古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

近況とコメントを頂いて そのお答えなど

あっという間に、6月も半ばになってしまいました。

いつものように、バタバタしているうちに2週間ほど経ってしまいました。

今月は月のはじめに、兵庫県では割としっかりやっている、中学生の
トライアルウイークで 中学生 2人を預かって、月曜から金曜日まで
楽器製作や、修理の仕事をしてもらいました。

兵庫、特に篠山市は トライアルウイークの発案者である、河合隼雄さんの
出身地ということもあって、今でも熱心にやっています。

吹奏楽部の二人だったので、興味があるのはコントラバスということで、
大正時代に日本で作られたコントラバスの修理を主にやってもらいました。
といっても、中学生にとって難しくなく、簡単すぎない仕事を作るのは、少し苦労です。

そこで、こんなクランプを作ってもらったり、バスバーを豆かんなを使って削ってもらったりしました。

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友人のジャズベーシストの楽器だったのですが、事故で楽器は壊れてしまったのですが、
表板だけなんとか使える状態だったので、そのうち、この表板を使って、
楽器を復元しようと思っていた楽器です。

大正時代にコントラバスを作った人がいたという記録は無いようなのですが、
エゾ松のようですし、非常に薄い表板で、とても良く鳴る楽器でしたので。
表板はチェロよりも薄く厚い所でも、5~6ミリくらい薄い所は3ミリくらいしかありませんでした。
本来の姿の6弦にしようと思いましたが、5弦の楽器にする予定です。


そして、コメントのお返事です。
コメント欄でお返事するより、二つのブログにかかっているようなので、
ここで考えていることを書かせていただきます。

ギターの横板、裏板その他(4月29日)とアコースティックギターの不思議(5月27日)
に関してのコメントだと思うのですが、ドレッドノートのような大きなアコースティックギターの
横板を1.5ミリくらいに薄くすると、楽器が鳴ってくるか?強度は問題ないのか?とのこと。

大きく頑丈なアコースティックギターで、横板だけを薄くしても、少しは音に影響があると思うのですが、
全体の楽器の強度、重さ、特に表板の構造の方に、大きな問題がありそうです。

確かに、厚み2ミリ以上の横板では楽器は鳴らないと思いますが、
アコースティックギターは楽器が鳴らないので、楽器を鳴らすために弦のテンションを高くしています。
ライトテンションでも70キロぐらいもありますので、(あの頑丈そうなチェロでテンションは70キロぐらいです)
まず、テンションを下げても、鳴るような構造の表板にすることが先ではないかと思います。

以前のブログで書かせていただいたように、テンションが70キロのチェロで横板は楓で1.6ミリくらい。
テンションが110キロから120キロと言われている、コントラバスでも2.7ミリくらい
(メーカーの人に聞きました)です。

テンションも弦によって違いますし、横板の厚さもメーカーによって違うので一概には言えませんが、
楓の比重は0.6くらいローズウッドは 0.9くらいなので重さや密度だけでは判断できないのですが、
アコースティックギターの横板はコントラバスなみ?いやそれ以上でしょうか?

コントラバスの横板は、幅が20センチもありますが、
それに対してアコースティックギターの横板は半分くらいですので、
もっと薄くしても強度的に大丈夫かもしれません。

そうすると、もう少し厚さを落とすと楽器は鳴ってきそうです。
(でも、その差はそんなに大きくはないと思います)

楽器が壊れやすいのは、強度が丈夫なところと、弱いところがあると、
その境目や、弱いところが壊れますので、横板よりはるかに強度がある、
表板、裏板との兼ね合いで、横板が壊れることもありそうです。

結果として、横板だけを薄くするのは少しの音の改善のためには役に立ちそうですが、
強度的に(バランスの問題で)問題がありそうです。


以前に頂いていたコメントで、少し気になっていたので、
ラミレス3世さんのもとで長年ギター作りをしていたギター製作の先輩に、
ラミレスさんのギター演奏技術はどの程度だったか聞いてみました。

そうすると、第一声は「プロほどではないけれど、当然ギターは上手に演奏できた」とのことでした。

今から、45年ほど前ですが、私が教えていただいていた、神戸ギター研究所でラミレス3世のギターを
一度に、7台ほど直接買ったことがあります。それを、先生を中心に分けあいました。
(私はもちろん買ってはいません。665ミリの弦長では演奏困難ですし、安いといっても
お金もそんなにありませんでしたので)

その楽器を分けあう現場にいたのですが、当時は楽器の中にスタンプが押してあって、
お弟子さんの誰が作った楽器か分かった時代です。

それぞれの楽器が、いろんなお弟子さんのスタンプだったように思います。
でも、違うお弟子さんが作った楽器が、ほとんど見分けが付かないくらい、
プロがいくら弾いても違いがほとんど無いように、どの楽器も作られていました。

