古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

師匠と弟子 教わるということ

CABOTINさん、そしてコメントをいただいている皆さんありがとうございます。

タイトルのことについて、なかなか考えがまとまらず、考えているうちに
日が過ぎてしまいました。



一般的に、何かを始めようとすると、先生に教わるのが普通だと思います。

私も音楽を始めたのが遅かったので、素晴らしい先生がいらっしゃったからと言うのもありますが、
まず、先生からいろんなことを教わりました。

でも、本当は人に習うのは苦手なほうだったのです。出来れば、自分で勉強したかった。

ですから、習い始めた、本当の初心者のころでも先生に教えていただいたことは、
しっかり覚えて,自分のものにしようと思いましたが,それ以上に自分なりに考えていたようです。
そして、ギター以外の音楽の勉強会などにも良く参加していました。

演奏や,音楽については私以上に詳しい方や,専門家の方もいらっしゃるので、この程度にしておいて、
私のブログですから、楽器制作についてのほうを、書かせていただきます。

演奏については、先生に習っても良いとは思っていたのですが、楽器製作に関しては
アマチュアの頃から、絶対に人には習わない,と決心していました。

親切に教えてくれそうな,雰囲気があると直ぐに逃げるようにしていました。
(何十年とプロで製作している製作家の方でも。というか、そういう人ほど
逃げていたように思います)

それは、演奏の事なのですが,植木先生のお弟子さんで プロになられた先輩のことが
あったからと言うのも理由の一つです。

その方は,植木先生に習うまで,他の先生に習っていました。
それなので、何年習っても,普段はものすごく上手なのですが,コンクールなどになると
以前の先生の教えが,チラッと出るのです。
その結果,コンクールで優勝とかは出来ませんでした。

その時に,教わるというのは難しいことだと思ったのも,影響していると思います。

そして、楽器を作るということは,作る人間が出る、演奏以上に作った人間が出ると、
思っていました。

友人に、「演奏は良い先生に習うと、少しは良くなるが、楽器製作は人間性、人間そのものが
良くならないと、変わらない。良くならない。」と言ってました。昔から。

そして、その人間性以上に、どこまで深く考えるか、どこまで楽器について考えられるかが
大切だと思っていました。

それは、こんなブログを作っていることでも分かっていただけると思います。


CABOTINさんが,良い先生とは,生徒に沢山迷いを与えること,そしてその解決法の
道筋を与えることが出来る先生、というような意味のことを書かれていました。

まさに、そうだと思います。

私には、これからプロになろうという若いお弟子さんは、いません。
ほとんどの方が,私より年上です。

10年間,コンスタントに注文が来ていたお弟子さんも定年後に,楽器作りを始めた方です。
演奏が出来なければ、良い楽器は出来ないから、必ず,演奏の練習はして下さい。
とお願いしていました。演奏は苦手でしたくない、と言ってましたが、なんとか童謡程度は弾けるように
してもらいました。

お歳になって楽器製作を始められるので、とても熱心で,研究もされる方ですが、
1から10でなく、100まで教えさえていただきました。
そして、来るたびに,何十と言う質問がありましたが、すべて答えてきました。

結果、プロで10年20年作っている人より,最初から良い楽器を作られました。
でも、10年作ってこられても、楽器としてはそんなに変わっていないのです。
一つは、演奏がそんなにできなかったと言うのもありますが。
これは、始めからそうなるのではないかと思っていました。

熱心な人なので、塗装や、表板の削り方や,いろんなことをものすごく考えていたのですが。

もし若い,プロを目指している製作家が,入門してきたら、問題解決のアプローチを
示すだけだと思います。

自分で考えて,答えが出るヒントのようなもので,充分だと思います。
それ以上のことは、してはいけないと思っています。

でも、若い製作家に聞かれることがあります,その時は答えています。
聞くと言うことは、それまでの製作家だと思って。

こんなこともありました。
ガンバの注文をきいた有名な人がいました。テレビにも一頃は良く出ていた人です。
そして若い製作家にリュートを注文しました。

その若い製作家が,注文主の前でいろいろと私に聞いてくるのです。
そうすると、その注文主は「平山さんだったら,聞いたことは全て教えてくれるでしょう。
でも、それは自分で考えないといけない問題でしょ」
と言われました。古神道で有名な方だったので、そういうことは良く分かってられたのでしょう。

私にも、うっかり人に教えてもらったというか、押し売りでなく押し教えのような形で、
聞いた事があって、そのことについては、何十年もプロでやっている人の考えなので、
聞いた時はなるほど、と思ってしまいました。

思ってしまうと、そのことについては考えなくなります。それが、ベストの方法だと
思い込んでいるのですから。

教えてもらっていなかったら、5年10年で気がつくことが、20年はかかったと思います。

それだけ、自分のものが作れるようになるまで、回り道になったように思います。



楽器製作でも,演奏でもないのですが、30年以上前に1週間に5日は一緒に飲んで、
朝まで話をしていた,画家の方がいます。

彼が、美大の受験生用の塾も開いていて、美大に行っても、趣味程度に絵を描く生徒
には、それこそ、1から100まで教えていました。
でも、将来 画家としてやっていく生徒には,何も教えず、画家としてどう生きるか、
どんな心構えが大切か、と言うようなことばかり話していました。

その頃、絵描きさんや彫刻家と時間があれば、飲んで話しをしていました。
深夜まで。

特に,現代美術の作家が多く、個展などもよく誘われていきました。

そこで、その友人達の作品を買っていく,お客さんとも話もしました。

「どうして、彼の作品を買うのですか?値段もかなりしますし」
と聞くと、ほとんど人が,「作品の良し悪しなど私には分かりません。
作家さんのお人柄を見て買うのです。この人が作る作品なら良い物に違いない
と思って買うのです」と言われるのです。

まさに、美術の世界だと作った人の人間性が出ると思うのですが,楽器も同じだと思いました。

こんなことを考えていると、若いお弟子さんは来ませんね。
そのかわり、このブログで楽器について考えるヒントになれば,と思っているのですが。









  1. 2013/08/07(水) 01:37:57|
  2. ギター
  3. | コメント:1
<<お礼とお知らせ | ホーム | 5月の展示会>>

コメント

このような良いお話が読めるというのも、プロ、アマ問わず、平山ファンが増えている理由と思うのです。
 平山様は、剣術も修められて、まさに心技体の三位一体の境地での製作だと思います。
 昔は、師匠の技を盗むとかいう言い方もありましたが、達人からは手取り足取りというのはありえなかったと思います。自分なりの工夫も加え、一流に達するのでしょう。
 あの新陰流も様々な工夫も加えられて、現在に至っているとか。

昨今の傾向として、あまり深く考えず、インスタントに入ってくるものをそのまま、何の疑問も抱かずに信用してしまうことが多いと思います。
音楽CDの評論でさえ、読んでいて、ああそうかと納得してしまっています。(自分も含めて)
 考えることをしなくなるというのは恐ろしいことです。ただ、人の助言や忠告は素直に聞くべき分野はあると思います。たとえば、今流行の登山などです。
 こういう世界は経験者やベテランの助言には素直に聞く耳を持たないとえらいことになるでしょう。
 
  1. URL |
  2. 2013/08/07(水) 09:11:46 |
  3. gavottenⅡ #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (338)
演奏会 (10)
その他 (21)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR