃げ場がなくなるので、同じ弦であれば、どの楽器を使っても同じ引っ張り力(或いは押圧力)が発生すると思われます。
しかし、実際は、フリッジやナットの位置から弦が少しでも滑ると、張力が少し横に逃げるので、僅かながら値が下がるような気がします。また、棹や胴体も張力によって僅かに曲がるので、これも張力が逃げる原因になると思われます。
従って、弦両端の固定が甘かったり、棹や胴体の剛性率が低いと、指に柔らかく感じられるのではないかと推測しています。私は、実験したことがありません。かなり精密な測定が必要なので難しそうですね。もうだれか結果を出しているかもしれません。
 問題は、このように張力の値の差だけなのか、発生する音の響きによって、指が感覚的に硬いとか柔らかいとか感じるのかこの辺りがよく分かっていません。
  1. URL |
  2. 2017/06/09(金) 17:52:27 |
  3. michimat #HuGXX0hM
  4. [ 編集 ]

こんにちは。

 私の考えは、弦をはじくときの物理的な反発力の違いではなくて、
発せられる音質の差が大きいと思います。
 試しに、張の強く感じられる楽器と弱い楽器を音を聞かずに
右指に感じる力だけを比べたらどうなるのでしょうか?
 指からくわえたエネルギーが音のエネルギーに変わる比率は
楽器によって大きく違うように感じます。
 右指のエネルギーが同じでも、発音された音は、
自分に聞こえる音の立ち上がりから減衰の音量・立ち上がりの緩急・音色の違い・・・・・で、
結果、弦の硬い柔らかいを感じるのではないでしょうか?

  1. URL |
  2. 2017/06/09(金) 19:42:27 |
  3. 通りすがり #OdHxLm8U
  4. [ 編集 ]

参考になるかどうかわかりませんが。

私の経験なんか書いていいのかな、と思いますけど、弦が硬いことについては経験があります。

松岡ギター(5万円ぐらいのファーストギター)から、河野ギター(コンサート)に持ち替えた時に思いました。

慣れたら、音が出るようになりました。だけど、夫には長年「でか汚い音」と言われ…。

その後、黒澤哲郎ギター(エスペシャル)を夫の趣味に合せて買って二台使うようになりました。
黒澤哲郎ギターは非常に共鳴しました。
河野ギターのつもりで弾くと太くて大きな音が出て共鳴して、
教室の演奏会でそれを弾くと決めたら、私は弾き込みまくって録音しまくって修正して、
それができなかった曲はやたら小さい音になって、…苦労しました。

独習するようになって初めて、手の力が抜けてきました。
お借りしているギターのおかげだと思いますが、
これはちっちゃいので比較できませんが、最初に弾いた時は弦がゆるく張ってあるように思いました。

なお、河野、黒澤哲郎については夫は楽々弾いています。
蔑む意図はありません。
どちらもたくさん思い出をくれました。
------
河野の音の個性については、
夫の演奏を客席で聴いていた人に「君のギターは河野だね」って言われたことがあります。
また、客席におられた製作家さんに、いい音だと褒められたこともあります。
  1. URL |
  2. 2017/06/10(土) 11:25:51 |
  3. カステラミルク #7xSyG3F6
  4. [ 編集 ]

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kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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