こんなことは、楽器が分かるということもあると思いますが、かなり 弾けなければ
同じレベルの楽器に仕上げる、作らせるということは、難しいように思いました。

セゴビアさんが使っていたラミレス3世のギターを弾かせてもらったことのある友人は、
その音が非常にしっかりしていて、いわゆるラミレスのギターのイメージはなかったと言っていました。

セゴビアさんがアドヴァイスをして彼用に作ったギターは普通のギタリストが弾くギターではなかったようです。

そういえば、ブーシェさんも、自分が弾くギターを近くに住んでいた私の大好きな 
フリアン・ゴメス・ラミレスさんに作ってもらう時に、工房に度々訪ねて、
ギター製作のあらましを学んだだけですね。

リュート2重奏を長年やらせていただいた、岡本一郎さんはよくブーシェさんのところに行くと、
必ずソルのセゴビアのエチュードの17番を弾いてくれと頼まれたそうです。

ブーシェさん自身はもっと簡単な名曲やポピュラーな曲を弾いてらしたそうです。

ロマニロスさんも自分が弾くためにギターを作られたのが最初でした。
ロマニさんは独学の巨匠とも言われていますね。

フレータさんもセゴビアさんのギターを聞いて、ギター製作を始めたと言われています。
ギター製作については習っていないようです。

ギターに限らず、楽器製作をしていて、一番の楽しみは(一番というと語弊がありそうです、
大きな楽しみの一つでしょうか)楽器が出来て,弦を貼って最初に楽器が弾けるということです。

誰よりも早く、それまで、ただの木だったものが、楽器の形になって音が出るようになって、
最初に音が出せるのです!

楽器が弾けなければ、その楽しみを味わうことができませんので、
楽器を作る人は楽器を弾けるようになりたいと思うのかもしれません。

私の周りのギター製作家、よく一緒に展示会を開く製作家は、同じ篠山の田中さん、
同じ兵庫県の黒田さん、愛知の大西さんなどは、演奏もとても上手です。

それと、有名なギター製作家の作ったギターを買った演奏家が、
もっと鳴るはずなのに、何故か鳴らないので、見て欲しいと言われたことがあります。

よく見ると、ブリッジの骨棒の弦に当たるところが、ほとんど平で弦の振動を殺していました。
同じように、ナットの骨棒も溝で弦が遊んでいて、音が吸収されていました。
簡単に修正できましたので、修正すると本来の楽器の鳴りになりました。
これも、簡単な曲が弾ければ分かることです。

ただ、開放弦を鳴らしたり、音階を弾く程度では分かりにくいようです。
同じ演奏家がハウザー3世の楽器をプロのギター調整をする方に調整を出したところ、
楽器が鳴らなくなって帰ってきた。見て欲しいとのことでした。

これは、ブリッジの骨棒に溝が切ってあって、楽器が鳴っていなかったのです。
調整をされた方は、溝を切ったほうが良いと思ってされたのでしょうが、
弾いてみると明らかに鳴っていないのが分かると思います。

製作家にとって、楽器は弾けるほうが楽しみも多く、役に立つことが多いように、私は思います。
  1. 2015/06/17(水) 00:46:33|
  2. ギター
  3. | コメント:2
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コメント

そうですね、 楽器を作る方(もちろん あるレベル以上の方
を特定して)、どうなのでしょうね? 皆がみなその楽器を上手に弾くわけではなくても、なぜかその楽器の「音の出し方」がとてもうまいですね。平山さんも田中さんも・・
いつも不思議に思っています。管楽器でもその経験をします。
ブーシェさんは、私達の前ではあまりギターの音を弾かなかったけれど、よくピアノで・・上手ではないけれど いつも亜麻色の髪の乙女を弾いていました。やはり音が美しかった。
今週からフランス行きです。やっと最初の週の予定が確定、、音楽院の創立100年記念コンサートでは、歴史上の(失礼ないいかただけれど)と一緒します。伝説や風聞ではなくて歴史を生きてきた名人たちと一緒できるのはとてもしあわせなことです。わらってみてやってください。とりわけ音楽院の企画は古楽や音楽に詳しい人なら笑えます。
www.koube.jp/2015Nicehtml/2015NiceEte.html
  1. URL |
  2. 2015/06/22(月) 22:23:59 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

有難うございました

質問をしておいてお礼が遅くなり申し訳有りません。
丁寧な解説をしていただき有難う御座いました。

アコースティックギターにおいては、横板の厚みよりもトップを如何に鳴らすか、と言うところの方が重要ということですね。
素人なりに手持ちのギターの改善策をいろいろと考えているのですが、大変奥が深い世界ですね。

今後も変な質問をさせていただくことがあるかも知れませんが宜しくお願い致します。
  1. URL |
  2. 2015/07/14(火) 20:14:18 |
  3. チューハイ #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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