古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

習うと言う事 その2 楽器製作

いよいよ本題です。

楽器製作に関しては、私は誰にも習っていません。
楽器製作に必要であろうと思われる、木工についても誰にも習っていません。

初めて、楽器を作ったのは、17歳の時、45年前です。
そろそろ、ギターを始めようかと、思っていたときです。
現代ギターと言う雑誌があって、その通信販売で、ギターキットがあったので
このキットを使って作りました。
その頃は、今からギターを、演奏を、音楽を習っても、たいしたことは出来ないと、
思っていましたので。

小学校の時に、近くに日本画を書いている人がいて、遊びに行って手ほどきはしてもらいました。
中学に入り、美術部でデッサン、油絵、版画、木彫などを、そして、高専では引き続き、
油絵、陶芸などもやりました。

音楽は全然やっていなかったので、演奏より作る方が合っているのではないかと思ったのです。
キットも自分で作り、自分で楽しんでしました。
後で、この楽器は12弦に弦を増やして、指板を張替え、フレットを巻きつけ、ヴィウエラ
として使っていました。

そんな頃、植木先生と出会い、演奏が面白くなって、製作は興味と時間がなくなりました。
その後、公務員となり、月100時間ほどの残業が毎月続き、音楽も、結局一番自分が好きな音楽は
バロック、ルネサンスだったので、ギターの次にガンバを、そして、リュートを始めました。

仕事が忙しいから、逆に音楽は続けたいと思いました。仕事だけの毎日ではいやになりますから。
そのうち、残業が月200時間くらいになってきて、プロの方と演奏会をする程度になっていたのですが、
練習する時間も無くなり、プロの方の脚をひっぱている状況になりました。

でも、仕事だけでは嫌だったので、1日10分でも20分でも形に残る事を、と言うわけで
楽器つくりを始めたのです。

最も、その頃はリュートを弾いていて、ガンバのレッスンを受けたくなったのですが、
楽器が無かったので、ガンバを作らないといけない状況だったのです。

初めてのガンバは仕事をしながら、3週間で作りました。
この楽器は今、広島で元気に何のトラブルも無く演奏されています。
2台目の楽器は、プロの合奏団からの依頼で4週間で作った、フィーデルです。
これも、今香港で元気にしていると聞いています。
(4週間で確か、78時間残業して、通勤に往復2時間かけていましたから、
寝る時間はあったのでしょうか?)

当然、周りにガンバもフィーデルも作っている人がいなかったので、
誰にも教えてもらわず、自分で勉強しないといけなかったので、
ヴァイオリンの製作に関する本は、集められるだけ集めて、段ボール箱
一杯になりました。
ガンバなどの製作に関する本はありませんから。

近くに楽器製作の先生がいたら、習っていたでしょうか?
絶対に習っていなかったと思います。

私は音に弾かれて、ギターを、そしてリュートをガンバを始めたのです。
自分が弾きたい楽器を、自分が出したい音が出る楽器を作りたいと思って、
楽器つくりを始めたのです。
誰かに習うと言う事は、その人の音が入ってしまうと考えたのです。

誰かに習うと、確かに早く手順とか技術は身に付くように思いますが、
教えてもらう事は、その教える人の手順、技術であって、教えられる人の物ではないのです。
借り物の技術なのです。
借り物の技術、知識を離れて、自分の物を確立する時に、逆に邪魔になり、
遠回りになると考えました。

実際、うっかり聞いてしまったことがあって、(親切に教えてくれるので、つい聞いてしまいました)
その時、なるほどと思ってしまって、(その人は何十年と作っているのですから)
その事について考える事を辞めてしまいました。
簡単に考えても、その人が何十年かかかって、身に付けたことですから、それ以上のことは
思いつきません。
20年ほど経った時、そのやり方は、その人のやり方で、私のではない。
私の方法はこうだと、思ったのです。
教えてもらっていなければ、そのことについて考えるので、もっと早く自分の方法、
メソッドを見つけていただろうと思います。
回り道でした。

先生につかないということは、全て自分で考え決めなくてはいけません。
いろんな楽器の製作方法を、本で調べたり、昔の製作家の仕事を調べたり
楽器を見たり、弾いたりしなくてはいけません。

でも、この自分で調べて、自分の知識とした事は、自分の物です。
自分の武器です。応用が利きます。

教えてもらった事は、応用が利きません。

また、いろんな楽器を作ることが、勉強でした。
リュートから、ギターが。ガンバからギターが。
チェンバロからギターが。分かるのです。

一般的に知られていないのですが、ヴァイオリンで有名な
ストラディバリは、ヴァイオリンの他に、ヴィオラ、チェロ
はもちろんの事、ギター(10台以上は現存していると聞いています)
リュート、ハープ(それぞれ1台現存しています)
マンドリン、ガンバ、弓、ヴァオラ・ダ・モーレ
なども作っていました。
アマティと言う先生はいましたが、彼のようにいろんな楽器は作っていませんでした。

昔の職人さんは、師匠が教えてくれるのでなく、むしろ仕事を見せてもらえずに、
技を盗むようにして、技術を身に付けたといいます。
このほうが、自分で考え、自分の応用の技術が身につくと
昔の師匠は考えたのでしょう。
こうしていても、仏像、陶芸などは時代が下がると(現代に近づくと)
品下がると言われて、昔の物の方が素晴らしいと言われます。
まして、手取り、足取り教えられると、自分の物を作るまでに大きな回り道を
することになると思います。

幸い、私が住む、丹波には今の丹波市氷上町に達身寺と言うお寺があります。運慶がここで修行した
と言われているお寺です。
田舎の小さなお寺なのですが、沢山の仏像が残されていて、仏師の里ではなかったかと、
言われています。
ここで、古い時代の仏像から新しい仏像が、一度に見られます。
確かに、古い仏像の方が絶対にいいのです。

同じように、陶芸でも篠山市に古陶館ということろがあって、古いものから順に展示してあります。
面白い物は、桃山くらいで、なんとか江戸中期くらいまでの物が、面白いです。

後期の物になると、デザイン、形が定型化されていって、面白みに欠けます。

楽器も同じような事が言えると思います。

私には、弟子がいません。と言うか、いるのですが、皆私より年上で、
指導させていただいているという感じです。

遅く楽器製作を始めた人が多く、すべての事を教えています。
ですから、1台目、2台目の楽器が10年20年作っている人より
良い楽器を作ります。

もし若い弟子がいたら(絶対にいないのですが)
何も教えず、その弟子が自分で気が付いて、自分の力となるように
ヒントを与えるようにすると思います。

一番親しかった画家の話です(お互い忙しいはずなのに、1週間のうち、4日ほどは明け方まで
酒を飲んで、いろんな話をしていました。良くこれだけ、話をすることがあるなあ、
と自分でも感心するほどでした)
歌舞伎の絵の「まねき」は、彼が日本中の劇場の9割以上は描いています。

絵の教室をも持っていて、指導もしているのですが、女性や年配の
生徒には、詳しく丁寧に教えているのです。
でも、将来作家になる、若い男性の生徒には、技術的なことは一切教えず、
作家として生きていくには、絵描きとはどうあるべきなのか?
と言った話しかしていませんでした。

楽器製作もこれでいいと思います。
作るのは、そのお弟子さん本人なのですから。

ですから、よく楽器製作家が、いろんな製作家のところに行って、
いろんな教えを受けたり、アドヴァイスをもらっていると言う話を
聞くと、(特にギターに多いように思います)
行って何をするの、何を聞いてくるの?と思います。

ブーシェさんの楽器が好きで、同じような楽器を作りたい。
トーレスさんの楽器が好きで、同じような楽器を作りたい。
ハウザーさんの楽器が好きで、同じような楽器を作りたい。

と言う出発点なら、なんとなく話は分かるように思います。
でも、私は自分が作りたい楽器を、作りたいのです。
でも、その楽器は私でなければ、作ることが出来ません。
そして、その楽器は今までの楽器とは、違うのです。
それで、どのような楽器なのか、分かっていただくように、
このブログを作りました。

長くなってすみません。私も仕事をしないといけないのですが、
つい伝えたい事があると、長くなってしまいます。

少しづつ、書かせていただきますので、これからもよろしくお願い致します。










  1. 2012/01/15(日) 15:45:04|
  2. ギター
  3. | コメント:1
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コメント

大変いいヒント有難うございます。

私も、自分の出したい音は自分にしか無いと感じていました。
本質的な部分は人からは吸収できないのですね。
  1. URL |
  2. 2013/04/28(日) 12:38:25 |
  3. 夜のガスパル #zHUBVIDs
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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