古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

もっと、もっと、簡単な曲を弾きませんか?



続いて,前から思っていることを書かせていただきます。
これから、さらに忙しくなるのが分かっていますので。


最近、ギターの演奏を聞かせていただく機会が増えました。

そこで、いつも思うのです。
「なぜ、こんな難しい曲を弾かなくていけないのだろうか」と。

プロなら、難しい曲を弾くことが要求されているかもしれませんが。

自分が弾ける、100%の曲なら良いのですが、200%くらいの曲を
弾いてらっしゃる方もよく見かけます。

出来れば、自分が弾ける50%くらいの曲を弾いていただけると,聞いているほうも
楽しんで聞けるのに、と思うことが。

これまた、自分のことは棚に上げていますが。
(練習もせず,ユーチューブに上げさせていただいていますが、
私の場合は楽器の紹介と言うことで,上げさせていただいていますので、
すみません)

アマチュアの特権、簡単な曲を美しく,音楽的に弾くということを、
もっと楽しみませんか?

レッスンを受けていて,課題曲として難しい曲を弾かないといけない場合は、
別として。

それと、前回のブログで書かせていただいた、「ぶんぶんぶん蜂が飛ぶ」
を弾けるギタリストはあまりいません。

音の数の多い曲を弾けるギタリストはいても。

簡単な曲ほど難しいのです。

楽器もそうだと思います。

例えば、ちょうちょう をミから始めて弾くと、ミ ド# ド#となりますが、
1弦開放の ミ と ドの音の間に隙間があっても、重なってもいけません。
楽譜にはそうは書いていないのですから。音量のバランスも大事です。

また、リズムもずれてはいけません。

ギターの曲は1声の曲はありませんから、旋律に対して低音が合いの手に入ってくれて、
曲が弾けていると言う人をよく見かけます。

上の声部のメロディーだけを弾いてくださいと言うと、たちまちリズムがおかしくなってしまいます。

例えば、た、たーん と言うリズムのメロディーはよく出てきます。
でも、ギター曲の場合 た、た、ん、たと言う形、3拍目に低音が入って、
リズムが取りやすくなっていますが、この ん を取って、た、たーん と言うメロディーだけを弾いてもらうと
正しく弾けないのです。

例の曲としては

ソルの練習曲 OP 60-6 などは、低音の合いの手を取ってしまって,旋律だけを正確に音楽的に
弾くのはとても難しいことです。

これは、楽器を判断する時にも言えます。

ちょうちょうの始めの音を1弦開放のミとすると、よくある楽器のように、
1弦だけテンションがきつくて、硬い音で2弦は普通の音だと、ミ ド ド
と音色の違いで,スムーズに弾けなくて,歌えないのです。

各弦の特色を生かして演奏すれば良いのでは?と言われるかもしれませんが、
私は、ミ ド ド と歌って弾きたいのです。
また、ミ ド ド と歌える楽器を作りたいのです。

もっと差のあるのが、5弦と6弦です。
5弦まで鳴っていて、6弦になると、極端に鳴っていない楽器だと、
低音の声部が歌えないのです。


難しい曲を弾く、欠点は沢山あるのですが、
音楽の大切な要素、「メロディー、ハーモニー、リズム」が全て壊れると思います。

難しい曲なので、音が正しいタイミングで出ない、(右手も左手も)指を拡張しきれずに、
音程が狂う、当然和音も濁る、また難しい曲なので、指が付いていかず
リズムがずれてしまう。
メローディーも 繋がらず、歌うことも出来ない。

昔、植木先生に「ギターは旋律楽器である」と教えられました。

ギターから、歌うことを取ってしまうと、ギターの魅力の半分以上、私は
7割8割失ってしまうと思っています。

難しい曲を弾くと、このギターの魅力の大部分を捨ててしまうことになると思うのです。

プロが簡単な曲ではお金が取れないのに比べて、アマチュアは簡単な曲で
音楽を楽しむことが出来るし、聞いている人も楽しめると思うのです。

でも、何年かかってもあの曲は弾きたい、と言う曲もあると思います。
そんな曲は、何年もかけることが出来るのも、アマチュアの特権です。

一生 誰にも、演奏は聞かせない、と言う人もほとんどいませんでしょうから、
弾くほうは何十回、も弾いているので、曲は分かっているでしょうが、聞くほうの人は
初めて聞く人が多いと思います。禁じられた遊びとか名曲だと何回も聞いている人もいると思いますが、
貴方の演奏は初めてかもしれません。そんな人に貴方の音楽を聞いてもらうのに、難しい曲だと
理解してもらえない、と思いませんか?

