古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

ギター演奏においての脱力 ギターの大きさなど

緊急特集 脱力についてです。

今日は、大阪のフェニックスホールで、バロックダンスの演奏会があり、
チェンバロを使うので来ています。リハの合間にこの原稿を作っています。

昨日、一昨日は 大阪音大の博物館で、スクエアピアノ、スピネットの修理調整をしていました。

大阪音大も 今年で 創立100周年で、記念の演奏会を博物館所蔵の楽器で行うということで、
私が以前大、修理させていただいた、1719年製に製作された ロンドンの バートン作のスピネットと
こちらも、私が調整させていただいた、1790年頃の イギリス ブロードウッド社 製作の スクエアーピアノ
を使われることになったようです。

10年ほとんど使われていなかったので(演奏会等で)調整にかなり時間がかかりました。
どちらも素晴らしい楽器で、当時の音がしています。

でも、この楽器を弾こうと思えば、現代に作られた楽器以上に、脱力と打鍵のスピードが必要です。
鍵盤楽器、私は不得意なのですが、音の出し方は下手な方ではないと思っています。

でないと、調整も調律もできませんから。
(以前の話ですが、チェンバロの入ったアンサンブルの演奏会をしているとき、
リコーダー奏者から「チェンバロのタッチ、音の出し方をチェンバロ奏者に教えて欲しい。
音が汚いので」ということが何度かありました)

ということで、本題の脱力についてです。演奏家でもない私が、
演奏に関する脱力の話を書かせていただくのは、
専門外でおこがましい感じなのですが、
楽器を製作している立場から、
また、永年楽器を演奏してきた立場から書かせていただきます。

最近ほかの方のブログやHPを読ませていただいて、若い頃ギターを弾いていて、
長いブランクの後、最近復活された方や、若い頃ギターを弾きたかったが、
弾けなかったので定年後弾かれている方など、拝見します。

そんな方たちのひとつの話題、というか問題が脱力のようです。

脱力できなければ、演奏が難しかったり、疲れたり、手を痛めたり、
さらには腱鞘炎まで発症する恐れがあります。

そして、演奏者の数も多く、メソッドとして完成されている、
ピアノの脱力の話を引用されている方もいらっしゃいます。

でも、ピアノは打鍵すれば音が出ますので、脱力の方法は割と簡単だと考えています。

古くからの友人でピアノの先生がいます。音大などで教えていなくて、街の音楽教師ですが、
音楽コンクールで一番権威のある毎日コンクールで1位の生徒なども育てています。

彼女が整体の勉強もされ、またライフワークのように脱力の研究もされているので、
レッスンを聞かせていただくと、レッスンを受ける生徒さんがみるみるうちに音が良くなっていきます。

それは、離れれば離れるほどよく分かります。
1階のレッスン場でレッスンしていて3階で聞くと、レッスンが進むにつれ、
音が3階まではっきり、大きな音が聞こえてくるのです。

でも、ギターの場合、大きな問題があります。

ギターは左手で弦を押さえて、音を作らないといけない、ということです。

当たり前のことですが、これが、ピアノ以上に脱力を難しくしている理由だと思います。

その脱力を簡単にする方法が、ギターの大きさを体に合った大きさにする、
つまり体に合った弦長の楽器を選ぶこと。
それと、左手の使い方、この2点が左手の脱力を簡単にする方法だと私は思っています。

体に合ったギターを探す方法の一つとして、左手の大きさを測る方法があります。

クラッシクギター専門店 ギターライフ社さんのHP を参考にさせていただくと。
Gfe.co.jp/stringscale.htmluitarli  指を拡げて、人差し指と小指の先までの長さが170mm以上だと、
65センチの弦長がふさわしいが、それ以下だと63センチとか短い弦長の楽器を使うべきだと。

そして、この記事を書かれた方が人差し指と小指の間の長さが185mmあっても、
難しいポジショニングの時には65センチのギターでも、きつい時があると書かれています。

ギター製作家のBellucci のHPで、(http://www.mangore.net/bellucci_guitars-jp.html )
指を拡げて、親指の先と小指の先の長さが 23センチ以上だと標準サイズのギターも良いが、
それ以下だと、ショートスケールの楽器が良いとか。(私は20.5センチです)

でも、小指と人差し指との間の長さの方が、ギターを弾くときには影響しそうですね。
私のブログ でも書かせていただいた、ドイツのミハエル・コッホさんの考え、
身長x0.36が理想の弦長という考えと、指の長さ、指の広がり方は人それぞれ違いますから、
身長だけで弦長を判断するより、良い考えかもしれません。

体は小さくても、手の大きい方もいらっしゃいますし、大きな方なのに比較的小さな手の方もいらっしゃいます。

日本人の標準的な身長 平成24年だと男子は170センチ 女子は 158センチだそうです。

昭和50年は 男子167センチ 女子は156センチですから、近頃の若い人は大きくなっているようです。

今回は、私たちの世代で考えて、男子 167センチ 女子 156センチとすると、
コッホさんの考えでは、男子でも60センチ、女子だと56センチとなります。

お弟子さんに61センチ59センチ55センチの楽器を沢山作ってもらいました。

それらを弾いた感想から、一般的な日本人男子では 61センチの弦長が、
女性には59センチの楽器が、演奏しやすいと感じました。

身長でなく手の大きさ,拡げた長さで行くと、私は 人差し指と小指の長さは、
精一杯拡げて15センチです。他の方のブログやHPを参考にさせていただくと、
精一杯広げて15センチというのは、かなり小さい手のようです。

自分自身はそんなに小さいほうだとは思っていなかったのですが。

でも、この手で65センチのギターを長年弾いてきました。
それが、出来たのは、最初に習った植木先生の指導があったからです。

実はこれからが、このブログの本題になります。

その方法は、左手の使い方、弦の押さえ方です。


今でも、教則本や、ギター教室で習っている人、ネットでギターを教えてくださっている方の中に、
フレットに平行に指を持ってくるとか、弦に対して直角に左手を持ってくると教えている方がいます。

でも、皆さんが憧れている、セゴビアさん、ジョン・ウイリアムスさん、ブリームさんや、
イエペスさんはこんなことをしていません。(と私の目には映ります)

弦に対して斜めに、弦とフレットの90度の角度の半分位の角度で、
押さえているのではなく、イメージとしては押している感じです。

そして、フレットの横というよりは、フレットに被さっている感じです。

こうすると、力はほとんど要りません。

フレットの横、フレットとフレットの間では、力を抜いてしまうと、音がビビってしまって出ません。

斜め方向に押すと、力はなくても弦は開放弦に近い響き、減衰になります。

力をいっぱい入れて、フレットとフレットの間を抑えると、いじけた響き、減衰も短くなります。

また、指がそんなに大きくなくても、広がらなくても、指が簡単に届くのです。

この奏法は、チェロでも同じように使われています。

上手なチェリストは、今の人だと、マイスキーさんや古い人だと、
カザルスさんも私の大好きなピアテルゴスキーさんも、ユーチューブで見ると、
弦に対して、直角には左手の指は持ってきていません。

モダンチェロだと 4本で70キロくらいのテンションですが、この方向に指を使うと、楽に抑えることができます。

チェロでもひところ、弦に直角に近く、指先も蛸のような指で弾いている人がいましたが、
これは弦がスチールに変わって、それまでの有機質のガット弦の音に比べて、
無機質のスチール弦の音を音楽的な音にするために、ビブラートを多用したからだと思います。
また、そのように弾くべきだという当時の教則本もありますし。

でも、斜めに押さえると、適切なビブラートも付きますし、楽な押弦が出来ます。
フレットのない、チェロでもそうなのですから、フレットの付いているギターはフレットも利用できるので、
もっと楽に押弦出来ます。

左手の指で一番弱いのは、当然小指です。ですので、この小指を一番理想的な押さえ方、
一番接触面積の多い押さえ方で押さえておいて、他の指は多少犠牲になってもらうのが、良いと思います。

これで、押弦 左手の 力の入り過ぎを防ぐことが出来ると思います。

一般的に言われている、フレットのすぐ際をフレットに並行に押さえては、
脱力すると弦がビビってしまって、音になりません。まして、フレットから離れると、
かなりの力で押さえないと、音がビビってしまいます。

これでは、脱力など不可能です。

私のお勧めする方法でも、和音を弾いたり難しいパッセージでは、フレットから離れたり、
フレットに平行になったりすることもありますが、ほとんど、良い方向に指を使うことに慣れていれば、
指の方で調整してくれるようです。それと、よく聞くことで。


そして次に問題となるのが、ショートスケールの良い楽器が少ない、
さらにもっと弦長の短い楽器で良い楽器が少ないという問題です。

この問題を解決するために、せっせとお弟子さん達に弦長の短い楽器を作ってもらっています。
ですが、もっと大きな問題があります。

それは、ギターを弾いている人、弾きたい人は大きなモダンスペインギターを弾きたい人,
モダンスペインギターの音に憧れて、ギターを始めた方が多いということではないでしょうか?

私などは100万円のモダンスペインギターよりも、リサイクルショップで買った、
出来の良い5000円のギターの方を弾きたいと思っています。

でも、こんな人はほとんどいないでしょう。私が65センチのギターが標準で、
本来の大きさのギターであると考えている人用に弦長64センチのギターを作っていますが、
重量も1キロ以下です。
(でも、なぜか、トーレスさんが作っていた、前期のギターの標準的な大きさと同じです。)

このギターを分かってくれる人は、100人に一人か二人のようです。

お弟子さんたちに作ってもらっている弦長の短いギターは、
この私の楽器の設計を基にしているのでさらに理解していただける人が少ないように思います。

でも、楽器が軽く、楽器全体が鳴って、反応も良く、音の分離の良くて、音の減衰も長いそして、
バランスも良い、となれば、音楽的にギターを弾こうと思っていう人には、
理想的な楽器ではないかと思っています。

そして、このような楽器を弾けば、右手の脱力は簡単にできると思います。
力を入れなくても、鳴るのですから。いや、力を抜けば良い音がするからです。


このような楽器は、更に良いことがあります。それは、リコーダーや他の楽器との合奏、
歌の伴奏などによく合う音の楽器なのです。

さらに、ジャンルも選ばず、クラッシクだけなくブルースからジャズ、ショーロやアイリッシュの音楽、
いろんな音楽に使える楽器だと思うのですが。

モダンスペインギターの大きな、重い、反応の鈍い、長い弦長のギターで体を壊すより、
軽い、反応の良い、短い弦長のギターで音楽を、楽しみませんか?


そう割り切ると、私のブログ 2013年9月11日の 記事にお勧めの楽器として、
名古屋のギター専門店が特注で アリアさんに作ってもらっている 
弦長 61センチのギター(定価 10万円 プラス税 )や 

小平さんの 6万円くらいの 弦長 59センチのギター や 
マルチネスの 58センチの 4万円くらいのギター などで、
音楽が楽しめるギターが手に入ります。

それかもう少し良い楽器を欲しいという方には私のお弟子さんが作っている、
61センチや59センチのギター(定価は 30万円ほどです)があります。
(この楽器を宣伝しているわけではありませんので。あくまでお知らせです)


長くなってしまいましたが、無理せず、体を壊さず、
ギターを楽しんでいただくための一つの方法として書かせていただきました。
  1. 2015/07/05(日) 01:48:31|
  2. ギター
  3. | コメント:0
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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