古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

楽器にあった弦の選び方

ここの所沢山コメントをいただいて、ありがとうございます。

ひところの、コメントがいただけなかった時期がうそのように感じます。

ということで、コメントにコメントで返事、返答させていただくより、
新しくブログを書いたほうが、このブログを読んでいただいている皆様にも
分かりやすいのではないかな?と思って、ブログで考えを書かせていただきます。

もちろん学校ではありませんので、コメントいただいたこと、質問いただいたことに
答えると言う形では、本来のこのブログの趣旨ではないように思います。
あくまで、私はこう考えています、こう感じています、と言うことを書かせていただいて、
皆様に考える、引き出しや、ねたを提供すると言う形で進めたいと考えています。

と言うことで、適正な弦の選びかたについてですが、

trioさんからもリュートのついての話が出ていますので、ギターから少し離れて
リュートの話をさせていただきます。そのほうが、ギターについても理解が深められそうなので。

リュートと言っても、ルネサンスとバロックでは考え方が大きく違います。
(この場合ルネサンスの代表として、イギリスでよく用いられた、7コース程度のものを、
そして、バロックの代表としてヴァイスなどの曲を弾くための13コースのバロックリュートを
比べさせていただきます)

ルネサンスリュートは、弦長も60センチくらいで、軽く、表板も薄く作っています。
これは、音の立ち上がりが良く、軽く鳴って欲しいから、ですから減衰も短く、明るく
鳴ります。音楽がそのように出来ているので、楽器も当然そうなるわけです。
おまけに、当時は巻き線がありませんから、低音は更に減衰が短くなります。
30年以上前に、巻き線を使わず、太いガット弦で低音弦を試したことがあります。
ペグ穴も大きくして、ブリッジの穴も、勇気がいりましたが、大きくして。
そうすると、いよいよ減衰は短くなり、低音弦の消音などは必要ありません。
昔のほうが低音に関しては演奏が楽だったかもしれません。

それに比べて、バロックは弦長が70センチほどで、表板も厚く作って、音の減衰
を長く取るように考えています。

表板の考えも、ルネサンスはチェンバロのように、弦のテンションがかかって、表板がS字カーブになります。
チェンバロも、ルネサンスリュートもこのように、表板が変形してきて初めて鳴って来ると、言う人もいます。
私もそう考えます。(もちろん、チェンバロでも響板が変形していなくてもよく鳴っている
楽器はありますが)

それに比べて、バロックは減衰を長く取りたいことで、表板も厚くなっていますから、変形することは
余りありません。(ほとんどありません)

ですから、弦の選定も、ルネサンスはS字カーブを形成する程度の、テンションの弦で。
テンションがきつすぎると、振動する余裕が無くなってしまいます。
一度,S字カーブが形成されると、少し細い弦でも鳴る楽器が多いように思います。

チェンバロもルネサンスリュートに近い、響板の考えですから、きついテンションだと、緊張が大きすぎて
鳴らないことが、よくあります。
それは、弦の張ってある、ブリッジを押さえると良く分かります。
適正な弦の楽器では、簡単に指で押さえると、凹むのです。


最近は作っていませんが、日本の大手ピアノメーカーがチェンバロを、作り始めた頃、
楽器を見て欲しいと、お誘いを受けたことがあります。

その楽器が、まさにテンションがきつすぎる楽器でした。
モダンピアノメーカーの発想でしょう。

後年、このメーカーの楽器を使っている演奏家から、楽器を何とかして欲しいということで、
手を入れたことがあります。

九州の楽器では、ほぼ半音下げると、楽器は鳴ってきましたが、このピアノメーカーのものは
半音下げても鳴って来ず、半分ほどの弦を細い弦に張り替えたことがあります。

このメーカーの楽器は、作っている方からこんな話を聞きましたので、構造はヒストリカルに作って
おられたようなのです。
「私のところでは、ヨーロッパの博物館の図面を取り寄せ、100分の1ミリも違わず、
正確に図面どおり作っています」と。
すかさず、私は「材質が違うのに、同じ厚み、構造で作っても、同じものは出来ないです。」
と言いましたが。

と言うことで、オリジナルの楽器は、ドイツトウヒでドイツ松で作っていますが、
このメーカーはスプルースを使っているわけですから、厚くするか、細い弦を
張らないといけないのです。
それが逆ですから、楽器は鳴っていなかったのです。

ここで、リュートに戻って、trioさんの持ってられる、11コースのリュートです。
11コースをもってられると言うことは、初期フレンチのバロックを弾かれているのでしょうか?
楽器もバロックでしょうか?

私も始めて、シェーファー先生にレッスンを受けたとき、シェーファー先生はファンデ・ゲースト
作の11コースのルネサンスリュートを持ってこられていました。
その楽器が素晴らしかったので、私もゲーストさんに直ぐ注文しました。

(余談ですが、その頃は外貨持ち出しが一人1000ドルと決められていましたので、
友人の名前か借りて代金を送金したことあります。今の時代では考えられないことですが)

と言うことで、11コースのルネサンスリュートと言うことも考えられますが、バロックでしょうね?

バロックの場合だと、少しはテンションがきつくても鳴る楽器もあります。
弦の数が多いので、少ししっかり造ってある楽器などは、
少しテンションを上げたほうがよい楽器もあります。

私の周りの製作家では、最初につけた弦のゲージ表を付けていて、演奏家がそれを元に
少しずつ、好みや楽器のコンデション、また使い方によって買えているようです。
スタンダードな使い方だと、製作家の決めたゲージでほぼ合っている場合が多いように思います。

音楽的にも、私も持っているのですが、フランスのCNRSから出版されている曲集で、
最初はルネサンスの調弦で始まり、1弦がファに変わり(ルネサンスリュートは1弦はソです)
その他の弦も少しずつ、バロックの調弦に変わっていくと言う曲集があります。

10コースのルネサンスリュートを作る時は、6コース、7コースのリュートと
違って、少しバロック的な響きも付けたいので、少し響板の厚みも厚くしています。

ルネサンスだから、バロックだからと一言で片付けられない問題もありますので、
結局は楽器を見て、楽器にあった弦を探すしかないと思うのですが、
弦のゲージを探す何かの参考になりましたでしょうか?

ギターの場合は、リュートのように、特にルネサンスリュートのように
表板は薄くは作っていませんので、(でも、表板がほぼ2ミリと言うように薄い楽器も
ありますが)使う方の、考えで弦を選べば良いように思います。

ただ、減衰はテンションが低いほうが長くなりますし、音量はテンションがきついほうが
有利なのは、一般的に言えることだと思います。

まだ、色々弦についてはお話したいことがありそうですが、このあたりで。







  1. 2013/03/20(水) 01:17:10|
  2. ギター
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コメント

平山様、懇切丁寧なご回答で、ありがとうございます。

私の楽器は11コースの全てバロックタイプです。曲もフレンチと初期のヴァイス、11コース対応までのバッハなどの摘み食いで少々というところです。

 あのシェッファー先生のレッスンを受けられておられたとはすごいことです。ゲーストのような名器もご所有されておられていたこともびっくりしました。あのクラッシクギター製作の日本のM・K氏もゲーストさんの工房を訪問されたほどですから、当時一流の先生のクラス受講と超一流の楽器に恵まれた環境はうらやましいかぎりです。
 日本のリュート界の夜明けは、シェッファー先生による来日で、楽器自体も演奏も幕開けになったといってもよいのではないかと思います。

 60年代後半から70年代は、留学時代の幕開けで、現在ご活躍の日本のリュート演奏家もその時代の若者でした。もちろん、リュート製作家を志して、ヨーロッパに渡った若き日本人もおられたとのことです。
 青雲の志を持って、たくましくヨーロッパに勉学の意思固く、頑張っておられた方々には頭の下がる思いです。最近は、海外に学ぼうとする若者が少なくなったと聞きます。こじんまりとまとまって画一化された環境に安心してしまっているのは嘆かわしいことです。(いつのまにか、話題と関係ない愚痴になってしまいました。すみません)

 私の楽器はなにぶん古くなってきているので、バロック仕様といえど、無理せず鳴らせる範囲にしたいとの思いなのですが、試行錯誤しかないのですね。
 平山様に安直な方法をお聞きしてしまい、すみませんでした。gabottenⅡさんからも厳しく言われてしまいました。全くそのとおりです。
 自分で考えながら、いろいろ試したいと思います。

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  2. 2013/03/20(水) 12:04:42 |
  3. trio #-
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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