古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

糸巻き その2

前回の、糸巻きのブログを読んでいると、少し誤解を招きそうな所がありましたので、
訂正せずに、こちらで説明させていただきます。

材料と言う事ではないのですが、価格の安い糸巻きを使っていると書きましたが、
私は、ギターショップ『アウラ』さんの,HPで紹介されている、ドイツのシャーラー1万円くらいの物より
少し良いもの。後は、スローンさんの5万円くらいの物まで使っています。

国産では、1社くらいしかないのですが、私にはデザインが合わないのです。
デザインが悪いと言っているのでは、ありません。私には合わないのです。
唯一、私の楽器に合いそうで、軽い中級品は、軸を象牙に換えて使っています。
これは1万円はしません。
私には合わない理由が、もうひとつあります。

            
                   img523.jpg
         現代ギター社刊 クラッシクギター名器コレクション 2008 より


上の写真のように、中級品でも沢山のリングを使われています。
メーカーの技術屋さんの、創意工夫の賜物なのでしょう。
素晴らしい、技術だと思いますが、私の感覚には合いません。
くれぐれも、言いますが良くないとは言ってませんので。


でも、私にとって、最高の糸巻きは19世紀ギターのパノルモに付いている、ベーカー社の物です。
当時の糸巻きは、職人が手でネジをやすりで削って作っていたといいます。
軽くつまみも回って、抵抗がなく弦のテンションを直接感じます。
私達が見るベーカーの糸巻きは200年近く使われてきた物ですが、
それでも、スムーズに回ります。
もちろん、リングとか最低限の部品以外はなにもありません。

同じような、糸巻きが最近使い始めた,RUBNERというドイツのメーカーの物です。
メーカーは、有名ではありませんが、1864年からのメーカーで、
同じドイツの有名なメーカー(ライシェルのことでしょう)
よりいい物を作っていると言っています。
このメーカーの物も、リングなどは無く、最低限の部品だけです。

今の、工作技術で、普及品だから精度を落として作って、
高級品は精度を上げて作るとかするより、
同じ精度で数を作った方が、効率は良いとおもいます。

一番大事な、ウオームギヤとウオームホイルが同じなら、
部品数の少ないシンプルな物を選んでいるのです。

実は、私は自分の楽器に合った、軽くて性能の良い糸巻きを作ろうとしたことがあります。
ベーカー社の糸巻きのような。

何故、ベーカー社の糸巻きはスムーズに回るのか、ネジの専門家に聞きました。

一番の差は、ウオームホイルにあたるウオームギヤの数が現代のものは、2枚に当たっているが、
ベーカー社の物は3枚当たっている。
つまり、3分の2の力で回っていると、教えられました。

                        UNI_0848.jpg

写真の物は、ベーカー社の物ではありませんが、フランスの19世紀ギターについていたものです。
これは、ウオームホイルを大きくすることによって、3枚当たるように工夫されています。
ベーカー社の物は、ウオームギヤの直径を細くすることによって、3枚当てています。
その細いウオームギヤは、手で作らないと作れないそうです。

最終確認はしていませんが、もう一人のネジの専門家は、当時の機械だったら、
作れるだろうとの事でした。
当時の機械とは、種子島に鉄砲伝来とともに、ネジを切る機械も入ってきていて、
その機械だったら、切れるだろうということでした。

でも、当時の機械はありません。現代の技術で作れないかと、
ネジを作っている友人から、ネジを切る機械を作っている会社を紹介してもらい、
詳しく調べました。

専用の刃物を作れば、現代の機械でも作れる。私の会社は自分のところで、刃物も作っているから、
他社に比べて、安く作れます。との事でした。
その安い、刃物を作るだけで、100万円はかかるとの事でした。
そして、実際ネジを切って、作ってもらうと、1個1万5000円くらいにはなるとのこと。
数が沢山だったら、もっと安くなるそうですが、同じような糸巻きを欲しいと言ってくれる、
製作家もいないだろうし、原価で10万円以上かかります。
あきらめました。
でもこんな事をしている、ギター製作家はいないだろうな、と思いながら、いろんなネジ関係の
技術屋さんと会いました。面白いことが分かったり、勉強にはなりました。

これも、自分が作りたいギターのためでした。

こんな事をして来て、今の糸巻きを選んで使っています。
装飾がきれいとか、素材にお金がかかっているとか、そんな事は関係なく、
スムーズに回ってくれて、止まってくれる糸巻きが良いのです。
出来れば、軽くて。
そんな、糸巻きを付けたギターを、私のギターを選んでくれた方は、
気に入ってくれると期待しているのですが。


         
  1. 2012/01/26(木) 15:41:58|
  2. ギター
  3. | コメント:3
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コメント

ご使用の糸巻きについて

いつもブログを楽しく拝見させていただいております。
ご使用の糸巻きにつきまして、国産品でお使いの糸巻きはゴトーガット社の35G620または35G480でしょうか?
また糸巻きの軸を象牙に改造されているようですが素人には難しいでしょうか?
以上教えて頂ければ幸いです。
  1. URL |
  2. 2013/01/18(金) 13:57:37 |
  3. 山田 #zGZQHvwo
  4. [ 編集 ]

山田 さん

コメントありがとうございます。
そして、ブログも読んでいただいているようで、ありがとうございます。
コメントの返事が遅くなってすみません。

糸巻きの軸の改造は、私は小さな金工用の卓上旋盤で作っています。
木工旋盤やボール盤でも出来ない事はないかもしれませんが、かなり
難しいと思います。

それと、一般的なモダンスペインギターでは、軸を変えても
その影響はとても小さいと思っているのですが。

それから、私が使っている ゴトーのペグは、35G620 です。
デザインが、ゴトーっぽくなくて、比較的軽いので使っています。
〈私はゴトーのデザインが馴染めないのです。唯一このペグだけが
使えるデザインです)
  1. URL |
  2. 2013/01/23(水) 23:57:10 |
  3. こがっき #-
  4. [ 編集 ]

はじめまして。過去の投稿にコメントしてすみません。ルブナー社の糸巻きについて触れられていたので色々お聞き出来ればと思いました。ルブナーは現在でもお使いでしょうか?フラメンコギターに付ける糸巻きで悩んでおりまして、あまりゴツい糸巻きよりは軽い物がいいかとルブナーに興味があるのですが、お使いの方が少ないためアドバイスも頂けない状態で踏ん切りがつかないでいます。売っている店も少ないので、海外から輸入されたりしているのでしょうか?今現在はどのような糸巻きをお使いでしょう?
  1. URL |
  2. 2016/10/23(日) 22:14:12 |
  3. Flamenca #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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