なんか、我ながらくどくなってしまったように思いますが、
われわれ演奏のアマチュアは、もっと、もっと簡単な曲を音楽的に
というか、音楽的に間違ったことはせず、楽しんで弾きませんか?

音楽的にということで、休符が無視されている演奏もよく見かけます。
天才的な作曲家が、意味も無く休符は入れていませんから、
もっと休符を大切にしてみませんか?と自分にも言い聞かせて、
そろそろ終わります。

演奏家でもない、私が音楽的な分野の話しをうっかりしてしまいましたが、
ギターはただの道具ではなく、音楽を表現する道具です。
その道具を作る人間にとっては、大切なことだと思うので、
私の思っていることを書かせていただきました。

それと、最後になりましたが、演奏家の方から、アドヴァイスをいただきました。

暗譜と楽譜を見ないで弾くこととは違うことだと。

暗譜というのは、五線譜を前にして、よどみなく最後まで楽譜を書けることだと
言われました。

また、そのことが、一度楽譜を見ただけで出来るのがプロだと。
もちろん、和声分析だとか、曲の構造はたちどころに分かってです。

私など、何十回、何百回見ないとわからないのですが。



まだ、音楽家の卵の友人の息子さんの話です。

友人でリコーダーコンソートをやっていて、自分のHPにどんどんリコーダー用の楽譜を
アップしている人がいます。

HPにアップすると、その友人の息子さんから電話があって、「何小節目の、どの音が間違っている」
と直ぐ電話があるそうです。

また、ある日、友人が古いイタリアのオルガン曲を見つけてきて、リコーダー4声の曲に
編曲しました。

たまたま、そこに友人の息子さんがいたので、「テナーパートをテナーガンバで弾いて」
と頼むと、「楽譜は要りません」との返事。

彼は、何年か前にその楽譜を見たので、頭に入って入て、テナーパートだと
どの動きか分かるので、楽譜は要りません、とのことでした。

友人は「あいつの頭はどうなっているんだ」と驚いたようです。
誰でも、驚きますよね。

こんな人がプロの演奏家になっていくのでしょう。
もちろん、演奏技術も世界のトップだと思っています。
そして、ものすごい量の勉強を、ものすごいスピードで
やっていって、プロになるのですから。

我々アマチュアは簡単な曲を楽しんで弾きませんか?


 



  1. 2014/10/27(月) 01:22:40|
  2. ギター
  3. | コメント:5
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コメント

大事なこと

ある人のギターの実力を見る方法は、BPM40でちょうちょなどの小曲を弾かせてみることです。
ここで、きちんとした学び方をした人なら、問題なく弾けるのですが、そうでない人は、テンポ維持できない。
上手になれない人の問題点の大方は、リズムにあるとみて間違いないです。
今風に言うならば、ノリの悪い人、ということです。

指がよく動くとかそういう次元でないので、ギター指導者、独学で学ぶ人はよく心して基本を学ぶことが大事だと思います。
私が偉そうなことを言ってますが、過去に教えていた経験からの実感です。

ゆっくりとしたテンポで、正確に弾けない人が、標準かそれ以上のテンポで弾けるわけがないのです。これは真理ですね。
ギターがうまく上達できないという人の7割以上は、リズムキープができないことが大半です。
私が、主要なコンクールに選抜されるような人の演奏を見ても、首をかしげたくなる人もいるほどです。それと自分のレベル以上の難曲に取り組まないことも大事です。

簡単な曲を正しく丁寧に弾いてみることの重要性、ほんとうに大事なことだと思います。
  1. URL |
  2. 2014/10/28(火) 12:35:03 |
  3. ギター弾き #cLe41hIg
  4. [ 編集 ]

アマチュアへの期待

こんにちは。
プロとアマチュアの関係なのですが、アマチュアはプロから刺激を受けるのがほとんだと思います。
これは仕方ないと思うのです。物真似、パフォーマンス、ギターも同じメーカーを購入、立ち居振る舞い、憧れのギタリストのように弾くにはということを日夜考えておられるのだと思います。
 コンサート会場にも熱心に足を運び、研究する。ギターの弦もプロと同じメーカーにしたりしてです。

近年、アマチュアを対象としたギターコンクールが日本にもいくつかあります。ですが、10年も前と比較すると難易度、レベルも上がり、セミプロ級の腕前の人がいたり、安易な応募では参加賞をもらうのが関の山です。審査員もだんだん要求レベルを上げてきており、本来の誰でも楽しめるようなコンクールではないです。そこには、厳しい競争社会が存在しております。楽しむための気軽さがどこかへ吹っ飛んでしまい、1位だ、2位だを争っています。

とにかくも、日本人は物事に順位を付けないと気が済まない性分なのだと思ってしまいます。どうして、頑張ったで賞、 努力賞、好感賞、人気賞、とか、順位を気にしなくてもいい賞を設定できないのでしょう。勝ち負けがそんなに貴いのでしょうか。アマチュアのギターコンクールにまで、競争原理を持ち込むのでしょうか。私は以前から納得がいかなかったのです。

こういうせちがらい世の中になると、純粋に音楽を楽しむというよりも、常に競争、プロにギターを習うにも、世界○○コンクール第一位の先生に習うほうが良いとか、そういう傾向になります。

確かに、プロとして生活していく人は、登竜門としての肩書きが必要なのはわかります。でも、アマチュアはそうではないのだから、やたら難曲に取り組んだりせずに、レベルに合った簡単な曲を芸術的に弾けばよろしいのです。
アマチュアの中にも、そこらのプロに負けていない人もいて、所有ギターも超一流、ロビーコンサートや自費演奏会など開いてる人もいますから、一概に全部アマチュアひとくくりというわけではありません。

私は、今のアマチュアコンクールの是非の問題はあると思っています。順位導入や曲の選定など、とてもその意義に疑問を持たざるを得ません。アマチュアに何を要求するのか、世界で活躍してもらうのが目的なのか、なんなのか、さっぱりわかりません。
 私も、正直、ちょうちょうの曲を音楽的に正しいリズムで弾けることのほうが良いと思っています。
  1. URL |
  2. 2014/10/29(水) 09:47:51 |
  3. ash #TTIFl2RA
  4. [ 編集 ]

ビート感ってポイントですね。ベースラインとメロディーの弾き分けをやるとリズムが途端にくずれる人ってたくさんいます。
要するに、アンサンブルをやるとすぐに露呈しますが、他人の音を聞くことが出来ない人です。

その点、オーケストラの指揮者ってすごく器用なセンシティブな感覚を持っていると思います。みんなどんな音出してるかすぐにわかりますし、誤魔化しが通用しないです。
僕は、ギター曲やリュートを教える場合には、必ず生徒には弾き分けをまずやってもらいます。まず、ベースの動きを把握して歌ってもらいます。ドー、ドー、シー、ソー、ラー、ミ―というようにベースラインを歌って弾く。その次にメロディーを載せます。
すると、曲の構成、和声感が出て、三次元的に生き生きとしてきます。

 簡単な曲からこういう歌って弾くことは上達のポイントです。歌えないものは本来弾けないものです。
そして、楽典などの音楽的教養の無い人、無用と思っている人、いつかやろうと思ってやらない人の弾く曲には、音楽的にどこかに欠点があるものです。
指導者の責任は重いのです。初心者からバランスよく指導しないといけなし、これを怠っている人が多いのです。ギターやリュートを習ってみたいという気持ちはとてもいいことです。趣味の範囲でも、僕は良き指導者とメソードを持つ教室を探すべきと思います。町の教室でも、発表会もあると思いますし、趣味でも、説得力のある演奏をすることは大事です。時間を使って聞きに来てくれたお客さんにも満足感をもたらすと思います。

 よく、趣味だから高い楽器は必要ない、安価なもので上等だとか、プロになるわけでないのだから、そこらの物でよいとかの意見を多く聞く。
だけど、待ってよと言いたい。趣味でもお金を費やすのです。先生にも月謝を払うわけだし、払った分の成果は元を取らないと損であろうと思うのです。楽器も価格相応で品質は変わるし、指導者もそう。

どうせやるなら一流の楽器、指導者、メソードでやるのが上達の最も近道だと思うのです。少しきつめの私見だと承知していますが、せっかく始めた楽器だからこそ、最高の環境で学び人生で最も充実した時間、満足感を得て欲しいと願うのです。
 妥協と安易な判断は、結局あとになって後悔することのほうが多いと思うのです。ギターやリュートに限らず、物事を初めて学ぶ場合はいつもその事をまず考えること。人生は一回しかないのだから。
  1. URL |
  2. 2014/10/31(金) 17:32:13 |
  3. 太郎 #vmOTHf2Y
  4. [ 編集 ]

訓練方法の一考察

太郎様

 はじめまして。

 ベースラインとメロディーの弾き分けの話は、私も重要な練習方法と存じます。
初心者がリュートを先生に習う場合、最初のほうで指導を受ける部分ですね。
最高の環境の用意というのは、私もそう思うのですが、やはり個人の生活・経済状況もあるので理想どおりにはいかないところだと思います。

アマチュアでも、どうせ始めるならトップを目指すくらいの意気込みでやるべきという部分も、実際どうかなと思うところもあります。
20代、30代くらいの人であるならそれも良いでしょうが、60代以上にもなると考え方は変わると思います。
本当に小さなサークルコミュニティーの中で、失敗もご愛嬌で楽しく、笑いがあって、日常を謳歌できればよいと考えるご年配者もおられると思うのですね。ギターの楽しさ、リュートの楽しさは、そういうことがいいんじゃないでしょうかね。

本当のプロというのは、暗譜した場合、楽譜にスラスラ音符を書ける人とういう定義だと私も思います。
さらに付け加えるなら、暗譜して指板を見ながら演奏する行為は、暗譜ではなくて、指を置く場所の記憶に頼って弾いているだけです。
ですから、度忘れすると、演奏が止まってしまうことが起こるのです(一瞬かもしれませんが)。

音符で暗譜している真のプロは、弦が切れても他のポジションで音を追えます。指の記憶に頼る人は、切れた時点で演奏が止まります。

だから、簡単な曲を練習している時点から、音楽は音符で理解し、指板のあらゆるポジションで即座にその音を押さえられる訓練が必要です。
言い替えれば、指板を一瞥しただけで、鼻歌まじりの適当な曲を歌いながら即座にその鼻歌の音を押さえられること、これが完璧にできればアドリブ(即行演奏)も自由自在です。

 バッハは即行演奏の大家といわれますが、鍵盤のあらゆるポジションの音を任意に拾いだしても、全部声に出して歌えたのは間違いないでしょう。クラシック分野では、即行演奏は見る機会がありませんが、古楽分野、ジャズなどではあふれ出るような即行演奏を楽しめます。
たまには、ジャズなんかも聴くとよいかもしれません。サックスソロなんかをコピーできれば、大したものだと思います。

とにかくも、簡単な曲でも音楽は深く学べます。私は指の記憶に頼らない弾き方をお勧めします。演奏時は空間を見つめたり、前を見て弾きましょう。私が最も尊敬するCABOTIN様の弾き方はまさに音で理解して弾く演奏スタイルだと思います。
まずは、指板のスケールを音で理解し、押さえることができる訓練開始しましょう。
  1. URL |
  2. 2014/11/01(土) 11:13:11 |
  3. luten #j/YxEuLg
  4. [ 編集 ]

差し出がましくて恥ずかしいのですが

いろんな側面から皆さま話されていて、とても楽しく読みました。
私は発言し難いたちばなのですが・・・
切り分ける必要があると思います。プロ、アマチュアの区分は「職能 ハローワーク」としての区分は
厳然とある、と思います。ロストロボービッチさんが云ってられたように
「初心者のプロ演奏家というのは バッハ全曲をいつでも弾けて、リサイタルプログラムを五つ以上いつでも弾けて、
おもな協奏曲がいつでも弾ける。あたりまえだけれど和声 対位法で一位はとっているのは最低必要」 
というのは正しいな、とおもいます。僕もそれすらできない演奏家を同業だとは思えない。
でも これは職能組み合いでの基準で、本当に良い意味でのアマチュアは・・説明し難い・・
子供が弾く 禁じられた遊び に何度も感動して涙します。テンポなんて・・
本当に気持ちが走りたければ、突っ走ってもよいでしょう。ホロヴィツとトスカニーニの有名なチャイコン・・突っ走ってオケよりピアノが早く終ってしまったけれど、何度きいても感動します。
音楽は武道と似た面もあるけれど、決定的に違う面があると思います。
人の力量を見切ったり、評価する心には音楽は無い、と思うのです。
1本指で弾いた演奏にも感動することがあります。そういう無色な気持ち、
それはプロにとっても1番の才能だと感じのですが・・

反面、プロにとってもアマにとってもいちばん醜い聞きたくない演奏は
「こうすれば上手そうに聞こえる」という汚い意図が見える演奏だとおもうのですが・・
心に届くというのは、たぶん簡単で、でも平常心が音楽の心・・
ほんとうにすみません 差し出がましい青年の主張でした・・・
  1. URL |
  2. 2014/11/02(日) 23:40:17 |
  3. CABOTIN #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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