古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

新しいギターが2台出来ました。

タイトルのように、新しいギターが2台出来ました。

でも、やらない方がよい、と思っていた事をやってしまいました。

漫才コンビの方が言っている表現だと「やっちまったなあ」と言う感想です。

それは、2台のギターを2週間と少しで作ってしまった事です。

先月は絶不調でした、各地で無理をして、無理をする前から腰もあまり曲がらず、
布団から起きるのが困難でした。
でも、無理をして、休み無く仕事をしていました。

月末は、自治会長の仕事や草刈もあったので、知り合いになれた
整体の先生に何とか、体が動く程度まで戻していただいて、乗り切りました。

私も、10年ほど毎週、宇治平等院の向えのお寺に野口晴哉先生の整体を勉強に行ってました。
後は、たまたま知り合った 霊気の先生にも少し教えをいただいたり。

体に良い事や、してはいけない事も分かっているのですが、つい仕事を始めるとおろそかになってしまいます。

今回のギターは、京大の野村隆哉先生が研究されている、「還元熱処理」を使った材料と未処理の天然乾燥の材料を使った
楽器を比較のために作りました。

新しい楽器用の実験炉も出来上がったので、山のような、何千と言うテストピースを使って、山のようなデータは
野村先生にお任せして、私は実際に楽器にして結果を出すと言う事をやりました。

色んな、関係で この2台は 2週間と少しで作る事になってしまいました。

そのかわり、朝 8時くらいから夜は2時くらいまで(いつもの事ですが)
仕事をしていました。あまり休みを取らずに。

それで、かなり無理をしていて、ブログの更新もコメントのお返事も書けませんでした。

そんな中でも、6月6日から10日までは地元中学校のトライアルウイークで、中学生に楽器製作のお手伝いを
してもらいました。いつもは、中学生に出来る仕事を用意しているのですが、
今回は時間が無くて、結局ほとんど、一緒に仕事をして手順を考えたり、出来る仕事を作ったりをしていました。

民生委員の仕事も少しはありましたし。

出来上がりはこんな楽器です。

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今まで、ローズウッドで、表板だけ還元熱処理された材料でギターを作った事はありましたが、今回は表板、横板、裏板
ネック材 全て 処理されたものを使いました。裏、横の材料は楓です。

こちらは、未処理の材料の楽器です。

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いつも、製作過程の紹介が出来ていませんので、少しだけ。

一般的な モダンスペインギターとはかなり違った製作法ですが、要点だけを。

接着剤は種類に関係なく、圧力をかけるほど、強度は増します。

ですので、バスバーなど外れて欲しくないところは、クランプを使って接着強度を増しています。

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逆に、将来的な事を考えて、修理の際に面倒が無いように、裏板などはほとんどテープで接着しています。

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ネックは、ストラディバリさんがやっていたように、芋継ぎです。

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今までの経験ですが、今回のように期限が決まっていて、かなり無理をして、急いだ時の楽器は
良い楽器が出来ているようです。

迷いが無く、スピードで作っているからでしょうか?

もちろん、失敗ややり直しはしている時間がありませんから、急いでいても慎重な作業はしています。

20日に西垣さんに弾いていただいての感想です。

これは、野村先生に送った感想です。



還元熱処理された材料で作ったギターと熱処理されない材料で作ったギターの比較
                            2016年6月

                       古楽器製作家 平山 照秋

還元熱処理された材料で作ったギターと熱処理されない材料で作ったギターの製作が終わり、
実際に弾いてみて、また一流のプロの演奏を聞かせていただいて、その結果を報告させていただきます。

1)今回の製作方針
還元熱処理された材料で作ったギターとそうでない材料で作られたギターの
楽器をしての性能を調べるというのが今回の目的です。

楽器専門の材料会社から購入したばかりの、自然乾燥の期間が短い素材と、
還元熱処理された材料ではあまりにも差が大きいと思われましたので、
還元熱処理された材料ではない楽器は、表板40年以上自然乾燥させた物、
裏板、横板、ネック材は20年以上自然乾燥させた材料を使いました。
(手持ちの材料の最も古いものを使いました)

還元熱処理された材料は表板、横板、裏板、ネック材全てに熱処理されたものを使いました。
(材料屋さんから買ったばかりの物を還元熱処理しています)
バスバー(表板の裏に付いている、補強の木)は両方とも自然乾燥させた物を使っています。

還元熱処理された材料は、そうでない材料の約1.4倍の強度があると分かっていますので、
表板、裏板はは約0.2ミリ、横板は約0.1ミリ薄くしています。
他は楽器の設計から製作方法にいたるまで、同じにしています。

2)製作結果の判定
私の楽器はもともと、一般的なモダンギターの欠点である、
① 音が暗い
② 音の立ち上がりが悪い
③ 低音の基音が少なく音がぼけている、音程がはっきりしない。和音が濁る。
④ 3弦が鳴らない。特にハイポジションが鳴らなくて、音がぼけている。
⑤ 音の減衰が短い

などの欠点を解消する方向で設計、製作されています。

音の判定
1)音の明るさ
還元熱処理された材料で作ったギターは、音に張りがあり、
明瞭な音で音楽を表現する楽器として、充分な明るさを持っている。

音が前面に押し出されていることもその原因のひとつと思われる。

2)設計によって楽器の重量は一般的な楽器に比べて,約500グラムは軽くなっています。
そのことにより、もともと立ち上がりは良い楽器でしたが、還元熱処理された材料で作ったギターはさらに、
弾弦すると直ぐに音が出るので、ストレスなく演奏できます。

早いパッセージはもちろん、遅いパッセージでも弾いた瞬間に音が出てくれるので、
演奏者の意図が音に出しやすい楽器になりました。

3)低音、特に6弦が鳴らない楽器が多く、また音もぼけている、基音が少なく倍音が多いため、
低音としての役割が果たせていない楽器が多いのが一般的なモダンギターです。

ですが、還元熱処理された材料のギターは基音成分が多く、また音の輪郭がはっきりしていて、
クリアーな音が出ています。6弦でも1弦、2弦と同じ成分、性格の音が出ているので、
和音が作りやすく、もちろん和音も濁りません。

4)3弦もハイポジションまで、全てのポジションで同じように鳴ります。

ギターはよくこの3弦のハイポジション(8フレットくらいから12フレットくらいまで)をよく使いますが、
このポジションが鳴っていないと、音楽が作りにくいのですが、
還元熱処理された材料のギターは、むしろハイポジションの方がよく鳴っているので、音楽が作りやすい。
音もクリアーで音に輪郭があり、高い音ですが基音もはっきりしています。

5)低音から高音まで全ての音の減衰が長い。長いだけでなく、更に音が広がる演奏が出来る。

このことによって、歌いやすくなり、演奏者が演奏し易くなり、弾いていて気持ちの良い楽器になります。
ギターで歌えない楽器は、ギターの魅力が無いに等しい楽器だと思いますので。

また、そのことによって、多声音楽(ポリフォニー音楽)が表現しやすく、
特にバッハなどのバロック音楽も演奏がしやすく、音楽が作りやすい楽器だと言えます。

主に一般的なモダンギターとの差を書かせていただきましたが、実際に演奏して、
また一流のプロの方の演奏を聞かせていただいて、ギターから出る音圧が大きく、
ピアニッシモの小さな音も、ただ小さい弱い音でなく、大きい音と同じように音楽が伝わってきます。

楽器を演奏している場所全体が音に包まれると言う感覚が味わえたのはめったに無いことでした。

音がクリアーで演奏者の考えていることがよく伝わるギターだと分かりました。

それは、横板、裏板が熱処理された楓材だったからかもしれません。
裏板から跳ね返って来る音が結構感じられましたから。

今回演奏してくださった、プロのギタリストの方は、普段200年ほど前のギターのストラディバリウスと
言ってもよい素晴らしい楽器を使ってられる演奏家です。

それなので、ギターを見る目が非常に厳しい方ですが、200年前の名器と比較しても、
還元熱処理された材料で作られたギターは、遜色の無い楽器との評価でした。                       


こう書くともう一台の、楽器はどうなのだ?と言われそうですが、もう一台も私の楽器ですので
充分音楽的な表現が出来る楽器です。40年寝かした材料ですが、もっと古い雰囲気のある音がします。
低音も特に6弦は響きもあって、弾いていて気持ちの良い楽器です。

多くの方は、むしろこの楽器のほうが弾きやすくて、好きだと思われるかもしれません。




  1. 2016/06/22(水) 19:19:23|
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kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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