古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

コメントと新しいアイデア

ここのところ、沢山の熱心なコメントをいただいてありがとうございます。

ブログを書く回数も増えましたが、忙しくて、どうしてもコメントの返事とか、
出来ない場合もあると思いますので、そんな場合はよろしくお願いします。

同じ価値観のものばかり集まっていると、あまり進歩が無いとも思います。
そして、皆さんそれぞれ、素晴らしい価値観をお持ちの方ばかりだと思っていますが、
違う価値観や、違う意見の方のコメントは置いておいて、ご自分の意見、お考えを
聞かせていただくと、ありがたいと思っています。

短い文章で、真意が伝わらないこともありますし。

と言うことで、私の文章も伝わりにくい、表現もありますが、
これも、よろしくお願いします。

以前、左手のことを書かせていただきましたが、トリル、スラーと言った難しいテクニックでなく、
単純に左手で、正しく押さえることが出来ていない、ギタリストが目立つようになったな、
と言う感想を書いたつもりでした。

プロやプロでなくても、なるべく難しい曲を弾いたほうが、上手に見えそうと、
弾くのにいっぱいいっぱいの方がいるようです。
左手も右手もとりあえず、音を出すのに精一杯と言う、
演奏は聞きたくないなと思っています。

ガンバはソロ楽器がバスガンバなので、バスガンバから始める人がほとんどです。
そして、バスガンバはテンションがきつくて、フレットの近くでなくても、
正しい位置でなくても、一応音は出ます。
その癖がついているガンバ奏者は、トレブルガンバ(バスガンバの1オクターブ上で、弦長も半分です)
を弾くと、音程がほとんどとれず、悲惨な演奏になる場合が多いです。

バスガンバのときに、正しい左手が身についている、演奏家はトレブルを弾いても、音程も正確で
音も綺麗です。

ギターはこんな機会が無いので、大体のところで押さえていても、長年通用するのでしょう。
でも本来の音程、音は出ていないのですが。

このことに、繋がりますが、コンクールで大きな音を要求された、講評の方の話も分かる気がします。

コンクールだと、体操やフィギアスケートのように、技術点が高い曲を弾いたほうが、得だとばかりに、
難しい曲を弾いて、その楽器のもっている音の全部を出し切っていない、演奏もあるように思います。

レベルの高いコンクールではそんなことは無いかもしれませんが、しっかり弾いて、伝えたいことが
伝わるような演奏をして欲しいという、気持ちもあったかもしれませんね。と考えたりします。

リュートは通る音ですが、エネルギーは小さいと思います。
でも、なるべく聞いている方には、伝えたいことが伝わるような音で弾きたいとは、
思っているのですが。

リュートやギターに比べて、はるかに小さな音のクラヴィコードが楽器として、存在してきた
ヨーロッパのほうが、お琴、三味線、太鼓、笛などの楽器を使ってきた、日本より繊細な
所がある、民族かな?と思ったことはあります。

16世紀日本にキリスト教が伝わり、西洋音楽、西洋楽器が伝わった頃の楽器は、西洋と
東洋の楽器の差はあまり無かったように思います。

でも、明治維新のあと、最初に伝わった西洋音楽は、吹奏楽だったと、この頃の音楽を調べている、
永六輔さんが言っておられました。そして、始めて吹奏楽を聴いた、
日本人はその音の大きさに腰を抜かさんばかりに驚いたそうです。

でも、20世紀になって、日本の和太鼓を聴いたヨーロッパの人が、その音に大きさに驚いたそうですが、
これなど、内の音楽と外の音楽の違いもあるのでしょうが、お互い様でしょうか?


と書いてくると、なにか私が偉そうなことを書いているように思えてきますが、
思ったことを書いているだけですので、そんなものかな?と読んでくださるほうが、
気が楽ですので。

と言うことで、次の新しいアイデアの話です。

次に作るギターのことを考えているうちに、新しいアイデアが浮かびました。
これだと、私の考えていることが、更に一歩、前進しそうです。

それは、バスバーの配置です。

どうしても、ブリッジの弦の乗っている下にバスバーを3本持って行きたいということで、
サウンドホールに近いところが、窮屈でした。

パノルモさんや、トーレスさんのイメージがどうしても抜けなかったのですが、
なにも、ファンブレースと言う言葉にこだわらなくても、蛸足と言う言葉にこだわらなくても、
良いのでは?と思い、下のようなバスバーの配置を考えました。

これだと、さらに音が表板全体に音が広がります。


UNI_0082.jpg


次に反対方向に、バスバーを流してみました。


UNI_0081.jpg


この場合、どうしても高音側にバスバーを1本足さないといけません。
これで8本となり、まさに蛸足の完成です。

そして、19世紀ギターのラブレボットの図面を見ていて、振動が一番大きい
ブリッジの下に、大きな2本のバスバーを斜めにもって来れば、良いのではないかと思いました。


UNI_0080.jpg


でも、このブログを書いていて、ブリッジ下の小さなバスバーは無くても良さそう、
と思ってきています。

こんなアイデアはどうでしょうか?

これらのアイデアは、私のお弟子さんが試してみたい、とのことで、
4月には楽器になっていると思います。

そして、その楽器は弦長61センチの楽器です。

59センチの楽器は、ドイツの学者のミハエル・コッホさんの言うように、
弾きやすいのですが、私の構造でも、モダンギターとして使うには、
少し19世紀ギター寄りの音になってしまうのです。


そこで、今回は上の図面で61センチで作ってもらいます。

これが、日本人にとって、ベストの大きさ、弦長になると思っています。

今までも、59センチや、61センチのギターは作られてきましたが、
一般的なモダンスペインギターの構造です。
この構造では、楽器として使い勝手の悪いものになっていたと思います。

でも今回作る楽器は、小型で弦長も61センチですが、音楽が表現できる楽器に
なると考えています。




それと、ラティス構造や、ダブルトップのギターの話ですが、この構造を最初に考え
具体化して、楽器にした人には尊敬の念を感じます。

ラティスは、ヴァイオリンやガンバの表板の削り方、厚みに近い構造にするため考え出された
のでしょう。

音色などの点で、私は作ろうとは思いませんが、周りが薄いことから来る、倍音の少ない
音は、倍音だらけのモダンギターよりは、好きです。

ダブルトップのギターも、反応が早く、演奏家の伝えたいことが、伝わるようにと
考え出されたのでしょう。

その点は、素晴らしいと考えています。

現に、そのような楽器を演奏したい演奏家がいて、使っているのですから。

でも、私は音色の問題もあるのですが、100年200年と使えるギターを作りたいと
思っていますので、作ろうとは思いませんが。


それと、リュートを沢山調べられたのは、ギュンター・ヘルビッヒさんと言う
ガンバ製作家の息子さんと書かせていただきました。

このギュンター・ヘルビッヒさんは20世紀のティルケさんと言っても良いほど、
1台1台違う楽器を作られていました。もちろん、注文して作ってもらうのですが、
美しいレリーフや透かし彫りが、ヘッドにあって、その装飾のどこかに注文主のイニシャルが
入っている楽器を作られていた方です。日本にも1台作ったもらった楽器があるはずです。

そして、ティルケさんの本も、現存しているティルケさんの楽器を調べるだけでなく、
その装飾のもとになった、デザインまで調べている素晴らしい本を書かれた方です。
352ページの本で、私は直接ヘルビッヒさんから買ったので、サインをしてもらっています。

そして、その息子さんなのですが、古い論文で人にあげてしまって、手元に無いので、
はっきり書かなかったのですが、当時のニュールンベルグの博物館の館長だったと思います。

どなたか、ご存知の方は教えてください。

と言うことで、またまた長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださって
ありがとうございます。










  1. 2013/03/26(火) 23:24:11|
  2. ギター
  3. | コメント:1
<<楽器を選ぶということ その他 | ホーム | 音の延達性その他>>

コメント

今、プロを目指して、コンクールなど受けて登竜門を通過し、演奏家を目指す方向の人は、一面、気の毒だと思います。ストリートミュージシャンで誰かプロモーションに見出されるとか、そういった注目のされ方は、まずクラッシック部門ではまずありえない。
 難しい曲をあえて弾かなければならない、バカ鳴りする楽器を選択しなければならない、などなど本来的ではない方向に行かざるをえないです。
 セゴビアとか、イエペスとか、そういえば昔の一流の大家はコンクールなど受けた人っていませんね。(聞かせて音楽の芸術性を納得させることができた世代)

 現在は肩書き時代と言われます。箔をつけないと認めてもらえない、評価されないというのは悲しいことです。コンクール入賞歴がなければ、大家のマスタークラス修了とか、師事したとか、どこそかの演奏会に出たとか、音楽経歴書を周到に用意しないと就職も難しい。今の若い人たち(音楽で生計を立てようと頑張っている人)には、もっと寛容なチャンス、公的支援も必要でしょう。
 ・・・・とんだ親父の愚痴になってしまいました。申し訳ありません。
厳しい生活事情は、なにも音楽家だけではないですね。

ところで、ギュンター・ヘルビッヒという名前は初めて聞きますが、調べると、ドイツの指揮者でしか検索できませんでしたが、有名な方ではないようですね。すばらしい著作を残されていますが。
  1. URL |
  2. 2013/03/27(水) 11:26:31 |
  3. gavottenⅡ #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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