古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

コメントを頂いていて フレッチング他

超多忙のCABITINさんから、平均律でないフレッチングについて、詳しいコメントをいただきました。

長くお付き合いをさせていただいているのですが、一般にパソコンが普及していな時から、(30年以上前でしたか)
パソコンを駆使され、色んな問題を解決されていました。

その結果,ご存知ような、フレッチングが生まれたのです。
主に、ヤングのⅡの調律方法が使われていたと思います。

でも、かなりフレットはグニャグニャに曲がります。

それで、演奏会のたびに「なぜ、そんなにフレットは曲がっているのですか?」と聞かれるそうです。
誰もが、調律の知識を持ってられるわけではないので、説明はかなり難しいことになります。

そこで、フレットが曲がっていなくて、ぱっと見たら、普通に見えるフレッチングはないだろうか?
と相談されたのです。

それで、ナイトハルトの調律方法を提案させていただきました。

ナイトハルトの調律はあまり一般的でなく、日本では使われていない調律ほうでした。

ほとんど、平均律に近く純正の5度は一箇所しかありません。

ナイトハルトを実際に使ったのは、10年ほど前に、ヨーロッパから「カメラータモデルナ」という、古楽器の
アンサンブルが来た時に、ナイトハルトで調律して欲しいと頼まれた時が初めてでした。
チェンバロは持ってくることができないので、貸してほしいということで、私の楽器を使ってもらったのです。

この話を持ってきてくれた、友人も日本初演,20世紀初演だと思うのですが、ミハエル・ハイドン作曲の「ティトス右近殿」というキリシタン劇を企画して、演奏会を開いたドイツ人の大学教授です。
この劇の初演は1770年にザルツブルグで行われています。

北ドイツのナイトハルトさんですから、ドイツから来たカメラータモデルナの皆さんも普段使ってられたのでしょうか?

実際に使ってみると、平均律とはそんなに違わないのですで、響きはヤングやバロッティの響きに近くなりました。

そんな、経験がありましたので、西垣さんに提案したのです。
でも、提案しただけで、あとは西垣さんの仕事でしたが。

このカメラータモデルナはリュート、リコーダー、ガンバ、チェンバロのアンサンブルです。
リコーダーも、ヨーロッパのリコーダー協会の会長さんですし、チェンバロの方もハープのローレンスキングさんとか
一流の演奏家と共演しているメンバーばかりでした。


演奏も、モデルナと言っているだけあって、前半はバロック、後半は現代曲という演奏会もありました。
京都では、まだお元気だった広瀬量平さんの曲も演奏されたので、広瀬さんも来られていました。

そして、このリュート弾きのかたが、ウーリッヒさんで、ドゥオ・パノルモという活動もされている、
ギタリストでもありました。

その彼が、初めて会った時に「鶴田は知っているか?」と聞かれたのです。
私は知らなかったので、「知らない」と答えると、「私は日本に来て、空港から直接鶴田さんのところに行った」
それほど、リュート、ギターをやっていると是非会っておかないといけない人だと、ドイツの方から教えて
もらいました。膨大な量のギターに関するHPを作ってられる、鶴田誠さんです。

もちろん、すぐ連絡させていただいて、長年の付き合いになりました。

そして、彼が見せてくれたのが、彼のコレクションでした。
パソコンで山ほど、彼が持っている楽器を見せてくれました。
中には、日本に来る前に、蚤の市で見つけたという、オリジナルのシュタウファーのギターもありました。
ドイツだと、たまに蚤の市でこんな楽器も見つかるのだと言ってました。
羨ましいことですが。


話がそれてしまいましたが、調律の話を少し。

ギターだけでなく、チェンバロも作っていますし、月に何度かは、演奏会の調律をやっていますので、
分かりやすく、少しだけ書かせていただきます。

なぜ、いろんな調律法があるのか?から。

皆さんご存知の、ピタゴラスさんが、調律法を考え出しました。
5度を12個積み上げて、12半音を作ったのです。
そうすると、最後の音が少し高くなったのです。
その値がピタゴラスコンマと言われる、23.46セントです。

この、23.46セントを12半音に振り分けたのが、平均律です。
簡単に言ってしまうと、23.46セントをどこに、どれだけ割り振るかで調律法が決まるのです。

古典調律としてよく知られる、キルンベルガー、ベルクマイスターは4分の1調律法と言われています。
この、約24セントを4箇所に振り分けたものです。

そして、6分の1が ヤングやバロッティです。

アンサンブルや、いろんな調を使う演奏会では、8分の1と言われる、純正が4箇所しかない
調律法も使われることもあります。オルガンでも使うことがあるようです。

ピタゴラスコンマを4箇所に割り振るということは、8箇所は純正です。

5度の純正というのは、ギターでの6弦と2弦、5弦と1弦の関係で、非常に聞き取りやすい
音程です。純正が多いということは、綺麗な響きにつながります。(オクターブプラス5度ですが)

ピタゴラスコンマがなかったら、いろんな調律法が必要ではなかったので、神様のいたずらで、ピタゴラスコンマ
が出来てしまった。という話も聞きます。

でも、5度を積み上げるということは、よくご存知のように、5度は3:2の関係です。
弦長の3分の2で5度上になります。
オクターブは2:1なので、いくら繰り返しても、同じにはならないのです。

ナイトハルトはほとんど純正の箇所がありません。
でも、平均的に割り振っているのではないので、響きが綺麗になるのです。
言い換えると、「不等分 平均律」と言えるかと思います。

いろんな調律ほギターでは大変ですが、チェンバロでは簡単にいろんな出来ますので、
色々と遊ぶことができます。

あと、5度の振り分けだけ書きましたが、3度を純正に取るという、ミーントーンという調律法も、
ルネサンスやバロック初期ではよく使われました。

調律については、ネットで検索していただくと、沢山詳しい情報がありますので、もっと詳しく調べてみようと
思われる方は、どうぞ、調べてみてください。

ギターでも、ルネ・ラコートさんは1852年に下のようなギターを作っています。


img145.jpg


昔から、フレッチングについては、色々と研究されていたようです。
19世紀ギターで明らかに、平均律とは違う、フレッチングの楽器がありました。
この楽器は、3度が綺麗に響くように作られていたようです。

すみません、また長くなってしまいましたが、フレットはの溝は次回以降で書かせていただきます。



  1. 2014/02/25(火) 12:08:16|
  2. ギター
  3. | コメント:3
<<お知らせ | ホーム | 沢山のコメントをいただいて>>

コメント

奥が深いですね。
前の記事で、コメント欄で横槍を入れるような形になってしまったことをお許しください。

現代のクラシック楽器ではどの程度音律のことが大切にされているのか、とふと思いました。
素人耳ですがバイオリン奏者ではピアノと大きくずれて音を取られる方もいるような・・・。
気のせいかも知れません。
  1. URL |
  2. 2014/02/27(木) 00:41:45 |
  3. 伏見呑仁 #V5mjMtj2
  4. [ 編集 ]

調律の問題は演奏に関わることだとは思いますが、演奏に際して実際取り立てて、問題視することでもないのではないでしょうか。
ほとんどの本邦のプロギタリストは、標準的なフレットのギターで問題なく演奏できていますし、聞いている側も聞き苦しいことは何もありません。
要するに、枝葉末節の類だと思います。
それと、フレットの曲がったギターというのは、見る側からすると、奇妙であると思います。
少なくとも、お客からお金を取って演奏する人は、客が奇異に感じず、音楽に集中できるよう配慮することのほうが重要と思います。でなければ、演奏者の完全に自己陶酔、自己満足の世界でしかないのではないでしょうか。
  1. URL |
  2. 2014/02/28(金) 19:26:45 |
  3. sen #74bqHWeY
  4. [ 編集 ]

枝葉末節・・さま

私の説明がわるかったのかもしれませんが・・


もうしにくいことですが、そういう短絡がいちばん音楽的でないことです。
もしそうならば、音律にこだわったバッハもモーツァルトもヘンデルもラモーも、多くの過去の名演奏家も
枝葉末節で、現代のギタリストだけがただしい・・・という趣旨なのでしょうね?
過去や歴史を 末端枝葉・・といってはよくないと思います。
いま完全な算数的な平均率の楽器というのは、ギターとマンドリンくらいしか存在しないのです、
音律としては非常に特別な楽器なのです。しかし、
何度もいっていますように。その算数的な平均率も つまり現代のギターも私は否定しません。
もうすこし、おだやかな話し方をしていただきたいな〜と感じます。


  1. URL |
  2. 2014/02/28(金) 21:59:36 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (323)
演奏会 (10)
その他 (20)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR