古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

構造、設計 ① 楽器全体の大きさ、弦長など


 ここでは、一般に使われている、弦長650ミリの、
モダンスペインギターと比べての話をさせていただきます。

最適な楽器の大きさ、弦長などは ② の分数ギターの項でも書かせていただきますので。


まず楽器の大きさですが、今使われている、モダンスペインギターは日本人にとって、
大きすぎると思います。
小さくすれば、たくさんのメリットが出てきます。
そして、表面板の面積だけでなく、
胴の厚さなども弾き易さに影響が出てきます。


楽器を小型にするのは、反対だ。いや問題があると考えてられる方も、
多いと思います。
後で、書かせていただく、ライニングや表板の構造などで、
実際に鳴っている表面版の面積を考えると、私の作っている、
小型のギターの方が低音も出ます。

その理由も書いていきますので、もう少し先まで、読み進めていただけますでしょうか。

確かに、今の一般的なモダンスペインギターの構造のままで、
小さくすると、低音は出にくくなります。(アルトギターやレキントギターのように。)
モダンスペインギターの構造では、あの大きさが必要だと思います。

小さくして低音を出すには、構造を変える必要があります。
そして、構造を変えて、弦長を短くすれば、演奏しやすく、
テンションも下がるので、左手も楽になります。
左手が楽になれば、右手の力も抜け、余分な力が入らない分、演奏が楽になります。
そうすれば、緊張もしなくなり、人前での演奏が上手になる。
力が抜ければ、音に延達性が出て、大きな会場でも演奏が出来る。
と、良いこと尽くめです。

ここで、弦長を短くすると、弦のテンションが低くなり、楽器も鳴らなくなり、
右手の手ごたえもなく、頼りない楽器になってしまうのでは?との声が聞こえそうです。

このことについて、面白い話しがあります。
少し長くなりますが、大切な事なので、ここで書かせていただきます。

ヴィオラ・ダ・ガンバを作っている製作家でなければ、また、演奏もしている、
製作家でなければ分からない事ですので、どうぞ、お読み下さい。

ヴィオラ・ダ・ガンバは、ルネサンス、バロック時代に良く使われた擦弦楽器で、
ギターのように、フレットがあり(リュートのようにガットフレットです)
6弦で、4度調弦が中心の、ギターに近い楽器です。

トレブル(ディスキャント、ソプラノとも言われます)ガンバはヴァイオリンに相当し、
コンソートで高音部のパートを受け持ちます。テ
ナーはヴィオラに、バスガンバはチェロに相当すると思ってもらえばよいでしょうか。

ガンバはイタリア語で、膝の事を意味しますから、一番小さなトレブルでも、
膝の上に乗せて弾きますので、この名前が付いています。

そして、たまにヴァイオリンとかチェロの先祖がガンバ属という、
間違った事が書かれた本などを見ますが、
ヴァイオリン属とガンバ属は平行して使われていました。
どちらかと言うと、弦の数も多く、メンテナンスにお金のかかること、
そして、女性がヴァイオリンのように腕を掲げて演奏するのははしたないとされていた時代ですので、
ガンバ属のほうが、上流階級で用いられたようです。

主に用いられた、3種類の楽器のうち、バスガンバがソロ楽器になります。
(ちなみにリコーダーはアルトが、リュートはテナーがソロ楽器になっています)

このバスガンバは大きく分けて、2種類あります。
弦長が少し短い、(66センチ前後)小型のディヴィジョンガンバと呼ばれるバスガンバと。
本来のバスガンバの大きさで、弦長69センチ、70センチのガンバが。
弦長に比例して、楽器も大きくなりますので、同じバスガンバでもかなり大きさが違います。
チェロのフルサイズの4/4と3/4の差、違いと良く似ています。

ここからが、本来のお話しです。

面白いことに、同じ弦を張ると、弦長の短い(66センチ)ディヴィジョンの方が、
張りがきつく、弾いても、左手で押さえても、弦も硬く、テンションもきつく感じます。

逆に 同じ弦を 弦長 70センチの大きなバスガンバに張ると、
張りが緩く感じ、楽器がなんとなく、鳴っていない感じがするのです。

物理的には、70センチの弦長のほうが、66センチの弦長の楽器よりテンションは高いはずです。
でも、感覚的には逆なのです。これは、私の感覚だけでなく、
ギター弦としても、おなじみのフランスのサバレス社のガンバ用の弦は、
66センチ程度のディヴィジョンガンバには1本当たり、6キロのテンションの弦を。
(弦のゲージで言うと、1弦には0.66ミリの、2弦には0.89ミリの弦です)
70センチの大きなガンバ用には8キロのテンションの弦が
(ゲージでは1弦に 0.74ミリ 2弦には 0.94ミリ)用意されています。
大きい楽器では、太い弦が必要なのです。

長くなりますので、続きは次回に。
  1. 2012/01/27(金) 01:18:32|
  2. ギター
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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