古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

二つのギター その3?



時間があるわけでは無いのですが、ついでにもう一つ書かせていただきます。

二つのギターシリーズです。

今回も,私が作ったギターではなく、一つはアリアの19世紀ギター,
もう一つは 小平の59センチのギターです。

アリアではかなり以前、19世紀ギターを作っていました。価格も 17万円ほどでした。

今回の楽器は税抜きで 8万円 と19世紀ギターを始めてみようかと考える人に
とっては、魅力的な値段です。(専用ハードケース付き)

でも、安くするために、ネックのかかとは,モダンギターそのまま、ブリッジもモダンギター
そのままです。ヘッドの天竺もモダンのように、ローズウッドです。

19世紀ギター,パノルモタイプ トーレス仕様という感じです。


小平のギターは,弦長の長いものは楽器店で見ることが出来るのですが、59センチのものは
取り寄せになるので、見ることが出来ませんでした。

そこで、ネットオークションに出ていたので、買ってみました。
(小平のほうです。アリアは荒井さんから買いました)


IMG_20140419_181313.jpg

右が アリアの19世紀ギター パノルモタイプです。


左が小平 59センチです。


アリアの楽器は、とても良く出来た楽器です。

モダンのように作られていますが楽器が大きくないので、弦のエネルギーが
重い楽器を鳴らさなくてよいため、バランスのよい楽器になっています。

でも、塗装が硬くて,分厚いため楽器の鳴りを阻害していました。

結局 4日かけて、剥離材を塗っては、少し柔らかくなった塗装をはがして,また剥離材を塗って
スクレーパーで塗装をはがしての繰り返しをしました。

少しずつ薄くしていって、ブリッジや表板を叩きながら、音を聞いていくと,当たり前ですが
塗装が薄くなるほど楽器が鳴ってくるのです。

横板、裏板は合板ですが,それでも塗装を薄くしていくと,楽器が鳴って来ます。


もう少し削れば、良いかもしれないのですが、この楽器としては充分鳴ってくれるようになりました。

19世紀ギターとしてでなく、小型モダンギターとして使うと,とても良い楽器になりました。
もちろん、しっかりした19世紀ギターとして使えます。

後、見た目もあるので、天竺は 楓に、ネックのかかとは丸く、ブリッジも角を取りました。
ネックは,完全に元の塗装を取りました。手触りがあまりにも分厚い塗装の感触だったので。

ブリッジを削ったときに大体の塗装の厚みを測りましたら、0.3ミリほどあるように感じました。

何かの縁で,私のところに来た楽器なので,少しでも良い楽器にしてあげようと、手間をかけてしまいました。




小平の楽器も,表板だけ3日ほどかけて、塗装を削りました。

良く出来た楽器ではあったのですが、ライニングが大きく表板の鳴っている面積が小さいので、
1弦だけがやたら鳴る楽器でした。表板の鳴る面積が小さい上に,塗装で鳴ることを抑えている感じでした。


この楽器も,表板の塗装を落としていくと,だんだん低音も鳴ってきました。

でも、充分な低音ではありません。
やはりモダンスペインギターの音です。それも小型の。

モダンギターしか弾いていない人だったら、これでもよいかもしれませんが、楽器の大きさの割には
低音は出ていない感じです。


今回,2台の楽器の塗装を苦労して,時間をかけて剥がしましたが、なぜ楽器が鳴らなくするために、
こんなに分厚い、硬い塗装をしなければいけないのか?不思議でした。


作っているほう、売るほうとしては,お客さんがツルツルぴかぴかの楽器を望むからだと言うのでしょうが、
音のことを考えると,もっと薄くて良い塗装は無いものかと思います。

しかし、この硬い塗装でも、傷は簡単に付くのです。そして、補修が難しいのです。
むしろ、私のセラック塗装のほうが傷は目立ちませんし、傷が付いても簡単に補修できます。


この2台も今回の東京で見ていただけます。

欲しい方が出てこなければ、当分私の手元にあると思います。







  1. 2014/04/24(木) 00:41:24|
  2. ギター
  3. | コメント:8
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コメント

重ねてありがとうございます。そうだったのですか、東京方面に出張されて、還元処理のギターをお持ち込みされる予定であったのでしたか。
それでは、今年中くらいには完成されて、どこかでお披露目されるご予定でしょうか。
その完成を楽しみにしております。

小さなボデーのギターには、集約された音のエネルギーが前に飛ぶ感覚、理解できます。無駄のない、ロスのない、出音にはもっとも良い結果をもたらす設計だと思われます。
平山様の研究成果は、広く一般愛好家やプロ演奏家の方々にも多く受け入れられるものと確信しております。一部の方々という狭い範囲のものではないと思います。
いつの日か、一般楽器店に並んでいてくれることを切望いたいと思います。
  1. URL |
  2. 2014/04/24(木) 19:25:01 |
  3. Jiro #ArzL2clE
  4. [ 編集 ]

たぶん・・ちがうスレッドに応えてしまっていてすみません。
JIROさんのおっしゃること
"昨今の大音量至上主義的なギターにはもううんざりするくらいです。コンクールの弊害でしょうか。音量が大きいということを否定はしませんが、無機質で無味乾燥なギターが多いのです。"
には、とても共感します。と、同時にのそういうコンクールの審査員という一番はずかしいことを 頻繁にしている立場からの視点もあります。 すみません 大切なことなので もうすこし時間があるときに、思いを丁寧に書きたいと思います。
言い間違えると、つぎの世代を傷つけることにもなるので・・
ただ・・ いまのコンクールようのギターに音量があるとは一度も
おもったことがありません。立ち上がりだけのデジタルで一つの音がクレシェンドできないギターは私には音量もないしギターだとも
思っていないのです。これも その道のかたを傷つける言い方ですが
音楽を知った審査員たちは ああいうギターでひかれるバッハを
ウクレレ バッハと言ってさえいます。すみません・・ウクレレは大好きです・・ このあたりの説明と審査員という因果な仕事の弁明はデリケートなので、後日にします。
今のコンクール向けの浅薄な楽器のアイデアはラコートの時代にすべて出されて、そして捨て去られたものにすぎない・・と思うのです。ワッフルや横裏をかためたり、重い棹 とフロートされた棹、先にお見せしたコストさんのラコートにはすべて実現されていて、、そして捨て去られたように思います。シュタウハーやマルタンのアイデアはエレキやブルーグラスには貢献したようにも思います。
  1. URL |
  2. 2014/04/30(水) 22:29:16 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

CABOTIN 様、ご意見ありがとうございました。

コンクールでの審査員をなさっておられたのでしたか、私の拙文で不快に思われたのでしたら大変申し訳なく思います。
微妙なお立場ですので、ご意見も慎重にならざるをえない点、よく理解できます。またの機会でも、ご自身のお考えをお聞かせ願えれば幸甚に存じます。
古い時代からのギターの構造設計の変遷や現代に活かされるべきポイントなどにも興味があります。いろいろお聞かせください。
  1. URL |
  2. 2014/05/01(木) 10:29:36 |
  3. Jiro #MTWxCgEg
  4. [ 編集 ]

CABOTIN 様

はじめまして。

いつも興味深く拝見しております。
CABOTIN 様のコメントに質問なのですが、
「シュタウハーやマルタンのアイデアはエレキやブルーグラスには貢献したようにも思います。」
というのはどういう意味なのでしょうか?
よろしかったら教えて下さい!

ウクレレバッハ、実に失敬です!
とは言え少し笑ってしまいました。
  1. URL |
  2. 2014/05/02(金) 22:43:57 |
  3. mojo #yOCm9u.6
  4. [ 編集 ]

Jiro さんの思いには共感をします。
コンクールという音楽と矛盾した世界の当事者としては弁解したいこともあるのです・・後日に。

mojoさま  言葉足らずですみません。マルタンてつい呼んでしまうのですが マルテインのほうがわかりやすいかもしれません。例のマルクノイキルヘンで今でいう典型的な十九世ギターの
製作家でした。十九世紀初頭です。シュタウハーにも師事したのとちゃうかな~。で、 そのころの多くのドイツの製作家(ウーリツァのように)のように アメリカに移住し そこでも古来のギターをつくっていたのですが、、時を経て今のマーチンなどの超大型ギターとなった、と記憶しています。コンクールようの現代のワッフル力木も十九世紀のマーチンは実行していました。
アルペジォーネを発明したシュタウハーは棹の可動システム、ヘッドの形状、楽器の胴の薄さ・・・などが直截にエレキギターに引き継がれたとおもいます。
  1. URL |
  2. 2014/05/03(土) 00:09:41 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

CABOTIN様、お返事ありがとうございました。
ブルーグラス、と書かれていたので少し分からなかったのですが、
いわゆるフォークギター(今風ではアコギですね)という事ですよね?

マーチンと言えばDサイズのギターをすぐに思い浮かべます。
なんでこんなに弾きにくいサイズのギターを、いまだに多くの日本人が使っているのか?不思議です。
ナイロン弦と鉄弦の違いはありますが、平山様の61センチのギターには共感出来る部分がいろいろとあります。
  1. URL |
  2. 2014/05/05(月) 23:24:48 |
  3. mojo #yOCm9u.6
  4. [ 編集 ]

横レスですみません。
 。。。。なんでこんなに弾きにくいサイズのギターを日本人が使用しているのか・・・  についてです。

もちろん音が好みに合うから、形が気に入ってるから、という回答もあるとは思います。しかし、私は違う見方を持っています。
 ずばり、日本人の持つ舶来志向性です。海外の有名アーチストも所有していますし、レコードでもその音源を聴くことも可能ですし、
よし、自分も、となるわけです。
 このような事例は、マーチンギターだけでありません。これはアコギですが、たとえばアメリカのフェンダーやギブソンも世界中のミュージシャンからフェイバリッドされるメーカーです。このメーカー製を求める日本人も後を絶ちません。
加えて、アーチストモデルと呼ばれる高級なカスタムギターなどもあり、いつかは手に入れたいと思うギターということなのでしょう。
もちろん実質的にすばらしいギターですので、名実ともにでしょうが。

さて、国内に目を配れば、これまたすばらしい老舗工房が古くからあり、ここでもカスタムギターとして自分好みの仕様で製作してもらえ、高品質な
ギターを入手できます。ここ10年くらいをみると、「メイドインジャパン」という言葉が敢えて強調されていて、「純国産」と記載される傾向が顕著なように思えます。OEMのアジア方面での製作から完全に国内に製作拠点が切り替わり、高品質な国産が一番安心ということが重視されてきているとも思えます。
 私が言いたいことは、弾きにくいなら実質重視、偏見を無くし、先入観に迷わされずに、自分にとってベストな選択をしたほうが後悔のない買い物ができることなのです。特にギターは、誰が(どこのメーカーが)作ったのかと第一印象が一番で、音色が第二になる傾向も多くあります。
やたらと名器と呼ばれるギターに目が行きますが、無名でもその中からダイヤを探せ出せる自分の耳と腕、これを磨くことが大事です。
 外国製ギターを求めることが悪いと言っているのではありません。が、日本人の中にある舶来信奉にひとこと、お小言を言いたかったのです。
自分はそうじゃないと思われる方は、もちろんそれで結構なのですが、もしこれから新たにギターを求めたいという方がおられたら頭の隅にでもおいて冷静にギターを探してみてください。そうして選ばれたギターは最高品ですし、弾く人のギターの腕前も一段と向上していることでしょう。
  1. URL |
  2. 2014/05/06(火) 11:02:53 |
  3. tabfu #vbH.5r4s
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  1. |
  2. 2014/06/10(火) 15:48:10 |
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kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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