古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

ヴァイス パッサカリア ギター楽譜について

ヴァイスのパッサカリアはギターでよく弾かれる、バロックリュートの曲ですが、
一般的に使われている楽譜は、最初に誰が編曲したのか分かりませんが、
オリジナルのバロックリュートの曲と、スラーの位置や、ポジションの選択が原曲と
かなり違っています。

調弦の違い、また楽器の違いからギターの曲として、
ふさわしいポジションやスラーにしているのかもしれませんが、
バロックリュートで実際に弾いてみて、ギターにもリュートの楽譜に忠実なほうが、
曲として音楽的に面白い箇所が沢山ありました。


そこで、この際、リュートタブラチュアから新しく楽譜を興したほうが良さそうだと思い
楽譜を作らせていただきました。

こんな仕事はギタリストの方にお任せしたほうが良いのかもしれませんが、
リュートとギターを弾くので、私でも良いかな?と思い作らせていただきました。



まず、第一段階として、ロンドン版の楽譜から、ギター楽譜を作ってみました。


一般的に出回っている楽譜の例として、古い楽譜なのですが、手元にあったので、
阿部保夫さん阿部恭士さんの「バロック名曲選集」を参考にさせていただきました。

ユーチューブなどで、演奏を聞かせていただくと、
この阿部さんの楽譜よりリュートの楽譜に近いものもありましたが、
ほぼ同じような楽譜が使われていましたので。

まず、一般的に使われている、ギターの楽譜に今回変更した箇所を示した楽譜を参考に付けます。


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そして、私が今回作った楽譜です。

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丸く囲んでいる所が変更箇所です。

番号を打っていますが、ほぼ100箇所あります。

そのうち スラーの変更が69箇所。

内訳は不足している箇所が 58箇所
原曲には付いていない、余分な所が11箇所あります。

不足している箇所は、もっとあるのですが、ギターの調弦ではこのくらいが限度かな?と思います。

もっとも、これは付けることの出来る箇所に可能な限り付けましたので、
弾いてみて不要だと思えば、付けないでください。

番号をつけていますが、17番、23番、39番のように、
左手で弦を打弦して付けるスラーは力が入りますし、なかなか思うような音は出ませんので、
私は付けたり、付けなかったりしています。

でも、本来そこには、スラーがあったということが分かれば、
そういう風に弾くことが出来ると思い、付けています。

スラーの変更以外では、ポジションの変更があります。

ここで、分かりやすいように、原曲のタブラチュアと私の変更案、
ギター楽譜で比べてみたものを付けてみます。5線譜でなく6線譜です。
(もうご存知だと思うのですが、6線譜、タブラチュアの読み方です。

横線は一番上がギターの1弦、一番下が6弦を表しています。
そして、押さえるフレットの位置を数字で示しています。)


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番号を付けている①の箇所は曲の最初の小節の所です。その説明です。

オリジナルのバロックリュートでは最初の和音が、2弦は0なので開放弦、
3弦も開放弦、4弦が1なので、1フレットを押さえます。そして、6線の下に
3本加線していますが、これは10コースを表しています。

もちろん、0なので開放弦です。

(ちなみに、7コースは加線せずに、6弦の下に書いていると、7弦です。)

ということで、ギター楽譜だと、2弦の7フレットのファ#ですが、
原曲では2弦の4フレットです。

これだと、1弦の2フレットから始めたほうが、リュートの音に近い、響きです。
同じような箇所では、89の上昇の音形で、2弦の8フレットまで使っていますが、
私は1弦の3フレットまでで、ポジションを徐々に上げています。
この方が原曲に近い進行ですので。
そして、最も大きく違うところは、51小節からの動きです。

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ギター楽譜では、1弦が開放弦、2弦が8フレット、3弦が11フレットですが、
リュートでは、2フレットと4フレットしか使っていません。

リュートでは音階的な動きになっていますが、ギター楽譜では、響きが残っていって、
和音的、カンパネラ的な音形になっています。

それなので、私は楽譜のようにオリジナルの、
リュートの音形進行に近い形でポジションを選んでいます。

また、これだとオリジナルのリュートの楽譜で付いている、
スラーは全て同じように付けることが出来ます。

リュートの調弦ではつけることが出来ない箇所までつけることは可能なのですが、
原曲にない所には付けていません。
ヴァイスさんがギターの調弦だと付ける事が出来るのなら、
彼もつけたと考えるなら,付けても良いと思いますが、それは皆さんで決めてください。

そして、一番変更したい箇所が29小節からです。
オリジナルのリュートでは、同じ レの音に対して、2弦の開放弦と、
3弦の5フレットの音を使って、面白い効果を狙っています。


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これは、私の楽譜のように、2弦の3フレットと3弦の7フレットを使えば、
同じような音の響きになります。

30小節の最後の音は、ギターの調弦ではどうしようもないので、
私は右手の指使いをpip または ipiにして、二弦に渡る
音の響きに近い効果を狙っています。



また、パッサカリアはシャコンヌと同じように、
低音の一定の旋律の上に高音部が変化していく形を取っています。

そこで、重要なのが低音の旋律をいかに歌うか、繋げるかと言う事だと思います。

本来のタブラチュアでは、休符は書いていませんが、5線譜に直すと、どうしても
手が届かない所や、ポジション移動で音が切れる所が出てきます。

それを運指その他で解決しようと考えました。

最もこんなことをしなくても、音は繋がるという方は無視してください。

例えば、13小節目は3拍目の1弦、2弦を4,3で押さえているときに2フレットをセーハしておくと、
とりあえず1弦のラ―ファが繋がりますので、最低音のドの音の指の置き換えに神経を使えます。


次に、38小節の最後の音は、4弦の6フレットを使うと、低音は切れません。
44小節のファの音は1の指を拡張すれば、低音は切れません

後、細かいことですが、37小節も低音が切れやすいので、休符が付いていますが、
ドの2の指をこの小節の11番目の音 ラを弾くときに、3の指に置き換えます。
(チェンバロの方が良くやっている方法です。)
次の小節で、どっちみち3の指に置き換えなくてはいけませんから、
早めにするだけで低音が切れなくなります。

63小節の2拍目の音ですが、ソ、ファを1弦2弦で弾くと(少し1の指を
拡げないといけませんが)2拍目の低音のラが切れなくなります。

そして、これはもうすでに慣れてしまってなかなか、リュートの楽譜どおりに弾くのは難しいのですが、
14小節のリズムが違うのです。
どうしても、7小節と同じようなリズム、譜割で弾いたほうが楽なのですが、
皆さんはどうされますか?

そして、少し苦労した箇所が 72小節です。
タブラチュアのように処理すると,低音が切れなくなります。

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ということで、演奏のための楽譜を付けておきます。
これを元に、演奏する方が、自分オリジナルのパッサカリアを作って頂ければ,と思います。

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長くなりましたが、最後にオリジナルのリュートのタブラチュアを載せておきます。これは友人のリュート奏者に分けていただいたものです。この楽譜の音源としてユーチューブで今村泰典さんが演奏されているものがアップされています。かなり速いテンポです。


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そして、オリジナルのタブラチュアです。
コピーのコピーなので見難いですが、何とか読めると思います。

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最後になりましたが、私のギター楽譜はバロックヴァイオリン奏者、ガンバ奏者、
そして作曲家の田淵宏幸さんに楽譜をパソコンで作っていただきました。
最後にお礼を言って終わりにさせていただきます。


そして、次回は、ドルメッチコレクションのヘルズミュア版のタブラチュアから
ギター譜を作らせていただきます。

  1. 2013/06/26(水) 12:16:13|
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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