古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

トーレスさんについて 楽器の大きさ、弦長

トーレスさんについて、コメントもいただいていますが、
あくまで、私の考えを書かせていただきます。一般的な評価や考えを書いても
このブログでは面白くありませんので。(トーレスさんについては2012年6月8日の
神様はつらいよ でも書かせていただいています)

私も、モダンスペインギターは、トーレスに始まり、トーレスに終わるという考えは、
少しは分かります。少しです。

でも、ギターはトーレスに始まり、トーレスに終わる、とはならないと思います。

それは、お前がトーレスさんのことを知らないからだと言われそうですが、ここで
あまり知られていないと、思われるトーレスさん絡みの話です。

トーレスさんの功績のひとつに、弦長を650ミリと定めた、とよく言われますが、
ここで、トーレスさんの研究では第一人者のロマニさんの本からです。

日本語訳の143pにパヘさんが1815年に、ホセ・レシオさんが1843年に、
イタリアのファブリカトーレさんが1818年に650ミリのギターを作っていた。

そして、パヘさんは1791年に647ミリの、1806年には648ミリの楽器を
作っていたとも書かれています。

では、トーレスさんはどうだったのでしょう?

img017.jpg


これは、現存しているトーレスさんの楽器でデータが分かっている楽器の 
1期といわれている時代のまとめです。

弦長が 650ミリのものは 36台のうちの14台です。

650ミリ以下のものが、16台 650ミリ以上のものが6台です。

そして、トーレスさんが円熟期に入って、トーレスさんらしい楽器を作ったと思われる、
第2期です。


img018.jpg


650ミリの弦長のものが 47台中16台です。

そして、650ミリ以下のものが23台、650ミリ以上のものが 8台です。

確かに、650ミリのものが一番多いのですが、現存しているものの中では約3分の1です。

次にトーレスさんが楽器を大型化して、大きな会場で使えるようにしたと、言われていることですが、
大きな会場、300人、500人1000人、2000人の会場では、パノルモさん、ラコートさんが
作った楽器のほうがはるかに音が通りますし、聞く人の席まで音が飛んできます。

これは、私の実感ですし、事実だと思います。

ということはさておいて、次にトーレスさんが作った楽器はどんな大きさだったのでしょうか?

よく、トーレスモデルとかトーレスレプリカと言われたり、トーレスさんの図面が売られたりして
いるので、ほとんどトーレスさんの楽器は、後の時代のブーシェさんやハウザーさん、アグアドさんの
ように定型化されたモデルがあると考えてしまいますが、トーレスさんの作ったギターは
2台として同じ大きさ、形のものはありません。

死ぬまで、試行錯誤をしていた人、と私が認識してしまうのは、このためです。

img020.jpg


この表は、日本語訳の 106pです。本はもちろんロマニロスさんの「アントニオ・トーレス」です。

現存しているトーレスさんのうち、データが分かっているもの全てです。

全て、表面積が違います。この本で、1台1台のデータが出ていますが、それらを整理するのは
大変なので、この表板の面積が違うと言うことで、全て 大きさが違うと言うことを知って
いただけると思ったのです。

第1期、第2期で主に沢山作られた、楽器のサイズはありますが、皆それぞれ違います。

どの楽器をもって、トーレスさんの楽器だと言うことは出来なさそうです。

ここで、もうひとつ 私の楽器との比較です。

偶然ですが、私の楽器の表面積は トーレスさんが 第1期に最も沢山作られた
大きさの楽器の平均 1258cmxcm に近い、1260 です。

もし彼が、640ミリの弦長を採用していたら、この1期の大きさが、モダンスペインギターの
大きさになっていたかもしれないと以前から思っていました。

第2期の大きさは 最も沢山作られた大きさの平均値は 1329です。

でもこの楽器はライニングが大きく、私の楽器との差(ライニングの大きさの差)を5ミリとすると

トーレスさんの実質の表面積は 1292となります。
私の1260より大きいですが、ライニングが大きいことによって、表板の端は振動していませんので、
実際に鳴っている表板の、面積は私の楽器のほうが大きいと思います。

それなので、楽器は小さいけれど、私の楽器はしっかりした低音が出ると考えています。

そして、楽器が小さいことによって、応力的にも有利ですし、私達日本人にとっても弾きやすい大きさの楽器
になります。

私は、彼が650ミリの弦長を採用したことで、第2期の大きさの楽器になって行ったように、
思えてなりません。

弦長については、後の時代の作家でも、例えばマニエル・ラミレスは646ミリから656ミリの
間で作っていましたし、650ミリ以外の作家もいましたから、現代の製作家のように、
誰も彼もが、650ミリでなくてよい様に思います。

でも、最近は640ミリ630ミリなどの弦長で作られる製作家も出てきましたが、
ショートスケールとか、ラ〇トギターとか、特殊な楽器のイメージで作られるのは、
どうかな?と思います。

モダンスペインギターの神様も650ミリ以外の楽器のほうが多いのですから。









  1. 2013/03/23(土) 02:08:43|
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kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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