古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

製作編 1 図面 テンプレート

今月は日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会の夏期講習会があって、
メンテナンスで参加していました。

今年は40周年ということで、メンテナンスはギター製作家でヴァイオラ・ダ・ガンバやその他の
古楽器を作っている、石井栄さんと二人でした。

同じ部屋で4日間、仕事をするだけでなく、同じ部屋で宿泊していましたので、
楽器つくりの話,修理の話など普段あまりゆっくり話すことのない、
色んな話が出来ました。

私も35年ほど製作の仕事だけでやってきましたし、石井さんも長年プロでやってこられましたから、
貴重な話も出来ました。
そして、時間の余裕が出来た時にこのブログの原稿を作っていました。

ということで、本題の図面作りの話です。


一般的な、製作ブログや製作の本を見せていただくと、あまり詳しくは書かれていないようです。

モダンスペインギターの図面は、現代ギター社やルイ・コートナルさんの本
その他、原寸大の図面も手に入りやすくなりました。
いろんな製作家の図面や、資料も手に入ります。

既にギターを何台か作られている方は、
手に入る名工の楽器の図面を基に自分なりに工夫して作ってられると思います。

それは、名工の作った名器のような素晴らしい楽器を、
自分の手で作りたいという欲求だったからかもしれません。

でも、このブログでは今までになかったような、音楽的な表現のできるギターを、
みなさんに作っていただきたいと思っているのです。

それは、基音のはっきりしない、不純物の多い、低音の鳴らない(特に6弦)、
2弦3弦のハイポジションが鳴らない、ウルフが起きやすい、バランスの悪い、
遠達性のない、側鳴りがして弾いている人には、気持ちが良くても、聞いている人には伝わらない、
和音を弾いても濁ってしまうようなモダンギターではなく、
今ここに書かせていただいたような楽器と、正反対の楽器を作っていただきたいと。

でも、このような楽器はギター以外の楽器奏者や音楽家には、
「とても、綺麗な音のする楽器、こんな綺麗な音のギターは聞いたことがない」と言われるのですが、
ギターを弾いている人には、モダンスペインギターを弾きなれている人には、
気に入ってもらえないことが多いのです。

19世紀ギターを弾いてられる方、リュートを弾いてられる方には、すぐ気に入っていただくのですが。
そんなギターには、興味がないと言われる方は、製作法だけでも、見ていただければ、と思っています。

構造編で書かせていただいているように、一般的なモダンスペインギターに比べると、少し小型で、軽い楽器です。
ライニングや表板の削り方、横板、裏板の厚み、バスバーの配置など、モダンスペインギターとは大きく違います。
と細かなことを書いてしまいましたが、もっと大切なことを書かなくてはいけませんでした。

それは、音のイメージを持っていただくということです。

たまたま、以前から少しは気になっていた本が手に入り、読んでみると
ここで紹介させて頂くべきことが、書かれていました。

その本は 「僕らが作ったギターの名器」椎野秀聡 著です。

本のタイトル、とエレキギター、アコースティックギターを作ってきた人の本だったので、
今まで、読んでいませんでした。

ブックレビューでクラシックギターについても書かれているとのことで、読んでみました。
その中で、1970年頃に、クラシックギターの製作家を訪ねた、記事があります。
クラシックギターは彼の作る楽器ではないし、製作家を訪ねても直接のメリットはなさそうなのですが、
海外の名工を訪ねると,後々の仕事に役に立つと考えられたそうです。

その製作家は

ホセ・ラミレス3世、
エルナンデス・イ・アグアド
コンデ・エルマノス
マヌエル・G・コントレラス
アルカンヘル・フェルナンデス
ミゲル・シンプリシオ
ミゲル・ロドリゲス
ヘルマンハウザー2世
ロベールブーシェ
ホセ・ルビオ
ロマニリョス
という方々です。

そうそうたるメンバーです。

クラシックギターを作っている人でも、これだけの製作家と直接工房で会った人も、いないと思います。

そして、彼の感想です。

ブーシェさんや、ロマニさんの話で、ブーシェさんは彼の楽しみのために、ギター製作を始め、
ロマニさんは本格的なギターを買う金がなく、仕方なしにギターを製作し始めている。
彼らは天賦の才に恵まれた名人で、たまたま人生の途中からギター製作の道に入った、
例外と解釈すれば良いのだろうか?

