古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

いただいたコメントについて

沢山の、深くて熱心なコメントをいただいて、ありがとうございます。

皆さんのコメントを読ませていただいて、最近見たユーチューブの話と
関連付けて考えてしまいます。

それは、ダニエル・ピンクの「やる気に関する驚きの科学」
日本語タイトルは、あまり感心しませんが、答えの出やすい
比較的、機械的な仕事だと、報酬が多いほど機能するが、
答えの出にくいと言うか、答えが無いような仕事は、報酬が多いほど、
機能しないと言うようなこと、を話してられます。

いろんな見方や、考えがあると思いますが、なるほどと思うこともあります。

http://www.youtube.com/watch?v=YcJJYQB0mY0

ここで言われている、認知能力の必要な,答えの出ない問題に関して
自主性,成長,目的が必要とされていると言うことが、
このブログを読んで下さって、コメントをいただくような方が
実践されているように思いました。

好きだから、
それが重要だから、
何かの目的のため、

考えてくださったり,文章にして送ってくださったりしていると思います。

それは、私も同じです。

プロですから,売れる楽器を作る,多くの人に受け入れられる楽器を
作るほうが良いかもしれません。

また、多くのプロの製作家はそう思って楽器を作ってられるかも知れません。
(本音は?)

ブーシェさんが,ギター作りはアマチュアでなければいけないと言っておられるのも、
報酬を求めて、楽器作りを始めると、答えの出ないギター作りと言う問題は、
その時点で、問題解決は難しくなる、と考えられたのかもしれません。



私のギターを作るきっかけとなった考えは、簡単に言ってしまえば

「音楽的な表現ができるギターを作りたい。」

「自分が弾きたいと思う楽器を作りたい」

と言うことです。



この間、20年ぶりにギターを弾きたいので,作って欲しいという方が、
このブログにコメントをいただいている方と一緒に来られました。

とても長年ギターを弾いていないとは思えない素晴らしい演奏でした。
最近の若いプロに聞かせたいと思ったほどの、素晴らしい演奏です。

そこで、「平山さんて、年中休みなしで、仕事をされているんですね」
と言われたので、「好きなことをやっているのだけなので、年中、朝から晩まで、
うっかりすると寝ている時も、良い楽器を作る事を考えています。そして、
少しでも自分が作りたい方向の楽器が作れるように、時間を使っているだけです」
と、このようなことを答えました。

これが、ピンクさんの話の要点と合っていると思うのです。


好きなことをやっている。そして、良い楽器を作りたいと言う目的。
それが、大切なこと,重要なことだと思っている。

またこれは、皆さんも同じだと思うのです。

答えの出ない問題を考えている。
そして、報酬も求めていない。

ネットで仕入れたようなことで、考えをめぐらしてもいけないかもしれませんが、
私のブログもネットでの情報ですし、きっかけくらいにしても良いと考えます。

ということで、CABOTIN さんのコメントについて、どうも誤解されそうなので、
私の思っていることを少しだけ書かせていただきます。
ご本人から,的が外れている、と指摘されるかもしれませんが。

CABOTINさんは、沢山の,それこそ山のようにギターを見てこられて、弾いてこられて、
良いギターも沢山、持ってられました。もちろん、今も、良い楽器を持ってられます。

どのギターも私達の基準から行くと、とんでもなく素晴らしい楽器です。

そのような楽器ですから,ウルフ,ヴォルフも楽器の個性。
面白いと言われていると思うのです。

音の立ち上がりも,音の密度も、音の延びも,ただ延びていくだけでなく、
音が広がっていくような延びを。もちろん、和音の分離とか低音高音のバランスとかも。

かなり昔ですが、関西のベテランのギター製作家、(と言えば誰のことか、分かってしまうと
思うのですが)が「CABOTINさんにギターを見てもらうのが,とても怖い。
全部の音域に渡って,全部の音を,一音,一音チェックされるから、
楽器の全てが分かってしまう。」

という話をされていました。

ウルフもいろんな種類があると思うのですが、以前にも書かせていただきましたが、
ギターのウルフは本当にかわいいものです。
個性とか,魅力に繋がるものもあると思います。

擦弦楽器だと、ウルフのある音を弾くと、爆発的に鳴って、コントロールが出来ないとか、
逆に全然鳴らないので、音を出すのに苦労するとか、楽器の固体に共鳴して、その音だけ
異質な音がするとか。かなり良い楽器でも、ウルフで苦労することがあります。

ギターの場合,ウルフと言うより、特定の音が出にくい、音が引っ込んでいるので、
使い勝手が悪い楽器を良く見かけます。この方が問題になりそうです。

こんなのは、論外でしょうが。

後、ヴァイオリンについてよく書かれていますが、私もバロックヴァイオリン以外は
あまり興味がなく、ただ,長いこと楽器を作っていますので、いろんな知識や
話を知っているだけなので、コメントの返事と言うか、コメントに対する私の考え
を書かせていただくことは、あまり出来ないと思います。

と言いながら、今の日本のヴァイオリン製作事情です。

あくまで私の,考えと言うか知っている範囲だけで書かせていただきます。
本当に、私の考えていることだけを,書かせていただきます。
そこのところ、誤解が無いようにお願いします。

と念を押させていただいて、

日本でプロが使えるようなヴァイオリンを作っている人は、数人ではないかと思っています。
というか、そもそも、日本にヴァイリン製作家は数人しかいないと思っています。

ギターでは何十人、それこそ百人とは行かないまでも、沢山プロがいらっしゃいます。

それに比べて,ヴァイオリンは修理,調整の仕事が多いので、ほとんど修理や調整で
生計を立てておられて、年に数本値段が高い楽器を作られている人が多いように思います。

オケでも、日本人製作家の楽器を使っている人は少ないと思うのですが,その人たちの
楽器は周りから「何でそんな楽器を使っているの?何か使わないといけない事情でもあるの?」
と言われているのを聞いた事があります。

数少ない,ヴァイオリン製作家の方とも、お付き合いがありますが、彼の楽器でも
日本人製作家の作るギターの、上のクラスの値段です。

彼は,自分の楽器の価値を分かってられると思うのです。
もちろん、プロが使う楽器を作ってられます。

同じ楽器製作家として、書くのが難しいことなので、良く分からないことを
書いている感じがします。すみません。

そして、最後にもう一度、これはあくまで私の思っていることなので。と言うことで。


これもかなり古い話になりますが、新作ばかりを扱っている世界的にも珍しい会社が、
東京にあります。

この会社の創業のひとつの目的は、同じ時代に生きている,外国の製作家の楽器を日本に入れて、
日本の製作家に、昔の名器でなくて、現在でもこんな素晴らしい楽器を作っている製作家がいるのだ。
ということを知ってもらって、日本の楽器のレベルを上げたいという目的もあったと聞いています。

ですから、よく日本のヴァイオリン製作家と言う人が,会社に来るそうです。
そして、ヴァイオリンの話や,自分の楽器は素晴らしい,と言う話しをされるそうです。
でも、その会社の実質的な代表者は「では、あなたの作った楽器を売ってください。
いつでも、いくらでも買いますから」と言っても誰も,楽器を持ってきた人はいない。
誰も楽器を売ってくれた人はいなかったそうです。

古い話なので、今だと違うかもしれませんが。

ですから、私はヴァイオリンは作っていませんでしたが、一緒にドイツの楽器の材料屋さん、
材木屋さんに行ってくれて、良い材料を手に入れることが出来ました。

ヴァイオリンでなくても,楽器を作っている人の応援がしたいということで。

これも、昔の話です。

ヴァイオリンについて、書くのは色々難しいことが多いのですが、
と書いておいて、ストラディバリの作った、メシアについては,
少しだけ書かせていただこうと思っています。

次回になりますが。













 




  1. 2013/04/12(金) 00:55:38|
  2. ギター
  3. | コメント:1
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コメント

本来、書きにくいバイオリンの件で、早速にご意見をいただきまして感謝いたします。

 オケの方たちの似たような話は、雑誌、テレビでも見ました。団員の所有楽器紹介コーナーで、日本製は無く、ストラドとまではいかないが、古いイタリア製とかがほとんどだったような記憶があります。
 よくも、これだけイタリア物を買ったものだなあと呆れて感心してしまいました。

日本製所有が少ない状況はわかる気がします。皆が一様に「同じ種族だと、自分だけ仲間はずれ」ということを極端に嫌う民族が日本人だからです。かつて、そのことが嫌になって、身も心も現地人になりきる思いでドイツに渡ったある日本人弦楽器奏者がいたそうです。
 空気も、食も、住も、職も、すべて現地に溶け込めなくては、作曲者の心境、境地に達しえないのではないか。純粋なまじめな、その演奏家の気持ちがわかります。

 現代のギター曲、チェロ、リュート、ガンバなど、すべては西洋音楽であり、日本から生まれたものは何一つありません。その精神性、時代背景、文化、教養、生活習慣、歴史にいたるまでを取り込もうとすれば、楽器も当然ヨーロッパ製に、人間もヨーロッパに移住するのが前提なのかもしれません。

 私は、前のコメントで、舶来崇拝の嫌悪感を述べていますが、平山様のご意見を読むにつけ、日本人だから仕方ないのかな、と思いはじめています。

 仮に、アメリカ人が茶の湯の精神性に迫りたい、極めたいと思うなら、まず日本に行き、しばらく居住し、道具も伝統に則ったものを所有し(もちろん日本製)、京都の庭園などを愛でつつ、身も心も「日本人」になりきる必要があると思うのです。

 居合いを極めたいというアメリカ人がいたとすれば、やはり日本へ行き、住み、師に就いて研鑽し、刀ももちろん「日本製の真剣」を所有するでしょう。その精神性まで自分のものとするには、すべて「日本で・日本製」でなければならないでしょう。


 私は、以上の例から考えてみますと、純粋に西洋音楽を極めたいと思うなら、自分の専攻とする楽器が作られたメッカの地の「舶来製」をまず所有することも自然なことなのかなと思いはじめたのです。

 (なにか以前のコメントと矛盾するようで、すみません)

 最後に。

 現在の日本人製作家は、例外なく、一度はヨーロッパの工房へ勉強しに行ってますから、製作技術、精神性など心得た人たちが大勢おられると思います。
 ですから安心して日本製を選択しても絶対に間違いはないし、オケでも問題ないと思うのです。信頼できる製作家を見つける努力は個人の責任ですが。

 ストラドのメシアや、オリジナル性の強いデュランティーなどの話は大いに興味があります。
 よろしくお願いいたします。
  1. URL |
  2. 2013/04/12(金) 11:04:05 |
  3. 詩人 #-
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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