古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

61センチギター その前に

Jiro様

コメントをありがとうございました。

コメントをいただく、全ての方が素晴らしいコメントで本当に感謝しています。

Jiro様には、このブログを始めた,きっかけのような問いかけのコメントをいただいたように思います。

楽器製作に専念して,35年ほどになりますが、その間バイトや副業もせず、楽器製作だけで
やってきました。プロにとって,続けることが最も大切なように思います。

その35年ほどに,作ってきた楽器、そしてかかわってきた音楽会などの知識をギターに生かせたら、
と思ってギターを作り始めました。

でも、ギターを作り始めてから7年ほどですが、自分の作りたいギター、作りたいギター音楽
が決まっていましたので、それを具体的に形にする、7年だったように思います。


良いギターと言っても、製作家によって、演奏家によって全然違うと思います。

製作家はそれぞれ皆さん、自分の理想とするギターを作ろうと努力されていると思います。

私の場合は、昔から沢山のギター演奏家の方、製作家の方と付き合いをさせていただく、一方
ギター以外の、ヴァイオリン,ピアノ、チェンバロ,リュート,ガンバを始めとする古楽器の
演奏家の方やとのお付き合い。

そして、楽器に関連して、数多くの演奏会にかかわらせていただきました。

リハーサルから、本番 楽器の配置や,バランスなどのアドヴァイスも良く求められます。


こんな経験から,ギターとはどうあるべきなのか?どんなギターが良いのか?
などを考えて来ることができました。


そして、モダンスペインギターでは、本来のギター音楽は演奏できないのではないかと思ったのです。

それは、極端な話かもしれませんが、モダンオーケストラに合った音楽は、ほとんど無いのでは?
と思っていることと繋がるかもしれません。


多くのモダンスペインギターが、低音 特に6弦の音の不明瞭さ、基音の無さ、倍音の多さ、
楽器が鳴っていない事から来るバランスの悪さなどが気になります。

そして、これは弦メーカーの責任かもしれませんが、1弦のテンションがきつくて,3弦が緩い、
その結果,3弦が鳴っていない楽器が多い。3弦はナイロン弦だと、今以上に太くすると
弦として成り立たないので仕方が無いかもしれませんが、素材をナイロンに限定しないと、問題は
解決すると思います。

ギター製作上というか、構造上からも、鳴らないようになっているので、弦だけの問題ではないのですが。

一番の問題は、かなり以前に分数ギターという形でブログに書かせていただきましたが、一般的に
使われている,65センチ弦長のモダンスペインギターは日本人には大きすぎるということだと思います。
ドイツの ミハエル・コッホさんも言ってられるように。

彼の理論では,私のような身長 165センチくらいだと59センチくらいの弦長になるのですが、
59は確かに弾きやすいのですが、61センチくらいが楽器としてのバランス、楽器としての能力
が一番あるように感じました。

ただ、61センチでも,モダンスペインギターの構造では,音楽的な表現は難しいかな?と思います。
(ギター音楽では問題ないのでしょうが)ーー誤解をされそうな表現ですね

私の楽器が、全ての人に合うとは思っていませんし、モダンスペインギターの魅力にはまっている人には、
縁が無い楽器かもしれません。

そして、私が目指している楽器とモダンスペインギターとの大きな違いは、側鳴りと遠鳴りの点です。


19世紀ギターのオリジナルのホールでの、ピアノやチェロ以上に良く鳴っている経験は沢山あります。
弾いている本人はほとんど鳴っていないように感じる楽器でも。


私の楽器は,離れれば離れるほど,響きも付いて音が大きくなるような楽器だと思っています。
でも、一般的な モダンスペインギターより側鳴りがしないので、弾く人の満足感が少ないとは、
よく思います。でも、楽器が鳴っている実感はあるので、それを感じてもらえる方は問題なさそうです。

この側鳴り、がまた6弦の倍音の多さ,悪く言えばぼけた音によって、ギター音楽が,音楽に
なりにくい要素の一つのように思います。

音楽的な,リズムや,テンポ,和声感、旋律を歌うことや,声部を分けて弾くこと、アーティキュレーション
などを無視して、低音をドンと鳴らして、気持ち良く弾いてしまうことを見かけることがあります。

演奏して,気持ちの良い楽器は必要ですが、それだけでは困ると思うのです。

まして、アマチュアでも人前で弾く機会のある人にとっては。


この現象は,モダン楽器を使ったアンサンブルでも良く似た光景に出会います。

弦楽器が5本ほどの編成にコントラバスが入ると、コントラバスの響きに包まれて、どんな演奏でも
上手に聞こえることがあります。少人数で響かない会場では有効なので、時々目にします。


19世紀ギターやその延長線上のパーラーギタだと、6弦は響きも少ないのですが、基音は鳴っている
ので、ごまかしも効かず、音楽の構成がはっきり分かります。

でも、骨のような音でもなく、骨格だけの音楽でもない音楽が作れると思います。


いつも思うのですが、ギターそれもモダンスペインギターの音の魅力と音楽(ギター音楽も含めて)
の魅力を天秤にかけると、多くのギター愛好家はモダンスペインギターの音の魅力のほうを
取る方が多いのではないかと思います。

ギターで表現する音楽に魅力を感じている方に選んでいただくような楽器であれば、
いいな と思って作りたいと思っています。

他の楽器を作っていて分かった事を応用させていただいて、今の所では
61センチの弦長で、ライニングやバスバーなど私の設計で、熱還元処理をしていただいた材料で作るのが、
今の所、多くの日本人の方に弾いていただく、最も良い楽器ではないかとおもっています。楽器も軽いので
演奏していても,疲れませんし。


側鳴りと遠鳴りの両立が出来れば、と思って色々と考えている所です。
というか、もっともっと私が考える方向での良いギターを作り続けたい。
何事もそうでしょうが、満足したら終わりです。
今作っているギターが、かすむほどのギターを作りたいのです。

肝心の61センチギターについては,次回書かせていただきます。
よろしくお願い致します。





  1. 2014/04/23(水) 11:43:56|
  2. ギター
  3. | コメント:1
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コメント

感激致しました。本当に感激です。平山様のギターこそ多くの愛好家、プロ演奏家に求めらるべき真のギターだと思います。
 私もよく演奏会で、6弦を一発どーんと鳴らして、ド演歌のように弦を叩くように鳴らして(ご本人は気持ちよさそうですが)いる方を多くみかけるのです。でも、なぜか腑に落ちないのです。ギターそのものの発する声が聴こえてこないのです。よく響きそうな低音を強調しようとするのでしょうが、肝心の中音部がまったく聴こえてこないことも多いのです。
 側鳴りだけなく、演奏会場での遠鳴りこそギターに求められる能力です。奏者の弾き方もあるのでしょうが、まず、ギターがそのような資質を持っていることが大事だと思うのです。

 私は本当に楽しみです。平山様の61cmギターこそ、日本人には相性が良いでしょうし、熱還元処理と理想的構造設計によるギターが数多く普及していくことを望みます。楽器店で販売されるのなら私は真っ先に購入したいと思います。いくつか出来上がりましたらどうぞアップをお願いいたします。将来楽しみにしております。
 また、61cmギターについての詳細な記事を楽しみにしております。
  1. URL |
  2. 2014/04/23(水) 19:31:22 |
  3. Jiro #hUKG0cOE
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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