古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

弦のびびり、さわりについて

最近沢山のコメントをいただいて、ありがたく思っています。

ついうっかり、演奏のことなどもコメントのお返事、お礼として書かせていただきましたが、
演奏する立場でもないので、楽器を作る上で、演奏をどのように考えているか
を書かせていただこうと思います。

と言うことで、今回は楽器の(弦の)さわり、びびりと言ったことを書かせていただきます。
コメントをいただいたなかに、CabotinさんLuthierさんがそのことを書かれていましたので、知っていることを書かせていただきます。

さわりと言うと、私たち日本人には、三味線のさわりがすぐ思い浮かびますが、三味線のさわりは
比較的新しいものだと言うことを聞いています。

大阪音大の音楽博物館にも寄贈された、沢山の三味線があるのですが、ここのコレクションの中にも
古いものには、さわりが無いものがあります。

三味線の専門家に聞くと(大阪音大の先生ですが、もちろん三味線の高名な演奏家です)、
古い三味線かどうか見分けるのは、さわりがあるかどうかだそうです。
(念のため、ネットで調べましたが、何処で探してもこのような説はありません。
 皆、三味線にはさわりが付いているもので、沖縄の三線、中国の三線が日本(堺)に伝わって、
 日本の三味線になった時には、さわりが付いていたという様な、説明です。
 これも、古い三味線など、自分で調べずに、皆が言っていることを、
 同じように言っているだけなのでしょうか)
 

それに比べると、ヨーロッパではもっと古い時代から、さわりのある楽器は多かったようです。

1600年代に良く使われた、フレミッシュバージナルに、弦を留めている、ヒッチピンの近くに
ブラスで、フックのようなものを付け、必要のあるときにはそれを、弦にすれすれに当てて、
ビビル音が出るように、する機構のものがありました。

CDでもたまに、この音が入っているものがあります。

ハープも、ゴシックハープには弦の一番端、響板に近いところに、L字形のフックのようなものを
付け、これも必要なときに弦にかすかに触れるようにして、さわりのような音を題していました。

以前、頼まれて作ったルネサンスドラムも、スネアーのように、裏側にガット弦を張って、
ビビル音を出していました。もちろん、ペグが付いていて、弦を緩めて、ビビリ音が出ない
出ないようにも出来ます。

リュートも、竹内太郎さんが、オリジナルのリュートと同じように、弦幅の狭い
弦高のとても低いリュートを作ってもらったそうですが、慣れてくるととても
引きやすい楽器になったと書かれていました。

このような、弦高の低いリュートもさわりのような、音でも演奏されたのでしょうか?
私のギターも弦高は低いのですが、さわりのような音では弾いていません。

トロンバマリーナも面白い楽器ですね。

音楽学者のクルト・ザックスさんがルネサンス時代は「空前絶後の楽器の種類の多い時代だった」
と言われていますが、ルネサンス時代にあって、その後の時代にはなくなってしまった、楽器も
多くありますが、なくなっても、何かの楽器に形を変えているものが多いと思います。
でも、トロンバマリーナはどの楽器にも、なっていないようです。

大阪音大博物館にも、オリジナルのトロンバマリーナがあるのですが、音が出なくて
何とか、音が聞きたいということで、調べたことがあります。そして、
分厚い1冊の本が見つかりました。
トロンバマリーナの駒だけの本です。

弦楽器のように、弦が張ってあって、弓で弾くので、駒があるのですが、弦の振動で、駒の足が
表板をたたくような構造になっています。

ですから、駒はとても重要な部品です。

ですから、何百種類の駒のデザインが残っているようです。
と言うことは、当時は沢山使われていたということでしょうか。

音源もかなり少なく、録音では、デビット・マンロウのLPくらいでしか、
聞いたことはありません。

今回はギターから少し、離れたようですが、ヨーロッパと言うと、ギターやヴァイオリン
ピアノのように、さわりとは縁が無い楽器ばかりだと思われているかな?
と思って書かせていただきました。

(三味線などは私の専門外なので、見聞きしたことを書かせていただきました)





  1. 2013/01/29(火) 19:33:25|
  2. ギター
  3. | コメント:7
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コメント

驚きながら

三味線は輸入されたときから さわり があるものだ、
と思い込んでいました。さわり を上品に生かした地唄舞の
方には作曲をしたし 地唄の勉強もした、地唄の名曲の美しさ・・しかし、自分には
さわり を使う資格というのかな・・自分の感性のなかに さわり はどうも・・ないのです。でも さわりのある三味線 枇杷はすきですね。
本来はベニスという超国際都市・・もちろん当時・・イスラムや世界史初のユダヤ居留区の16世紀のこの都市でさえ・・たぶん 音楽には さわり は使われなかった・・と 想像します。根拠はツァルリーノの音律、とバズのない弦をかれらが求めていた書簡を読んだからです。
日本にも さわり のない時代があったんだろうか?
それのない 地唄 ってなかなか想像できない・・
これもやはり先入観なんでしょうね。。もずや春琴も さわりがないと想像すると違う世界だな・・・
最近ではドビッシーの編曲ですごく悩んだ部分です。
  1. URL |
  2. 2013/01/29(火) 23:13:50 |
  3. CABOTIN #-
  4. [ 編集 ]

あ・・ 五百年まえのオリジナルのトロンボマリーナを弾いたことがあるのですがね・・・ なんというかカルチャーショックという薄い言葉でしかいえないですね。
そういう雑味(どっちが雑であるかは疑問だけれど)オキシにとってはひエキゾだったのですね。
ピアノでもモーツァルトのトルコ鍵盤のついたもの、やはりエキゾだったんでしょうね。でも、サンマルコ寺院やエリゼ宮ではたぶん使われなかった・・のとちゃうのかな?
でもサンジョルジュみたいにエキゾの作曲家も寵愛されていたから・・・わからない。
  1. URL |
  2. 2013/01/29(火) 23:25:47 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

興味深いお話ですね。

またまた、平山さんの文面の趣旨からそれてしまいますが、お許しください。

私は弦のビビりは好きです。最近発表会で弾いたBachのフーガでわざとそういう音を出すなんてことをやってます。それにBWV1002のサラバンデの冒頭の和音もそういう音にしてます。もちろん、多分誰も相手にしてくれませんが(笑)、とくにサラバンデはそうなってしまうほどのタッチが必要と感じてます。でないと3拍目を弾くことができないなと 個人的にはそんなふうに感じてます。
  1. URL |
  2. 2013/01/31(木) 04:10:41 |
  3. HSPT #-
  4. [ 編集 ]

子音の響きはもっと重視されてよいと思います。そのような弾き方は400年前は当たり前であったのではないかと思います。
 現代の音楽(広義の意味で)に毒されている耳には、そういうさわりというのを不純物と捉えられている気がします。
 19世紀ギター、リュートも含めてガット弦にして、もちろんガットフレットなら二重にするなど、当時の仕様を忠実に再現することこそ意味あることです。
 ところが、最近の大ホール志向主義がそれを台無しにしています。小さなサロンや教会、石作りの建造物等で演奏会が開かれることを望みます。演奏者もわかっている人はわかっています。しかし、そうでない人が多いです。

 またまた、平山様の趣旨から逸れてすみませんです。
  1. URL |
  2. 2013/01/31(木) 09:50:59 |
  3. 落葉の旅人 #-
  4. [ 編集 ]

話が根拠なしに飛躍せずに、ゆっくり見ていくことが大切だとおもいます。
後世の人が現代のエレキギターのアンプのポジティブ発振を発見してそれだけで現代を断定してはいけない。
なぜ、トロンボマリーナがいなくなって啓蒙の時代に突入するのか、ツァルノリーノはなぜあの音律に固執したのか・・・

さわり バズ について。
私の視点。まちがいがあるかもしれません。。演奏の音色を思う時毎日何時間も真面目に考えることなのでけっして短絡していただきたくないことです。

とても単純に さわり を意図した西洋の音楽と楽器についての
私の視点についてです。
16世紀からバッハ ビバルディの啓蒙時代、音楽の場所を「内」と「外」に分けてもよいでしょう。私の専門は「内」であって「外」大衆音楽ではありません・・あまりに当然ですがそれは優劣ではありません・・。
私が仕事とする「内」の音楽、教会、宮廷、サロン(きをつけねばなりません 一番有名なサロンはエリゼ宮でしょう つまり宮廷とかわらない)。
教会での音楽や楽器がそして啓蒙の時代がバズを避けようとしていたことの論拠は音律からも楽器の構造からも推測できるのではないでしょうか?
初期バロックのオペラでさえ当時の弦の重量の制限を乗り越えるために異常に長い弦をもったハープが使われました。アーチリュートの低音も、もしもバズを望んでいたなら存在はしないのではないだろうか。有名なオクスフォードのストラドギターの弦の長さもそうですね。
啓蒙の時代を代表するフリードリヒとバッハの遺産 音楽の捧げもの をバズをともなって再現しないでしょうね。
大衆によっていったとき 例のトルコ行進曲ペダルのビアノもあることは納得するのです。

先日 三和さんとはなしをしていて現場の通奏のかたから このことについて興味深い示唆をいただきました・・つまり どの編成から五度を気にしなくなるか・・とても共感しましたが解説するのはなかなかめんどうなので次回にします。
  1. URL |
  2. 2013/01/31(木) 12:50:25 |
  3. CABOTIN #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

CABOTINさんのご高説を賜りたく、どうぞ心ゆくまでお聞かせください。

 私にはレベルが高すぎて、理解に苦しむことがありますが、かなり専門的教養とトップレベルの演奏をなさる方とお見受けいたしました。
 私は、さわり の部分に大いに興味がありますが、さわり、バズ のこと、もっとお聞かせください。
  1. URL |
  2. 2013/01/31(木) 16:49:32 |
  3. 落葉の旅人 #-
  4. [ 編集 ]

コメントをいただいていて、なかなかお礼と、私のコメントが出来ていませんでした。

話が非常に高度な内容なので、そして演奏に関することなので、
簡単には返事が出来ませんでした。

リュートもルネサンスリュートは、フレットがガンバのようにダブルフレットだったと言うのは、
よく聞く話です。でも、私は実際に試したことはありません。

ガット弦を張った時にでも試してみようとは考えていましたが。

ヴァージナルにしてもゴシックハープにしても、いつもサワリ、バズが使われていたわけではないので、
リュートをダブルフレットにする勇気が無かったのです。

でも、一度試してみます。

その結果はまたお知らせしますので。
  1. URL |
  2. 2013/02/08(金) 23:19:49 |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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