古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

弦は緩めて保管したほうが良いのか?

弦は緩めて保管したほうが良いのか?

これは、難しい問題だと思います。

ギター製作家の方でも、はっきりその根拠を示して、答えられる人は少ないかな?
と思います。

製作家の方で、緩めたほうが良い、緩めなくて良い、と答えられても、その理由が
「・・・・のほうが良いと、先生に習った」とか、「そう言われている」と言う理由だったりしますから。

私の考えですが、長期間でなければ弦を緩める必要は無いと思います。
半年も,1年も弾かないなら、半音か1音くらいは下げていても良いかな?と思います。
(その場合でも1弦だけかハナバッハのスパーハイなら 4,5,6弦も)

このブログに関心を持って見て下さっている方は、ほとんどの方がモダンスペインギターを
使ってられる方だと思います。

普通に作られたギターでしたら、毎日使っているとか,1週間に一度使っている程度だと、
緩める必要は無いかと思います。

この理由を書かせていただく前に、ギターの弦の張力を調べておきましょうか。


img059.jpg


また、現代ギター誌からの引用ですが、2011年 6月号 11pからの引用です。


昔から使っていた オーガスチンの黒で 37.6キロ
プロアルテ EJ-45 ノーマルで 38.1キロ
サバレス アリアンススタンダード で 39.7キロ
それ以外は ハイテンションでも42キロ程度です。
特別 張力の大きいハナバッハ シルバースペシャル スーパーハイ で45.4キロです。

ということで、ギターの弦の張力は 40キロ程度としておいても良さそうです。
大きくて 40数キロくらいと。

他の楽器、リュートなどはまず弦を緩めることはありません。

ルネサンスのリュートでも、10コースだと19本 合計すれば 40キロほどだと思います。
この張力を受けているのが、表板1.5ミリ程度で,バスバーの補強も無く、ブリッジもギターの
3分の一程度です。

リュートはギターと違って、チェンバロのように表板が弦のテンションによって、S字カーブ
になります。というか、S字カーブになることによって鳴るともいえます。

そのS字カーブを保つためにも、弦は張りっぱなしのほうが良いのです。

ガンバは、弦がガットのため,弦を長持ちさせると言う意味から,弦をそれも
1弦,2弦くらいを半音ほど下げます。

ギターは40キロほどのテンションで表板の厚みも 薄い楽器で2ミリ程度、
厚いと2.8ミリくらいでしょうか?
それに、沢山のバスバーも入っています。

モダンスペインギターの場合は表板がドーム形状になっていますが、これも強度を保つためには
有効です。

この丈夫な、構造のギターだと、緩める必要は無いかと思います。

逆に緩めたり,張ったりを繰り返すと表板のテンションがしょっちゅう変わるので、
バスバーの剥がれや、音の安定のためには不利かもしれません。

ただ、トーレスさんによって、楽器が大きくなり、更に後の人が大きくしたので、
ブーシェさんや古い楽器だとマヌエル・ラミレス、サントス・エルナンデスさんたちのように
表板が薄い楽器だと、そして40年,50年それ以上経った楽器だと、1週間も弾かないとなると
弦にもよりますが、1弦くらいは緩めたほうが良さそうです。

あまり沢山楽器を見たわけではないのですが、1930年くらいの,シンプリシオさんの楽器とか
ゴメス・ラミレスさんの楽器、サントス・エルナンデスさんの楽器を見ると、経年変化以上に
楽器が古くなっている感じはします。

こんな楽器を見ると、弦は緩めておいたほうが,楽器は長持ちするのかな?とも考えたりしますが
弦を張りっぱなしにしていることで、経年変化の効果を早く出させているのかな?とも考えます。

ということで、特別、表板が薄く作られている楽器で無ければ、弦は緩めなくても良いと思います。
表板以外は,モダンの楽器はものすごく丈夫に作られていますので、心配はありません。

弦を張りっぱなしにしていることで、ネックが曲がったり,ブリッジが外れると言うことは、
無いと思います。材料とか仕事が悪いのが原因だと思います。

(アコ-スティックギターだと弦は緩めたほうが良さそうです。)

以上はあくまで,私の考えです。違う考えの方もいらっしゃると思いますが。
 


  1. 2013/06/09(日) 18:07:29|
  2. ギター
  3. | コメント:2
<<沢山コメントをいただいてありがとうございます。 | ホーム | コメントのお返事>>

コメント

私の質問に懇切丁寧なご回答で参考となりました。

 まとめますと、30年代くらいの古くて表面板の薄いギターは、緩めた方が無難であること、現代のものや厚い板厚の楽器は緩めたり、締めたり頻繁に行うとトラブルの基や鳴らなくなる。
 私の師匠の言っていたことは必ずしも間違いではなかったのですね。

 ところで、リュートの弦張力は、表面版がS字カーブに変形させねばならないというのは初耳でした。薄い上にクラックなどがよく入らないものだと思いました。
 リュートで大丈夫なら、尚更ギターならまず安心だと思います。

 おかげさまですっきり安心いたしました。どうもありがとうございまひた。
  1. URL |
  2. 2013/06/09(日) 19:20:54 |
  3. o.k #-
  4. [ 編集 ]

はじめまして。

 私はギターではありませんが、リュートを弾いています。楽器も今までに多く所有してきました。おおいに興味を惹く内容です。
 普段から楽器の保管やトラブル防止という観点から気をつけていますが、少々違う考えを持っています。

 S字状の変形ということに関しては、音色の優れる楽器に比較的多い特色でした。ですが、それと引き換えにトラブルのよく起こるのもこのタイプなのです。
 リュートの調弦上の理由から大幅に緩めることはあまりしません。それゆえに、楽器の構造的な薄さから、これが仇となります。S字になるのは限界上ギリギリの薄さなのです。
 四季の変化や温度、湿度の変化の厳しい日本では、特に外国製のもので、S字状楽器はひとたまりもありませんでした。
 一例として、私のフランス製の某楽器は世界的な名器ですが、多くはクラック、変形などトラブルを良く起こしました。典型的なS字状です。

 日本製も4台所有していますが、3台はS字状ですが、トラブルはありません。さすがに優秀です。
 S字状の楽器に関しては、条件があると思うのです。特に外国製楽器は要注意で、やはり少し全音くらい緩めたほうが無難ではないかと思うのです。

 日本製については、日本の風土で製作されるためか、製作後12年~38年のものまで所有してますが、クラック、反りなど一切ありません。
 反面、外国製のものはいつも気が抜けません。
  1. URL |
  2. 2013/06/14(金) 12:34:44 |
  3. HIRAMATSU #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (334)
演奏会 (10)
その他 (20)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR