古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

コメントをいただいて

コメントをいただいて、自分の出したい音は自分にしかない、というようなことを書かれていましたが、
演奏もそうだと思いますし、楽器製作もそうだと思います。というか、まさに楽器製作では
自分の出したい音、作りたい音は自分にしか出来ないから、楽器を作るのだと思います。

ですから、自分の作りたい音は、自分のメソッドで作りたい、自分の方法でなければ作れないと
思っていましたので、私は人に習わないようにしてきました。

でも、現実はそうではないようで、トーレスさん,ブーシェさん、ハウザーさんの音を再現したくて
また、そのほうが需要があるからと、何々モデルという形で作っている人も多いようです。

ヴァイオリンもそうですが、ストラッドさんの作った楽器にはかなわないから、ストラッドさんが作った
楽器に少しでも近づきたいと努力している人も多いようです。

ピアノは売れているからという理由で、スタンウエイモデルとか、ベーゼンドルファーモデル作っている
メーカーはありません。
ただ、構造的にベーゼンに近い構造にしたり、設計を真似ているメーカーはありますが。

かなり昔、20年ほど前でしょうか、当時日本で3番目のピアノメーカーから、「スタンウエイをコピーした
ピアノを作ったから見て欲しいと連絡がありました」一応見に行きました。
確かに、一音一音はスタンウエイに近い音がしています。
でも、音の方向がばらばらなのです。和音を弾くと和音にならない。

構造、部材の厚み、大きさ等ををまねしただけなので、楽器としてまとまっていないのです。
音のイメージがないギターのようでした。

もちろん、ギターを作っている人は、自分の音、自分が作りたい楽器を作っていると思うので、
トーレスモデルやブーシェモデルでも、音は自分の音にトーレスの音、ブーシェさんの音を足して
イメージ作りをしていると思うのですが。



次に、演奏家がもっと楽器のことを知るべきだとの主旨のコメントをいただきました。

まさにそのとおりだと思いますし、楽器のことが良く分かっている演奏家の演奏のほうが
私は好きです。

単純に楽器を鳴らすことだけを考えても、楽器のことを知っているほうが有利ですし、
演奏会場で何処まで音が届くとか、ピアニッシモでも客席の一番後ろまで音が届くには
どうすれば良いとか、分かると思います。

オルガンなどは演奏している場所で聞く音、音楽と聴衆が聞く場所ではぜんぜん違う音がします。
客席ではどう聞こえているか、考えて、計算して演奏している演奏家が多いようです。

ピアノなども、鍵盤から先はブラックボックスと考えている、演奏家が結構いますが、
構造が分かって、どんなタッチで弾けば、どのようなアクションが動いて、ハンマーが
弦を叩くか、分かっている演奏家は客席で聞いていても、よく分かる演奏をしてくれるようです。

ギターは直接弦をはじくので、アクションなどは経由しなくて音が出せますが、どう弾けば
楽器が振動してくれて、音になるのか分かっていただいている、演奏家のほうがありがたいです。

単純な考えですが、弦に与えるエネルギーは、力、強さは比例するだけですが、スピードは
二乗に比例します。スピードを上げるには、野球の投手のように、力を抜いてしなやかな
体のばねを利用するほうが、スピードが上がるように思います。指のばね、スナップを利かせるほうが
力を入れるよりは、有利だと思います。

アマチュアのギタリストの方を見ていると、力を入れすぎている人が多いように思います。
中には、私の10倍くらいの力で、押さえて弾いている人もいます。
こんな方は、良い先生に習うと良いのになあ  と良く思います。

ギターでも、力を入れすぎて指や体を痛めたり、壊す方もいますが、左手も力を抜くほうが
音も延びますし、音楽は作りやすいと思っています。


ということで、製作家が演奏のことまで立ち入りましたが、演奏家の方が、楽器のことを
知って欲しいと思っているように、楽器製作の方には、演奏家以上に音楽のことを知って欲しいと
思っています。と言えば、言いすぎですが、音楽が分からないと楽器は作れないと思っています。

その第一歩は自分が作っている楽器を演奏出来ることだと思います。
もちろん、演奏家のように弾けるわけではありませんが、音楽が理解できるように弾いて欲しいと
思っています。

演奏がそんなに上手にならなくても、良い演奏を聴く事は出来ます。
それこそ、演奏家は練習しないといけませんから、聞く時間は限られていると思います。

でも製作家は聞く時間は、製作中に聞くとすれば、演奏家以上に聞く時間は取れそうです。

そして、自分が作っている楽器の音楽だけでなく、色んな良い音楽を聴いて欲しいと思っています。

ギターを演奏している人も、ギター以外の音楽を聴いている人と、聞いていない人では音楽が違うように
感じます。

特に、20世紀の巨匠達の演奏はCDくらいでしか聞けませんが、良い再生装置で
(高い装置という意味ではありません)聞いていただくと、いろんなことが分かってきます。

相変わらず、話がまとまっていませんが、コメントをいただいて感じたことを書かせていただきました。


いつも、コメントをいただいてありがとうございます。


  1. 2013/05/01(水) 00:17:39|
  2. ギター
  3. | コメント:4
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コメント

 バイオリンの件で、この前は少し触れていただきまして、ありがとうございます。
最近、思い出したことがあります。

 イタリア製のバロック~ロココ時代に製作された名器というものは、当然に「バロックバイオリン」であったはずです。
 (現在のモダンバイオリンは、除外しときます。)

当時製作された製作家も当時代に合うように製作していたはずです。ところが、現代の奏者は全く残念な改造を施しています。

 まず、弓が違います。また、駒はバロック時代はまっすぐ平らだったものを山形の形状に改造してしまいました。
 大ホールで鳴らすためとか、誤って違う弦に触れてしまうとか、言っていますが、私は本末転倒のなにものでもないと思います。

 現代の音量偏重主義、大オーケストラ一辺倒の弊害です。例えていうならば、オリジナルリュートにピエゾマイクを仕込んで、アンプで増幅して、いい音色だろといってるようなものです。

せっかくの名器といわれているストラドも、改造を受けてない物を探すのが困難なくらいです。
大ホールで鳴らしやすいというのなら、現代のモダンバイオリンを使って演奏してほしいものです。

 ストラド、ガルネリなどは、小さなサロンで演奏すべきものだと思います。バロック音楽はそういう環境での楽器として生きてくる。それを、駒の改造や弓の持ち替えで、現代ホールで蘇ったであろうと言わんばかりにその妥当性を強調しています。

 今のプロのバイオリン奏者は絶対におかしなことをしているといつも思います。名のある指導者も、そういう矛盾を教えないのだろうか。

 当時に製作された楽器は、当時の音楽を楽しむ環境、楽器の仕様で演奏されてこそ本領を発揮するはずです。今やそれを理解している希少な演奏家は「古楽」の分野でしか見ることができないのは本当に残念であります。

 平山様は、この点に関してどうお考えでしょうか。ご意見を賜りたく思います。
  1. URL |
  2. 2013/05/01(水) 19:45:41 |
  3. guitarist #-
  4. [ 編集 ]

こんばんは。
私も製作家にとって大事なことは、自分の理想の音をイメージし、実現することが大事なことだと思います。しかし、本物に近づくことさえ難しいのが現実です。

 guitaristさんが言われるストラドバリウスは、全世界のバイオリン製作家の理想、お手本だと思いますが、21世紀の今日まで、それを越える楽器は完成していないとさえ言われます。なぜでしょうか。

 楽器が作られてから250年を越えるからでしょうか。それとも今もって謎の秘密があるのでしょうか。一説には、ニスの中に秘密の混ぜ物を混入してあるとか言われます。

 今、日本、世界でも限りなくオリジナルなストラドバリウスは日本にただ1台だと思います。ご存知、デュランティです。これはスイスの富豪が亡くなり、紆余曲折を経て、某日本人奏者の所有となり、しかも貸与品でなく、正規の所有品という大変貴重なものです。元所有者の貴族の名が付けられています。

 私はその音を聞きましたが、振るえが止まりませんでした。すばらしいの一言です。長い眠りから醒め、名手によって命を吹き返し、わが世を謳歌しているとさえ思われる神の領域に近い音ではないのかとさえ思われます。並みのバイオリンでは決してありません。

ストラドバリウスは約600本ほどが存在してるそうですが、表板、または裏板だけがストラドが製作し、あとの部材は別物という準ストラドという楽器が多いそうです。それだけにバーまで全て完全オリジナルなデュランティは人類の至宝と言えるでしょう。

 今や世界の製作家のレベルは高いですが、なぜストラドを越えられないのか不明です。先入観とかの理由だけでは片付けられません。
 その解明こそ21世紀の製作家に残された、大きな大きな宿題だと思うのです。誰が解答を導くのでしょうか。
 今世紀末までには、21世紀の名器が誕生してくれることを祈りたいです。
  1. URL |
  2. 2013/05/03(金) 18:11:21 |
  3. viorin #-
  4. [ 編集 ]

クラックについて

はじめましてです。演奏家ももっと楽器を知るべきということに関連して、平山様に質問があります。

 表面板のクラックについてです。まずは私の個人的見解についてお話して、平山様のお考えをお聞きしたくお願い申し上げます。

 表面板のクラックの修理の要否は、本数とクラック幅、音への直接的影響により分かれるのではないかと思います。

①本数
それこそ数十本以上のクラックが発生していれば、正規の張力では、板の変形と振動を板全体に伝達できないために音量の低下を招くと考えられますので、結論は修理要と思います。

