古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

構造、設計 ① その2

続きです。

もう少し、極端に大きさの違う楽器で考えましょう。

バスガンバのオクターブ上が、トレブルガンバです。弦長もほぼ半分です。
同じテンションで良ければ、同じ弦を張れば良いのですが、ちょうど、
バスガンバの1弦がトレブルの2弦と同じゲージです。
考え方を変えれば、バスガンバの1弦を4度下の音まで下げたときのテンションが、
トレブルガンバのテンションだと言えます。

ガンバは一般的な楽器ではないので、ヴァイオリン属で考えてみましょう。

チェロのオクターブ上がヴィオラです。弦長もほぼ半分ですが、
チェロもヴィオラも同じ弦は張っていないと思われるでしょう。
ヴィオラの方が細いと。

楽器が小さいと、質量も小さくなり、軽くなった分だけ反応もよくなり、
また、使われている部材も薄くなるので、細い弦で充分鳴ることは、考えられますね。

これと同じ事が、ギターでも考えられると思いませんか?

ちょうど、バスガンバの2種類の楽器の差と同じような事が、
ギターでは、19世紀ギターと、モダンギターで起こっています。

19世紀ギターは63センチの弦長のものが多く楽器全体も小さいのです。
モダンギターはご存知のように、65センチの弦長がほとんどです。

この19世紀ギターにモダンギターと同じ弦を張ると、非常にしっかりした手ごたえと、
弦の張りを感じます。
テンションが下がるのですが、細い弦を張ったほうが鳴る楽器もあります。

モダンの楽器と19世紀ギターを比べると、バスガンバのディヴィジョンと
フルサイズの大きなバスガンバ以上の差があるように感じます。
ですから、同じ弦を張ると、19世紀ギターの方が張りがきつく感じられても、当然だと思います。

ここで、私の考えるギターです。作っているギターです。

私のモダンギターは、63センチから64センチの弦長です。
弦長64センチの楓のギターを3台作りましたが、一般的なオーガスティンの黒で、
感覚的なテンションは充分ありますし、むしろ半音下げて 
(A=415)で弾いた方が鳴るような感じです。
もちろんボディはモダンに比べて小さくなっています。

逆の例が、大きなボデイのままで弦長を短くすると、
見事に張りの無い、寝ぼけた楽器になります。

私ではありませんが、弦長を短くしてくれと、頼まれて製作したのですが、
ボディを小さくすると、型枠からいろんな物を作らないといけないので、
弦長だけ短く作ったギターを実際に見たことがあります。

私が作りたい小型のギターの良さと正反対の楽器でした。

最初に書きましたが、これは楽器の大きさだけでなく、
ライニングや表板の設計にもその理由があります。

実際、64センチの楓のギターを作って弾いてみると、物理的なテンションは低いので、
左手は楽に押さえる事が出来ます。(弦長が少し短いだけで楽な所もありますが。)
右手も、力を入れなくても鳴ります。

前にも書きましたが、これは、特にアマチュアの方で、
人前で演奏される機会のある人には良い話です。

人前に出ると、右手に力が入りミスタッチが増えるという人にとって、
普段の練習で右手に力が入らない状態だと、人前に出たときにも、
少しは緊張で力が入るけれど、もともと普段は力が入っていないので、
普段の力が出るのではないかと思います。

これは、私がリュートとギターを弾いているから分かる事かもしれません。

リュートは右手に力が入ると、音がつぶれるので、普段から力を抜いて弾いています。
ですから、人前で弾いても、力が抜けているので、右手に力が入って、
ミスをする確率はかなり低いです。
曲が簡単だからだろうと言われそうですが、本当に申し訳ないのですが、
ほとんど練習もせずに、人前でリュートを弾かせてもらっています。
それでも、いつも「良い演奏でした。良い音でした」と言われます。
リュートがそういう楽器なのでしょう。

ところが、ギターはリュートに比べて右手に力を入れて、弾いていますので人前だと、
さらに力が入り、ミスタッチが増えます。
64センチの少しテンションの低い楽器を使うようになってから、
右手の力も少しは抜け、多少ミスも少なくなったように思います。

「本番でミスをするのは、練習が足りないだけ」と付き合いの長いギタリストには言われます
。ほとんど、練習もしていないのですから、ミスは当たり前かもしれませんが。

私にとって、モダンスペインギターは大きすぎ、少し弾いても腰が痛くなるし、左手もきつい。
そして、なにより、重くて、ネックも大きくて、私には合いません。

小型のモダンギターを作ろうとしたのは、まず自分が弾いて楽な、
音の良いギターを作ろうとしたことが始まりです。

私は今の日本人の平均的な身長に比べて、少し低いかもしれません。
(167センチくらいです)
でも、私が弾きやすいモダンギターのサイズが多くの日本人にとって、
弾きやすいサイズではないかと思っています。

私の記憶違いではないと思うのですが、有名なギタリストの鈴木大介さんも、
胴の薄いギターを弾かれています。日本人の二の腕の短さとか理由を挙げられて、
胴は薄い方が良いと、言われていたと思います。

今回は、いわゆるレディースサイズと言われる程度の、モダンギターの少し小型のギターの話でした。次回はもっと、進んで、さらに弦長の短い、弦長59センチ、55センチと言った、モダンギターではあまり見かけない、分数ギターについて書かせていただきます。
 
  1. 2012/01/27(金) 01:31:19|
  2. ギター
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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