古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

何故 リュートは複弦なのか?

面白そうな、興味のあることでメールいただきました。

リュートは何故複弦なのか?ということです。

こんな事は、研究者に任せておいた方が良い事かもしれませんが、
面白そうなので、ブログにアップさせていただきました。

(演奏会のリハーサルや空き時間に原稿を作りましたので、その時その時に思った事を書いています。
ですので、内容が統一されていませんが、よろしくお願いします)

リュートに限らず、バロック時代までの弦楽器は(擦弦楽器ですが)複弦の楽器が多かったと思います。
ギターや、マンドリン、シターン、バンドーラなどなど。

ギターは18世紀後半から19世紀初頭に複弦から単弦に替わったと言われています。

いつから、替わったのかというのは、人によって様々な意見があるようですが、
時代の要求によって変わって行った、音楽の好み、音色の好みが変わったから、など考えられますが、
リュートやシターンなどの楽器は、バロック時代が終わると、楽器自体が用いられなくなって、
複弦のまま置いていかれたと思います。

マンドリンは21世紀の現代まで複弦ですが、これはマンドリン奏者、
愛好家の好みなどで複弦のまま残っていったのでしょうか?

以前にも書かせていただきましたが、マンドリンも単弦の方が楽器としては健全なのでは?
と私は考えています。特に、テンションの問題、調弦の問題、奏法の問題で。
単弦になったほうが、一般の音楽愛好家に好まれるのでは?と考えています。
(マンドリンを弾いている人はそうは思わないと思いますが)

リュート族でも、テオルボなど長い棹の楽器は低音弦が単弦の楽器が出てきます。
これは、物理的に長い弦長だと複弦にすると、弦同士がぶつかってしまって音が汚くなると言う問題があるからでしょう。
それと、通奏低音で大きな編成の場合、響き、音色よりも、聞こえてくる事、
やっている事が分かる方がよくなったからでしょうか?

リュートでも、イギリスの楽器は(ダウランドさんの時代)複弦がユニゾンで張られていたそうです。

イタリアとかフランスでは低音の音は、オクターブに張られていた楽器が多いように思います。

同じ複弦でも、同じ高さの弦が二本張られているユニゾンの場合とオクターブではかなり響き、目的が違うように感じます。

低音はどうしてもぼけて聞こえます。その場合、オクターブ上の弦が張られていると、音がはっきりして、
音の輪郭も出るように思います。複弦の効果が大きいと思います。

ユニゾンの場合は、ソロからアンサンブルそしてオーケストラのように編成が大きくなって
ユニゾンで弾かれる楽器の数が増えていくと、同じ音でも少し音程や音色が違う事から、
音色を豊かに、響きを豊かにする作用があると思います。

その事から、マンドリンは複弦なのかもしれません。マンドリンオーケストラなどを聞くとそのように感じます。


チェンバロは複弦、単弦、オクターブ弦を自由に替える事が出来ます。
ですが、いつも、いつも複弦で弾く事や、オクターブ弦を入れて弾く人はあまりいないと思います。

好みの問題、編成の問題、楽器の問題、曲の問題などから選んでいると思います。

私は直接その文献を見た事はないのですが、チェンバロの大切な作曲家 フランソワ・クープランさんはまず、
単弦で音楽を作りなさい、練習しなさいと言っているようです。

複弦になってしまうと、音楽の表現の幅が狭くなってしまうように、私も感じます。
このあたりも、複弦から単弦になっていった理由のひとつがあるのかもしれません。

逆に、今回の アンサンブル・パッサメッツオ・アンティコの演奏会でも、使われたのですが、
バロックギターの場合 ラスゲアード奏法を使うと、とても大きな音がします。
うっかりすると、モダンオケで使っても、ピアノやハープに勝つのでは?と思える時もあります。
細い弦の複弦のメリットが最大限に使えるようです。

以前作ったバロックリュートを預かっています。

精神科医の方なので、忙しい人です。手元に置いておくと「弾かなければいけない」と言う強迫観念に駆られるから、
弾ける時間が出来るまで預かっていて欲しいと言われている楽器です。

私の手元に置いていて、弾いてもらえると楽器も少しは鳴ってきて、楽器のためには良いだろうということで。

ギターの経験の無い方だったので、弦長は66センチバッハを弾きたいと言うことでしたので、14コースにしています。

私も、時間が余りありませんし、調弦だけでも大変なので、13コース、シングルにしてあります。

このコンディションでも充分にリュートの魅力は味わえます。本来の複弦にしなければ、
バロックリュートではない!と言われそうですが、調弦に時間をかけるより、
音楽を楽しむ方が私にはメリットが大きいと思っています。楽器のためにも。

でも、チェンバロがモダンチェンバロからヒストリカルのチェンバロになり、
音楽に合わせて、イタリアン、フレミッシュ、フレンチ、ジャーマン、イングリッシュと使い分けるようになり、
さらにどこの博物館のどの楽器のコピーとか言われる時代になりました。

リュートも、弦はガットで、どこそこの博物館のどの楽器の正確なコピーでなければいけない、
と言う方もいらっしゃいます。

そんな事はプロに任せておいて、演奏しやすい楽器で、演奏しやすいコンディションで音楽をまず楽しむのが、
演奏をを専門にしていない我々にとっては良いように思います。いかがでしょうか?

話が少しそれたようですが。



  1. 2016/07/26(火) 09:27:34|
  2. ギター
  3. | コメント:1
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コメント

複弦か単弦か

読ませて戴きました。貴殿のご意見、ベロックさん(LIUTO FORTEの)は快哉を叫ばれるでしょう。ドレスデンギターと言う物があります。アメリカの製作家が作られた13コースギターです。その低音を聴いていると単弦独特の音がします。私手持ちの10コースルネサンスを11コースバロックにした(下3コースを単弦にしている)その下3コースと同質の耳触りな音。複弦独特の何処か別の処で鳴っているあの感じが全くありません。LIUTO FORTEの音も、複弦の靄の中から響いて来るような音ではありません。私はギターの深みの無い音に飽いてリュートに移ったのですが一旦は単弦が合理的と考えたもののその陰影の無さに早々に飽いて複弦に戻りました。複弦の音はうねり、単弦の音はさざ波、と思っています。
  1. URL |
  2. 2016/08/01(月) 22:07:01 |
  3. tsukihoshihi77 #DdaUsPZw
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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