古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

沢山コメントをいただいてありがとうございます。

沢山コメントをいただいてありがとうございます。

ここのところ、ブログの更新が出来ていませんでした。
泊りがけの仕事があって、また、帰ってきても雑用がたまっていたので、
時間が取れませんでした。



楽器のラベル、シリアルナンバー特に、パノルモさんの
ことについては、ものすごく詳しい内容のコメントをいただいて、
私も知らないことが沢山書かれていて、新しい知識をいただきました。

マニアックと言ってしまうと、もったいないような、深い知識と研究の成果の
コメント、いつもありがたく読ませていただいています。

私は楽器を作る立場なのですが、ラベルとかシリアルナンバーには
あまり関心はありませんでした。
自分の楽器にも、シリアルナンバーは付けていませんでしたし、
ラベルも今のように、パソコン、プリンターが普及していなかった頃は、
名刺の英字の部分を切り取って、ラベルに使っていました。

アマチュアの頃は、楽器を作ることが楽しく、作ってしまえば
次の楽器に関心が移っていくので、ラベル自体を付けていない楽器も
結構ありました。(作った楽器がどのように、育っていくかは興味がありましたが)

あと、パノルモさんの楽器は、修理させていただいて、直接中の構造を見た
物は、5台くらいですが、簡単な調整なども含めても、10台くらいしか見ていませんが、
パノルモさんの代名詞の、ファンブレースの楽器は2台くらいで、むしろ
斜めバスバー1本の楽器のほうが多かったようです。

西垣さんも言っておられたように思うのですが、19世紀ギター、ロマンチックギター
として使うなら、斜めバスバー1本のほうが良いようにも思います。

表板の構造がシンプルなだけに、音の立ち上がりや、音色が19世紀ギターのイメージに
合うようです。

パノルモさんのファンブレースは逆に19世紀ギターとしては、特殊なものかもしれません。

ということで、ここで、私のブログらしく19世紀ギター、ロマンチックギターの表板の
というか、バスバーの配置を見てみましょうか。

まず、最初は A のパノルモ斜め1本バーです。
今まで、修理させていただいたパノルモさんで最も多いパターンです。

少し、場所がずれていたり、角度がずれている場合がありますが、
ほとんど同じ場所、角度でした。



img061.jpg


B はシュタウファさんやコントラギターに見られる主にウイーンで使われたパターン。
手元の、ラベルが無いのですが1900年頃のパーラーギターがこのバスバーです。

幾分、音が硬い感じはしますが、減衰が長く、バランスは良いです。

次は ラコートさんの代表的なバスバーです。


img062.jpg


C がそうです。
パノルモさんに比べると、ブジッジの下、お尻側にもう1本バスバーがほとんど、
ブリッジに平行に入っています。

私がパノルモさんが好きなのは、このバスバーの違いです。

ラコートさんのようにここに1本バスバーが入ると、表板の特に低音側の鳴る面積が分割され
倍音が多くなるように思います。

パノルモさんのバスバーだと、低音側の面積も大きく、バスバーによって分割されていないので、
基音の多い低音が鳴るのです。

そして、Dのラコートさんの斜めバスバーをとって、ブリッジ下のバスバーだけのもの。

1900年頃のパーラーギターに見られます。
私が持っているパーラーギターのうち1台がそうです。

次に特殊な例かもしれませんが、


img063.jpg


ブリッジの真下にバーがあるシュタウファーさんのようでなく、少し下がったところにバスバーがあるもの。

そして、パノルモさんのように低音側の面積を増やそうとした、マーチンさんの楽器のバスバーです。

これ以外にも、今回手に入った、スペインのベラスコさんのぎたーや、ガダニーニさんのギターのように
ブリッジ周りにバスバーが全然無いものもあります。

そして、一番独特な構造のラブレボットさん(ヴァイオリン属のようなバスバーが平行に2本)
と、製作家の方によって、様々なバスバーの配置があります。


何故、このような19世紀ギターのバスバーについて、書かせていただいたかと言うと。

私は、自分の作りたい理想のギター、音楽の表現が自由に出来るギターで、なおかつ
弾いている人に、充分満足感のあるギター、もちろん聞いている人に、
弾いている人が伝えたい音楽が、伝わるギターです。

その点から、モダンスペインギターには興味がありませんでしたが、弾いている人の満足感
というのはあります。

19世紀ギターでも、ギター音楽でない、音楽が表現できると思っていますが、
ソルさん、アグアドさん、ジュリアーニさんといった、19世紀ギターが使われていた
当時の作曲家以降の音楽には、少し無理があるのでは、と思っています。


そこで、リュートや、ガンバ、チェンバロ、ハープと言った、ギター以外の楽器から
ヒントを得た、19世紀ギターの延長線上の楽器を作りたいと思ったのです。

19世紀ギターには、興味がありますが、19世紀ギターのコピーを作ることには、
あまり興味はありませんでした。

それは、トーレスさんのコピーや、ブーシェさんや、ハウザーさんのレプリカを作ることと
同じことのように思っていました。

19世紀ギターの実に様々な、スタイルや構造を真似るのでなく、
19世紀ギターを作った製作者が何を考え、どういう楽器を作りたかったを考えることが、
自分の考えるギターに結びつくと、考えていました。


19世紀ギターはまだ、探せばオリジナルは見つかります。
でも、非常に高価であったり、メンテナンスにお金も時間もかかる楽器もあります。

そこで、19世紀ギターの延長線上の、1900年頃のパーラーギターを、集めて
演奏できるようにしていってます。

これらの楽器は、スティール弦が張られていたり、扱いが乱暴で、ほとんどの楽器が
演奏不可能です。
でも、これらの楽器は、100年以上前に作られ、演奏されてきた楽器です。
1台でも、演奏できるように、音楽が表現できる楽器になれば、とチャンスがあれば、
集めるようにしています。

現在、6台ほど手元にありますが、1台はこの間、使えるようになりました。

ラベルは無いのですが、ドイツの楽器かな?と思います。
この楽器も、演奏すると音楽が表現できる楽器ですが、
とにかく弾いていて楽しい楽器です。

コメントをいただいて、そのことに関しての考えを書くつもりでしたが、
話が横に逸れたようで、申し訳ありません。

cabotinさんが書かれていたのですが、トーレスさんが試したことは、
ほとんどパノルモさんが試しているとの事、私もそう思います。
また、アコースティックギターのxブレースとか、ロッドの考え、ほとんどのことが
19世紀ギターで試されていること。

トーレスさんの専売特許のような、ファンブレースは、パノルモさんが。
ドーミングはマドリード派のファン・モレーノさんあたりが始めて、
トーレスさんの頃には、当たり前だったこと。
楽器の大型化はファン・モレーノさんの次世代の作家、フランシスコ・ゴンザレスさんに
よってなされていた、と言うことは、ロマニさんのトーレスさんの本に書かれています。

でも、楽器について出版されている、本の中には

18世紀には今のような単弦のギターが登場するが、(最も古い単弦ギターは1801年か1803年に
作られたと言う記録がありますが、1825年か1825年あたりから作られたと考えるのが自然だと思います)
それ以前のギターと同様、音量の小ささは否めず、人気は衰退していった、とありますが、
フランスを中心にギターは流行しています。
そこで、トーレスが楽器を大きくし、弦長を65センチと決めるなど、画期的な改良を試みた。
(19世紀ギターと呼ばれる)と括弧書きされています。

このような本ですから、トーレスがフレットの位置を現在のように固定した。とか
ファンブレースのついても、トーレスの改良点のひとつとか、
ヴァイオリンのストラッドさんと同じような扱いになっています。
これ以外にも、おかしい記述が満載なのですが、楽器については
おかしな、間違った記述の本が多いですね。


かなり以前に、横板に穴を開けたギターがありますが、
kogakkiさんはどうお考えですか?
というコメントをいただいていると思います。

これも、演奏する人に自分の音が聞きやすくする工夫で、面白いと思いました。
晶ギターなどは、小さいのですが、もっと大きな穴を開けている作家もいます。

音の位相の問題とも関係があるようで、一度試しても良いと思うのですが、
私がするとすれば、リュートのローズのようにすれば、ただ開いている穴より、
楽器として美しく、また、リュートのローズのように裏から補強が出来るので、
構造的にも問題がなくなりそうです。



話がよく、あっちこっちに行きますが、皆さんと一緒にギターの事を
更に深く、考えていけたらと思っています。

これからも、よろしくお願いします。





  1. 2013/06/22(土) 23:17:56|
  2. ギター
  3. | コメント:2
<<なぜ、ストラッドを超えられないのか | ホーム | 弦は緩めて保管したほうが良いのか?>>

コメント

構造図まで載せていただけてありがとうございます。

 今まで、ほとんどが横バー方式のパノルモ楽器の修復が多いということは、ほとんど1820年代のものであったと思います。日本国内に存在するパノルモは1820年代が多いかもしれません。

 愛好家やプロの方の好みかもしれません。つまり、より19世紀的な響きを好むか、現代にも通ずるオールマイテイーさを求めるかで、所有する年代が決まってしまうということかもしれません。
 19世紀的なら1820年代を、それ以外であれば、1830年以降のものとかが大まかな分けではないかなと思います。

 放射ブレーシング構造を持つパノルモは、大抵ハカランダ1枚板を贅沢に使用しており、表板も1枚板です。私が見てきたものは、今では考えられないような、見事な柾目のハカランダでした。さすがに1800年代はまだ贅沢に使用できた時代だと感心したものです。
 音に関しても、ハカランダのやや硬質な反応の良さと立ち上がりと唸り、それに支えられた抜ける透き通った高音のすばらしさは、たいしたものでした。経年変化による反応の良さの効果もあると思います。

 一方、横バー方式のものは、大抵、楓材を裏板に使用したものが多く、たしかに弾き方も19世紀的といえるかもしれません。
 好みの問題だと思います。私個人では、放射ブレーシング構造・ハカランダ1枚板が好みなのです。

 楽器作りも、目標とする製作家以上のものは作れない、というのは至言です。やはり、そこにオリジナリテイーを加味し、試行錯誤が必要なのでしょう。

 そういえば、ハウザー1世の有名な話にも、1924年にミュンヘンで初めてセゴビアさんに出会い、毎年試行錯誤しながら、日本の初コンサートで、1928、1929年のものを使用し、さらにその結果を踏まえて1931年に2本を注文、さらにメキシコシティーで1933年作を使用し、その後も毎年セゴビアに届けられていたのでしょう、1937年作で、やっと、「もうこれ以上のものを作らなくてよい」との 修了のお墨付きを得られたのでした。
 このように名工と言われる人も、トーレスやマヌエル・ラミレスを参考としながらも、独自のアイデアを盛り込まないといい物は作れないという証左でしょう。
 単なる忠実なコピーでは”いいものは出来ないということです。
平山様の仰られることがよく理解できます。

 一方、リュートのような楽器はどうでしょうか。世界的にみなさん、「歴史に忠実に」と固執してるように思えてなりません。歴史に忠実なるもの意外は、見下されているように思えるのです。例えば、1970年代のものは、あれはリュートの形をしただけのものだとか、買うなら80年代に入ってからのものが良いとか、そのような評価が多い気がします。70年代のものでも、独自のアイデア満載の製作家もおられるでしょう。私はリュートを嗜みますが、ダメという評価はしていません。

 楽器製作の世界も多数決的評価のようなものが多い気がします。何が良くてダメなのか、難しい問題でもあります。しかし、今の現代では評価がなくても、200年後に再評価されることもあると思うのです。

 「最終評価」 は歴史にまかせるしかないのかもしれません。
  1. URL |
  2. 2013/06/23(日) 15:16:43 |
  3. PPFAN #-
  4. [ 編集 ]

はじめまして、制作・修復も手がける工房では、内部の構造も観察調査できて有益ですね。
 私も考えたことは同じで、横の力木のみのシンプル構造のほうが振動を妨げるものがないので自然な感じがします。パノルモの放射状は画期的な発見で先見があるなと思いました。

 トーレスについては賛否両論ありますね。ものすごく神様みたいに信奉するギタリストや制作者もいれば、屁とも思わない方々など。
 特にセゴビアは後者で、自らも所有しなかったし、某日本人ギタリストのインタビューにも、コンサート用のいいものは作らなかったということでした。酒場の流しのギターから、特注で装飾豊かな金持ちのために作った僅かなものだったようです。

ある時、セゴビアにトーレスのギターを見せに来た人に、「あなた、これは兵隊さん用に遊びで作ったものですよ、トーレスが真剣に作ったものではありません」 とか言ったそうな。
 それだけコンサートに耐えうる楽器は少ないということです。トーレスを参考にすることはあっても、やはり自分のオリジナリティーを加味しないといけないのです。

 19世紀後半からのトーレスは確かに大型化で音量には寄与したかもしれませんが、今現在良いと言われて、時々コンサートで演奏されるトーレスは、取っておきの材料で制作されたもので、かつ経年変化の影響の効果の賜物だと思うのです。
 私は、トーレスではなく、19世紀ギターに範をとるほうがいいと思っています。18世紀のパヘスとかパノルモに繋がるイタリアものにいい楽器を作るヒントがあるように思えます。
  1. URL |
  2. 2013/06/24(月) 19:37:16 |
  3. anon #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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