でも、椎野さんはそうは考えない、彼らには、自身の内から、ほとばしり出るようにして、
あらかじめ「音」が在ったのだとと考えてられます。


楽器製作者にとって、最も本質で不可欠の要素、「己の求めるサウンド」が明確にあったからこそ、
二人は天賦の才を生かすことも可能だったのだろうと、考えてられます。


このこと、私の考える楽器製作と全く同じことです。

私は20歳前まで、絵を描いていました。

人にもよりますが、描くものが決まれば、その絵はほとんど出来たものだと、言っている人もいます。
私の場合は、7割くらい出来たという感じでしょうか。

楽器も同じで、作りたい音が明確にあれば、あとは、その音に近づく努力をするだけです。

幸い、私はいろんな楽器を演奏してきました。そして、どんな音が良いのか、
方向性は分かっていましたので、あとはそれに近づくようにするだけでした。
ですので、いろんな楽器を作れます。形は違っても、音楽を表現する道具なのですから。

皆さんにも、図面を書く前に、どんな音を求めているのか、はっきりしてから
書かれることをおすすめします。

でも、スペインの香りがするギターとか,いつまでも弾いていたいギター,と言うのでも良いのですが、
松村さんがよく言ってられたのですが、ブーシェ先生から,「カルテット」を聞きなさい チェロの音の太さ、
全体を支える音,歌うこと、そしてそれをギター作りに生かすこと。その他、ギターの音作りに関する話。
と言葉は違うかもしれませんが,このような事を話されていたと思います。
(松村さんの奥さんと先日会って、久しぶりに松村さんの話しをさせていただきました)

と言っても、具体的な図面はどうすればよいのか?
と言われそうですが、構造編で私の図面は色々公開させていただいています。
それらは、なぜ、このような構造になるのか、理由も上げさせていただいていますので、
一度目を通して頂ければ、と思います。

そこでおすすめは、弦長61センチ程度、重さ1キロくらい。横板1.3ミリ
裏板は1.8ミリくらい。ライニングは極力小さく、出来ればファンブレースはブリッジの下に通したい。
バランスをとるためにヘッドはなるべく小さく。と言う事くらいでしょうか。(身長170センチくらいまでの人なら)

どんな、音のイメージをお持ちですか?
そして、どんな図面を書かれますか?

次に少しだけテンプレートについて書かせていただきます。

楽器製作で,テンプレートは役立つ道具?です。
1台作るだけでも,作っておいたほうがよいと思います。

私は次のようなテンプレートを作っています。
(見難くてすみませんが)
材質は クリアーファイルのAー3 を使っています。

UNI_0014.jpg

材料にバスバーの位置などを示すテンプレートです。

UNI_0016.jpg

しっかりした,塩ビの板で、主に材料からの型取りに使っています。

よく2分の一と言うか半分だけのテンプレートも使われていますが、
原寸でフルサイズのほうが使い勝手が良いと思います。
そして、ヴァイオリンなどでよく言われているのですが、
楽器は左右対称ではないほうが,良い楽器が多いと言うこと。

そこで、珍しい ストラディバリのギターのテンプレートです。

UNI_0018.jpg

ストラッドくらいになると、この程度のテンプレートで充分なのでしょう。

このテンプレートを使って(多分)作ったギターです。


UNI_0019.jpg

ストラッドさんの他のテンプレートも半分のものはありません。

では、次回は材料です。

  1. 2014/08/14(木) 14:09:14|
  2. ギター
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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