古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

コメントを頂いて ファンブレースについて

ロマンチックギター愛好家様 BOLIN様 CABOTIN様 コメントをありがとうございました。

コメントについて、ブログを更新させていただかないといけないと思っていたところ、
またコメントを頂いてしまいました。遅くなりましたが、コメントについて書かせていただきます。

ファンブレースについては、私の思い込みを反省しないといけないかな?と思いましたので、
あのような文章を書いてしましました。

幸い、西垣さんと長い付き合いをさせていただいて、沢山のロマンチックギターに触れることが出来ました。
楽器を演奏するだけでなく,多くの楽器を修理させていただいて、内部の構造も知ることができました。

それら,沢山のロマンチックギターのなかで、一番興味を持った楽器がパノルモです。
それも、ファンブレースのパノルもです。

西垣さんがこれ以上はないという、パノルモを持ってられました。そして、さらにその楽器を上回る、
素晴らしいパノルモを手に入れられました。

楽器の方から、演奏家に近づいてくれるのでしょうか?

今、使ってられるパノルモは以前にも書かせていただきましたが、奇跡の楽器と思っています。
奇跡のギターでなく、全ての楽器の中でも奇跡だと思ったのです。

ですから、私が目指しているロマンチックギターの延長線上の楽器というのは、
結局 パノルモのファンブレースを使った楽器の延長線上の楽器なのです。

私のブログを(随分長くなりましたが)読んでいただくと、パノルモのファンブレースの
考えをもとにしたギター作りをしています。

モダンギターでは、当たり前のようにファンブレースが使われていますが、私の使いたい
ファンブレースはパノルモのファンブレースだけなのです。

そのことは、2012年2月2日のブログを読んでいたければわかると思います。

探すのも大変なので、ここで長いのですがコピーさせていただきます。

最近は少なくなったのですが、演奏会などで、知り合いのギター製作家に会うと、
いつも、バスバーの話をしていました。

何処のバスバーをどう変えたか、場所をどうしたとか、大きくした、小さくしたとか、
いつも、どこか変えていたようです。
本人は、いろいろ研究して、良い楽器を作ろうと、考え、実践しているのでしょう。

それほど、バスバーは、ギター作りの中で、一番こだわれる場所でしょうし、
いろんな形、配置が考えられます。

また、沢山の書物、図面、情報が溢れていて、いろんなパターンや、ヒントがあるようです。

こだわれる所ですが、迷う所です。
でも、いつもそんな話を聞いていて、
「そんなに、しょっちゅう変えていたら、自分のものが見つからないでしょ。
同じ構造、同じ考えで5台10台作って初めて自分のものとなることが、あるのでは?」と。
昔から思っていました。

確かに、表板は一枚一枚違うわけですし、同じに作っていては、違う物が出来ます。
量産メーカーが同じ規格、サイズ、設計で作っていると、違う物が出来るのと同じです。
そこが難しい所です。

でも、こんな話もあります。ギターではよく何々モデルというのがあります。
他の楽器ではありえない事ですがギターでは当たり前なのでしょう。
私には不思議な事です。

昔の名器のコピーは、どの楽器でもやっています。
ヴァイオリンでも、ストラッドモデルとか、アマティモデルとか。
でも、現代の名工の、サコーニモデルとか、私の好きなポルトガルの、
アントニオ・カペラモデルとかは聞いた事がありません。

ギターでは、トーレスモデルはあるとしても、
ハウザーモデル、ブーシェモデル、フレータモデル、ロマニロスモデルとか。
当たり前に作られています。

その、名前の付いた楽器は手に入らないから、そして、すこしでも、
モデルとなった楽器に近い音がしてくれれば、ということで、買われるのでしょうか。

ピアノでも、スタンウエイモデルとか、ベーゼンドルファーモデルとかは、ありませんし。

ここで、これが問題だというのではありません。

モデルにされるほど、良い楽器を私は作っているのだ。
ということで、モデルになった製作家は思っているのでしょう。

問題は、なになにモデルで作っても、作った人の音がすることです。
楽器の大きさや、形を変えても、バスバーの配置をそのモデルと同じにしても、
元に楽器の音に近くはなるかもしれませんが、やはり作った人の音がするのです。

その作る人が、情熱を持って、良い楽器を作ろうとすればするほど、その人の音がすると思います。

ということで、バスバーの配置も、作る人の音のイメージ、楽器のイメージがはっきりしていて、
その音の楽器を作るためには、どの配置が良いのか、
どのように削れば良いかを考えることが大切だと思います。

少しは、他の楽器をヒントにしても良いでしょうが。

いつもの、事ですが、前置きが長くなってしまって申し訳ありません。本題です。

下の図面のようなバスバーの配置が、私が使っているものです。

                   UNI_0863 の補正

                  
                  
かなり一般的な、配置と違うと思います。

一番の違いは、ブリッジ、弦の下にバスバーが3本来ていること。
他のギターは、1本だけブリッジの下に来ています。

これは、ヴァイオリン属でも、ガンバ属でも同じ事なのですが、
バスバーとは、名前のごとく、擦弦楽器では、バス、低音を延ばすため、
低音の音をしっかりさせるため、また、構造上強くするために付いています。

ヴァイオリン属でもガンバ属でも、弦をこまで受けて、その駒の脚の下に必ず、
バスバーは付いています。少しずれても、大きく音が変わります。悪くなります。

そのために、私は、弦の振動を受け止めて、響板に伝えている、
ブリッジの下にバスバーを、3本付けています。
同じ考えの楽器は、世界中の、全ての今まで作られたギターを見たわけではないのですが、
私の知る限りでは、ルイス・パノルモだけです。

それも、ブリッジピンで弦を留めるため苦労しながら。

トーレスさんの本で、トーレスさんを持ち上げないといけないからでしょうが、
日本語訳の112ページにパノルモさんのギターの配置が対称的システムではないと、
とうとうと説明されているが、何処をどう見ても、パノルモさんのバスバーは、
対称にしか私には見えません。

そして、いろいろ、パノルモさんのバスバーが、外側の2本が角度が違うとか、
共通の軸を持っていないとか、私にすれば、本当にどうでもよい事をあげて、
トーレスさんの素晴らしさをアピールされています。

モダンスペインギターの代名詞の様な、たこ足のバスバーを、
トーレス以前にトーレス以外の人が使っていてはいけないようです。

私には、どうでも良いと書きましたが、実際ギターを作っている人から、
「共通の軸は何処から始まっていますか?」と聞かれて、
私は「そんな、どうでもいいことは考えてもいないので、そんな物はありません」と答えました。

ここで、良く知られている、名工のバスバーの配置を、
「MAKING MASTER GUITARS」より転記させていただきます。
             

             最初はやはりトーレスさんです。
           一般的な大きさの楽器と小さな楽器です。     
            

               img534.jpg
               

               img535.jpg
      

                次はサントス・エルナンデスさん。

               img536.jpg



                 次はハウザー1世さん


                img537.jpg


               次はエルナンデス・イ・アグアドさん


                img538.jpg


                  そして、ブーシェさん


                 img539.jpg


                   ロマニロスさんです。

                 img540.jpg


ここで、お願いです。

このブログを読んでらっしゃる方でご存知の方は、
このようにブログでたの書物の図面とか写真を使う場合、出典をはっきりさせていれば、
使うことは、問題ないのかどうか、教えてくださいませんか?

という事で、本題です。「MAKING MASTER GUITARS」では、書いていない部分を書き込んでいます。
私にとって、一番大事なブリッジの位置と弦の位置です。

① とか ⑥ とか書いているのが、弦の位置です。
そして、四角く書いているのが、ブリッジの位置、形。
斜線の部分はブリッジの横の薄くなっている部分です。

これを見ていただくと、ブリッジの下には、センターのバスバーが1本通っているだけです。
他の楽器もそうです。
トーレスさんとハウザーさん達は、少しだけブリッジの厚みのある部分にかかっていますが、
音を伝えるという役目はなさそうです。

私も昔、よく誰もが見るこの本に、弦の位置を書いてみて、「え!」と思いました。

何故、バスバーは等間隔でなければいけないのか。

そして、たこ足のバスバーの軸を持たないといけないのか。不思議でした。

そして、下から受けている、2本の斜めバスバーも、「これでは楽器が鳴らない」と思いました。
また、大きなエンドブロックにも。

私の図面を見ていただけば、分かるように、たこ足は、それぞれ、の役目を果たすように、
長さ、角度を変えています。
エンドブロックも小さくしています。
フォークギターのようにエンドピンを付けても、問題ありません。

