古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

坂本さん達のコンサートツアー

明日、名古屋で私が楽器を提供する演奏会は終わりますが、昨日 奈良での演奏会までの
報告です。

まず、10月27日の堺での演奏会です。

リハ中の写真です。

2016 11- 1 -1


まず、最初に第一声を聞いた時が、衝撃でした。
驚愕というか、驚きでした。今まで聞いたことが無い音楽なのです。

ただ単に、器楽奏者が楽器を弾きながら歌を歌うと言うレベルではないのです。

坂本さんの歌は昨年のコンサートでアンコールに、リュートパートを弾くだけでも難しい曲を
それも装飾まで入れて、歌ったのを聞いています。

でも、今回は7割くらい歌いながら演奏しているのです。

声楽専門の演奏家も数多く聞いてきましたが、声楽専門の方の歌とは違うものを
感じました。

それは、坂本さんは リュート属、今回はヴィウエラ ・ダ・ マーノ(堺、奈良ではリュートも使いましたが)
とヴィオラ・ダ・ガンバ属、今回はヴィウエラ・ダ・アルコを演奏されます。

旋律楽器のガンバ属と、和声楽器でもあるリュート属両方を演奏する器楽奏者でなければ
歌えない、リズムであったり和声感で歌われるのです。

リュート奏者の打楽器奏者に匹敵するリズム感のよさ、リズムの切れは声楽専門の方には
なかなか出せないのでは?と感じました。

鍵盤奏者のジョアンさんも同じように、チェンバロとオルガンを弾きます。
それもどちらも見事に。

強弱の付かないチェンバロはリズム、間 と言った事が非常に重要に思います。
また、オルガンも強弱の付かない楽器で音の長さで音楽を作ることが重要になって来ます。

それらがすべて、歌に反映されていて見事な歌を聞かせてくれると思いました。

更に、今回は二人が2年以上にわたって調べたことが、今回のプログラムに良く現れています。
私などは、日本語に訳されたものか英語に訳されたものを読む程度ですが、彼らは直接原語で
それも、昔のファクシミリなど現物で読む事が出来ます。頭の良い二人が調べに調べているのですから、
話も良く分かります。

堺で運搬や組み立てを手伝ってくれた若い友人は普段古楽などには接していない人ですが、
坂本さんの話は非常に良く分かった。きっちりと調べて、全ての事が頭に入っているからでしょうね?
と言ってましたが、そのとおりだと思いました。

それは、発音にも現れています。

今回は、スペイン語イタリア語ラテン語ポルトガル語それらの混じった原語も歌っています。

もちろん、意味も分かっていますので、またその歌の背景も。

どの歌も日本語の対訳が付いているので、意味は分かります。

特に、2曲目のポルトガルのビリヤンシーコは遣欧少年使節が聞いたかもしれないと言う
事は私には重要でなく、この曲を遣欧少年使節の多感な少年が聞いたらどう感じるだろうかと、
いう思いにはせて歌っているように感じました。非常に悲しい歌です。
タイトルは、「私が育った土地」
遣欧少年使節は約2年の月日をかけてヨーロッパに渡りました。
そこで、自分が生まれ育った日本を思いながら聞いたのでは、そして歌ったのかもしれない
と感じさせる二人の歌でした。

堺はオルガンが出来て3日目、チェンバロはジャックを1列すべて入れ替えて、爪をカラスの羽に変えました。
今回の演奏会のために。

それなので、オルガンも音のバランスも完全ではなく、チェンバロもカラスの羽根は自然素材なので
弾いていると、だんだん強くなってくる羽根や弱くなってくる羽根があります。

原因の一つは、デルリンの爪に比べて摩擦が大きいので、弦によって引き出されることや、
削った断面から乾燥して硬くなってくるのでは?(これは、、宮崎でチェンバロを作っている
桑田さんのお考えです。今回の宮崎の公演を引き受けてくださった方です)

ですので、堺では鍵盤奏者のジョアンさんには迷惑をかけてしまいました。
その後も何度かリハーサル中や本番で爪は削り直させていただきました。

楽器自体は気に入ってくれていたようですが。

堺は伝統工芸館の展示室でのコンサートでした。
天井も低く空間も小さい所でしたので、お客さんが入るまでは
44パーセントの湿度が68パーセントまで上がりました。
温度は4度上がりました。

ご存知のように、チェンバロは温度、湿度が上がるとピッチは下がります。
それに比べて、オルガンは温度が上がるとピッチは上がります。
管の中の空気が振動しているので、管の中の空気の密度によって
音程が決まってくるからです。

最初は、オルガンを413 チェンバロを415にしていたのですがそれでも
間に合いませんでした。最初からあまり差をつけると音楽界の初めの音程が
おかしくなるので、この程度の差で始めました。


次に、宮崎です。

宮崎は遣欧少年使節の伊藤マンショの出身地です。
今回の演奏会は、友人のチェンバロ製作をしている桑田さんが
引き受けてくれました。彼がいなかったら実現できていませんでした。

会場は個人のホールで古楽用に作られたホールでとても響きの良いホールです。
壁も珪藻土が使われているので、湿度もほぼ一定です。

2016 11- 1 -2

もうすでに、フェイスブックなどでお知らせさせていただきましたが、宮崎県知事さんも出席され、
演奏会が終わってからも音楽の話で盛り上がっていました。

次の演奏会、天草では私が作ったコレジヨ館所蔵の竹のパイプのパイプオルガンとイタリアンヴァージナルも
演奏してくださいました。とても気に入ってくれていたようです。

2016 11- 1 -3

昨日の奈良は響きの良い会場との話を聞いていましたが、本当に素晴らしい響きの会場でした。
特に、ヴィウエラ・ダ・アルコがよく鳴って、バランスを取るのに少し押さえてもらう必要があったくらいです。
アルコは魂柱も立っていないので、普通の会場では小さな音なのですが。

udeha 001

坂本さんのお父さん(坂本利文さん)も堺ではチェンバロがあまり聞こえてこなかったけど、
ここではとても良く聞こえた、と言われていました。
会場で楽器の響きがこんなに違う事を今まで経験していませんでした。

良い経験でした。

では、明日(今日になってしまいましたが)また素晴らしい演奏が聞けるので、
それも一番近くで聞けるのですから。

言い忘れていましたが、私はフイゴ奏者として、舞台に出ています。



  1. 2016/11/05(土) 00:54:14|
  2. ギター
  3. | コメント:2
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コメント

コメントをありがとうございました。

平山さんのおっしゃったように、私も歌の第一声にカルチャーショックを受け思わず鳥肌が立つのを覚えました。
今までは聞いたことのない歌声、ラテン語、カタルーニャ語?等の発音がきれいに歌に生かされているからでしょう。会場の響きはまるで教会のホールのようでした。
  1. URL |
  2. 2016/11/05(土) 16:20:37 |
  3. 田代芳嗣 #DVvwzoMY
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  1. |
  2. 2016/11/07(月) 18:54:15 |
  3. #
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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