古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

コメントのお返事と九州の話 その2

すみません、普通のブログによくあるように、九州の旅行記のようなものではありませんので。
また、楽器についてのお話です。(もっとも、このブログを読んでくださっている方はそんなものを
期待してはいないと思いますが)

今回九州に行ったのは、主に天草コレジヨ館の展示されている楽器、
演奏用の楽器のメンテナンスや修理のためです。
その行き帰りに寄り道はしましたが。

展示の楽器も、エアコンが入ったり、夜間は入らなかったり、梅雨時分は湿度が高かったり
エアコンが入ると湿度が低くなったりと、楽器のためにはよい環境とは言えません。

そこで、調整が必要となる訳です。

とりあえず、23年ほど前に作った展示の楽器の中での代表作 ヴァージナルです。

130304_1424~01


製作期間も短い間に、12台ほどの楽器を作らなくてはいけませんでした。
本当に、わずかな縁があって作ることになった楽器です。

当然資料等もありませんが、私のことですから手に入る資料は手に入れて、調べました。

でも、クラボーと呼ばれていた、鍵盤楽器については、「鍵盤に象牙と黒檀を使った、
象嵌され、真珠を沢山使った美しい楽器」と言う記述が残っているだけでした。

現存している当時のイタリアの楽器を調べ、このような楽器になったのです。
実際、白蝶貝で象嵌し、象牙と黒檀の鍵盤、真珠はインドの天然真珠を80個以上使いました。

自分で言うのも何なのですが、いつ見ても綺麗な楽器だと思います。

そして、3年前に作った演奏用のヴァージナルです。

130303_1512~01


いつもはアウターケースに入っていて、この装飾などは見れません。

竹のパイプオルガンの製作に時間がかかって、結局4週間で作った楽器ですが、
沢山の装飾はないのですが、これも美しい楽器だな、と思って見ていました。

その他、フィーデルやガンバ、ハープやリュートを調整していました。

本当に、このコレジヨ館とは不思議な縁で、前回メンテナンスに来た時に、
イランの代表的なサントゥールがコレジヨ館にありました。

どういう経路でこのコレジヨ館に来たのか、分かりませんが、どうも
私が作ったサントゥールのようです。

メズラブといって、弦をたたく撥を見ると、日本の楓で作っています。
日本の楓で、メズラブを作っている人は私しかいませんから、私が
30年ほど前に作った楽器でした。(日本でメズラブを作っている人は他に知りませんが)

そして、今回コレジヨ館に入って、びっくりしたことがあります。

私の家にも来られて、いろんな音楽、楽器のことを話をさせていただいた。
前川先生のコレクションがコレジヨ館にあったのです。

そして、お弟子さんと一緒に来られたのですが、そのお弟子さんは、私の作った
ガンバを弾いてられます。

以前から、沢山楽譜やレコードを持っている学者さんが、本や楽譜,LPをコレジヨ館に
寄付されると言う話を聞いていましたが、まさか京都の前久保先生とは思っていませんでした。

130304_1620~01


この件に関しては、リュート奏者の野入さんも関係があるとお聞きしました。
野入さんは同志社女子の出身ですが、同志社女子のリュートは私が作ったものを
授業で使っていましたので、野入さんが最初に弾かれたリュートはわたしのリュートです。

もっとも、私が31年ほど前に大阪で展示会をしたときに、野入さんも来られていて、
若い頃の野入さんが私のリュートを弾いておられたこともあったように思います。
そして、その時が野入さんが初めて、リュートに触れられた時だと、聞いたことがあります。

不思議な縁の天草コレジヨ館とはこれからも長い付き合いになりそうです。


そして、コレジヨ館の次の日、宮崎まで行きました。

宮崎でチェロを弾いている方なのですが、今までにヴァージナルを3台作られている人がいて、
ヴァージナルばかりより、フレミッシュの1段でよいから、チェンバロを作ってみませんか?
とそそのかした責任がありますので、楽器を見に行ったのです。

綺麗に作られていました。チェンバロは初めてでも、ヴァージナルは3台も作ってられますから。


響板のドイツ松は私のところのものをお分けしたのものです。
でも、楽器を見せていただくと、楽器があまり鳴っていないのです。

白鳥の羽根を使っているのですが、楽器が振動していないのです。
鍵盤も重くて、しっかり弦は弾いているはずなのですが。

試しにブリッジを押さえても、響板が動いてくれないのです。
弦のゲージを聞くと、とても太いゲージで、テンションが高すぎて,鳴っていないようなので
とりあえず、半音下げると、鳴ってきました。楽器も振動してきました。

弦のテンションがきつくて、楽器がカチンカチンになっていた感じでした。

後、ヴォイシングのやり方を説明しながら、ざっとヴォイシングをやりました。

すると、楽器本来の鳴りになりました。

ギターでも、リュートでも弦楽器はその楽器にふさわしいテンションの弦を張ってあげないと
いけないと、実感しました。

その点からも、モダンの楽器で、楽器の限界以上のテンションをかけて、楽器が鳴っていない
状態で弾いている演奏家もいるのを、思い出しました。
魂柱とか駒とかの問題以前の問題ですが。

次回は設計構造の残っていた問題、フレットの大きさについてです。

よろしくお願いします。









  1. 2013/03/16(土) 00:10:48|
  2. その他
  3. | コメント:5
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コメント

九州でのお勤めご苦労様でした。今度私もコレジヨ館へ楽器の見学に行きたいと思います。
 さて、大変興味深い内容で、平山様にお聞きしたいのですが、弦のテンションにはいつも難儀しています。今、弦もそれなりに高価ですし、理想の組見合わせを探す秘訣はあるのでしょうか。巷には弦計算尺なる舶来製のものがありますが、実際、弦によっては伸びる分を考慮して計算尺通りではない弦ゲージを選んだり、試行錯誤の連続で目安にしかならず実用的ではありません。弦は特に難しく、まず、楽器の経年変化による表面版の耐力加減を考慮しなければならないこと、同じ弦メーカーの製品番号でも、時期によって品質の違いがあること、等々があるのです。
 私のリュートはおよそ10年物、25年もの、40年物と3種ありますが、全て同じ11コースでも、同じテンションでは張れません。415Hzでは無理があり、392でなんとか、370で快適なテンションというようにバラバラです。平山様の言われるように、楽器によって表面板の緊張度が確かに違います。
 私は弦のこのような煩雑さから、弦が切れかかるまで、または音程が狂ってきた以外には交換しないようにしています。
 楽器と弦の最適な組み合わせを早く、合理的にできる方法、秘訣はないものでしょうか。
 とりとめもなく、安易な質問をお許しください。
  1. URL |
  2. 2013/03/16(土) 14:09:42 |
  3. trio #-
  4. [ 編集 ]

すこし前に、ある著名なリュート演奏家の興味深い記事を読みました。
 バロックのリュートの新作が出来上がったが、全く鳴らず、外れだったかと落胆しかかったが、張られていた弦がフロロカーボンで表板が緊張しまくっていたので、張力を落として、長く引き込み、やっと鳴ってきてコンサートに出せる状態になったとのこと。

 このエピソードは2つの事実を物語っています。
ひとつは、名の通ったプロ製作家が作ったものでも、理想の弦が選択されているとは限らないこと(これは当たり前かもしれません。テンションの感じ方は弾き手次第だし、表面板の緊張の具合の感じ方も弾き手次第。鳴ってるかいないかを感じることも同じ)
 ふたつめは、特にアマチュアが新作を注文して、出来上がって来た時に、鳴らないからと、外れだとはすぐに判断できないこと。(一部の人には、初めから鳴らないものが、経年変化によって、鳴り出してくるはずがないと判断している場合がある)
 したがって、あらゆる試行錯誤を行って、最適の弦の組み合わせを追求することが肝要なのです。その努力ができない人には古楽と向き合うことができないでしょう。
楽器というのは、まず、前提条件として、正しい構造設計で、最良の材料が使われて製作されたとして、まず、楽器の固有周期を発見することが大事です。その固有周期と共鳴できる最適なピッチとテンション(ゲージ)をまず見つけることなのです。各々の卓越周期とでも呼べるでしょうか。
 trioさん、どうか粘り強く頑張ってください。手っ取り早い方法なんてありはしません。人に安易に聞く前に自分で努力を惜しまないことが大事なことです。
  1. URL |
  2. 2013/03/18(月) 17:32:00 |
  3. gabottenⅡ #-
  4. [ 編集 ]

所謂モダンチェロでは弦の張力はどんどん高くなる方向ですね。
大ホール対応で音量追求の結果でしょうか。ガット弦をある程度鳴らせるようになってきたとき気付いたのは、音程がハッキリ分かると言うことでした。仰るようにスチールではボケていました・・・音程の悪い言い訳にはなりませんが・・・
  1. URL |
  2. 2013/03/18(月) 19:55:17 |
  3. TANUKI #-
  4. [ 編集 ]

魂柱をクラシックギターに…?

どうもお邪魔します。

力木を一本省くなりして(強度+音響を考え)魂柱をギターに立てるというのは突拍子もない発想でしょうか?
大阪のI氏は魂柱ありギターのオーダーを請けておられるようですが。

ヴァイオリンとギターでは振動/伝達の方向(作用)が違うので魂柱はギターに無効だとかいう話は聞いたことがありますが。

素人の発想ですので、スルーして下さっても結構です。

何時も更新楽しみにしております。
  1. URL |
  2. 2013/03/19(火) 17:43:37 |
  3. 原敬 #22hNL7Yc
  4. [ 編集 ]

溌弦楽器と擦弦楽器では発音の仕組みが違うように思います。バロック時代のストラドヴァリスス作のギターがあり、有名ですが、彼でさえ魂柱をギター内部に設置はしなかった事実からしても、明らかではないかと思います。
 トーレスによる近代ギターの構造がやはり全てのギターの構造の幕開けではないかと思います。全てはトレースに始まり、トーレスに回帰する。
 世の中には、なんとかハニカムとか、二重構造とか、サンドイッチとか、ユニークな設計がありますが、大きな基本はトーレスの構造に影響を受けています。クラッシクギターがトーレスなら、リュート属は誰の構造が範になっているのでしょうか。
 リュートもルネサンスはJバーが特徴ありますが、バロックに至っても、それほど大きな違いはないです。大きな弦張力に耐えるために細かいバーをブリッジ側に放射的に配置していますが、これも現代のナイロン弦のために力木配置を歴史的な構造よりかは、変えられています。この部分は製作者の工夫が見られます。バロックは構造的には一杯一杯だと思います。
 それにしても楽器の構造というのは実に面白いです。
  1. URL |
  2. 2013/03/19(火) 20:52:28 |
  3. 弦蔵 #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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