古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

ヴァイス ファンタジア 


以前から気になっていて、楽譜や演奏を公開しなければ、
と思っていた曲があります。

それが、ヴァイスのファンタジアです。

植木先生のことをブログに書かせていただいて、植木先生から教えていただいたこと
は沢山あるのですが、このファンタジアを通して、教えていただいたことが多いのです。

とにかく、2声の曲は2声に弾かなければいけない、2声に聞こえなければならない。
そして、その2声は歌ってこそ2声になる。それぞれの声部が歌になっていなければ、
音楽ではない、と。

当時の楽譜は、出版されたものを使っていましたので、どなたの編曲か分かりませんが、
40年以上前に習って、一番近い楽譜が、岡本一郎先生の先生、近藤敏明先生の楽譜でした。

この曲は純粋にギターの曲として演奏しよう、と思っていたのですが、
オリジナルのタブラチュアがあるのに、本来の姿はどうだったのか?
知ってからギター曲として、演奏しても良いのでは?と思ったのです。

そこで、失礼なことだとは思いますが、近藤先生の楽譜に、リュートタブラチュアから
の楽譜を重ねて、相違点を印しさせていただきました。
近藤先生の楽譜が、間違っているとか言っているのではありません。

リュートオリジナルは、こうなっている、と知っていただきたかっただけですので。
私の考えでなく、ヴァイスさんオリジナルの姿ですから。

ということで、また楽譜に相違点を、書かせていただきました。


img101.jpg
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スラーの位置など細かいところまで入れると、約50箇所ありますが、大きな所を
あげさせて頂きます。

29番の低いほうのミはいつも、違和感を感じていました。

上声部がミ、ソ、ファと歌って、すぐ次の小節では,下の声部にそのモチーフが出てくるのですが、
このミが入ってしまうと、次の小節に頭のシの音がはっきり出せないのです。

そこで、いつもかなりこのミを小さく弾いていましたが、タブラチュアでは1オクターブ下でした。
そうだと、ぐっと弾く易くなります。

34番から41番までは、リュートでは、オクターブ下がっているのですが、ここもなんとか
オクターブ下げても、演奏できる形になりました。

それと、42番のドの音が、他の楽譜でもそうなのですが、#が抜けています。

また、44番のミの音は、タイがかかっていますが、リュートでは、タイはかかっておらず、
小節最初の音はしっかり弾いています。その後の音形も同じように,一拍目の音はありますので、
なぜこの音がタイにされてしまったのでしょうか?

最後は,終わりから2小節目の 48番です。

オリジナルではオクターブ下になっています。
おそらく、その前の小節がド、シ、ラ、ソ、ファと下がってきているので、
オクターブ上げたのでしょうが、本来のオクターブのほうが私には落ち着いて聞こえます。

後の、ほとんどはスラーの位置ですが、調弦の違いから物理的に不可能なことは出来ませんが、
傾向として,元々ついていなかったところに沢山ついているように思います。

スラーや装飾音符は,演奏家にゆだねられている部分も多いとは思いますが、つけないほうが
リュート的に響くところもあるようです。


ということで、私が考えてリュートに近い楽譜にしたものをあげておきます。


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次に恒例の タブラチュアです。ロンドン版を使っています。

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そして、演奏例です。


http://youtu.be/Iq2_ax6Ltyc

仕事をしながら、汗を掻き掻き演奏しましたので、練習不足と、
もともとのギター楽譜の運指が出てきたり、とミスだらけですが
音源として、あげさせていただきました。

ギターは、私が設計した61センチです。
この楽器に慣れてしまうと,64センチもかなりしんどいです。

59センチでも、録音したのですが、低音の響きなどがこの曲には必要なので、
61センチで取り直しました。

演奏で、気を使った箇所があります。と言うか、40年以上前に植木先生に教えていただいた
左手 運指をはっきり覚えているところです。

後半 23小節24,25,26小節の2声の部分です。
どちらの声部も音をつないで、歌うようにするために、例えば、24小節の上声部のラ、ミ、シ
とレガートに弾いて、その間、低音のドは音、指を動かさず、(ドは3の指で押さえているので
このドの音を切れないように、しっかり押さえて、小指をシまで伸ばさないといけません。
物理的に伸ばすのでなく、音楽的につながるよう伸ばすのです。)そして、最後のシにつながるよう
ドーーーシと歌っていくのです。必然的に小指と薬指は違う動きになります。
この4小節は2声を2声として弾くことの、難しさ大切さを教えていただきました。

