古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

西垣さんの演奏会について



コメントをいただいて、西垣さんの演奏会について分かりにくい表現をしたようで申し訳ありません。

今回の演奏会を企画された、19世紀ギタークラブの方から
「今回の演奏会では、リュート  使われるようですよ」
と聞いていたので、基本的にギターで演奏されて、
リュートに合う曲をリュートで弾かれるのだと思っていました。

そのように書いたつもりなのですが、全てリュートで弾くと思われた方には申し訳ありません。

また、どの程度リュートで弾く曲があるのか、西垣さんから聞いていないのです。

ということで、ルネサンスリュートでバッハを弾くことについて、書かせていただきます。

これから書かせていただくことはあくまで、私の考えです。西垣さんのお考えではありませんので。
そこの所よろしくお願いします。

最初にリュートを作ってほしいと言われたときに「バッハも弾けるリュートが欲しいが、
バロックリュートでなく、ルネサンスリュートのバスリュートで7コースの楽器」
と指定されました。
私もバロックリュートはあまり弾いていなくて、というか弾けなくて、
あまり関心が無かったのかもしれませんが、開放弦を弾いてニ短調の
響きがする、マイナーな響きのバロックリュートにバッハはあまり合わないという
イメージは持っていましたので。

ダウランドなど、イギリスでは7コースのリュートが用いられていましたた。
7コースを6コースの4度下にすることによって、イタリア、フランスで用いられていた、
9コースの音までカバー出来ます。
9コースの楽器に比べて、右手親指の運動量がかなり少なく出来ます。

そして、最も大切なことは、バスリュートという点です。

ご存知だと思うのですがルネサンス時代、リュートとガンバは同じ調弦でした。
バスリュートはバスガンバと、テナーリュートはテナーガンバと同じです。

そして、リュートはテナーリュートがソロ楽器となり、ガンバはバスガンバがソロ楽器となりました。

バスリュートは、テナーリュートの4度下、1弦から d a e c g d となります。

弦長も長く、減衰も長いです。ギターでよく6弦を D に下げますが、6弦が一音下がっただけで
かなり響きも変わります。イメージとすれば、ギターを全弦一音下げた感じです。

減衰が長いだけでなく、音の密度とか重さも加わります。
これは、バッハを弾くときにはとても有効だと思います。

私もテナーのルネサンスリュートでバッハを弾こうとは思いませんし。

また、ルネサンスの曲を弾くときも、カポタストを使うことによって、伴奏なども
自由が利きます。12月のクリスマスコンサートでは、歌手の方と合わせることが
ありましたので、便利だったようです。

いろんなメリットや、理由は分かるが、バッハなのだからバロックリュートが良いのでは?
と思われる方も多いと思います。

お時間のあるときに、この演奏を聞いていただけますか?

http://www.youtube.com/watch?v=TEucyMfl6HI

リュートチェンバロとか、ラウテンクラビーアとか呼ばれていた、バッハが作らせた
チェンバロにリュートと同じガット弦を張った楽器です。
演奏はサルコジさんです。他にもヒルさんの演奏もユーチューブで聞けます。

特に、18分20秒からの所は、リュートではないかと思うほど、リュートの響き、音に近いです。

バッハさんは、リュートはあまり上手では無かったとか、弾けなかったというのが
通説ですが、私もそうだと思います。

そして、リュートの音がするチェンバロを自分で設計して作らせたと言われています。
バッハさん以外で、リュートチェンバロを作らせたり、弾いたりした人はいないようです。

バッハさんが弾いていた楽器は現存していないので、どんな音だった分かりませんが、
このユーチューブのような音がしていたと思います。

そして、バッハさんは自作の曲をこのリュートチェンバロで弾いていたのでしょう。
実際に聴いた人の感想もあるくらいですから。
そして、遺品目録にも 2台のリュートチェンバロがありますので。

もちろん、ヴァイスさんもお友達でしたから、ヴァイスさんをイメージして、リュートの
響きも考えて作曲したとも思いますが、bwv996 などはリュートチェンバロで弾くために
作曲された、とも考えられます。リュート組曲もそうなのなのかもしれません。

リュートチェンバロで聞くと、リュートで聞く曲とはイメージがかなり違います。

リュートもいいけど、バッハさんの曲は何で聴いてもいいな!と思います。

バッハさんが好きだったと言われる、リュートチェンバロで聞くと、なおさらです。

リュートチェンバロで聞くバッハさんのリュート曲は、どちらかというとリュートのイメージよりは
チェンバロで聞くバッハさんのイメージに近いと思います。

そして、低音はオクターブ上がってしまう箇所が多くなりますが、操作性の良い、音楽の作りやすい
19世紀ギターとか、バスルネサンスリュートで弾くほうが、バッハさんのイメージしていた曲に
近い感じがするとも思ったりします。

イエペスさんのように、バロックリュートを習得して演奏するのも良いと思いますが、
バッハさんの頃には、チェンバロにその座を奪われ、バロック時代を代表する楽器ではなくなっていた
バロックリュートより、ルネサンスを代表する、最も大切な楽器だったルネサンスリュートで、
バッハさんの曲を弾いても良いかな?と思ったりします。

誰か、学者さんが言っていて、私もその考えだったのですが、バッハさんはバロック時代の作曲家ではなく、
それまでの、音楽を集大成させた作曲家だという見方。この見方で行くと、バロック以前の楽器でバッハ
さんの曲を弾いても良さそうだ、と思ったりします。


と、思いつくままに書かせていただきましたが、これはあくまで私の考えです。
西垣さんはもっと、いろんなこと、深いことを考えられていると思います。




  1. 2013/04/18(木) 02:15:37|
  2. ギター
  3. | コメント:3
<<バッハの楽器について(コメントをいただいて) | ホーム | 演奏会その他お知らせ>>

コメント

平山先生、懇切丁重なコメントで、ご紹介のサイトの演奏も聞きながら、なるほどなあ、と感心しました。
 ルネサンスバスリュートの音色のイメージもつかみかけてきました。一度もバスリュートの響きは聞いたことがないので楽しみです。
 私も平山先生のご意見には納得できてしまうのです。特にバッハがリュートを弾けたのかという問題には関心があります。ヴァイスというリュートの名人がおり、その達者な演奏に接し、自らも研鑽、その技術取得に熱心だっとと想像できるのです。例の遺産目録にリュートが一つあったといいますから、練習したのは間違いないと思います。
 ですが、盟友ヴァイスほどに上達しなかった。
 そこで、ラウテンクラヴィーアの発明です。それを思う存分使用してリュートの音を再現できるもので作曲をこなしたのだと、私も思うのです。
 仰られますように、今のリュート組曲も全ては、ラウテンクラヴィーアのためのものだと思います。
(表題に ‘リュートのための’と自筆で記載してる曲995や999,1000,998はリュートでもよかったとは思いますが)
 ですが、996,997,1006a はラウテンクラヴィーアが濃厚です。

 西垣さんは、組曲全曲の中で、どの曲をリュートでお弾きになるかは、ご本人の説明がないとわかりませんが、恐らく、995,998 あたりかと。明らかにリュートの為、リュートまたはチェンバロの為と記載がある曲ですから。

 バッハのリュート曲は、リュートで弾くとか、ギターで弾くとか、そういう話の次元ではなく、その音楽を深遠に演奏できることが本来の目的と思います。
 そいう意味では、楽器を問わず、いかなる楽器で弾かれる曲を聴いても、やはりバッハだと思わせる不思議な力を秘めた宇宙のような曲だと思います。

 西垣さんは、そんなバッハを表現できる数少ないマエストロだと私は思っています。
平山先生の20年前のルネサンスリュートを使用しての演奏会は本当に楽しみです。
 私は演奏会場で、西垣さんに直にお話を伺いできればと思います。
  1. URL |
  2. 2013/04/18(木) 10:34:16 |
  3. 飛鳥山 #-
  4. [ 編集 ]

>>>開放弦を弾いてニ短調の
響きがする、マイナーな響きのバロックリュートにバッハはあまり合わないという
イメージは持っていましたので>>>

 うーんと考えてしまった。とても意外なご感想なので考えてしまった。
マイナーな響きこそ、短調な曲が多いバッハのリュート曲に合うのではないかと思います。バッハの曲はそれまでの集大成的要素もあるのかもしれないが、やはりバロックの曲であります。
 バッハのリュート曲はほぼ7割が短調ですし、そこにバッハのリュートの音色に対する感受性が込められていると考えます。
 だから、西垣氏がなぜ、ルネサンスリュートを持ち出す必要性があるのか理解に苦しむのです。バスリュートの長所はわかるのですが、真骨頂はバロックリュートだと思うのです。
 飛鳥山さんの疑問はごもっともなことだと思います。リュートの中でも、弦数は多いし、難易度も非常に高そうだし、調弦も大変そうだし、7コースのリュートのほうがやさしいことは容易に想像できますが、私個人の思いは、いっそ19世紀ギターでまとめてほしいことです。内容から判断しますと、ギターがメインだが、ある曲はリュートでも弾いてみるといった趣向でしょうか。
 私の思いは、初めから19世紀ギターで通されるか、バロックリュートで弾いて欲しいと思います。
 確固たる理由が当然あるのは理解できますが、釈然としませんでした。
  1. URL |
  2. 2013/04/18(木) 17:32:26 |
  3. 山人 #-
  4. [ 編集 ]

こんばんは。興味深い話題です。
 
バロックリュートだけが、バッハの音楽を表現するものではないと考えます。フルートでも、チェロ、ガンバ、バイオリン、ピアノ、木管、クラッシクギターなんでも表現できると思います。
 現在、あらゆる楽器で編曲がなされています。大事なことはオリジナルに固執するのが普通と考えるのではなく、音楽表現こそ大事なことだと思います。だからあらゆる楽器で弾かれているのだと思います。
 バッハの音楽は、自由であってよいのではと思います。もちろん、バロック時代だからこそ、オリジナルのコピー楽器を使用して、忠実に再現することも悪いことではありません。そのほうが常道でしょう。
 近代ギターの父、フランシスコ・タレガは、ギターでフーガト短調を編曲したことで有名ですが、なんらおかしいと感ずることなく、ギターのための曲とでもいうように感じます。
 バイオリンの有名な1004番シャコンヌは、バロックリュートでも、ギターでも、まるで、そのために作曲されたかのような感覚を覚えます。

 感じ方、考え方は、人それぞれですから、否定されるべきものではありません。

バッハの音楽は、極右、極左でもなく、そのような範疇を超越した、解放された自由な3次元の空間に広がっていくのです。
 演奏者も各々、己が感ずるところのバッハを表現することに意義があるのであり、楽器の種類がどうのこうのというのは、いささか幼稚な議論です。
 そうは思われませんか。
  1. URL |
  2. 2013/04/18(木) 20:11:36 |
  3. gavottenⅡ #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (329)
演奏会 (10)
その他 (20)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR