古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

経年変化など 沢山のコメントをいただいて。

古い木を使った楽器、楽器の弾きこみなどについて、沢山の真面目な、真摯なコメントをいただいて
ありがとうございます。

高知や,高松,淡路,神戸や世俗の雑用(今日も民生委員の仕事として、小学校の卒業式に出ていました)
も山のようにあって、コメントをいただいているのに、遅くなり申し訳ありません。

ギターについて、こんなに熱心なコメントをいただいている、ブログは無いと思っています。
色んな意見をお聞きするたびに、感謝しています。



300年ほど経った、材料で作られたリュートが400年ほど前に作られ、弾き込まれた楽器と同じように
鳴っている。という事についてですが。

今年 2014年2月19日のブログでも少し書かせていただきましたが、
200年ほど保存されていた、表板を使ったトレブルガンバのことです。

言葉足らずの点もあったようです。

私達が古い,弾き込まれた楽器に期待することは、

音の立ち上がりが良い。
音に延達性がある。
立ち上がりに関連しますが、早いパッセージを弾いても、音が濁らない。
和音を弾いても、音の分離が良く、音が濁らず,和声感が出やすい。
音に芯があるが、響きもある。
とにかく、楽器が鳴る。

と言ったところでしょうか。

これらの事は古い、100年以上経った,出来れば200年以上経ったドイツ松(ドイツトウヒ)
で作れば、ほとんど解決すると思います。

もちろん、その古い材料を使いこなす,技術とアイデア,設計力は必要ですが。


更にこれ以上の事を楽器に求めるとなると、それは弾き込まれた楽器でないと、無理かな?
と思っています。

それは、西垣さんの言葉を借りると、「妖艶さ」ということでも、表現できるかと思います。

以前私が作った楽器を弾いていただいた時、楽器のバランスや、延達性、立ち上がり、楽器の鳴り、
などは問題無いのだが、オリジナルのパノルモ、コフさんの楽器のもっている「妖艶さ」というものが
あれば、更に良いのだが。

と言われて、古い,弾き込まれた,ピアノの名器の響板を使うことを思いついたのです。


ただ、古い木を使っていても,良い楽器は出来ないのでなく、ほんの少し音に味わいや、妖艶さ、
音の深み、密度など足りないだけ、と思っているのです。

特に,リュートでは表板は厚みが,私の場合 高音側でも、1.8ミリ低音側では1.5ミリから1.6ミリ
くらいしかないので、表板の音に与える影響は、ギターより少ないのではないかと思います。

バスバーなどの影響も少ないので、表板の音に与える影響は,ギターより大きいのでは?
という見方もあると思いますが。

弾きこみに関しては、ラミレスさんも 彼の著書 「ラミレスが語る ギターの世界」175ページに

「良い楽器とは二人の人間,それを作る人と,美しい音を求めて懸命にそれを弾く人の作業によって
達成されるものである」

また、セゴビアにギターを届け,数ヵ月後にその楽器を見ると,音が比較にならないほど向上していて、
全く別のギターのように思えた。 とも書いています。

逆の例としてイエペスの生徒のことにも触れています。

ギターでは,200年前の楽器となると、ロマンチックギターになってしまって、今のモダンギターと比較するのが
難しいかもしれませんが,ヴァイオリン,チェロなどは沢山古い楽器を見ることが出来ます。

名工の作った名器は,作られていた当時から、評判が高く手に入れることが難しかったと言われています。

良い楽器は確かに,出来た時からよく鳴っていたと思います。

でも、逆の楽器も良く目にします。

出来た当時は,あまり鳴っていなかっただろうな?と思う楽器も結構あります。

擦弦楽器だと、エネルギーを与え続けることが出来ますから、鳴らない楽器も鳴ってくるのかもしれません。
鳴らない楽器、重い楽器だと,その重さが鳴ってくると,音の密度や,重心の低い音の楽器に育つのかも
しれません。


モダンスペインギターは寿命が短いと言われることもあります。

楽器が重く,鳴らない楽器は、表板のブリッジ部分に近い所を薄くして鳴らす場合があります。
この場合だと、寿命が短かくなると思います。

でも、ロマンティックギター,19世紀ギターや,私の構造のギターは200年でも300年でも
使えば使うほど良い音で鳴ってくれると思っています。

コメントをいただいた方の返事にはなっていないかもしれませんが、取り急ぎ
私の考えていることを少し書かせていただきました。


経年変化については、2012年4月6日、野村先生の野村式熱還元法によって、処理していただいた
材料で作った楽器を,西垣さんに弾いていただいた感想は 2012年11月29日のブログに
書かせていただいています。






  1. 2014/03/21(金) 02:51:00|
  2. ギター
  3. | コメント:6
<<経年変化 弾き込み エージング | ホーム | 至急のお知らせ 東京でミニ展示会を開きます>>

コメント

お忙しい中のご回答をいただきまして、ありがとうございます。やはり、古い材料を生かす設計力、技術も必要で、さらにプラスアルファの「妖艶さ」が必要とのことで、少々複雑です。

ご説明について考えてみますと、やはりヨーロッパ方面で古い200年以上の響板の入手が決めてのように思えてきます。あるいはドイツトウヒの200年以上経過したものとか、人工的によい効果をもたらすような還元方法で似た環境を実現してみる方法がよさそうです。

今の楽器業界に、そのようなギターが安く、量産できる日は来るのか、です。上記のような方法で作られたギターは、相当に高価となりそうです。わかる人にはわかる、わからない人にはわからないと、はっきり分かれそうです。
 
  1. URL |
  2. 2014/03/21(金) 13:18:42 |
  3. kogakuya #1F.MC5xA
  4. [ 編集 ]

平山さんとkogakuyaさんの話でたりているとおもうのですが・・蛇足です。
エイジングについて、今後の参考になるかも(ならないかも)しれないので、
雑感を羅列しておきます。こういう事例から・・これこれのほうがよい、とか
これはダメとか、といった短絡した意見をもたれることが困ります。
数千円の楽器でも心に届くく演奏をする子供たちもいます。その逆もあります。

週末にこのことにも関係した厄介な仕事の準備ができていないので、ほんとうに
雑感の記録だけです。

まず・・観察者としての自分の立ち位置。ほとんどの音楽愛好家がいまでもそうであるように
ガルネリ ストラドなど古い楽器の音だけで育ってきました。これはたぶん現代でもたいして
変わらないことでしょう。ギターだけの音楽愛好家ならそうでないかもしれません。
どのあたりが自分の音の水面になっているかな、と思うと、壮年期のエルマンのストラドかもしれません、
エルマンにもストラドにも最盛期だったのでしょう。

古家具からとった材の楽器は数本体験しました。ブーシェさんのもの(そのころまだ彼が保存していた)とその先生のフランスラミレスによるものです。
私が弾いたときはすでに楽器としてもエージングされていたので、あまり違いには気が付かなかった(もうしわけないのですが実感でした)
フランスラミレス フリオの1943年のフランスでの新聞記事の フリオさんいわく「もう世界にはよいギターを作り得る樹が枯渇したので
今年で製作をやめる」が印象的です。たぶんにナチスの影響もあるのでしょうが、ベヒ(比較的ナチスより)の影響もあったのかもしれません。
当時のいきさつについては 最近コンサートにきてくれたスイスの老舗材木商からもうかがいました。

ラスキーヌ先生のエラール、1920年代から半世紀以上にわたって録音がのこっています。これも材質は古い家具からと聞いています。
のちにパリの火災で半焼、無残な姿となったのですが、楽器としての表板の能力にはなにも損傷がなかったようにおもいます。
火災は板にも及んでいたのですが。
友人のブュダンさんが修復。まれな事例だと思います。1920年代モイーズなどとの演奏は超名演ですね。いまでもよく聞きます。

日本の製作家が古い塔 たぶん千年経過かな・・を利用したバイオリンを製作されたとき、それはもう四十年近く前かな~、Iwa先生が
試奏された。でも先生のアマティにくらべると古いはずの塔の樹バイオリンは新作のできたての普通の音だった記憶があります。その製作家の名誉にも
かかわることなので、私はほんの子供の時代だったので判別する経験が足りていなかったのかもしれません、と申し添えますが不思議なことでした。
とこぞ・・の樹で作った・・という売り文句はそれいらい無視するようにななりました。

平山さんの作品以外で、演奏していても新作だと気が付かなかった(単にわたしが鈍いだけなのかも)が田中さんの作品に
一例だけありました、ミルクールのとても状態のよいもものだ、と思って弾いていたら・・どうもちがう、新作だときがついて驚きました。
とくにエージングもしていないだろうに、これもすこし不思議な体験でした。

失われたストラドの話だけでもドラマになりますね、その割には流通現物が減らないのも不思議。
ヌブーさんと飛行機とともに散ったストラド、直後に同じような事故で散ったチボーさんとストラド、
人間も楽器もなんだか似ているな~と思うのです。
  1. URL |
  2. 2014/03/23(日) 12:53:53 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

ボーントーン

古家具から取った材料と聞いて思いだすのは、以前も記事にありましたが、ハウザー1世1937年には、17世紀のハープシコードの材料が使われていたとか。

つまりは、良質な良いギターを作る秘訣は、300年も経た古家具、鍵盤楽器の響板を使う以外にないのかもしれません。これまでの貴重な話を総合してみるとそう思えます。ただし、技術やノウハウも加味されてのことでしょうけども。
 実経験としてそういうことが認められているのであれば、これからは何をおいても、そういう古い材料を探して使うことが最も良いギターを作る上での近道と結論できるのではないでしょうか。(絶対とは申せませんが)

 一方では、難しそうな還元方法なる方式で表面板の人工的なエイジ効果を図る研究も必要と思いますし、それは継続的に行われて、良い方向へさらに向かっていただきたいものです。

ところで現在、特にオランダやドイツ、イギリス、オーストリア方面での不動産関係のつてを強化し、古い元貴族の屋敷の取り壊し情報とか入手でいないものでしょうか。解体情報がつかめれば真っ先にストックさせて、材料を入手する。こういったことも必要と思います。日本にいるだけでは、こういう情報にはどうしても疎くなります。

 そこで、欧州方面に在住する日本人の演奏家や建築家、技術者が大勢おられると思いますし、なんとかネットワークを構築して、古い貴族の館、城館、家屋等の取り壊し情報を得るのです。

私が言うまでのことではないですが、今や、インターネットで世界の情報が入手できます。もちろん海外の楽器材料屋とコネクションを持っている製作家もおられるでしょうから、そういう業者に頼んでおくことも必要と思います。

今はエコロジーの時代です。使い終わった材料のリサイクルも必要です。楽器にもいえることです。捨てるのはもったいない。
 兎にも角にも、300年以上も前の材料は必須です。自然的な経年変化の材料こそ、これからのギター製作になくてはならないと思うのです。

もちろん、20年~30年もよく寝かした材料もすばらしいギターができると思いますし、弾きこんで成長も期待できるでしょう。しかし、人間の寿命は有限です。100年、200年も待ちきれません。だからこそ、300年も経た材料で製作されたギターが必要になるのです。
 
バブル崩壊以前から、様々な楽器のオールドブームがあったことは記憶に新しいですが、古い楽器の良さというのは単純なノスタルジーだけではなかったということでもあります。その熟成されたトーンに至福の時間を与えられる喜び、あめ色に染まった表面版に何百年もの歳月に思いを致し、しばし時を忘れる、考えただけでも感動ものです。

 人間も年を経るたびに、達観した境地に至るといいますが、ギターも時代を経た物は、余分な贅肉を落としたボーントーンとも呼ばれるべき音色を宿すのだと思うのです。

 長文失礼しました。
  1. URL |
  2. 2014/03/24(月) 11:35:10 |
  3. バロック浪漫 #.wzSrwC6
  4. [ 編集 ]

ほんとうにいつも走り書きですみません。 こういう話は、ほとんど風評に近い解釈をされがちなので(バイオリンのニスのように)
どうか、みなさま思い入れをすくなくすくなく、普通に冷静に捕らえていただきたく思います。
で、以前19世紀の有名作曲家演奏家が遺族のために厳重にパックした楽器ラコートの開封と演奏をしたときの自分の簡単絵日記を見つけましたので
紹介しておきます。この楽器の過去1860年ころの写真はフランスか英語のウイキペディア 作曲家の名 でご覧いただけます。
現在の様子はパリの博物館(ウイキにリンクあり)からエチケットの文章もすべて読めます。すこし面白いことですね。
書いている事は、本当に雑感で、決して正しいと主張するものではありません。家具の樹にはかならずしも肯定的ではありませんし
不動産屋と連絡して・・・ということも・・どうかな〜 できるだけタンスを壊したり、不動産屋さんに駆け込んだりしないでいただきたいことです。
www.koube.jp/public/NapoleonLacote.jpg
  1. URL |
  2. 2014/03/26(水) 02:01:42 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

CABOTIN様、おっしゃることはわかります。ご紹介のサイトで見てみました。しかし、難しいです。こういうことに結論なんてありませんね。
何がいいとか、悪いとか、そういう問題でもない。弾かれていないで、150年も経過した楽器は、新品時の硬さ、角が取れていないままのギターでイマイチなのか、、、、、、、、、、いやいやそうではなくて、少しだけ時間をかけて3年も弾きこめば、素性の良さも相まってすばらしいコンデションで鳴ってくれるのかもしれませんよ。

ギターにもいろんな種類がありますが、ソリッドボデー、フォローボデーに関わらず、まずはネックの鳴りが一番違うと思うのです。
これは私もずいぶん経験してきたことです。ネックの弾性係数も飛躍的に上がり、固まり、安定し、膠も一体化してボデーとともに振動を増幅させ、修辞的に、三次元的に鳴ってくれるのです。経年変化の賜物です。


不動産屋さん、 これはぱっと思いついたことですが、家屋の取り壊し、建築、売買情報は、やはり不動産屋でしょう。
古い文化遺産は長く保存され、維持されていくことは大事なことです。城郭などは不可能でしょうが、一般家屋でなら17世紀くらいの建物なら欧州ではあるのではないでしょうか。コネクションは大事です。

近年の森林伐採(乱伐と言ったほうがよいかしれません)で、貴重な年輪を刻んだ木材が消失し、一部は条約で規制、禁止され、ますます良材が取れにくくなっています。よほどの老舗製作家の家系でないと、ストックはないかもしれません。

いずれギターも新素材できたものが出てくるかもしれません。廃材を利用して組成的に木材とよく似た分子構造などできてしまうでしょう。今の科学でなら可能と思います。
ですから、今後益々、ビンテージギターの重要性が高まるのです。つまり、
「このギターは本当の木材で製作されてた時代の貴重なビンテージなのさ!!」 といった会話が近い将来に出てくるかもしれないのです。

真面目な話で、これからは間違いなくビンテージの時代です。「普通に買える」 うちに入手したほうがよいといえます。良質な木材の枯渇はもう来ているのです。
パーラーギターも超貴重な逸品だと思うのです。こういうギターこそ愛着をもって弾きこむことがよいと思うのです。
私は最近益々そういうふううに思わざるをえなくなってきています。
  1. URL |
  2. 2014/03/26(水) 19:12:25 |
  3. バロック浪漫 #2bu7btno
  4. [ 編集 ]

オールドブームは続く・・・・・

こんばんは。相変わらずの熱気ですね。でも、どうやら結論的なことは何も出ていないと思いますね。
CABOTIN様が、ミント状態のラコートに立ち会われた件に関しても、たまたまその個体がそうであったのかもしれないともいえます。そういう状態の楽器が100台あったとしたら全部が全部そうではないと思うのですね。

ところで、平山様が過去最近に手に入れた19世紀ギターのいくつかの話を思い出しました。作りは粗雑な感じだけれども、音はたいへん良いものだとかです。わずか数台ですが、この事実をみても経年変化の効果の例証だといえます。
逆に全部が全部100年も200年も経れば良くなるのかといえば、そうとはいえない。これも事実ですね。
それで、どうなんでしょう? 結局のところ、おおざっぱに言えば、200年近くも経過したギターは、新作時とは違う音色だということは確かなことなのだと思います。このことに異論は無いと思いますね。

そこで、結論は断定して言えないと思いますが、私も買うなら、やはり古い200年近くも経たギターがいいなあと思うのです。(憧れがあります)
バイオリンの世界では、オールド楽器は珍重され、ストラッドは億という値段!
リュートの世界でも、ルネサンス後半からバロックにかけて、100~200年くらいのオールドが珍重され、改造されたとか言われています。
これらの事実からしても、ギターだけ例外ということはないといえます。やはりギターもオールドは良い。
私は、昨今の世界のオールド市場、日本のオールド市場も比較的ご年配の方々が支えていると推定しているのですが、このオールド至上主義はいつの時代になっても続いていくと思いますね。廃れることは無いと断言できます。世代交代はしていっても、良いものは良いという事実は変えられないと考えられるわけです。
  1. URL |
  2. 2014/03/27(木) 21:06:10 |
  3. gavottenⅡ #mmLiI1yI
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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