演奏がそうなっているとは限りませんので。ご注意を!
でも、気持ちはそう弾いているつもりです。




このファンタジアは植木先生門下にとって、特別な曲のように思います。

手元にある2枚組のCD、シャロンイスビンさんがアランフェスをやっている以外は、
菊池真知子さんと渡辺範彦さんが演奏しているものです。

その中で、久石譲さんが編曲指揮した、ギターコンチェルト形式の曲が3曲あるのですが、
そのうちの、1曲がこのヴァイスのファンタジアなのです。

他の2曲はドビッシーとバッハの有名曲です。誰でも知っている曲です。

始めて、このCDを聞いたとき、渡辺さんにとっても、この曲は特別な曲なのかな?

と思いました。

それにしても、ソロはほとんど菊池真知子さんが弾かれているのですが、どの曲も
見事な演奏で、当時のギター演奏のレベルの高さが再確認されます。





  1. 2013/07/16(火) 22:42:02|
  2. ギター
  3. | コメント:3
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コメント

日本に帰還しました。で、、今 話されている事など、タイムリーな話題です。
大きな古時計、19世紀の歌でつくられた年も場所も特定できている、、仕事で行く大学の近くに
あるので現物もみたんだけれどね、、1870年に既に90才の時計なら1700年代のもののはずなのに・・
ちょいとちかうのだな、、こういうことをいうのは野暮だから詮索はしません、ジェノバのパガニーニの
楽器みたいなものですね、伝説でよいとおもいます。
演奏法、スイスの公開会議でそのことが話題になりました。友達のリュート バロックギター奏者イザベルはそのころの
証言をたくさん現物の手紙などとしてもっていて、、読んでいるととてもおもしろい。
勝手にまとめるとですね、皆違うひき方をしていたらしい、、あたりまえたけれど。。
多くある手紙は「爪を切るのはても面倒なんで爪で弾いていると弦が長持ちしないな〜」という記述ですね。

それと、、ちょいと面白かったのは、ぼくが審査委員長だったコンクールに いわゆるバロックギターの奏法
サムアンダーででたお嬢さんがいて、すばらしい演奏でヴィラロボスも弾ききってしまって、1位となりました。
奏法だけを云々しても限界があるな、、と感じました。単に心に届くものはどんなやり方でもとどくし
下手では届かない、のかも。lutenさんでしたっけ、、本質をいってられる投稿。
憧れや尊敬の危険さ、そのとおりだけれど、人は尊敬のひな形なしには自分の輪郭をつくれない、、
正しいひな形を選ぶ濃緑・・運 かもしれないし lutenさんも気がついてられるように
それが「才能」の本質かもしれません。
スイスの新聞記事です。イザベラはに「立って踊って弾いて!」というのに答えてやってくれました。
世界中のカナリオスを集めて彼女は弾きました。とても興味深かった。
www.koube.jp/2013sarrazESJPG.jpg
  1. URL |
  2. 2013/07/17(水) 01:25:27 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

ガンバ合宿でお目にかかったことのある者です。記事とは関係ないのですがリンクしているHPのアドレスのhttpの文字がダブって記載されておりつながりません。
直された方が良いのではないかと、お知らせいたします。
  1. URL |
  2. 2013/07/17(水) 08:49:41 |
  3. extajiji #-
  4. [ 編集 ]

感動

ギターの良さを実感できるすぐれた曲だと思いました。
 いつもながら、演奏を聴かせていただきましたが、感動いたしました。クラッシックギターにおいても、いかんなくリュートオリジナルの良さが伝わる演奏で、よく声部の立体感が出ておりました。
 ヴァイスのファンタジアは、昔のギターを弾こうの番組のテーマ曲で、渡辺氏の演奏とともに伝説のような記憶が走馬灯のごとく蘇ってきました。
 夢中で、テレビに合わせて私も弾いたものです。その後、リュートなる楽器の存在を知り、足を踏み入れたきっかけともなった曲でした。
 しかし、この曲を演奏会で弾く人も今ではほとんど見られなくなったことは残念です。
リュート演奏会においても同様で、逆にあまりに有名すぎて、演奏会では、少しのミスも大事になるほど難しい曲でもあると思うのです。だから演奏会にかけるのが怖いということなのでしょう。
 印象的な前奏から始まり、フーガ的な展開にいたるこの名曲をバロックリュートを演奏する人たち、クラッシックギター愛好家にもぜひ奏でてもらいたいものです。
  1. URL |
  2. 2013/07/17(水) 17:58:58 |
  3. gavottenⅡ #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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