古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

弦長 59センチのギター完成


弦長 59センチのギター が完成しました。

と言っても私が作ったのではなく、お弟子さんに私の図面を渡して
細かく指示させていただいて、出来た物です。

          UNI_0071.jpg

もちろん左の楽器です。右は私の標準の64センチのギターです。

大きさは、私の64センチの標準のギターを92%に縮小したものです。
弦幅などは、ほぼ64センチのものと同じにしています。

指の太さは、180センチある外国の方でも、私より指が細い人もいますから。

出来た楽器ですが、とても良い楽器で、予想通りの音がしてくれました。

ボディが小さいと言っても、19世紀ギターよりは大きいので、鳴る面積が大きい
私の設計では、充分使える低音が出ると思っていました。
結果もそのとおりでした。
6弦をレ まで下げると、更に響きも増し、しっかりした音で鳴ってくれます。

むしろ、高音、中音に弦長の短さの問題があるようでした。

1,2,3はゲージが選べる フロロカーボンにしました。

1弦は 0.62ミリ (14号) 2弦は 0.74 (20号)を張っていましたが
0.78 〈22号)に。3弦は 0.84 〈26号)を 0.91(30号)に張り替えました。

低音弦は プロアルテ〈ダダリオ)のエクストラ・ハードテンションです。

弦高は最初、1弦側 12フレットで2.0ミリ6弦側で3.0ミリだったのですが、
それぞれ、0.2ミリずつ上げました。

弦長が短いのですが、音の立ち上がりは、楽器が軽い(950グラム)こともあり、
問題なかったので、弦長の短い、テンションの低いことが、良いほうにまわり
減衰がとても長くなりました。徐々に音が小さくなって、減衰すると言うより
ほとんど音の大きさが変わらず伸びていきます。
そして、テンションが低いのでビブラートもよくかかります。

音も、弦が太いと言うこともあるのでしょうが、太い音がします。

モダンスペインギターではない、私の目指している分離の良い、
クリアーな、其音がしっかりした音が、全弦、開放弦から19フレットまで
鳴らない音や、鳴りすぎる音も全然無く、どの音をとっても、同じように
鳴ってくれます。

これは楽器全体が鳴るということで、特定の音が特定の振動に合って、
鳴りすぎたり、鳴らなかったりする、ウルフを発生させないからでしょうか?

沢山の楽器を弾かせていただきましたが、名器といわれる楽器でも、多少は
鳴る音、鳴らない音、ウルフがありましたから、演奏してもとても使いやすい楽器
になってくれました。

そして、演奏してみて、左手の楽さにびっくりしました!

何のストレスも無く、無理して拡げることをしなくても、指が届くのです。
今まで無理だった、和音も弾けます。

大きな手の、慎重が180センチ以上ある人は、こんなに楽に弾いていたのだと、
これにも驚きました。

まるで、今までは、100メーター走で10メーターくらいハンデがあった感じです。


私のような、身長167センチくらいだと、ぴったりです。
ドイツのミハエル・コッホ さんの理論は合っているようです。

でも、やはり弦長が短く、太い弦を張りましたので、少し
改善の余地はありそうです。

そこで、楽器を見ていてあることに気が付きました。

ブリッジの位置です。

私の楽器も一応モダン楽器です。
モダン楽器の創始者のトーレスさんの呪縛に囚われていたようです。

下の図面はトーレスさんの標準的な楽器の図面です。

img754.jpg

ブリッジ位置が二つ書いていますが、上のものがトーレスさんの位置です。
右斜線のものが、ほぼ下部ボディの一番膨らんだ場所にブリッジを持ってきた物です。

トーレスさんは楽器を大きくしたいが、弦長は650mmにしたいと言うことで、
ブリッジ位置を少し上げて、解決したのだと思います。

ブリッジから、エンドブロックまでの、距離が大きくなるので、強度不足から、vの
バスバーをつけ、エンドブロックを大きくしたのではないかと思うのです。

でも、19世紀ギターはほとんど例外なく、ボデイの一番膨らんだところに
ブリッジを持ってきています。

一番大きな面積の中心だと、市場の大きな面積を鳴らすことが出来ると、
普通に考えるとそうなりますね。

トーレスさんのブリッジ位置です。

img755.jpg

そして、私の考えるブリッジ位置です。

img756.jpg


このほうが、楽器として自然な位置だと思います。

と言うことで、次回の楽器はブリッジ位置を1センチ下にずらして、
弦長を61センチにしようと思います。

ボディサイズは変えずに。

そうすることによって、弦のゲージを選べる範囲が増えますし、
楽器が更に鳴ってくれると思います。

59センチから61センチになりますが、標準的な65センチに比べると
4センチ、私の楽器からも3センチ弦長が短くなりますので、59センチよりは
指を拡げなくてはいけませんが、そう無理なく弾けそうです。

61センチを作って、結果を見て 60センチか60.5センチくらいがベストとなるかもしれません。

普通弦長を短くすると、低音や音量が減るので、ボディは大きいまま弦長を短くしているのを
見ますが、どうしても音がぼけます。
私の作りたい音とは反対になります。

小さいボディで弦長が短いほうが、締まった音になります。
更に、小さいボディのままで、弦長を長くすれば、更に締まった音に鳴ってくれると思います。

また新しい楽器が出来れば、報告させていただきます。




  1. 2013/01/24(木) 11:25:19|
  2. ギター
  3. | コメント:2
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コメント

明日の日曜日に発表会で 友人が制作した60cmのギターを拝借してBachを演奏します。

先日 試奏したのですが、ネック幅は通常とほぼ変わりなしで弦高も普通に調整してあり大変弾きやすいものでした。

60cmや63cmなど小ぶりのギターを初心者用とかレデイースサイズなんていう言い方もあるようですが、勘違いも甚だしいと思ってます。ただし、ネックの幅や弦高までも縮小してしまっては長時間の演奏や練習は困難だと思います。
  1. URL |
  2. 2013/01/26(土) 20:46:11 |
  3. HSPT #-
  4. [ 編集 ]

コメントと、情報ありがとうございました。

私以外で、60センチの楽器を作られていることを知り、
嬉しく思いました。

確かに、ラ*トギターなどと呼ばれると、特殊な楽器だと思われそうですね。
特に音量はクラッシク・ギターと変わりません、と書かれるとクラッシクギターでは
無いように,とられかねませんし。
〈特定の人のことを言っているのではありません)

弦長の短いギターで使えるものが増えると、
鶏と卵ではありませんが、とりあえず、使える
弦長の短い楽器があって、楽器が選べることになるのでは、
と思います。

また、見せていただきたいですね。

関東の高橋さんが、以前かなり小型のギターを作ってられましたが、
弦長が短く、テンションが低いので、作った本人が一番良い音で
演奏されていました。

  1. URL |
  2. 2013/01/27(日) 12:34:27 |
  3. こがっき #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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