②クラック幅
 クラック幅が0.2mmを越えるが、1本または2本くらいしか入っていない場合は、かならずしも修理を要しないと考えます。
その根拠は、表面板の全体振動を阻害しないと考えられること。逆に修理するとすぐ近傍にまたクラックが入る可能性があること。
 また、クラック幅0.1mm未満は、圧着クラックとも捉えることもできるので、これも修理は必要としないこと。

③音への影響
 ②の場合でも、弾弦時に雑音を発生させる場合は、いずれも修理が必要である。

 結論
クラックは基本的には、木の歪が木材の許容引張強度を越えた時に発生するが、発生したからといってすぐ修理は必要でなく、むしろ、木にとっては歪が開放されていると考えられ、できるならそのままのほうが良いと考えられる。木材が経年変化によりセルロース化が進み、強度が比例して上がるならば、弾性係数も上がり、比例して、圧縮強度および引張強度も上がるため、楽器が古くなるほどクラックは入りにくくなるはずであるが、現実はそうではなく、古くなるほどクラックは入りやすい。これは自然なことであるとするなら、クラックはむしろ木の自然の生命活動であるはずです。

 雑音が発生しなければ、クラック修理は必要ないと思います。
また、修理する場合は、もちろん振動を伝達できる材料で補修が必要ですが、これはニカワが最適なのはいうまでもありません。一部には、自然由来のフィッシャーズボンドなる魚からの抽出成分の接着材がありますが、これは間詰め物と同じで、なんら振動を伝達しませんので注意が必要です。
 以上です。
  1. URL |
  2. 2013/05/05(日) 12:33:57 |
  3. 音吉 #-
  4. [ 編集 ]

楽器のコピーについてや、バイオリンの件で熱い話題が出ていますので、私も思うところを少し。

 製作者がお手本となるような楽器をひたすらコピーするということについては、それは結構なことだとは思いますが、そのものにはなり得ません。
このことは、ハウザー1世さんが1937年の、「もうこれ以上の楽器は作らなくてよい」とまで言わせた楽器が、同じ人が同じように作っても、2つと作れないということの事実を見ても明らかです。

 傾向は似るかもしれないが、個体差が出てしまうのです。まして他人が真似ても、当然に同じものができるはずもありません。バイオリンもそうでしょう。ストラドのコピーを忠実に行っても、似るわけもありません。

 やはり、製作者本人が、どういう音を目指し、理想とし、独自のカラーも混ぜながら、自分の、または助言を与えてくれる演奏家の要望に叶った楽器を作りあげるかでしょう。
 よく製作者の中で、その楽器を全く弾けなくて、製作している人がおられます。こういう人は、逆に弾けてしまうと、自分の音をどうしても弾き手に押し付けてしまうからと言われます。このことは事実だとは思いますが、真実ではありません。でも、アドバイスをいつも貰っている一流の演奏家がいるというのであれば、問題はないと思います。
 問題は、アドバイスを受ける演奏家も無く、自分も弾けないで製作しているというのであれば、これは論外だと思うのです。
 理想は、自分も弾けて、助言を受ける一流演奏家も常にいるという環境です。その環境と信念を持つ製作家は、本物を絶対に製作できると思うのです。


 さて、バイオリンについてです。私は、そろそろ日本人も含めて、ストラド信奉から脱するべき時ではないかと思っています。
 前の記事にもありましたが、先入観、固定観念も多分にあると思います。これにお金が絡んでいるので益々複雑怪奇なことになってしまっています。前にも、ストラド、モダンバイオリンの公開実験の話がありましたが、モダンで充分説得性があると思います。
 guitaristさんがお詳しい解説をされていますが、古のバロック物を現代人の都合の良いように改造して、聞かされても、面白くないのです。古楽器の世界のチェンバロやリュートのように小さなサロンで楽しむべきものだと思います。そのようなところで、オリジナルなストラドであれば、すばらしい音色を楽しめると思うのです。

 現代の第一線でご活躍のバイオリン演奏家は、もう少し本来の原点回帰をして、どういう環境で演奏されていた楽器なのかということを真剣に、考えていただきたい。

大ホール、大聴衆、大オーケストレーションが仕事の環境なら、どうぞモダンバイオリンで行っていただきたい。そして所有されるストラドは、オリジナルに戻して、小さなサロンで演奏していただきたい。

今、ストラドは、心の中で悲鳴を挙げています。老骨に鞭打たせて、大音量を上げさせる意味がどこにあるのか、現代人の傲慢ではないのか、

 老バイオリンには、それにふさわしい環境があるはずである。

今、このようなことを言う評論家や演奏家はいないであろうと思います。

 
  1. URL |
  2. 2013/05/06(月) 14:04:23 |
  3. gavottenⅡ #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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