古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

ギター演奏法 特に右手

以前から思っていたことですが、ギターの右手の角度の問題です。

クラッシクギターを弾いている人で、モダンスペインギターを使っている人
〈ほとんどのギター奏者はそうでしょうが)はタレガの写真とか、セゴビアの演奏している
写真や動画で見られるように、右手首を曲げて、右手が弦に対して直角に弾くのが本来のギター
演奏だと言う方が、いらっしゃいます。

そして、カルバレーロ奏法とか、リュートのように右手首をあまり曲げずに、弦に対して
斜めに構えている、演奏法はギター奏法として、邪道である、間違っているとも言われます。

はたしてそうなのでしょうか?

ルネサンス・ギター、バロックギター、ソルの頃まで使われていた複弦6コースギター、
などは、弦に対して直角に弾くと、弦が複弦の楽器は音がばらばらに鳴るので、不可能です。
〈リュートを弦に対して直角に弾く馬鹿・・おっと失礼・・人はいません。
バロックギターなどもそうです。ストロークと爪弾きを多用しようと思えば
弦に対して斜めの構えになってしまいます)

19世紀ギターは楽器によって差はあると思いますが、音がクリアーで倍音も少ないので
斜めに構えるほうが良い音がするように思います。

長い歴史の伝統的な奏法は、斜めに構えるほうだと考えられます。
ちょうど、ギターがスペインの楽器であるとの認識がそうでないように。
〈と私は思っています)

タレガさんや、セゴビアさんの奏法が出てきたのは、
トーレスさんが、演奏している本人が楽しい楽器、倍音が多くて、いろんな音が含まれている
サロンなどで、取り囲んだ人が楽しめる楽器にしたところから始まったのではないかと、
思っているのです。

1音で、倍音も多く、いろんな成分の音が入っていて、少し其音が少なく
周りの輪郭がはっきりしない、モダンスペインギターだと弦に直角に構えて
音の芯を作ったり、音の輪郭を作らないと、いけなかったからタレガさんはあの
構えを始めたのではないかと思っているのです。

こんなことを書いたのは、私のギターを見てくださる、ギタリストの方の演奏法でした。

私の楽器を評価してくださるギタリストは、左手がしっかり押さえられている方が多かったのと、
右手がセゴビア奏法でない方が多かったように思います。
そのほうが、いろんな音が出せますし、いろんな音楽が表現できるように思います。

もちろん、ギターもリュートも弾かれる方は気に入っていただいたようです。

モダンスペインギターの弾いている人が満足する、厚みのある少しあつかましいような
音もたまに弾いてみると良いのですが、音楽的な演奏〈ギター音楽でなく)を求めると
私が作りたいようなギターが私には合っているようです。

ギター以外の和声楽器と言えば、ピアノ、ハープ、チェンバロなどですがピアノも20世紀の巨匠
達が弾くピアノ、そしてエラールやプレイエル、ベッヒシュタイン、などの名器はもちろん音は
ぼけてはいませんし、和音も濁りません。

仕事中に聞いている音楽も、私の好み、私の作りたい楽器に影響しているのかもしれません。


ギターはギターでなくてはいけませんが、その前に楽器でなくてはいけないと、考えています。
あくまで、私の考え、私の好みです。



  1. 2013/01/24(木) 13:46:09|
  2. ギター
  3. | コメント:4
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コメント

続右手

平山さんの仰るとおりだと思います。たしかにセゴビアは20世紀に現れた不世出の芸術家です。あのSP版時代の甘く、たっぷりとした演奏に初めて触れた瞬間、これがクラッシクギターの真髄か!と感激したものでした。あの頃以降、留学帰りの日本の大家と言われる演奏家は、セゴビアトーンだの、タッチだのと本まで出版されましたからあの右手のタッチ、角度こそ本物と私も思ったものです。
 しかし、所謂古楽器から発展してきた単弦6本の現在のギター奏法が絶対だとは思いません。私はリュートを嗜んでから考えが変わったのです。楽器の作り方で、斜め45度くらいか浅いタッチで反応よく遠鳴りさせるような弾き方はできると思っています。平山さんのように様々な弦楽器、修復等の経験をお持ちの方だからこそ、理解できることがあると思うのです。それが楽器作りに充分に活かされている。
 現代はとかくバカ鳴りのする無機質な楽器がコンクールで流行っていますが、感動を呼ぶ音楽は、むしろ内面的で修辞的で人の心に染み入る音を持つものです。
現代のプロ演奏家も一部の人を除いて、わかってない人があまりに多すぎます。
  1. URL |
  2. 2013/01/24(木) 15:19:03 |
  3. ポエム #-
  4. [ 編集 ]

話にまとまりがなくてすいません。
私はあの時代の巨匠たちに興味があります。コルトー、プーニョ、ヨアヒム、巨匠ではないかもしれませんが女流のヴィクトールジルやマリーパンテなんかです。私にとってはそういう巨匠たちの中でびっくりするぐらいの巨匠中の巨匠がセゴビアです。調べてみるとセゴビアという人はクラシックギターを弾く人というとらえ方です。ギター界でセゴビアというとセゴビアの演奏が個人の特殊な音楽表現とみている方が多いような気がします。他楽器の方ほうがずっと率直です。良いものは良いと。知り合いのチェロの方の恩師はセゴビアでBachを研究されていたとのことですし、先年入手したBachのヴァイオリンソナタ、パルテイータの曲集(ヴァイオリン譜です)はベテラン邦人ヴァイオリニストさんの編纂ですが、ソナタ1番のシチリアーナの解説で、往年のギターの名手セゴビアがエレガントで素晴らしい演奏を残してくれて感謝すると書かれています。Sorをギターのベートーベンと称するのはあまりに卑屈ですが、セゴビアへの他楽器奏者からの評価は、その内容を吟味すればギター上達の指針にもなる価値があると思ってます。

長くなりすいません。
セゴビアについては誤解が多いような気がします。映像で見るとセゴビアの手首は常に自由にしていると感じます。力のかかる方向は現代の奏法と逆だと思います。国連で演奏した老セゴビアのタッチが将にそれで、弦に対して左方向(左腕側)に斜め奥だと思います。加齢によるハンデイを基本奏法を忠実に実行することで超えて、音へのこだわりを見せたのだと思います。一番前で聴いている奥さんの表情や後姿の怖いこと、怖いことセゴビアが小さくなっていた。あんた しっかり弾かな承知しまへんで、よろしいな!!と。(笑)

プロの製作家さん対してまことに僭越ですし、私のささやかな経験の範囲でという前提ですがラミレスのことです。セゴビア所有だったという(確認しようもありませんが)のを試奏したときの音、甘い音はこれっぽちもしませんでした。手元でパン、パンというピストルの実射音に似た音でした。そうでなければ3000人も入るようなホールで音は拡散して聴こえないでしょうし、おそらくそういう広い会場で聴くとセゴビアがよくいうresoundなのだと思います。ちなみに海外でセゴビアの教えを直接何回も受けた方は日本ではお二人ぐらいではないでしょいうか。昔はおおらかな時代で講習会の開かれていた現地に行きアシスタントのレッスンを受けただけなのに、講習会に参加して師事したと言ったのではないでしょうか、もちろんあくまで私の想像ですが。。。 そういう方のセゴビア奏法には疑問を感じます。

私の垣間見たセゴビア奏法は文面ではなくて、直接音で聴いたものでした。もちろんセゴビア奏法などという僭越な言い方はこれぽっちもなく、同じラミレスで弾いているのになぜこうも違うのかという謙虚な言葉を、先生の見本演奏聴いて腰を抜かして唖然としている私に先生が諭すように言われてレッスンが始まりました。40年前に私が松田先生にタッチをなおされたとき、私の中指を先生の手が誘導してくれた方向は弦に対して右腕側に斜めでした。手首の話はまったくありませんでした。多分 見ればわかるだろ、ということだと個人的には納得しています。それ以来 右手首も左手親指も自由な状態にしています。

来日時に名古屋の小さな会場の正面前から2列めで聴いた老セゴビアの奏する第1曲目のSorのアンダンテラルゴは軽い音、しかも甘さなどは全くない透明感のある詩的な音で、けっしてスペイン的な音ではありませんでした。多分ラミレスだと思います。恐らく名人の洗練されたタッチで、どのような音でも出せたのだと思います。

好き勝手に書いてしまいました。申し訳ありません。
  1. URL |
  2. 2013/01/25(金) 04:59:15 |
  3. HSPT #Yqf9uHks
  4. [ 編集 ]

右手

こんばんは、お話の右手ですが、ちょと異議ありなのです。すみません。
バロック時代のリュート弾きは、必ずしも斜めではなく、むしろ直角に近く、ともするとクラッシックギター的タッチです。古い当時の絵画をご覧になるとほぼ例外なく、ブリッジ寄りで、手の角度は直角に近いです。指の面積一杯の深いタッチではないです。爪を切っていたにしても、当時の演奏者の出す音はやや鋭い音だったのではないでしょうか。
 絵画は唯一の当時の人がどんなタッチだったのかわかる手がかりなのですが、音色を探る上でのヒントにもなります。私の想像ですが、指先先端の爪にかからない程度のタッチで、鋭い音ではなかったか、ガット弦のテンション、音色も考慮して、そんな風に思えます。そして昔で言うならば、イエペスが奏でたバロックリュートのようなあの音色が近いのではないかなと思っています。
 現在常識として通ってるタッチや音色は、タイムマシンでも無い限り、確認しようが無いですが、絵画をくまなく見ていくと出ていた音色が想像できる気がします。
 平山様が「・・・・バカもの・・・」 と仰っているので、恐縮ですが、私見を述べました。どう思われますでしょうか。
  1. URL |
  2. 2013/01/26(土) 18:05:49 |
  3. LUTHIER #-
  4. [ 編集 ]

右手

タレガは右手を曲げていますが、セゴビアは右手はまっすぐですよ。最晩年は体力的に衰え、若干曲がっているように見えますが、70代は右手は曲げずにまっすぐです。
  1. URL |
  2. 2016/05/20(金) 00:36:24 |
  3. ぎん #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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