古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

リュートの右手について

この頃、沢山コメントいただいてありがとうございます。
本当に、しっかり読んで下さっていることを実感します。
読んで下さっている方にも、ありがとうとお礼を申し上げます。

LUTHIERさんからいただいたコメントのお返事、コメント欄では書き難いので、
記事にさせていただきました。

後出しジャンケンのようですが、私がつい、そんな人はいないでしょう?
と書いた、リュートを弦に直角に弾くギタリストの方のことですが、
当然、爪で弦を直角にはじくと、弦が同時に鳴らずに、時差が起こってしまいます。
そして、リュートの細い弦を、響きも倍音も付けずに、鋭い音で弾いている方が
結構いたのです。その音はリュートの音でも、楽音でもないと思っていました。

その方々には、リュートは2弦を同時に弾きたい、そして指で音を作っていかなければ、
ただの鋭い、とても音楽が表現できる音ではないので、と説明させていただいていました。

私もリュートを始めた40年程前には、リュートの先生もいませんでしたので、
当時の絵を参考にするしかありませんでした。

当時、雑誌・・・ギター芸術、現代ギターなど・・・は、切り抜いてスクラップ帳に貼り付けていました。
今でも、そのスクラップは残っています。

その中とか、持っている本の中から、リュートの右手が分かる絵を見ていただこうと思います。
LUTHIERさんのおっしゃっているような絵から見ていただきます。

img757.jpg


私が見た中では、最も弦に直角です。
でも、この絵の右のチェロ奏者は調弦中です。
かつらをかぶった立派な紳士が、この当時本当にリュートを弾いていた紳士なのでしょうか?
手前にはバロックギターが合って、ヴァイオリンもあります。
絵的になかなか面白い構図です。

かなり写実的ですから、長時間モデルとなった方は同じポーズをとられたことでしょう。

リュートも高価な楽器でしたし〈バッハの遺品目録を見ると、高価なヴァイオリンの何倍もしています)
バッハ自身もリュートだけは弾けなかったと言っていますから、本物のリュート奏者を何時間も
モデルとして使ったのかな?と言う疑問がありました。
私も20歳までは絵を描いていましたら。

次に

img758.jpg


この絵も比較的弦に直角です。

アーチリュートのようで、単弦のリュートのようです。
単弦なら、ダブルの弦の時差が起こらないので、この右手の位置でも演奏は可能かな?
と思いますが、この女性はリュート奏者なのだろうか?と言う疑問は残ります。
かなり写実的ですから。でも、他の楽器は本当に演奏できる人の構えです。

次は有名なカラバッチォの絵です。

img759.jpg


非常に細かいところまで描かれています。
私も彼の絵から、ヴァイオリンの弓を作ったことがあります。

この絵でも、手首は曲げていません。いわゆる、タレガさんの右手とはフォームが違うようです。
左手は、ありそうな和音を押さえていますが、楽器の配置や、あらぬ方向を見ているリュート奏者など
絵的に面白いものを狙っていると、私には思えます。
でも、単弦なので演奏は可能です。

img766.jpg


この楽器も単弦ですが、調弦中です。
私もアーチリュートではこのポジションで調弦します。
この女性がリュート奏者かどうかは別にして。

img767.jpg

この絵も、かなり直角です。

隣のガンバ奏者は右手の弓の持ち方がありえませんし、左手の6弦のハイポジションの
位置は、ガンバでは絶対に使わないポジションです。
このガンバ奏者は演奏は出来ない人だと思います。

この女性だけがリュート奏者と言うことは考えにくいのです。

img769.jpg


この奏者は かつらもかぶって、立派な音楽家のようです。
左手もフォームもリュートフォームですし。弦も複弦です。
でも、この絵でも手首は曲げていません。

LUTHIERさんがおっしゃるように、後期の絵では比較的弦に直角に近い
角度の絵が多いようです。

でも、私達は最初ルネサンスリュートから入りました。

ご存知のように、爪が無いとかなり深く弦を捕まえないと鳴りません。
また、複弦を同時に鳴らさないといけない、と言うことから次に
見ていただく絵が参考になりました。

爪を使うかどうかは、大きいことですが、ガット弦を日常的に使っていますので
〈ガンバ弾きでもありますので)爪を使うことは、弦の消耗を考えると
使わないほうが、自然かな?と考えます。音的にも太いしっかりした音がします。
ナイロン弦に比べると、ガット弦は指頭でも弦を捕まえやすいのです。
逆にプレーンなガット弦は爪を使うと雑音が出ます。

