古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

コメントのお返事

いつも、真剣な、また深いお考えのコメントをいただきありがとうございます。

まず、気にされている方もいらっしゃるかもしれませんが。

1880年当時のギター2本です。

スペインのベラスコのギターは当分持っておこうと思っています。
経年変化の実証として、もう少しいろんな方に見ていただきたいし、何故この楽器がこんな音がするのか?
もう少し考えてみたいと思っています。

もう一台の、マーチン系のギターは、作られたときの音、また、現在の音がどうして生まれたのか?
少しは分かるのですが、しばらく弾いてみて、同じような楽器が出来るきっかけがつかめれば、
手放しても良いかな?とも思っています。



このように、素晴らしいロマンチックギター、19世紀ギターをコンクールに使わないのは、何故?
というコメントをいただきました。

手元にたまたまあった、現代ギターで 2008年1月号で第50回 東京国際ギターコンクールの結果が
発表されています。

1位はオーストラリアのミン・レ・ホーンさん、2位が日本の熊谷さん、3位が同点でロシア/在 ドイツ
のパベル・クボウシキーさん。
このパベルさんが、1865年のゴットリー・シェルツアー のオリジナルロマンティックギターで出場されていました。
1位のミンさんはスモールマンです。

結果同点の3位と言うことで、ロマンティックギターを使った、マイナス要素は少ないように思えます。

審査結果を見ると、ギタリストでない,審査委員長の 野田さんは最高点,ギタリストの鈴木一郎さん、
兼子さんは最高点を、福田さん,小原さん,荘村さんはそれぞれ、4位5位の点です。

もちろん、楽器だけから来る点差ではないと思いますが。

コンクール評などを見ると、予選でビラロボスや、本選で武満、ロドリーゴなどを弾いているのですが、
これらの曲は楽器に合ってなかった、これらの曲だけはモダン楽器で弾けばよかったのでは?
と書かれています。

私もコンクールは聞いていませんが、同じようなことを考えました。
後の曲、バッハやレニアーニ、タレガの曲は楽器に合った曲なので、演奏もそうだったのでしょうが、
とても良い評価です。

ここでギターから離れますが、30年ほど前の話です。

とても頭の良いチェンバリストと仕事を良くしていました。
沢山の演奏会のひとつに、サティの曲を、チェンバロ2台と歌で演奏すると言うのがありました。
サティはもちろんピアノで作曲していますが、スタンウエイのフルコンでは作曲していません。
もっと小さな、アップライトのようなピアノで作曲していたようです。

そこで、チェンバロを使うことによって,和音の変化や、音楽の構造が良く分かります。
彼が作曲したイメージに近いかもしれません。
ペダルが無いので、曲によっては2台のチェンバロを使ってられました。
私には,ピアノのサティより良いように思いました。
歌ももちろん、オペラのようなベルカントでなく、バロック歌唱のような歌い方です。

ギターでも、ビラ・ロボスなどは,19世紀ギターで弾いても、新しい魅力が発見できるかもしれません。
普通に良く弾かれるイメージでは無いと思いますが。

そういえば、ビラ・ロボスさんの指揮した有名な「ブラジル風バッハ」もかなり、アップテンポで
前へ前へと言う演奏でした。19世紀ギターで弾くロボスさんの曲のほうが,本人のイメージした曲に
近いかもしれませんね。



西垣さんも19世紀ギターはタレガくらいまでかな?と言ってられました。
(西垣さんの持ってられるパノルモは例外的な脅威の奇跡の楽器なので、何でも弾けると思いますが)

ビラ・ロボスやロドリーゴなどは、モダンのドスンと言うか,ボンというかボワンとした,低音の響き
を聞きたいと思っている人も多いようですし、そのほうが、曲にあっていると言う人が多いでしょう。

古くからの友人の有名ギタリストからは 「19世紀ギターは弾かない、楽器を持ってきれくれるのなら、
モダンにして」と言われています。

演奏会で、コンクールで、音が良く通る,と言っても,モダンスペインギターとは響きも音色も
違うので、モダンギターを聞きに来た人には,違和感を感じるのかもしれません。

以前にも書かせていただきましたが、私の作るギターで、特に楓のギターは、ギター以外の人には
「なんと、綺麗な音のギター」と言われますが、ギタリストの評価は
そうでない場合が多かったです。(19世紀ギターを弾いている人は、ギターリスト以外の音楽家と
同じ評価です)

日本だけかどうか分かりませんが、モダンギターとモダンギターを弾いているギタリストと、
19世紀ギターを弾いている、ギタリストの間には溝があるように思います。
むしろ、これが問題かな?とも思います。

コンクールでなくても、ソル以前の曲などは普通に演奏会で,19世紀ギター,ロマンティックギターを
使って欲しいとは思いますが、どうでしょうか?
でも、何人かの方は19世紀ギターとモダンギターの持ち替えで,演奏会をされていますが、
持ち替えは難しいようです。

今,一番名の知られている,福田進一さんが ラコートやガダニーニといった楽器を弾かれているので、
少しずつ、モダンとロマンチックの溝が埋まってくるくれることを願っています。

私も,モダンとロマンチックの間の楽器を作ることによって、溝が少しでも埋まれば,と思っています。


弦は張りっぱなしでよいのか?と言う問題は次回に。









  1. 2013/06/09(日) 13:54:36|
  2. ギター
  3. | コメント:2
<<弦は緩めて保管したほうが良いのか? | ホーム | 61センチギターと新発見の弦>>

コメント

早々のご返事でありがとうございます。
 
 やはり、ギタリストの音の感じ方と、ギタリストでない「一般」の音楽家(又は聴衆)の評価が違うという事実があることがわかりました。

 モダンギターの強いテンションと爪弾きによる鋭敏な音に鳴らされた耳には、19世紀ギターの味がわからない方が多いということだと思います。

 もちろん、ソル、ジュリアーニ等、そしてタレガまでなら19世紀ギターで、20世紀に作曲された曲はモダンでという使い分けはあるのかなという感想ももちました。

 最近のコンクールで第3位までに19世紀ギターで入賞した事実があったことは嬉しいかぎりです。

 西垣先生、福田先生等の一流の先生が19世紀ギターでご活躍されていることは心強いですし、モダン派とロマンチック派の隙間を埋めるギター作りを推進されておられる平山さんにも感謝したいです。

 さて、その西垣先生ご所有のパノルモとは、「例外的で、奇跡」のとはどのような楽器なのでしょうか。
 私も数台は試奏したことはありますが、もしやソルと友人であったジョセフ・パノルモの自作品でしょうか。めったに市場に出ず、数少ない名器の誉高く、ルイス作と瓜二つらしい楽器ですが、それともルイス自身の作のものでしょうか。

 一度聞いてみたいです。コッフもすごいとのことですが、パノルモの音も聞いてみたいです。
  1. URL |
  2. 2013/06/09(日) 16:06:58 |
  3. 小姑の愚痴 #-
  4. [ 編集 ]

ここのところ19世紀ギターが熱い話題となっていて、楽しく拝見しています。
 かなりマニアックな話からコンクールへの持込などなかなか白熱していますね。

 ある時代に作曲された曲は、その時代の楽器(オリジナル)を用いてこそ、その本当の味が出る(わかる)というのは本当だと思っています。

 リュートももちろん、手に入るのだったらオリジナルにこしたことはないと思います。オールガットで、オリジナル、当時のファクシミリ楽譜、、、、、言うことありません。

翻って、現代ならどういうことになるかですが、19世紀~20世紀初頭の音楽であれば、今でも手に容易に入る19世紀ギターを石にかじりつてでも入手するべきだというのが私の考えです。
 貴重な楽器は待ってはくれません。コレクターとか、愛好家、収集マニヤとか、虎視眈々とオークションサイトや海外の売買サイトを物色していることでしょう。

 特に良質な三大名器といわれるラコート、パノルモ、シュタウファー、そしてミルクールものなどはすぐに売れてしまうと思います。

今ならまだ19世紀ものは容易に手に入ります。しかし、リュートの世界はそうはいきません。そこが一番悩ましいところです。弾ける状態(またはレストアして弾ける状態)のものは中々出てきません。欧州中を旅して、オンボロ状態の表面板の板切れやボールの残骸が見つかれば良いほうではないかと思います。

 または、博物館と交渉し、目が飛び出るくらいの大枚を出して購入できるか、これは難しい(不可能)かもしれませんが、財政難に苦しむような博物館なら可能でしょうか。

 最近でもないですが、ここのところオリジナル回帰に世の中が向かっているように思えてなりません。楽器だけでなく、科学万能至上主義から精神面への回帰、古きよき時代の家具や道具、アンティーク市場の活況、リサイクル品の見直しなどなどです。身近な腕時計もソーラーウォッチでなく、オールドのスイス製機械式時計が流行ったりして。

 それにしても、平山様の最近入手された19世紀ギターは実に経年変化したよい楽器だと思います。こういう楽器を拝見しますと、もうレプリカなんて欲しくなくなりそうです。見ていて熟成された燻し銀の音色が溢れ出てくるようです。

 チャンスがあれば私も欲しい。
  1. URL |
  2. 2013/06/12(水) 20:48:10 |
  3. gavottenⅡ #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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