古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

魂柱と駒の関係(コメントをいただいて)

コメントをいただいて、文献的なものが無いかどうか、探してみましたが、
手元には残っていませんでした。

40年ほど前に、楽器を(ガンバを)作り始めた頃、ガンバ製作の本はもちろん、
ありませんので、ヴァイオリン、チェロの製作の本を集めました。

ほぼ、ダンボール箱にいっぱいほどの本が集まりました。
その中に、チェロの製作の本ですが、魂柱と駒の間隔を魂柱の直径分離す、
と書いてありました。

他の書物で、魂柱の直径分か駒の厚み分 離すとあったのを記憶しています。

チェロの場合は、駒の厚みも、魂柱の直径も11ミリが標準なので、11ミリくらい離せば良い
と思います。
ヴァイオリンの場合は、魂柱が6ミリ、駒は4ミリから4,5ミリくらいなので、4~5ミリで
良いのではないかと思います。

ただ、これはガンバのように、ガット弦を使うことが条件です。

かなり以前に、弦の話をさせていただいた時に、チェロの弦で、
スティールやナイロンを張っている時は、コメントをいただいた方のように、
魂柱の直径の半分くらい、6ミリくらいにしないと、音程が取れない、
というか、音にならなかった経験があります。

音はするのですが、何の音か分からないほど、ぼけた、音程感のない音になるのです。

ヴァイオリンやヴィオラはまだ、近づけても鳴っている楽器は結構ありました。

そして、魂柱の直径分離すといってもこれは、標準なので、表板が薄い楽器、
表板のアーチが緩い楽器、表板の材質が柔らかい楽器は、魂柱と駒は近づけます。

逆に、表板が分厚い楽器、表板が固い材質の楽器、表板のアーチがきつい楽器は、
魂柱と駒は離します。

また演奏家の好みも入りますので、あくまでこれは基本的な考えです。


ガンバを作ってきて、40年近くなりますが、今まで、この原則で楽器は最も
コンディションが良く、一番楽器が鳴っていたように思います。

何年かに一度、日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会の夏季講習会のメンテナンスを
していますが、毎年10台から20台のガンバの調整をしますが、9割の楽器は
魂柱と駒が近すぎて,鳴っていない楽器でした。

その場で、魂柱と駒を離してあげると、「別の楽器になったみたい!」
「まるで、鳴り方が違うので、弾き易くなった」「音も良くなって、
楽器が生き返った」と良く言われます。

これは、楽器を弾けば、直ぐに分かることなので、いかに調整の人が
楽器を弾いていないのか、とよく思います。

新しい楽器を、持って来られた方で、「新しく作ってもらった楽器なのですが、
全然鳴らなくて、こんなものでしょうか?」と相談されることがよくあります。

もちろん、ガンバをプロとして作ってられる製作家の方の楽器です。

駒の、弦の当たるところの溝の深さや、ナットにも問題があることも多いのですが、
一番は駒と魂柱の関係です。というより駒と魂柱が近すぎて、弦の振動を駒が受けても、
魂柱がつっかい棒になって、表板の振動を止めているのです。表板が振動しないと、
楽器全体も鳴りませんし。

(ギターでも同じようなことがよくあります。新しく作ってもらったギターが鳴らないのです、
と持ってこられることが。骨棒やナットなどに問題があって、簡単に鳴るようになります。
これも、数分弾けば分かることなのですが、楽器が出来ても、弾いていないのでしょうね?
音など関係ないのでしょうか?)

東京でも、ガンバを作ってられる方は少ないので、調整はヴァイオリン関係の方が
やることが多いようで、モダンのヴァイオリンやチェロの感覚で調整されるのでしょう。

今、気が付いたのですが、無量塔さんや、ヴァイオリンを作っている方のガンバが
鳴らなかったのは、ただ、単に魂柱と駒が近すぎたのが原因かもしれませんね。

文献が見つからなくて,申し訳ないのですが、本当に数分弾けば分かることですので。

でも、モダンの人は大変ですね。高い弦を使って、高い楽器を使って、
楽器が鳴らないように調整しないといけないのですから。







  1. 2013/06/26(水) 01:54:16|
  2. ギター
  3. | コメント:1
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コメント

とても丁寧なご回答を、どうもありがとうございました。

実は、この週末でペグの調整で工房に行きましたとき(また別の工房でしたが)、ついでに魂柱も少し離してもらったのですが、最近出なくなってしまっていたガンバらしい響きが出て驚きました。
ただ、平山さまの仰るような距離まで駒と魂柱を離すのは、工房のご主人には抵抗があるように見えましたので、そこまでは出来ていません。次に調整するときには、なんとか相談して試してみたいと思います。

敢えて質問させて頂いたのは、最初調整して頂いた工房は、むしろガンバや古楽器で有名で、プロの方も良くいらっしゃっている工房だったからです。
今思い出したのですが、僕の楽器も、新作で買った当初は駒と魂柱は駒の厚み分離れていたのですが、それをその工房に持って行ったとき、「とんでもない位置に魂柱が立っている」と言われました。

そんなわけで、ちょっと引っ掛かっていたのですが、実際少し離すだけでも変化の方向性がわかりましたし、ぜひ試してみたいと思います。ありがとうございました。
  1. URL |
  2. 2013/06/26(水) 03:04:11 |
  3. ぐんま #-
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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