古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

クラックについて

音吉さんからクラックについて詳しいコメントをいただきました。

書かれていることは、全て正しいことだと思います。私もまさに、同じ考えです。
ここまで、楽器のことを分かってられる方が居られる事に、びっくりしていますし、
書いていただいたことに感謝しています。

よく、楽器を修理してもらったら(クラックや剥がれなど)以前より鳴らなくなった、
という話を聞きます。

クラックの入る原因が、モダンの楽器には多いのですが、楽器を固めて作っている場合
(ほとんどそうです)構造的に弱い箇所,表板にストレスの逃げが生じて、クラックが
入る場合があります。
この場合など、カチカチに固まっていたギターがクラックが入ることによって、
振動し始めるということを、結構沢山見ていきました。

演奏家がどうしても気なる、という場合はただ隙間を埋めるような、力は働かないような
修理をしたことがあります。

ギターの場合でしたら、表板に3箇所くらい長さは20センチくらいあっても,音には
影響しない場合が多いように思います。
ギターの場合、ラミレス3世さんも書かれているのですが、ギターのバスバーは
表板の補強にしか過ぎない。と言うことで、表板の年輪方向に音は走っているが、
横方向にはほとんど走っていないので、
クラックが入っても音にはそんなに影響が無いということでしょうか。

ただ、クラックの原因が安い楽器には多いかもしれませんが、材料の乾燥が充分でない
時には、クラックが入りますが、これはクラックが入ってから,ある程度落ち着いてから
埋めても良いと思います。

チェンバロなどは、響板は広いところだと、90センチ近くありますので、充分乾燥した
木を使っても、クラックが入ることがあります。

これは、製作するときに、使われる条件をある程度考慮して、響板を張るのですが、
想定した条件以上に乾燥したときなど、クラックが入ります。

私の貸し出しの楽器も,4箇所ほどクラックが入っていますが,音には影響がないので、
そのままにしています。
以前のブログに書かせていただきましたが、冬のホールなどでは湿度が10%台になりますので、
クラックが入りますが、夏,梅雨時分だと、80%を越えると、クラックは完全になくなります。

もし埋め木などしていると、響板が持ち上がり音も良くありません。

響板のクラックの修理では、かなり以前チェンバロ奏者の(最近は指揮者として有名ですが)
鈴木正明さんのチェンバロは10数箇所のクラックが在って、音にもかなり影響があったので、
修理しました。この場合は明らかに音は良くなりました。

チェンバロでこんな経験もあります。

大阪近郊の演奏家の楽器ですが、高台のマンションのお家なので、乾燥しているだろうと
かなり湿度を下げて、響板を張ったのですが、リビングダイニングということで、
調理の湿気が楽器に入ってきて、響板が盛り上がり、弦にあたるくらいになりました。
音も、当然悪いです。人為的にクラックを入れることはしませんでしたが、
湿度を下げてもらうことによって,解決しました。(少しその他の手は入れましたが)

チェンバロなどむしろ、クラックが入るほうが音の影響は少ないようです。

たまたま、今修理で預かっているプティジャンの楽器も長さ20センチ以上のクラックが
2本入っていますが、音は素晴らしい音で、西垣さんが買おうかと思ったとも聞かされました。

クラックの幅も狭いので,修理するとなると,クラックの幅を広げて修理しないといけません。
クラックについてはそのままにしておくことになると思います。

ギター以外の楽器、ヴァイオリン属ガンバ属では,表板だと、アーチになっていて、過重が
いつもかかっているので、クラックが進行する場合が多いので、ガンバ属では、クラック修理は
早い段階でしています。

それと、次回に書かせていただこうとしている楽器の話です。

最近の話ですが、トーレスの音が、トーレスさんの仕事や設計の音でなく、経年変化で
作られた音がほとんどだと思っているので、トーレスさんの同時代のスペインの楽器と
アメリカの楽器を手に入れました。

アメリカの楽器は1870年頃に作られた、マーチン風の楽器です。

テルピースを付けられ、改造されていたので安く買うことが出来ました。
ポピュラーの世界でも、ブランドが大事なようでマーチンと名がつくと
とても私達の手が出ない値段になっています。
1840年代までマーチンさんの番頭さんをやっていた人の作品です。

手に入っても,音が出せない状況だったのですが、指板を削り、ブリッジを改造して
音が出せるようになると、ものすごく良い音です。
私が作りたい,19世紀ギターの延長線上の楽器です。
どちらかと言うと、19世紀ギターに近いのですが,低音の響きはモダンに近いものがあります。

この楽器が,裏板が3分の1ほど剥がれていました。
剥がれた状態で弾くと、低音など永遠に続くのでないかと思うほどの減衰の長さです。
高音もバランスは決して良くはないのですが、鳴る音はウルフに近い鳴りですが、
とても、良く鳴ります。
音色は古い楽器なので、とても雰囲気のある音です。

でも裏板をはがれたままでは、使えませんので接着しました。

そうすると、びっくりするほど長かった減衰が少し短くなりました。(かなり?)
ですが高音のバランスは良くなりました。

西垣さんなどは、バランスの悪さも楽器の魅力のひとつだと言われますが、
演奏するほうの腕が無いと、バランスは良いほうが良いように思います。

そこで、クラックとは違うのですが、楽器は固めてはいけないとつくづく思いました。

特に裏板や、表板の接合はフリーに近い、私のような小さな小さなライニングでなければ
いけないと再確認しました。

音吉さんのおかげでクラックについて、書かせていただくことが出来ました。
ありがとうございました。

次回は手に入れた、2台のギターの話をさせていただきます。




  1. 2013/05/11(土) 10:54:09|
  2. ギター
  3. | コメント:0
<<ストラッドのオリジナル楽器について | ホーム | コメントをいただいて>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (329)
演奏会 (10)
その他 (20)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR