古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

製作法 ⑥ 接着剤 その2 膠

膠については、あまり資料がありません。

というか、私には探せませんでした。
月刊誌の『室内』に金沢宏さんが書かれている程度です。

と言う事で、貴重な文献だと思います。

私の古くからの、職人仲間で、日本のピアノ製作の草分けの人がいます。
忙しい時は、鍵盤を作るのを頼んだりしていました。
ピアノのフレーム作りから、全ての工程を一人で出来る方です。
多分、こんな素晴らしいピアノ職人は他には、いないだろうと思います。

そんな彼ですから、接着剤は当然 膠です。何十年と膠を扱ってきて、
自分の、今までの経験で自由に取り扱うことが出来るようになったそうです。
その彼に、この文献を見せると、「今まで自分で考えてやってきて、
一番良いと思う事が裏づけされた。」と言ってました。その方法とは。


1) 2.5倍の水で膨化させる。
 
 下図は清水良雄氏 静岡県工業試験場 報告 No6(1962年)の実験結果です。

   img532.jpg
    私はこの記事を読んで、それまで使っていた、棒膠をやめ、粒膠にしました。

 水と膠との配合比率によって接着力に大きな差があります。
 2.5倍の水で溶解するのが最も良い結果です。
 手順として、使用前日から2.5倍の水に浸した状態で使うこと。
 古い膠駅に直接膠を放り込み使うと、接着力は半分以下に落ちるそうです。


②溶解温度は 60度から70度
 
 高音で加熱を続けると、接着性能が著しく落ちます。H・Meeb氏は 
 膠を98度で5時間加熱すると、接着性能は半分になると、報告しているそうです。


③ 長時間の加熱は性能を低下させる
 
 前出の清水良雄氏の実験で、80度の加熱でも、20時間すると、
 当初の接着力より、10~15パーセント低い値になるようです。
 その日に溶解して加熱した物は、その日のうちに使い切るのが良さそうです。


④ 塗布量は30センチ四方に対し、30グラムが適当。
 
 もちろん、小口などは多めに必要です。


⑤ 作業温度に注意
 
 膠は温度が下がると、すぐにゲル化して硬化してしまいます。
 特に冬季は温度に注意して、接着する物の加熱とか、作業所の温度に注意します。


⑥ 圧締圧力は 3キログラム/平方センチ以上 比重の高い木材は7~8キロ以上
 実験によれば、8キログラム/平方センチの圧締圧力を加えた、
 試験片の接着力は手で押さえただけの試験片の2倍の接着力があったそうです。


⑦ 圧締時間は数分から1時間
 
 膠は、温度が下がると、硬化するので、瞬間接着剤のように思ってしまいますが。
 軟材の薄い板だと数分、硬い材の場合は1時間以上必要です。


⑧ 耐水性、耐湿性の向上にはホルマリンを使う。
 
 下表をご覧下さい。これも、清水良雄氏 静岡県工業試験場 報告 No6(1962年)からです。

             img531.jpg


ホルマリンの濃度で少しの差はありますが、耐湿、耐水性能は2倍くらいになっています。
これを、前にお話しした、ピアノの職人さんに見せると、彼もホルマリン原液では、
高くつくので、3倍ほどに薄めて使っていたらしいです。
ホルマリンを使うと、ホルムアルデヒドが蛋白質と反応して、
分子間を架橋結合させるために、耐水性、耐湿性が向上するのだそうです。

使用法は、片面にホルマリンの水溶液を塗り、他面に膠液を塗布して、両者を接着、
直ちに圧締します。
この場合、接着と同時にホルマリンと反応するので、すばやく圧締する必要があります。


膠は充填性がありますから、修理の場合など、ともすれば、
圧力をかけずに隙間などを埋める場合がありますが、圧締しないと、強度は出ません。
短時間のうちに圧締出来るよう、手順を考える必要があります。

お待たせしました。いよいよ、次回は表板の構造、設計です。



  1. 2012/01/31(火) 09:42:28|
  2. ギター
  3. | コメント:1
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コメント

これまで経験的に(と言ってもまだ僅かな経験ですが)求めた最適らしき条件が裏付けられた思いです!
粒ニカワ 容積比3倍の水 60℃ ・・・

こんなノウハウを惜しげなく、ありがとうございます。
  1. URL |
  2. 2012/02/04(土) 12:58:22 |
  3. 桑田芳幸 #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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