20年ほど爪を使わないで、リュートを弾いていましたが、仕事では爪が無いと不便なので
伸ばしはじめました。

でも、よくギターも弾かせてもらって、松村さんなどには嫌がられていたな、と思います。
指頭でモダンギターを弾く人はいなかったので。

と言うことで、


img760.jpg

img762.jpg

img771.jpg

img763.jpg


img773.jpg


img772.jpg

img765.jpg


これらの絵は、始めに見ていただいた絵よりは、古い絵です。
リュートもルネサンスリュートのようです。

ルネサンスの頃のリュートは、今のピアノとギターを合わせてくらいに重要な楽器だったと思います。
それに比べると、バロックの後期では、チェンバロなどに比べて、弦の数も多いことなどから、
少しマイナーな楽器になっていたと思います。
〈あまり人の目に触れなかった?)

ですから、ルネサンスの頃のよく使われていた頃の、演奏する姿もよく見られた頃の絵を
演奏の参考にしました。
絵も、エッチングとか後期の写実的な絵に比べると、短時間に書くことができるような絵が多いので、
モデルが持たなくても、演奏できる人がリュートを持って、描かれたかもしれないと考えたのです。
また、リュートも沢山使われていたでしょうから。

そして、実際に演奏をしてみて、これらの絵の演奏方法が、楽器も持ち易く(後期の絵には
机の角でささえたり、テーブルの上においている絵もありますが)演奏しやすく
リュートの音も、イメージに近かったのです。
爪を使わないと、必然的に駒の近くを弾かないと音が出にくいので、
弾くポジションの問題はありませんでした。


LUTHIERさんに反論しようとか、自分の考えを書かせていただこうとか、
でなく、40年も昔にどのようにして、リュートを弾けばよいのか?
と考えていた頃の話ですので。

イエペスさんの演奏は聞いたことがありませんので、何もいう資格は無いのですが、
イエペスさんは爪を使って、ナイロン弦のリュートを使ってられたと思います。

昔の、当時のリュートの響き、音とは違うような気もするのですが。

どうでしょうか?


最後になりましたが、21世紀の絵です。

友人の絵ですが、この一枚を描くのにどれだけ長い時間
モデルさんに座ってもらわないといけないのか、聞いていますので。・・・・・・


img774.jpg








 
  1. 2013/01/27(日) 02:05:01|
  2. ギター
  3. | コメント:8
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コメント

ご丁寧なコメントをありがとうございます。
絵画まで載せていただいて恐縮です。ただ、バロックもルネサンスから弦も増え、親指もアウトにし、仮に絵のポーズであったにせよ、脱力した普通の弾くときのタッチの姿が絵画のようなフォームではなかったのかと思います。(私も決してこうだと決め付けることはできないと思っています。)
 時代背景を考えてみても、ルネサンス時代の軽やかなやわらかい響きから、バロック時代の屈折した暗い時代を反映して、重々しい鋭い響きが好まれたのではないか。そして大事なことなのですが、ビリつきというものがあってよいのだと思います。ある方の講習会で低音の弾き方や、楽器の件で上記のようなお話を伺いました。(受け売りですみません)
 でも、私も歴史書などバロック時代背景なども読むようになって、あの時代のリュート音楽、残された絵画の特に指先の弦への接触感は、今のルネサンス、バロックに求める音色感とは違うのではないかと思います。
 イエペスのリュート録音は、70年代の1回限りで、録音のためだけに、リュートを取得したそうですが、クラッシクギタリストだから爪を使ったなどという次元の低い話ではないと思うのです。それと爪、爪とよく言われているのですが、イエペスはごく短く爪は切っていると思います。接触面積少な目のタッチのように聴こえます。
 バッハのリュート曲、時代背景、絵画等、あの勉強熱心なイエペスの結論があの録音なのです。そこには爪の雑音というつまらない話ではない、本当のバロックリュートの響きがあります。
 平山様にも機会があれば、現在でもCD入手できますので聞いてみてください。

  1. URL |
  2. 2013/01/27(日) 13:17:30 |
  3. LUTHIER #-
  4. [ 編集 ]

luthierさん コメントありがとうございました。

実は、あれからすぐにcdを注文して取り寄せて聞いていました。
そして、うーーーーんと考えていました。
どのように、コメントさせていただいたらよいのかと。

40年ほど前、このcdと言うかLPが録音される前に、
私がまだ、リュートを引いていた頃です。

イエペスさんが、自分の研究のため、ニコー・ファンデ・ヴァールスのバロックリュートを買ったという話は聞いていました。
そして、自分の研究と楽しみのためだから、人前では弾かない、と言う話も聞いていました。

そして、ある日 リュートの録音をして、LPが発売されたと言う話です。

でも、その当時は聞いてみようとは思いませんでした。

それで、今回聞かせていただきました。

その結果、どういうふうに書かせていただいたらいいのだろうと、悩んでいました。

私も、今はギターも弾くので、爪を使っています。
爪を使うと、弦のどの場所でも音が出せます。
(指頭だと駒の近く出ないと音が出しにくいのです、私には)
そして、爪だけで弾いたり、爪を使わず弾いたり、爪と指頭両方をかけるように
弾いたりと、いろんな表現が出来るからです。それは、ソロよりアンサンブルの時に
有効です。

と言うことで、イエペスさんが爪を使っているとか、どうかではないのですが。

演奏のことは製作家の立場では言いにくいので、悩みましたが、あくまで
私の感想ということで、書かせていただきます。

やはり、いくらイエペスさんとは言え、手にしてそんなに時間の経っていない、
手の内に入っていない楽器の演奏は、無理があるように感じました。

特に、ゆっくりしたプレリュードなど、非常にまじめに1音1音大切にして弾いてられるのですが
イエペスさんらしくない、音楽の流れのようでした。

音は、イエペスさんの音がしています。
非常に、しっかりした音です。

私の好きな 998番のプレリュードも、鍵盤奏者の間では、低音の休符をどうとるか?
が一番の問題なのですが、イエペスさんはゆっくりしたテンポで、休符は取らずに、
音を伸ばされています。

私も、10弦ギターを作って、この曲を弾きますが、ほぼバッハさんが楽譜に書いているように、
休符を取っています。(ちなにみ、10弦ギターだと最低音がラなので、バッハさんが書いている
音のまま演奏できます。ギターだとD durに編曲されていますが、原調はEs durです。
440のギターで D で弾くと415のバロックピッチの Esと同じになりますので、響きも
バッハさんが作曲した響きに近いのではないかと思っています)
低音を一音一音消音するのは大変ですが、その分低音音をしっかり弾いて、消音しても
音楽が繋がるようにしています。

そして、最初のフレーズも、どうフレージングをとるかも問題ですが、イエペスさんは
ただ、全ての音をつないでいるように聞こえます。私には。

ギターではほとんど、消音された演奏というか、楽譜に忠実な演奏は見かけませんが、
イエペスさんくらいなら、考えていてくれても良いように思いました。
バッハさんが意味も無く、休符をつけたとは考えにくいのです。

もちろん、演奏ですので、こうしなければいけない、と言うことはありません。
まして、巨匠のイエペスさんの演奏を、演奏に関しての素人がどうのこうの、
言えるわけがありません。あくまで、私が聞いた感想です。

本当に、どのように書かせていただこうか、悩んだ末のコメントです。


  1. URL |
  2. 2013/02/09(土) 00:09:59 |
  3. こがっき #-
  4. [ 編集 ]

ありがとうございます

平山様、コメントありがとうございます。
 CDを早速に取り寄せられて、充分考究されてのコメントで恐縮です。

 まさか、あのCD録音がニコーの楽器であったとは知りませんでした。なるほどと思ったのですが、クラッシクギタリストは、どう訓練を積んでも、やはり中途半端な印象になりやすいかもしれません。
 その点、モダン仕様のルビオのリュートで弾きこんでいるブリームの演奏のほうが、唸らせるものがありますかね。
 ブリームのリュート演奏はお聴きになったことがありますでしょうか。もし、お聴きなら、どう感じられましたか。
 よろしければご感想をお願いします。
  1. URL |
  2. 2013/02/09(土) 17:46:34 |
  3. LUTHIER #-
  4. [ 編集 ]

平山様、コメントありがとうございます。
 CDを早速に取り寄せられて、充分考究されてのコメントで恐縮です。

 まさか、あのCD録音がニコーの楽器であったとは知りませんでした。なるほどと思ったのですが、クラッシクギタリストは、どう訓練を積んでも、やはり中途半端な印象になりやすいかもしれません。
 その点、モダン仕様のルビオのリュートで弾きこんでいるブリームの演奏のほうが、唸らせるものがありますかね。
 ブリームのリュート演奏はお聴きになったことがありますでしょうか。もし、お聴きなら、どう感じられましたか。
 よろしければご感想をお願いします。
  1. URL |
  2. 2013/02/09(土) 17:47:45 |
  3. LUTHIER #-
  4. [ 編集 ]

ブリームさんのリュートはよく聞きました。
と言っても40年ほど前ですが。
特に、アンサンブルでのリュートはその頃のリュート奏者でも
あまりやっていなかったので、とてもよく聞きました。
確か、アランフェスのB面だったと思うのですが、
ブリテンのエリザベス2世の戴冠式の祝典曲を
アンサンブルに編曲したものだったと思います。

生き生きしたリュートと音楽の流れは素晴らしいと思い、
自分でも弾きたいと思ったくらいです。

実際 トーマス・モーリーのコンソートレッスンズの
パバーナだったと思うのですが、リュートパートを練習していました。

些細な話かもしれませんが、ブリームさんはとても爪が薄かったので
リュートを弾いても、爪で弾いている感じはぜんぜんしませんでした。

余談ですが、渡辺範彦さんが初めて、ブリームに会ったとき
「君のその靴べらのような爪が欲しい」と言われたそうです。

イエペスさんより古い時代からリュートをやっていたブリームさんですが
ルネサンスリュートしか弾いていなかったと思います。

ブリームさんはリュートの音楽をやりたいために、リュートを弾いていたように思います。

あくまで、私の感想です。
  1. URL |
  2. 2013/02/10(日) 10:50:25 |
  3. こがっき #-
  4. [ 編集 ]

ご感想ありがとうございます。
 そうですね、ブリームさんは、リュートをやりたいがためというのは私も納得です。
平山様は、かなり昔からの様々な情報をお持ちで、そのご見識にはいつも感心してしまいます。
 話は変わるのですが、私が持っている75年代のギター雑誌に、シェッファー教授ととともに平山様がリュートで出演されているのを発見しました。
 演奏に関しても、平山様は間違いなく玄人だと、私は思います。
  1. URL |
  2. 2013/02/10(日) 15:05:05 |
  3. LUTHIER #-
  4. [ 編集 ]

感想

よけいなことかもしれませんが、そのイエペスさんの演奏はたしかLPで聴きました。ギター再開後はCDで聴きました。

演奏の発想という意味では 大変に興味のある演奏で感銘を受けて、何度も聴きました。

イエペスならではの演奏だと思いますし、なぜリュートなのかを考えると、色々な考えが出てきます。イエペスの考えは想像するしかありませんが、この音源で何かしらの発想を得るということが、この音源の存在感を感じます。
  1. URL |
  2. 2013/02/11(月) 00:17:30 |
  3. HSPT #Yqf9uHks
  4. [ 編集 ]

Luthier さん HSPTさん コメントありがとうございます。

演奏について、なにか述べるということは、楽器の判断をするよりはるかに
難しいことかもしれません。

ギター製作のブログなので、演奏にはあまり立ち入らないようにしたほうが、
賢明なようですが、あくまで、私が感じていること、思っていることだけを書かせていただきます。
それが正しいとかは思っていませんので。

イエペスさんの10弦ギターは直接生で聞かせていただいたことがありませんが、
何台かラミレスの10弦ギターは弾かせていただきましたが、(イエペスさんの10弦はパウリーノ・ベルナベが作っていたと話は聞きますが)低音弦が鳴っていませんでした。
モダンの構造では、無理な話だと思いますが。

そこで、バランスよく低音が鳴るバロックリュートを選ばれたのではないかと思ったのです。
10弦ギターに比べるとはるかに、立ち上がりも良いですし、リュート音楽は作りやすいと
思われたのではないかと、思いました。その結果様式感の無いギタリストと言う言葉をよく
チェンバリストから聞くのですが、テンポ的にはギターでは出来なかった、様式感が出ているように思いました。
音楽を作ること、新しい発想だけでしたら、13弦ギターとか作ってもらうほうが、イエペスさんには
楽に演奏できたと思いますが。

20世紀の巨匠の素晴らしい演奏を沢山聴いてらっしゃる、HTSPさんはギター音楽以外にも
造詣が深いようですので、また、ご意見、感想お聞かせください。

それと、Luthier さん、リュートもガンバも古くからやっていると言うだけですので、
練習もしていませんし、演奏は純粋にアマチュアですので。
聞くことは沢山していますが。



あくまで、私の感想ですが、リュートで緩楽章での一音一音を丁寧に弾いている姿はギターのイエペスさんでは考えられないのです。

  1. URL |
  2. 2013/02/11(月) 12:44:37 |
  3. こがっき #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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