古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

マンドリンの不思議

演奏会でリハーサルの時間に原稿を作っていましたので、もう一つブログ更新させていただきます。
以前から、予告させていただいていた、マンドリンについてです。



マンドリンの不思議と言うより、マンドリンの怪と言っても良いと思うほど不思議なことが多い楽器です。

マンドリンはもともとソプラノリュートがマンドラになって、そのあとマンドリンが出来たという説があります。
私もそのように思っています。もとは、リュートだったと思います。

その楽器が、外観は前世紀の楽器に比べても、そう変わりはないと思いますが、
強度、重さはかなり変わってきているようです。

とにかく、頑丈で、重くて鳴らない。それは、マンドラ、マンドセロ、マンドリュートも同じように、
重くて頑丈に出来ています。

その理由のひとつは、弦にあるようです。

同じ弦楽器のギターやヴァイオリンは沢山の弦の種類が製作され、販売されています。
ゲージも、材質も本当に沢山の弦があります。

それに比べて、ほとんど一種類の弦しか使われていない、マンドリンの世界は不思議に思います。
そしてその弦は、テンションが非常に大きい弦なのです。
そしてこの弦が使えるように、この弦に合った楽器が作られていくのは、無理がないことかもしれません。

また、弦のゲージがほとんど、1種類しか流通していないことが不思議に思われていないのも、
理解しにくいことです。(他にもいくつかもメーカーはあるようですが、あまりゲージは変わらないようです。
ゲージについての説明も、記述もあまり無いようですし)

そして、もう一つ不思議なことはその唯一の弦が、テンションが非常に大きいことは書かせていただきましたが、
それ以上にその弦のテンションの差が非常に大きいことです。

特に2弦(A 線)が異様にテンションが低く、他の弦に比べると,複弦で6キロほど低いのです。
(ギターは3弦のテンションが低いことは皆さんご存知のことだと思います。
これは、材質にナイロンにこだわると、1,05ミリ以上にすると、テンションは上がりますが、
直径が太くなって振動しにくくなるからです。でも、ナイロンの比重が1.1くらいなのに、
フロロカーボンだと1.8ほどありますから、この問題はナイロンにこだわらなければ解決します)
このことが、次に書かせていただく、ブリッジの骨棒が段々というか、ガタガタとなっている理由の一つだと思います。

これも古い楽器では見られないことです。
マンドリンを知っている方は(今使われている、マンドリンです)どの楽器もそうなっているのは、
よくご存知のことだと思います。いつの頃から始まったのでしょうか?

30年ほど前にマンドリンの修理をさせていただいた時には既に、そうなっていました。
でも、当時でもチューナーはありましたので、チューナーで測ると、確実に 3弦はピッチが上がりました。
(いつ測ってもそうですが)それで、アコースティックギターのように、骨棒を直線で作り、
6弦の弦長2ミリほど長くするように、斜めにするとチューナーで測っても、
数セントの誤差で収まりました。

ガタガタの骨棒だと10セント以上は誤差があります。
マンドリンの方たちは、チューナーを使うことはしないのでしょうか?

5度調弦なので、開放弦で合わせやすいから、使わないとか?
又は、チューナーの存在を知らないとか?フレットを押さえて、チューナーで測ると、
3弦がとても高くなることに気がつくと思うのですが。

2弦は逆に弦長を長く取る方に、骨棒が削られています。これは、2弦のテンションが低いので、
強い力で押さえると、(強い力でなければ音が出ませんので)当然、弦が他の弦より沈み込みますので、
ピッチが高くなります。これを解消するために、弦長を長くする方向にしたのでしょう。

2弦程度のテンションに他の弦もすれば、この問題はなくなります。

実際、私が修理させていただいた楽器は皆そうしていますが、問題はありません。 

ヴァイオリンもストラッドが作った当時と変わらない、当時で完成された楽器だと言われることがありますが、
外見も中身も全然違った楽器になっています。驚く程に。

でも、マンドリンは外見はほとんど変わっていないようです。でも、中身はまるっきり変わっています。

これだけ、中身が変わっているのなら、外見も変えて、楽器としてあるべき姿にしたほうが、良いのでは?と思います。
たとえば、この、素晴らしい名手が使っている楽器は、外見は一般的なマンドリンと違いますが、
楽器としてはまともというか、楽器がちゃんと鳴っています。音楽が作れています。



https://www.youtube.com/watch?v=3CoEKQopTSo


このような、音楽的な表現ができる、鳴っているマンドリンでは駄目なのでしょうか?
もちろん、デザインは同じにしなくても良いと思いますし、
日本人が弾いて、弾きやすいデザインの楽器で良いと思います。