そこで、一番私の楽器が、他の楽器と違っていることに、気づかれましたか?
そう、たこ足の、センターのバスバーが曲がっているのです、角度が付いているのです。

これは、パノルモさんも、誰もやっていません。
この、ヒントはチェロやヴァイオリンにありました。

ヴァイオリン属のバスバーは、低音側に1本入っているだけです。
楽器を作らない人は気が付かないと思うのですが、
このバスバーは少し斜めになっているのです。
音が走る、冬目を斜めに走っているのです。

これは、駒から伝わった、振動を少しでも広い面積に伝えたいからなのです。
木目、冬目に平行なら、バスバーの幅分だけしか、音は広がりません。

しかし斜めにすると、斜めになった分だけ、音が広がるからです。
こんなことは、ギターのバスバーは、必ず左右対称にしないといけない。
収束する軸を持たないといけないと思っている、ギター製作家には思っても見ない事でしょう。

これは、演奏する人も良く感じていることだと思いますが、
ギターでは3弦が特に鳴らなくて、3弦7フレット以上の音が、ぼける事を。
3弦が鳴らないはずだと思っていませんか?

他の弦は、まだ、表板で振動して鳴るけれど、3弦の下(4弦との間ですが)だけ、
大きな質量のバスバーが真っすぐ付いていては、鳴らないと。

そして、ギターの3弦は1弦2弦に比べて、テンションが低くて、
もともとボリュームが小さいのです。

太くすると、今でも充分に太いので、太くすると、音程も悪くなり、
太い分だけ他の弦より、押さえにくくなります。
それに対しては、フロロカーボンなど比重の大きい弦を使うとか、対処方法はあるようですが。

これらの、問題が斜めにする事によって、全て解決するとは思いませんが、かなり良くなります。
そして、1弦2弦の下、3弦4弦の下、5弦6弦の下にバスバーが入ることによって、
音色も揃いますし、何より、私が作りたい、基音のしっかりした音が作れます。

あと、サウンドホールの下についている、ハーモニックバーも斜めになっています。
これは、見ていただいたら、分かるとおりです。低音は広い面積で鳴らしたい。
高音は狭い面積で、より高音を出しやすくしたい、と考えたからです。

アグアドさんの楽器で、高音側にもう1本バスバーを増やして、
高音側の面積を小さくしている物もあります。
ほかの人でも、やっているようですが、これだと、低音側の面積は増えませんし、
余分なバスバーが1本増えることで、表板が鳴らなくなるように思います。
シンプルに斜めにするだけで、良いと私は考えます。


まだまだ、書きたいことはありますが、今日はこの辺で。

次回は、表板のアーチ、ドームについて書かせていただきます。
これも、私には不思議なこですので。

そして、その後、表板の厚みなどについて書かせていただきます。

まだ、表板、先が長そうです。

でも、他の製作家が書いていないことばかりだと思いますので、長くなりますが、
よろしくお願いします。


以上が2012年2月のブログです。

長いブログでしたが、私の考えが一番伝わるブログだと思います。

このブログ以降で手に入った資料でラミレスの考えが分かるものがあります。

「ラミレスが語るギターの世界」日本語訳です。

その中で、166、167ページにラミレスのファンブレースに関する考えが書かれています。
下にコピーしました。

img141.jpg
img142.jpg

166ページの一番下から、167ページの冒頭に彼は 「力木や響棒は表板を保持するための
あまり害のないもの」書いています。

パノルモさん以外のファンブレースは正にそうだと思います。

そのあまり害のないファンブレースをいろいろ工夫しても、あまり楽器として変わらないように思います。

とパノルモさんのファンブレースを最高の構造と考えていましたが、最近ファンブレースの入っていない、
楽器を弾いていると仕事が終わったあとなど、何も考えず、ホッとするためにはこの方が良いのかな?

と思ったりしたのです。


アマチュアの演奏家にお会いすると、右手左手にとてつもなく、力を入れている人がいます。

表板の下にファンブレースという構造物がついているのですから、少しは力を入れないと鳴りにくいと
考えてられるのかな?と思ったりします。

確かに、モダンスペインギターの中でも重い楽器では、力が入ったほうが良い音がするような
楽器もあるように思いますが。

ですから、私はブリッジ下にブリッジに並行に当て板を入れることは絶対にしません。
バランスは確かに良くなるのですが、反応が鈍くなるように思います。

長くなってしまいました。ファンブレース以外の楽器をアマチュア限定とは考えていませんが、
ギターを弾く目的によっては、あっても良いのではと考えるようになりました。

でも、良い楽器だったら、どちらでも良いですよね。



  1. 2014/02/12(水) 11:24:57|
  2. ギター
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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