古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

読み物 その1 楽器を作るのに頭の良さは必要?

今までも、充分に分かりにくい事や、専門的な話が出ていましたが、これから、さらに
分かりにくい話が続きそうです。ここらあたりで、気分転換の読み物をひとつ。
と言っても少しは楽器作りに、関係してくることなのですが。


たまたま、テレビをつけて見ていると、(30年ほど前の話です)今は人間国宝になられた、
桂米朝さんが出てられました。

ある人が米朝さんに「落語家になるには、沢山、話も覚えないといけないし、
頭が良くなくてはなれませんか?」と聞いたそうです。
それに対して、米朝さんは「それは、話も沢山覚えないといけないし、
アホでは出来ませんな。しかし、頭が良すぎてもいけません。私ぐらいがちょうど
ええんですな」と、答えたそうです。

まさに、楽器作りもそうだと思うのです。
古い話ですが、こんな経験があります。

有名なチェンバリストで、沢山の楽器(オリジナルのチェンバロです)を弾き、資料も沢山
持ってられる方がいました。
彼が、初期フレンチの素晴らしい図面を持っていらっしゃいました。全体の大きさ、バランス、
構造どれをとっても、とても良さそうな楽器です。
この方向で作れば、良い楽器が出来そうでした。
ただ、初期の楽器なので、そのまま作ると、音域が狭く、使い勝手が悪いのです。

その後、すぐに有名なチェンバロ製作家に会いました。(とても、高学歴な)
「初期フレンチで素晴らしい楽器があって、少しだけ音域を広げると、とても良い楽器
が出来る」と某有名チェンバリストが言ってましたよ。と言うと、
即座に「これだから、素人は困る。1音変えたら、全然別の楽器になってしまう。
バランスも悪くなる」
とたちどころに、否定されました。
私だったら、この楽器の良さを考え、1音増やすことのメリット、デメリットを考えます。
頭の良い人は、判断が早いのでしょう。

逆に、そんな事はするまでもなく、分かっているだろう、と言う事をやっている人がいます。
結果はどう考えても、見えてるし、材料、時間の無駄と思われることを、やり続けている人が。
例えば、ギターの表板を4ミリ5ミリにすればどうなるか?やってみよう。
ギターの横板を5ミリにしてみたらどうなるのか?やってみよう。(これは実際にやっている人がいますが)
裏板をヴァイオリンのように削りだしで、作ればどうなるだろう?とか。
もっと、あっと驚くようなことを。

もうすでに、過去の沢山の製作家が試していることや、
調べればすぐに分かる事を何年もかかってやっている人がいます。
何百年も千年も生きることが出来て、いろんな無駄な事をやってもいい環境
(物凄いお金持ちで、いくらでも、楽器作りにお金がかけられる人)
だったら、そのうち、良い楽器が出来るかもしれませんが、人生には限りがあります。
長い年月かけて育ってくれた、材料にも悪いです。
実際に、そんな人がいました。出来てはすぐに壊し、また、作ってはこわしている人が。
一番材料がかわいそうでした。

桂米朝さんの話ではありませんが、「楽器を作るには、私くらいの頭がちょうど良い。
良くも悪くもない頭が」とつくづく思います。




  1. 2012/01/23(月) 23:56:17|
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kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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