今のマンドリンが、重くて鳴らないのは、主な原因が胴体のボウルにあると思います。
リュートのように、厚みが1.5ミリ程度では工作が大変でしょうから
(それで、厚くて重たい胴になるのでしょう)ボウルをやめて、フラットマンドリンのようにしては,
駄目なのでしょうか?形だけ昔と同じで、中身は全然別の楽器より良いと思うのですが。

そして、これは無理なことだと思うのですが、マンドリンは複弦でなければいけないのでしょうか?
ギターも19世紀にはすでに単弦になっていますし、ロシアなどには、単弦のマンドリンのような楽器もあって,
名手は素晴らしい演奏を聞かせてくれています。調弦の問題も半分は解決するし、
押さえやすく、音も明瞭で良いと思うのですが。

複弦で響きや音色を大事にしているからだと思うのですが、トレモロなどは単弦の方が綺麗だと思います。
たまに、アコースティックギターでカポタストをはめて、ハイポジションでトレモロを演奏すると、
ハットするほど綺麗な時があります。楽器が鳴っているということもあるのでしょうが。

複弦は完全に調弦するのは難しいので、一音でも唸りが出ている状態だと、ブリッジの問題、音程の問題も
なんとなくごまかされて、解決するからでしょうか?

アヴィ アヴィタルさんはトレモロもあまり使っていないようです。
部分的に使う方がマンドリンの良さは出ると思います。

最後に もう一度 アヴィ アヴィタルさんの演奏です。

https://www.youtube.com/watch?v=RBEwEy5dgZU

バックも 古楽器で ベネチアバロックオーケストラです。

こんな事を書いていると、「じゃあ、作ってみてください」と言われそうですが・・・・・・・?



  1. 2015/08/06(木) 13:38:13|
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  3. | コメント:1
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コメント

ブログをお借りして・・・平山さんカステラミルク様 暑い中、若い大樹君とのコンサートに
おでかけいただきありがとうございました。
で、また散らかったレスです。ビバルディの施設の楽器弦の納品書を見ていると
マンドル関係もありますね。このユーチュウブで使われているものとはずいぶんと違うようですが
どんな楽器でもその世界を広げることができれば、頑なでなくてもよいですよね。
エクサンプロバンス音楽祭で先月のヘンデルのオペラ アルチーナの上演にも本来の使われ方ではない・・
(と思われる)バロックギターとテオルボ、つまりこの2つを活躍させると効果的なミーントーンよりの音律を選択できない、
と少し危惧したのですが、、結果は大成功でした、、考証に縛られすぎるないほうがよいのかもな~と感じました。

バイスのシャコンヌ、チャコンナ  これはそう呼ぶよりもフォリアやパッサカリアに近いものですね。
私の単純な推測なのですが、このフォリァなどの楽譜はたぶんそれだけで完結したものではなくて、
もちろん複数のディビション同士だけで重奏になりうるし、その上に即興にちかいものを重ねて延々と
遊んだのではないか? と思います、、もちろんバッハの例のパッサカリアは除きます(やったかもしれないけれど)
ここ数年 私がはまってときどき聞きに訪れています、コルシカ島の民衆音楽、、楽器は古楽器、民族楽器超モダン
なんでもありで、アマチュアおじさんたちの歌の即興が重ねられるのです、多くのそっくりフォリァが即興でうたわれます。
バイスと同じ低音のものもあります、、有名ドコロをひとつ聞いてみてください、この島と隣のサルディニアの島の人たちが
ハプスブルグ家の音楽教師をしていた記録もあるので、バイスと無縁ではないと思うのです。
https://www.youtube.com/watch?v=q8wk9U3Omzw
で・・ なにが言いたいか、といいますとですね、、編曲、もっと簡単に楽にするとこういう即興にも使いやすい、とおもうのですが、
どうだろう?
  1. URL |
  2. 2015/08/17(月) 22:46:33 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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